プロジェクト管理の老舗Basecampは「社員の政治的意見表明禁止」で社員3分の1が退社

プロジェクト管理アプリのパイオニアであるBasecampではファウンダー、CEOのJason Fied(ジェイソン・フリード)氏による社員の政治的議論の禁止が大きな議論を巻き起こした。これをきっかけにBasecampの60名の社員の3分の1が持ち株の会社買取を受け入れて退社したという。退社の原因としてこの禁止令を上げるツイートが多数あった。

米国時間4月26日に、Basecampのジェイソン・フリード氏は社員が業務の場で社会的・政治的な意見を表明することを禁止することをブログで発表した。フリード氏は次のように書いている。

政治や社会一般に多少なりと関係する議論は、すぐに不愉快なものになる。ある方向の議論に参加しないことはその方向に反対したことになるとか、議論に参加すればしたでバッシングされるといったことが起きる(ような空気を作る)べきではない。

Basecampからの退職は会社に大きな影響を与えるはずだ。ツイートによればBasecampのデザイン部門の責任者、マーケティング部門の責任者、カスタマーサポート部門の責任者が全員退社するという。また同社のiOSチームも一斉に退職したらしい。退職社員の多くは長年同社に勤務していた。

 

Basecampでの政治活動禁止規則は、CoinbaseのCEOであるBrian Armsgrong(ブライアン・アームストロング)氏が2020年末に掲げた方針とほぼ同様だアームストロング氏は「特定の政治的主張や候補者の推薦」についての議論は、同社の本質的業務の遂行に悪影響があるとして禁止した。Coinbaseでは1200人の社員のうち60人前後がこの方針の変更を受けて退職した。Basecampにおける退職者の率はCoinbaseの場合よりはるかに高く、深刻なものだ。

Coinbaseと同様、Basecampは「新しい政治的的議論の禁止命令は差別的待遇を受けている社員を狙い撃ちにした箝口令だ」という強い批判を巻き起こした。

白人以外、また人種を問わずLGBTQである社員にとって何が「政治的」かという線引きは困難なものとなる。例えばBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)運動は、ある基準では政治的話題とみなされるかもしれないが、当事者である多くの社員にとっては極めて個人的かつ重要な問題だ。白人男性のエンジニアのトップが政治的議論禁止令に強く反対したのは偶然ではなく、職場に分断を持ち込むと考えたからだ。

Basecampの共同ファウンダーでCTOのDavid Heinemeier Hansson(デビッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏は、自らのブログ記事でフリード氏の禁止令を敷衍し「フォーラムやトピックでテーマの選択が適切かどうか疑問がある場合は公開する前に(我々に)質問してください」と述べている

Platformerによると、フリード氏の公開状は事情のすべてを語っていないという。Basecampの社員によれば「主要な問題は特定の候補を応援するかどうかではない。Basecamp自体のDEI(ダイバーシティーやインクルージョンの増進)活動へのコミットメントについての社内の評価の相違から緊張が生じた」としている。しかしフリード氏のブログでは「社員が主導していたあるDEI活動が解散させられることになったのが社内緊張の原因の1つとなったことが婉曲に触れられている。

しかしフリード氏は「我々はプロジェクト管理、チーム・コミュニケーション、メール活用アプリなどを開発、運営会社であり、社会活動を目的とする会社ではない」と書いている。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Basecamp

画像クレジット:Steve Bronstein / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook