ステーブルコインに1億3300万ドルの資金を調達したBasisが事業を泣く泣く断念し投資金を返還へ

18カ月前にニュージャージー州ホーボーケンに設立された暗号通貨のスタートアップが、供給を柔軟化して、価値を野放しにするのではなく、およそ1ドルを維持できるように見かけ上伸縮させる「ステーブルコイン」を提供するという話を、今年の初めに伝えた。この会社は、「投機目的ではなく、実際に使える新しいトークンを作る」という大志を抱いていた。

投資家たちは(すべてではないが)この考え方に惚れ込んだ。事実、8カ月前にBasisは、1億3300万ドル(約150億8800万円)の資金を手に入れた。投資を行ったのは、Bain Capital Ventures、GV、名うてのヘッジファンド・マネージャーStan Druckenmiller、元連邦準備制度理事Kevin Warsh、Lightspeed Venture Partners、Foundation Capital、Andreessen Horowitz、WingVC、NFX Ventures、Valor Capital、Zhenfund、Ceyuan、Sky9 Capital、Digital Currency Groupなどといった顔ぶれだ。

CEOのNader Al-Najiがプリンストン大学のクラスメイトだったLawrence Diao、Josh Chenと共に設立したこの会社は、本日(アメリカ現地時間12月14日)、事業を停止すると発表した。そしてBasisは、事業の推進に使用されなかった資金を、投資家たちに返却するという。

Al-Najiが、少し前にBasisのウェブサイトに投稿した説明によれば、彼らの技術的ロードマップとアメリカの証券法の規制との折り合いがつかなかったようだ。具体的には、散発的に入る規制の指導に、創業者たちも予想できない影響があったとAl-Najiは書いている。

そのひとつとしてBasisが即座に気がついたのは、「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」ということだ。さらに、「未登録証券という性質上、ボンドトークンとシェアトークンは規制対象となり、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を(Basisが)負う」という。

Al-Najiはこの状況の問題点をこう話している。「譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます」

結果的に、オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが不利に作用してBasisの安定性が低下する。そこが重要だと彼は言う。

いわゆるステーブルコインが単に実現不可能なものなのか、または価格を一定に保つことでアセットアプローチを行うという考え方そのものが間違っていたのか、Basisに起きた今回の事件からは判明されない。しかしこの夏、ステーブルコインの人気が高まったとは言え、いまだに実証されていない暗号通貨支払いアプリ技術の導入に、Basisが力を入れた理由はよくわかる。暗号通貨サービス企業Blockchainの研究主任Garrick Hilemanが、9月、Technology Reviewに話したところによると、2017年には準備中のステーブルコインはわずかに一握り程度だったものが、この秋には60に迫る勢いだという。

我々は、Basisに投資した一部の人たちに接触し、詳しい話を聞いた。その間、Basisは巨額の資金を獲得しながら、Al-Najiは、いつBasisが流通するのかわからないと正直に述べていたことは注目に値する。つまり彼は、Basisが守れない約束は口にしなかったということだ。少くとも、我々には直接言わなかった。

下は、投資家と支援者に向けた彼の手紙の全文だ。

18カ月前、私たちは、よりよい通貨システムを構築するという野心的な目標に向けて出発しました。それは、ハイパーインフレに強く、中央集権的支配を受けず、従来の通貨システムよりも安定的で頑強なものです。これが成功すれば、社会に多大な恩恵をもたらすと私たちは感じていました。そして、私たちはそれを行う絶好の立場にあると感じていました。

私たちは、安定的で非中央集権的な暗号通貨Basisを提案する白書を作成し、その構想の実現可能性を示しました。

Basisは、需要の変化に応じて売買したいというトレーダーに動機を与えることで安定します。この動機は、定期的に行われる「ボンド」トークンと「シェア」トークンのオンチェーン取り引きを通じて引き起こされます。Basisのエコシステムが発展するためには時間がかかるため、まずは私たち自身がトレーダーの役割を果たすことで、大きな資本を集める必要があると感じました。

そうして、私たちは白書でお伝えしたとおり、1億3300万ドルの資金を調達できました。これにより、さまざまな投資家をと関係を築き、事業の価値を高め、大きな安定化基金を構築して、システムの強化が可能になりました。そして私たちは、素晴らしく優秀な人材を集め、システムの立ち上げを目指して始動しました。

しかし残念なことに、私たちのシステムをアメリカの証券法の規制に準拠させようとしたとき、Basisの発行に重大な問題が起こりました。

規制の指導が時間をかけて少しずつ入るようになると、弊社の弁護士たちは、ボンドトークンもシェアトークンも有価証券ではないと認めざるを得ないとの合意に達しました(Basisには中央組織が存在しないため)。

