【コラム】都市のモビリティを改革する可能性を秘めたコンピュータービジョンソフトウェア

本稿の著者Harris Lummis(ハリス・ルミス)氏はAutomotusの協同ダウンダーでCTO。

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2019年10月、ニューヨーク・タイムズは、ニューヨーク市内では毎日150万個の荷物が配達されていると報じた。顧客にとっては便利で、世界のAmazon(アマゾン)にとっては利益になるが、これほど多くの箱を倉庫から顧客に届けることは、都市にとってかなりの外部不経済を生み出す。

タイムズは「利便性の追求は、ニューヨークをはじめとする世界中の都市部の交通渋滞、道路の安全性、汚染に大きな影響を与えている」と報じた。

この記事が発表されて以降、新型コロナウイルスの世界的流行により電子商取引は興隆を極めており、専門家はこの上昇傾向がすぐに弱まることはないと考える。戦略的な介入がなければ、私たちの都市はますます深刻な交通問題、安全問題、汚染物質の排出に直面することになるだろう。

都市部の道路には、何十年もの間、同じような問題がつきまとっている。しかし、テクノロジーがようやく追いついてきて、密集した都市の道路における混雑、汚染、駐車違反の取り締まりなどの課題に対処する新しい手段を提供できるようになってきた。

常にそうなのであるが、効果的な解決策は、まず問題を引き起こしている詳細な状況を理解することから始まる。今回のケースでは、問題に対処する方法は、街灯カメラを使って路上駐車や道路交通を観察することで、問題点を簡単に把握することである。

公共の場を監視するためにカメラを設置すると、すぐに熱狂的なプライバシー擁護派(私もその1人だ)の怒りを買うかもしれない。だからこそ、私の会社と同類の企業は、プライバシー・バイ・デザインのアプローチで製品開発を行っている。当社の技術は、映像をリアルタイムで処理し、顔やナンバープレートを認識できない程度までぼかしてから、社内や公的機関に画像データを提供することで、監視目的での悪用に対する懸念を払拭する。

これらのカメラの目的は、監視することではなく、実際の都市の道路から得られる具体的なデータを活用して、重要な洞察をもたらし、路上の駐車スペースにおける自動化を促進することだ。Automotusのコンピュータービジョンソフトウェアは、すでにこのモデルを使って、前述のような路上に氾濫する商用車の管理手段を都市に提供している。

この技術は、駐車場の回転率を最適化したり、インセンティブを与えたりするためにも利用できる。ある調査によると、ニューヨーク市のドライバーは、駐車スペースを探すために年間平均107時間を費やしている。ドライバー1人当たりの無駄な時間、燃料、排出ガスのコストは2243ドル(約24万円)に上り、ニューヨーク市全体では43億ドル(約4400億円)にもなる。このような無駄な動きは、米国国内だけでなく、世界中で起こっている。駐車スペースの需要に関する包括的なデータを収集することで、都市は、駐車スペースの供給と車両の実際の使用が適切に合致するような駐車政策を策定することができる。

ロヨラ・メリーマウント大学のキャンパスで実施したAutomotusの実験では、データを利用して駐車ポリシーを調整したところ、駐車場を探すドライバーによる交通量が20%以上減少した。データを利用して駐車スペースを最適化することで、駐車場の利用効率が上がり、駐車場を探す時間が短縮され、交通渋滞の解消につながる。また、駐車スペースの空き状況をリアルタイムに把握できれば、アプリやAPIを介してドライバーに空き駐車場を案内することも可能だ。

当社は、路上の駐車スペースにおけるあらゆる形態の活動に関する正確な最新情報を提供することで、都市プランナーがその都市の駐車スペースの時間的・空間的パターンを完全に理解できるようにしている。これによりプランナーは、その都市の特性に合わせた駐車スペース政策について、十分な情報を得た上で決定することができる。

おかげで「ここでどれくらいのタクシーからの降車が起きているか?」「火曜日の朝、どこの配送トラックが二重駐車(路肩に止めてあるクルマの横にさらに止めること)をしているのか?」といった質問に簡単に解答できるようになった。漠然とした試行錯誤的手法で政策を策定する時代は終わったのだ。乗客用駐車場、配送車専用ゾーン、タクシーエリアの位置、駐車料金の最適な設定、違反時の適切な罰則などについて、豊富な情報を基にした的確で影響力のある判断が可能になる。

この技術は、配送業者にとってもメリットがある。駐車スペースの空き状況をリアルタイムで把握し、予測することができれば、ルートの効率が向上し、コスト削減につながる。配送業者は罰金を払って路上駐車するのではなく、駐車スペースでの利用時間に応じて駐車料金を払えばよい(米国では税金控除の対象となる)。

オハイオ州コロンバスで行われた調査では、指定搬入ゾーンを設けることで二重駐車の違反が50%減少し、商用車が路上の駐車スペースに停車する時間が28%短縮された。FedExやAmazonのような企業にとっては、配送の効率が飛躍的に向上することでコスト削減につながり、その結果、駐車スペースの利用に適正な料金を支払い、浮いた資金を消費者に還元することができる。

現在は、いくつかのトレンドが相互に関連しあっており、新しい技術を道路や路上の駐車スペースに適用するには、特に好都合な時期だと言える。新型コロナの流行前、多くの都市は、人々が相乗りを利用するようになったことで、駐車場からの収入の減少に直面していた。現在、米国の何千もの自治体が、新型コロナの影響で大幅な予算不足に陥ることが予想されている。また、世界経済フォーラムの報告書によると、2030年までに都心部では商業用配送車両の数が36%増加すると予測されている。当社の調査によると、駐車違反の50%以上が商用車による違反であり、取締りを受けていないことが分かっている。

