ISSに宇宙初の映画スタジオを2024年までに接続する計画を米エンターテインメント会社が発表

国際宇宙ステーションに、映画スタジオやスポーツアリーナを備えたモジュールが、2024年12月までに接続される可能性が出てきた。このプロジェクトは、宇宙で一部撮影を行うTom Cruise(トム・クルーズ)の映画を共同制作しているSpace Entertainment Enterprise(スペース・エンターテインメント・エンタープライズ、SEE)が発表したものだ。Variety(バラエティ)によると、このSEE-1と呼ばれるモジュールが稼働すれば、テレビや映画の制作だけでなく、音楽イベントやある種のスポーツなどを開催し、それらを撮影したりライブ配信することができるようになる計画だという。

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実際にこのモジュールを建造するのは、2年前にNASAからISS初の商用モジュールの建造を受注したAxiom Space(アクシオム・スペース)が担当することになっている。すべてが順調に進めば、SEE-1はISSのAxiom Spaceが建造したアームに接続される。Axiom社のステーションは、SEE-1を取り付けたまま、2028年にISSから分離する予定だ。

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SEEとAxiomがこの計画を実行できるかどうかはまだわからない。なぜなら、SEEは施設の建造費用を明らかにしておらず、現在はその資金調達を計画している段階だからだ。

2021年、ロシアのクルーが初めて宇宙で長編フィクション映画を撮影し、トム・クルーズやDoug Liman(ダグ・ライマン)監督を出し抜いた。その映画「The Challenge(ザ・チャレンジ)」は2022年中に公開が予定されている。一方、クルーズとライマン監督は、2022年後半にISSで映画の撮影を行う予定だ。

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編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Space Entertainment Enterprise

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグラーが宇宙をマネタイズ、Axiom Spaceの民間宇宙ステーションが提供するさまざまなサービス

次期国際宇宙ステーションを建設するAxiom Space(アクシオム・スペース)は、2021年初めに10億ドル(約1148億6000万円)規模の評価を受けた後、Google(グーグル)出身のTejpaul Bhatia(テジポール・バティア)氏を同社初のCRO(最高収益責任者)に採用した。同氏は宇宙エコシステムの成長と収益化を担うことになる。

2017年、バティア氏はCiti Ventures(シティ・ベンチャーズ)でエグゼクティブ・イン・レジデンスを務めていた際にAxiomを紹介され、同社がNASAとの1億4000万ドル(約159億円)の契約を獲得した後の2020年にエンジェル投資家として投資。その後7月、リーダーシップチームの一員として参加することになった。

Axiom SpaceのCRO(最高収益責任者)であるTejpaul Bhatia(テジポール・バティア)氏(画像クレジット:Axiom Space)

しかし、宇宙分野におけるパイオニアはAxiomだけではない。NASAとの契約金4億ドル(約454億円)をめぐって、宇宙空間に進出しようと目論む宇宙ベンチャー企業のゴールドラッシュは始まっている。

十数社のコントラクターがこの競争への参加を表明しており、2021年10月には2社が発表された。10月22日には、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)がVoyager Space(ボイジャー・スペース)およびNanoracks(ナノラックス)と提携して2027年までに宇宙ステーション「Starlab」を打ち上げるという入札を行っており、また10月25日には、Blue Origin(ブルーオリジン)がSierra Space(シエラ・スペース)およびBoeing(ボーイング)と提携して、2025年から2030年の間に宇宙ステーション「Orbital Reef」を打ち上げるという計画をJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が発表している。

Axiomの役割はというと、2028年に退役する予定のISSからシームレスに移行するために、ISSに増築を行いながら段階的にAxiom Stationを建設するという計画をNASAが承認している。

最初のモジュールである「Hub 1」は2024年にドッキングする予定で、研究施設と4人のクルーのための居住区があり、タッチスクリーンの通信パネルと大きな窓が設置される予定だ。2025年には同様の設備を備えた2番目のモジュール「Hub 2」が計画されている。2026年には微小重力実験室の建設が続くという。そして2027年には、太陽電池アレイを搭載したパワータワーが3つのモジュールに取り付けられ、ISSのキャパシティを2倍にするAxiom Stationが形成される。2028年にはAxiom Stationが切り離され、自己軌道に乗り始めるという計画である。

WeWorkの地球外リトリート施設や研究機関の研究ハブとして機能するだけでなく、小国が独自の宇宙プログラムを立ち上げるための手段になる巨大な工業施設を今後7~10年の間に地球低軌道上に建設するという野望について、TechCrunchはバティア氏に話を伺った。

これが同氏の考える、Googleの戦略を見習った最後のフロンティアをマネタイズする方法だ。

Axiom Stationのタイムライン(画像クレジット:Axiom Space)

究極の旅を予約

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションの元マネージャーであるMichael Suffredini(マイケル・スフレディーニ)氏とIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)の共同創業者であるKam Ghaffarian(カム・ガファリアン)氏によって2016年に設立された。2月にはC5 Capital(C5キャピタル)が主導する1億3000万ドル(約147億7000万円)のシリーズBラウンドをクローズし、リードインベスターであるBlue Originの元社長Rob Meyerson(ロブ・マイヤーソン)氏が取締役に就任。これまでに総額1億5000万ドル(約170億4000万円)を調達している。同社はヒューストンに本社を置き、300人以上の従業員を擁している。

Axiomの主な収入源は、ISSでの短期滞在向けのエンド・ツー・エンドのミッションプロバイダーとなることによるものだ。つまり宇宙飛行士訓練とSpaceX(スペースエックス)による往復輸送(食料、水、酸素、通信、データ、電源などの必需品を含む)をパッケージ化し、7~10日間のオールインクルーシブ滞在を民間に販売するというわけだ。また、ISSの微小重力実験室で行う実験のためのリサーチミッションを販売する他、コンテンツやメディアのスポンサーシップの販売にいたってはすでに開始されている。

2022年には2つのミッションが予定されている。NASAの元宇宙飛行士でAxiomの副社長であるMichael López-Alegria(マイケル・ロペス=アレグリア)氏が、2月21日に予定されている最初のミッション「Ax1」を指揮し、投資家のLarry Connor(ラリー・コナー)氏、Mark Pathy(マーク・パシー)氏、Eytan Stibbe(エイタン・スティッベ)氏がクルーを務めるという。ワシントン・ポスト紙は、チケット価格を乗客1人当たり5500万ドル(約62億5000万円)と報じている。

2つ目のミッション「Ax2」は2022年後半に計画されており、宇宙滞在時間の米国最長記録を持つNASAの引退宇宙飛行士Peggy Whitson(ペギー・ウィットソン)氏と、米国の投資家でレーシングカーのドライバーおよびパイロットでもあるJohn Shoffner(ジョン・ショフナー)氏が参加する予定だ。まだ2つの席が空いているはずだが、Elon Musk(イーロン・マスク)氏とともに2億ドル(約227億1000万円)のユニバーサル映画を製作中で、NASAからも飛行すると噂されているTom Cruise(トム・クルーズ)氏がこのフライトに参加するのか否かは、Axiomは明らかにしていない。

3回目と4回目のミッションは2023年に計画されており、いずれかのミッションにはDiscovery Channel(ディスカバリーチャンネル)の競争型リアリティテレビ番組「Who Wants To Be An Astronaut?」の優勝者が参加する予定だ。

この分野におけるAxiomの競合他社には、1998年にBOLD Capital(ボールドキャピタル)のPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏が共同設立したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)がある。同社はこれまでに、Cirque du Soleil(シルク・ドゥ・ソレイユ)の共同創設者であるGuy Laliberté(ギー・ラリベルテ)氏を含む7人の民間人を、ロシアの宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)を通じてISSに輸送してきた。2023年に予定されている同社2回目のISSへのミッションは宇宙遊泳だ。SpaceNews(スペースニュース)によると、同社は2021年後半にSpaceXによる軌道旅行を計画していたものの、需要の少なさのためにキャンセルされている。

億万長者のRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が、スタートレックのWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏などの民間人を宇宙の果てまで連れて行くという話がここ数カ月湧いていたが、実際市場はチケット代を払える人に限られている。

幸いなことに、億万長者らはAxiomのターゲットではない。

  1. Render-Axiom-Station

    画像クレジット:Axiom Space
  2. Axiom-Station-rendering-2

    画像クレジット:Axiom Space
  3. Axiom-Station-rendering

    画像クレジット:Axiom Space
  4. Axiom-featured

    画像クレジット:Axiom Space

 