コロンバス市が2016年の米国政府の「Smart City Challenge」で優勝したのは偶然ではない。バラク・オバマ前大統領が2015年に「スマートシティ」構想の一環として1億6000万ドル(約176億4500万円)以上を拠出した際、プログラムの主要な目標の1つとして渋滞と汚染の削減が掲げられた。これらの目標を達成するためには、駐車場や路上の駐車スペースの管理を改善することが重要だ。ドナルド・トランプ前大統領は、大規模なインフラ計画を掲げて選挙戦に臨んだが、この分野での彼の公約の実現は不十分なものだった。米国政府の支援がないにも関わらず、サンタモニカなどの都市では、ダウンタウンの中心部にゼロエミッションの配送ゾーンを実験的に設置するなど、有望な取り組みが行われている。

ジョー・バイデン大統領は、米国が気候変動対策と都市交通の近代化の両方にとって必要なインフラを構築する計画の概要を発表した。この計画には、電気自動車用の公共充電ステーションを50万台分用意すること、ドライバー、歩行者、自転車などが安全に道路を共有できるように都市を変革すること、重要なクリーンエネルギーソリューションに投資することなどが含まれている。

路上の駐車スペースの管理技術は、米国政府や地方自治体が都市の汚染を減らし、生活の質を向上させるために活用できる選択肢の1つだ。次期政権が、都市のモビリティの課題を解決するためのこの斬新なアプローチを支持してくれれば、米国のインフラは単に近代化されるだけでなく、未来への準備が整うことになる。

私個人としては、この改革が実現することを願っている。私たちの国の健康、安全、そして繁栄の共有は、これにかかっているのだ。

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(文:Harris Lummis、翻訳:Dragonfly)

配送サービスの急増で混雑する道路の路肩スペース管理を請け負うスタートアップAutomotusに投資家も注目

荷物の積み下ろしをする商用車やギグ・エコノミー・ワーカーの配達業務によって、道路の路肩スペースはますます狭くなっている。この問題は、新型コロナウイルスの影響でオンデマンドの配送サービスが増えたことで、さらに深刻化している。

この需要と供給の問題を解決するため、近年はCoord(コード)やcurbflow(カーブフロー)などのスタートアップ企業が続々と登場している。3年前に創業したAutomotus(オートモータス)もその1つだ。同社はサンタモニカ、ピッツバーグ、ワシントン州ベルビュー、イタリアのトリノなどの都市で事業を展開し始めており、ロサンゼルスでもプロジェクトが進行中だ。

投資家もそれに注目している。都市の路肩を監視・管理するためのビデオ解析技術を開発したこの会社は、2021年2月にQuake Capital(クウェーク・キャピタル)、Techstars Ventures(テックスターズ・ベンチャーズ)、Passport(パスポート)に買収されたNuPark(ニューパーク)の共同創業者でCEOのKevin Uhlenhaker(ケビン・ウーレンヘイカー)氏、Baron Davis(バロン・デイビス)氏らが主導するシードラウンドで、120万ドル(約1億3000万円)を調達したと発表した。同社CEOのJordan Justus(ジョーダン・ジャスタス)氏は、総調達額が230万ドル(約2億5000万円)になったと、TechCrunchに語った。新たな投資家には、Ben Bear(ベン・ベア)氏、Derrick Ko(デリック・コー)氏、マイクロモビリティ企業Spin(スピン)のZaizhuang Cheng(ツァイツァン・チェン)氏などがいる。

このスタートアップはまだ小さく、フルタイムの従業員はわずか11人。しかし、ジャスタス氏は新たに調達した資金を、新しい市場への進出や従業員の増員に充てると述べている。

Automotusは、コンピュータビジョン技術を用いて、ゼロエミッション車や商業配送車専用に指定されている駐車スペースの映像を記録する。同社のソフトウェアは、リアルタイムで路肩の使用状況を分析したり、違反駐車している車両があれば取締担当者に通報するなど、さまざまな機能を備えている。都市の職員はウェブアプリケーションを使ってこれらの分析結果にアクセスできる。その一方で、事業者の商用車は、オープンAPIやモバイルアプリを利用して、駐車可能なスペースの情報を得ることができるという。

画像クレジット:Automotus

例えば、新たに発表されたサンタモニカ市とLos Angels Cleantech Incubator(ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)によるパイロットプロジェクトでは、同市の1平方マイル(約2.59平方キロメートル)のゼロエミッション配送区域を監視する。Automotusは、配送効率、安全性、混雑、排出量について、ゾーンの影響を評価するための匿名データを提供し、ゼロエミッション配送区域のドライバー全員がリアルタイムで駐車可能なスペースの空き状況データを利用できるようにする。

2017年末に設立され、Techstarsの卒業生でもあるこのスタートアップは、主にそのエンフォースメント機能の収入分配で収益を上げている。つまり、商用車が特定の区域に駐車する際に自動的に請求される支払いの一部や、駐車違反の罰金の一部を得ているわけだ。分析機能は、都市が政策を設定したり送迎ゾーンを指定する際には役立つかもしれないが、ジャスタス氏のいう「最大の機会」はエンフォースメント機能から提供される。

ロサンゼルスのLoyola Marymount University(ロヨラ・メリーマウント大学)は、Automotusの技術を使って、駐車場の取締りを完全に自動化した。Automotusによると、これによって取締りの効率と収益は500%以上向上し、さらに駐車場の回転率が24%向上、交通量は20%減少したという。

「商用車のオペレーターにとって、エンフォースメントの要素は非常に重要です。なぜなら、路肩の駐車可能なスペースが効率的にうまく管理されていればこそ、彼らの本来の目的である商業での利用が可能になるからです」と、ジャスタス氏は語っている。

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タグ:Automotus交通資金調達

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)