 

スカイシティへようこそ

ネオン輝く天空のビルの周りをスペースカーが疾走するThe Jetsons(宇宙家族ジェットソン)のようにはいかないかもしれないが、2024年にAxiomが最初の居住施設をISSにドッキングさせるとき、事態はかなりおもしろくなるだろう。

バティア氏によるとAxiomは今後ISSの容量制限を受けなくなるため、さらに多くの部屋や研究施設を建設することができ、より多くのミッションを提供できるようになるという。Axiomは需要に応じて、BoeingのStarlinerを含む、SpaceXのような他のロケットプロバイダーとの協力も承認さえおりれば考慮したいと考えている。

バティア氏は2024年が収益成長の重要な変曲点になると考えている。

「Axiomステーションが稼働し始めれば、企業や機関、政府が物理的スぺースやデジタルスペースをカスタムメイドで構築、購入、リースできるハイブリッドモデルになるでしょう」と同氏。

「私たちの物理的スペースのクールな点は、ラボ、データセンター、居住スペースなどのモジュールが、レゴのように切り離され飛び回り、再構築できるということです」。

しかしバティア氏は、アプリで部屋を予約できるような宇宙ホテルなどとは決して呼ばれたくないようだ。Axiom Stationは独自の宇宙プログラムを構築しようとしている政府から、微小重力実験室やコロケーション製造施設を必要としている企業や機関まで、さまざまな顧客を想定した巨大な産業用宇宙施設であると同氏は考えている。

「私たちは食料、水、酸素、生命維持システム、帯域幅、データ、インサイト、エッジコンピューティング、通信、電力など、あらゆる企業、機関、政府が軌道上で運営するために必要なものが完備された物理的スペースを提供します」と同氏。

「さらにエキサイティングなことに、iPhoneのセンサーを使ってアプリケーションを開発するのと同じように、開発者が船上のセンサーやその他の機器を使ってビジネスを構築することができる、インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスとして販売するデジタルプラットフォームを提供することもできます」。

Axiomのクルーステーション・クォーターのレンダリング画像(画像クレジット:Axiom Space)

Axiom StationのOSをサードパーティが開発できるようなソフトウェア開発キットを実際に制作するかどうかは不明だが、バティア氏はAxiom Stationのセンサーの用途として、スペースデブリや地球の気候のモニタリングが考えられると話している。

またバティア氏は、宇宙開発の予算がある国とまだ予算がない国の両方の市場を想定している。

「私たちの目標は、ISSが寿命を迎えたときに、すべての人のための完全なサービスと機能を備えたプライベートステーションを提供してギャップが生じないようにすることです。ある国の予算が数十億ドルであろうと、その数分の一であろうと、私たちはその国のニーズに合ったソリューションを作ることができるでしょう」。

NASA、ESA(欧州宇宙機関)、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、Canadian Space Agency(カナダ宇宙庁)、Roscosmosが、ISSの後継機として年間20億ドル(約2256億7000万円)から30億ドル(約3385億5000万円)の収益をAxiom Stationに移すことをバティア氏は期待している。Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)のレポートによると、商業宇宙部門は2020年に3500億ドル(約39兆4683億円)、2040年には1兆ドル(約112兆7370億円)になると予想されており、Axiomとしては長期的にこの数千億ドル規模の市場にサービスを提供できるようになりたいと考えている。

グーグラーの出番

シリアルアントレプレナー、投資家、そしてGoogle Cloud(グーグルクラウド)のスタートアップエコシステムの構築に貢献した技術者として、バティア氏は宇宙経済にはベンチャーキャピタルの考え方が必要だと伝えている。

「最高収益責任者である私の使命は、今後7年から10年の間にビジネス、産業、市場が飛躍的に成長するための発射台となる超成長ビジネスプラットフォームを構築することです。これは、政府の税金で運営されてきたこれまでの宇宙産業とはまったく異なるモデルであり、民間企業の方がこれを達成するのにはるかに適しています」。

バティア氏はStarlabやOrbital Reefとの競争を歓迎すると同時に、Axiomがこれらの数年先を行っていると同氏は確信を持っている。

イタリア、トリノのThales Alenia(TASI)の工場でAxiom Hub 1を製作中(画像クレジット:Axiom Space)

「仕事を始めて100日ちょっとですが、このプロジェクトが理屈上の話だけではないことがわかりました。金属が曲げられ、人々が集まり、契約が結ばれています。最初のモジュールはすでにイタリアのThales Alenia(タレス・アレーニア)の工場で建設中です。これはサイエンスフィクションではなく、実際に起こっていることなのです」。

また当分の間、収益性については心配する必要がないという。

「資金調達は非常に重要です。私たちは世界で最も価値のある5つの企業(Facebook、Apple、Amazon、Microsoft、Google)が創業時に赤字で運営していたことをモデルにしています。できるだけ多くの株主価値を創造し、必要不可欠なインフラを構築するために資本を得て、安全性に焦点を当てながらスピード感を持って革新していくというのが計画です」。

編集部注:本記事の執筆者Martine Paris(マルティーヌ・パリ)氏はフリーランスの技術レポーターとして、宇宙、電気自動車、気候変動対策、ロボット、AI、コンシューマーテック、eコマース、ストリーミング、ゲーム、ベンチャーキャピタル、スタートアップカルチャーなどを取材している。

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Martine Paris、翻訳:Dragonfly)

Axiom Spaceの民間宇宙ステーション加圧モジュール開発は仏伊Thales Alenia Spaceが担当

ヒューストンに本社を置くAxiom Space(アクシオム・スペース)は、世界初の民間商業宇宙ステーションを建設・運営するという野心的なプロジェクトを進めており、その詳細が明らかになりつつある。

Axiom宇宙ステーションの2つの与圧モジュールの開発は、欧州の航空宇宙メーカーであるThales Alenia Space(タレス・アレーニア・スペース)が担当する。2024年と2025年に打ち上げられる予定のこれら2つの要素は、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした後、最終的には切り離され、完全に独立した商業ステーションとして運用される。

両社は、1億1000万ユーロ(約143億円)の最終契約を締結したと米国時間7月15日に発表した。各モジュールには4人の宇宙飛行士が搭乗できる。また、Thales Aleniaは、各モジュールの微小隕石・デブリシールドシステムの設計も担当する。

Thales Aleniaによると、このモジュールはまだ設計段階にあるという。同社は最近、イタリアのトリノにある施設で、第1モジュールの4つの放射状バルクヘッドの開発を完了した。これらの隔壁が連結されると、シリンダーが形成される。その構造は、共通のバースメカニズム、ISSに接続するモジュールの部品、ハッチなどに取り付けられる。

画像クレジット:Thales Alenia Space

これら2つのモジュールの道のりは長い。フランスのThales Group(タレス・グループ)とイタリアのコングロマリット、Leonardo(レオナルド)の合弁会社であるThales Aleniaがまず、2021年9月から2022年にかけて第1モジュールの溶接を開始する。そのモジュールは、2023年7月にAxiomのテキサス州の施設に送られ、その後Axiomが基幹システムを統合し、2024年の打ち上げに向けて準備を進める。

NASAは、2020年1月にISSの最初の商用居住モジュールの建設をAxiomに依頼した。ISSが退役した後、Axiomのステーションは切り離され、将来のミッションや科学実験のための商業拠点として機能する。これは、急成長する地球低軌道経済の成長と、他の民間軌道ラボや商業施設の構築を促進するNASAの計画の主要な部分だ。

Axiomは、2022年1月に予定されているISSへの初の完全民間ミッションの運用も行う。Axiom Mission 1では、4人の民間宇宙飛行士をSpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルー・ドラゴン)ロケットに搭乗させ、8日間のミッションで宇宙に送り出す予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space国際宇宙ステーション民間宇宙飛行

画像クレジット:Thales Alenia Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

スペースXが民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶミッションを2023年までに4回予定

SpaceX(スペースX)は、2020年1月に実施するとすでに発表済みのミッションに続いて、さらなる民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り込むための乗り物を提供することを発表した。計画されている4度のフライトは、すべて民間の商業宇宙飛行および宇宙ステーション企業であるAxiom Space(アクシアム・スペース)のためのもので、2022年はじめから2023年までの間に行われる予定だ。

SpaceXの宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」と「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」は、ISSへの人間の輸送を認可された最初の民間打ち上げシステムであり、すでに3組のNASA宇宙飛行士を軌道上の実験室に送り出している。そのうち1組目は最終的な認証取得試験のデモ飛行で、2組はISSに滞在し作業を行うための運用飛行だった。AxiomとNASAは5月に、初の民間人のみによるISSへの飛行となるAX-1ミッションの詳細を明らかにした。このミッションでは、4人の民間宇宙飛行士をCrew Dragonに乗せてISSに送り届ける。4人は合計8日間、宇宙に滞在しながら作業を行い、地球に帰還する予定だ。

NASAとSpaceXは、ステーションに向かうAxiomの4人のクルー全員にトレーニングを提供することになっている。SpaceXもAxiomも他の3つのミッションの内容や時期については、今のところ詳細を明らかにしていない。だが、2年間に4回のミッションを行うということは、これでNASAが2022年と2023年に年2回ずつ割り当てている民間宇宙飛行士ミッションがすべて埋まることになる。

民間宇宙飛行士によるISSへの飛行は、すでに2021年内に1度予定されている。日本の大富豪である前澤友作氏は、12月初旬にロシアのSoyuz(ソユーズ)ロケットでISSに向かうフライトを予約した。この宇宙旅行を手配したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)は、2000年代に何人もの大金持ちの民間人を宇宙へ送り出してきた。

一方でAxiomは、軌道上宇宙ステーションでの商業活動について、ニッチではなくより継続的に行う未来を思い描いている。同社は既存のISSに追加する商用モジュールの開発に取り組んでおり、将来的にはISSの後継となる完全に民間運用の宇宙ステーションの建設も視野に入れている。2年間に複数のクルーを乗せた4回の旅行の予約があるということは、物好きな富豪による気まぐれ以上の需要が、商用宇宙旅行にあることを示すのに大いに役立つだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX民間宇宙飛行国際宇宙ステーションNASAAxiom Space

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「宇宙旅行」が賞品のディスカバリーの新リアリティ番組「Who Wants to Be an Astronaut?」

Discovery(ディスカバリー)は、2022年に放送予定の新しいリアリティ番組を発注した。この新番組は、Axiom Space(アクシオム・スペース)の商用ミッションで国際宇宙ステーション(ISS)への旅行に参加するチャンスを競う。全8話のコンテストシリーズとなる。優勝者は、AxiomがAX-1に続いて完全に民間の宇宙旅行者グループをISSに輸送する2回目のミッションとなるAX-2のクルーに加わる。AX-1は早ければ2022年1月に実施される予定だ。

AxiomとNASAは、2021年5月初めに行われたプレスブリーフィングでAX-1について詳しい説明を行った。このミッションは8日間にわたり、4人の有料顧客を軌道上の科学ステーションに連れて行き、短期間滞在するという。この特典のためにNASAに支払われる価格は169万ドル(約1億8000万円、この中にAxiomが輸送サービスによって提供する現物支援は含まれていない)となっている。

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AxiomはAX-1では、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)とCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船を使用して、民間宇宙飛行士の顧客をISSに輸送する予定だ。「Who Wants to Be an Astronaut?」シリーズの最初のプレス資料では、優勝者を受け入れるAX-2ミッションに使用される宇宙船は明記されていないが、これまでに活動している唯一の完全な民間宇宙旅行会社であることから、このミッションにもSpaceXが採用されると考えるのが妥当だろう。

このリアリティ番組シリーズで行われる実際の選考プロセスについて、Discoveryは次のように説明している。

宇宙へ飛び立つ憧れの席を獲得するには何が必要なのか?そのプロセスは過酷であり、厳しい選考を通過するのは選ばれた数人だけです。このシリーズでは、宇宙飛行士に最も必要とされる資質を試すために、様々な過酷な課題に挑戦し、宇宙飛行や宇宙ステーションでの生活に必要な訓練を受ける候補者たちを追っていきます。

そして最終的には、専門家の審査員によって適性があると判断されたラッキーな候補者1名が、これまで経験したことのない冒険へのチケットを手にすることになります。このシリーズでは、離陸から再突入、そして帰還まで、重要な瞬間を記録していきます。

このコンテストは「ありふれた普通の人々」に公開されており、参加したい場合、応募フォームに30~60秒の短い動画を添付する必要がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Discovery国際宇宙ステーション民間宇宙飛行Axiom SpaceNASA

画像クレジット:NASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

民間商業宇宙ステーションの実現を目指すAxiom Spaceが約138億円を調達

近い将来の目標を最も高く掲げている新しい宇宙スタートアップ企業の1つが、その野望に向けた自信をシリーズBラウンドで投資家に示し、1億3000万ドル(約138億円)を調達した。

NASAが民間開発の宇宙ステーションモジュールを国際宇宙ステーションに取りつけるために選んだAxiom Space(アクシオン・スペース)は、C5 Capital(C5キャピタル)が主導した新たな資金調達について発表した。

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションで専門的な仕事に携わった実績を持つ宇宙の専門家を含むチームによって2016年に設立された。以来、大きな注目を集める発表を次々と行っている。今回の資金調達はその最新のものだ。同社は、既存の宇宙ステーションに初の民間による商業モジュールを取りつけることで、将来的には完全に民間所有の軌道上プラットフォームを独自に作り上げ、研究や宇宙旅行などに活用することを目指している。

Axiomは2021年1月、2022年1月にSpaceX(スペースX)のDragon宇宙船とFalcon 9ロケットを使って国際宇宙ステーション(ISS)に飛び立つことが予定されている人類初の民間宇宙飛行士について発表した

Axiomはこのミッションのサービスプロバイダーであり、民間宇宙飛行士の契約を仲介し、訓練とミッションのプロファイルを設定する。民間の個人で構成されたクルー(つまり、各国の政府によって選ばれ、訓練を受け、雇用された宇宙飛行士ではない)が宇宙ステーションに飛び立つのは、これが人類史上初めてのことになる。

同社はまた、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏と、ISSに乗り込む映画の一部を宇宙で撮影することについて話し合っている。さらに、宇宙ステーションへの旅を掛けて競い合うリアリティ番組も制作会社と企画中だ。

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Axiomは、民間の有人宇宙飛行と既存のインフラストラクチャや産業を結ぶ主要企業として注目を浴びており、NASAのような公共機関のパートナーと、急成長しつつある民間宇宙産業の「レール」、つまりSpaceXや同種の企業の両方をカバーしている。同社は他の民間企業のどこよりも長い間、この独自のチャンスに力を入れてきた。それを実現するために必要なすべての関係と社内の専門家を備えている。

今回の新たな多額の資本注入は、同社の雇用を支援するだけでなく、今後の民間宇宙ステーションモジュールや、最終的には宇宙ステーションそのものを建造する力を高めることにもつながる。ヒューストンを拠点とする同社は、2024年までにその宇宙ステーションモジュールをISSに接続することを目指しており、これまでに1億5000万ドル(約159億円)を調達している。

カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space資金調達民間宇宙飛行ISSNASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

民間による商用有人宇宙活動は思いのほか早く実現する

「宇宙で働く」という話を聞いたとき、SFの話をしているのだと感じたとしても無理はない。だが、地球の大気圏外で実際に働く人の数は、また人生の多くの時間を宇宙で過ごす人の数も、加速度的な割合で増え始めている。今はまだ人数がとても少ないので増加速度はゆっくりに感じられるが、間もなく目に見えてくるはずだ。人数を急速に増やすための計画も準備が整っている。

近々、これを中心的に牽引することになる企業は、宇宙ステーションでの民間向けサービスを提供し、ゆくゆくはステーションの運営も行おうというAxiom Space(アクシオム・スペース)だ。Axiomは、国際宇宙ステーション(ISS)での経験や専門知識を持つ人たちによって設立され、経営されている。同社はすでに、民間クライアントのためにISS上でNASAの宇宙飛行士の手を借りた研究開発ミッションを実施している。2021年からは、民間宇宙飛行士のISSへの送り迎え全般を取り仕切る計画を立てており、新しい商用宇宙ステーションの建造計画もある。これは、いずれISSが引退した後に、その役割を引き継ぐことになっている。

Axiomの最高ビジネス責任者Amir Blachman(アミア・ブラックマン)氏は、先週開催されたTC Sessions:Spaceのパネルディスカッションに登壇した。このディスカッションには、他にもNASAの探査およびミッション計画責任者のNujoud Merancy(ニュジャウド・メランシー)氏、Sierra Nevada Corporation(シエラネバダ・コーポレーション)上級副社長であり元宇宙飛行士のJanet Kavandi(ジャネット・カバンディ)氏、Space Exploration Architecture(スペース・エクスプロレーション・アーキテクチャー、SEArch+)共同創設者Melodie Yashar(メロディー・ヤシャー)氏も登場した。ここでは、公共と民間の団体が、地球の外で、または遠く離れて、過ごす時間が長くなる(比較的近い)将来の準備がどれだけ進んでいるかが集中的に議論された。

「今です。もう数年前から今です」とブラックマン氏は、実際に宇宙で暮らす人の数がNASAの宇宙飛行士を超えるのはいつかという質問に答えた。「Axiomは、独自のミッションでISSにクルーを送り込みます。同時に新しい商用宇宙ステーションを建造し、ISSが引退した後にその役割を引き継ぐ予定です。私たちの最初の有人ミッションは、今から12カ月後に予定している4人の宇宙飛行士の打ち上げです。この4人はすでに身体検査を行い、宇宙服の採寸を済ませています。またすでに、打ち上げを行う企業との医療とトレーニングのチームを統合を行いました。この4人は2021年に、別のクルーを2022年に、2023年に2人、2024年には4人を打ち上げ、その後は数を増やしていきます」。

バックマン氏とメランシー氏は、Axiomの将来の商用ステーションにも、NASAの将来の月面基地や月の軌道を巡り月ミッションの足場となるルナゲートウェイにも、自動化とロボットシステムが重要になると話していた。

「ISSは、人が常駐することを基本としています」とメランシー氏。「無人ステーションになることは想定していません。地上の管制官たちが実際にたくさんのオペレーションを行っていますが、ステーションの維持管理は人間が行う仕組みになっています。月の構造物やゲートウェイを計画する際には、そのような贅沢はいえません。ゲートウェイは、人がいるときだけ稼働します。月面基地に人が滞在するのも、次第に長くなりますが、最初は1週間程度です。しかしながら、人がいない間も、有用な科学調査や有用な探索が行える状態を維持しておかなければなりません。そこで、テレロボティクスや地上からのコマンドによる維持管理能力を持たせ、クルーが到着したときに、ハッチを開けて中に入ればすぐに仕事にかかれる環境になっているというのが理想です」。

「火星での、またそれ以前に月面での、そうした住居や重要インフラの建設においては、できる限り自立的に行うべきであり、またそのように考えで進めるべきだという想定の下で、私たちは作業を進めてきました」とヤシャー氏は続けた。「そのため私たちは基本的に、人を送り込む前の予備的ミッションの段階から、建設、材料、採掘、原料加工に至るほぼすべてのシステムと、私たちが目指している他のすべてのシステムが、多かれ少なかれ、できる限り自律的に行われることを期待してデザインしています」。

カバンディ氏も、現代の有人宇宙システムには大幅な自動化を導入すべきという点で、他のパネリストの考えに共鳴していた。それによって複雑性が増さないかとの私の質問に、彼女はむしろ反対の結果をもたらすと答えた。皮肉なようだが、宇宙の有人活動への道を拓くには、人の手をできるだけ減らすことが重要になるということだ。宇宙のインフラの運用と管理においてはなおさらだ。

「技術の進歩は、物事をより単純化する場合もあります」とカバンディ氏。「長年かけて私たちが能力を高めてきた過程で、たとえばコンピューターは、どんどん難しくなるのではなく、より簡単に使えるようになりました。目標は、クルーの拘束時間やクルーの維持管理の手間を削減して、どのようなミッションにおいても、研究やその他宇宙で本来行うべき仕事に専念できるようにすることです。インターフェイスを単純化するほど、自動化率は高まります。クルーは何か問題が起きたときだけ介入すればよくなります。しかし通常は物事が滞りなく進行し、クルーは何もしないで済むというのが理想のかたちです。そうなれば、本来宇宙で行うべき仕事に集中できる自由な時間が増えるのです」。

カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space民間宇宙飛行ISS

画像クレジット:Axiom Space

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(翻訳:金井哲夫)