未登録の証券という立場のため、ボンドトークンとシェアトークンは譲渡制限の対象となり、Intangible Labsと共に、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を課せられました。

譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます。

オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが災いしてBasisの安定性が損なわれ、利用者はBasisのそもそもの魅力を感じなくなります。さらに、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きに譲渡制限をかければ、私たちはBasisのエコシステムを構築する力を実質的に失います。

譲渡制限は発行後12カ月で失効するのが一般的ですが、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きは私たちの金融方針に従って続けるならば、譲渡制限と集中化したホワイトリストは、いつまでも必要となります。

私たちは、私たちの製品の魅力と競争力を保ちつつ、規制に準拠した形でローンチできる道をいくつも探りました。そのなかには、ボンドトークンとシェアトークンの金融的性質を抑えた機能を追加して、海外でローンチするというものや、中央集権的な安定したメカニズムでスタートするというものもありました。しかし、結局それらの代替案は、利用者にとっても投資家にとっても魅力が欠けるものであり、私たちのビジョンに矛盾し、事業を進める正当性にも欠けます。

そのようなわけで、大変に残念ながら、私たちは投資家のみなさまに資金をお返しする決断を下したことをお知らせしなければなりません。これは、まことに無念ですが、Basisの事業の中止を意味するものでもあります。

誰にとっても望まれない結果となりましたが、私たちは、承知の上で、規制環境が味方してくれるほうに、いちかばちかの掛けをしていました。この世話に絶対にはなりたくないと思っていたトークン販売契約の冒頭に資本金返却の条項を加えたのは、まさにそれが理由です。私たちが望んでいたシステムを立ち上げることはできませんでしたが、このような状況でも、少くとも正しいことができたことを投資家の皆様に感謝したいと思います。

最後に、私たちと、私たちの事業を支えてくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。私たちを信じてくれた、寛大なる支援者、パートナーのみなさま、私たちの目標のために集まってくれた素晴らしいチームのみんなに。みなさんは、世界を変えるチャンスを与えてくれました。また挑戦できる日を楽しみにしています。

それではまた。

CEO Nader Al-Naji

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

Intelがウェアラブル部門の従業員を大量解雇か

HANOVER, GERMANY - MARCH 14:  The Intel logo hangs over the company's stand at the 2016 CeBIT digital technology trade fair on the fair's opening day on March 14, 2016 in Hanover, Germany. The 2016 CeBIT will run from March 14-18.  (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

Intelの内情に詳しい情報源によれば、同社は今にもウェアラブル分野から撤退することを考えているようだ。

2014年、Intelはフィットネス・ウォッチの製造を手掛けるBasisを買収した。当時Basisの名前はあまり知られていなかったが、素晴らしいウェアラブル端末を製造する企業だった。IntelがBasisブランドを同社のNew Digital Group(NDG)の一員に加えたことを考えれば、この買収は大きなパズルの1ピースだったと言えるだろう。NDGは拡大するウェアラブル市場で大きな成果を残すことを目的に、当時設立されたばかりだった。この部門には半導体市場のライバルであるQualcommへの反撃の意味も込められている。

2015年6月、Intelは同じくウェアラブルのReconを買収している。Reconはサイクリングやスノーボード向けのヘッドアップディスプレイを開発する企業だ。Reconの共同創業者であるDan Eisenhardtが買収時に発表したコメントを以下に引用する。

IntelはReconにとって理想的なパートナーです。Brian Krzanichは、彼が2013年にIntel CEOに就任してすぐにウェアラブルに対する明確なコミットメントを打ち出してきました。今年1月に開催されたConsumer Electronics Showでのキーノートでも、彼はこのコミットメントを続けていくと再び断言しています。Brianと彼のチーム、そしてNew Technology Gropを率いるJosh Waldenは、私たちと同じビジョンを持ち、消費者向け、エンタープライズ向けそれぞれのマーケットにおけるスマートメガネのポテンシャルを見出しています。そして、今回の買収はそのビジョンを表したものなのです。

しかし、今年の夏には同社のウェアラブル戦略に亀裂が走ることになる。今年6月、Intel製ウェアラブル端末のBasis Peakに過熱の恐れがあるとして、Intelは同デバイスのリコールを発表した。同社の発表によれば、過熱の恐れがあるデバイスは全体の0.2%程だということだった。Intelはリコールへの対処として、デバイスの取り換えという選択肢を選ばなかった。デバイスの販売を全面的に停止したのだ。さらにIntelは、今年の終わりまでにPeakのソフトウェア・サポートを終了することも発表している(これにはクラウド・ストレージのサポートも含まれる)。

screen-shot-2015-05-19-at-5-29-49-am

これは明らかにIntelのウェアラブル戦略の挫折を表していた。結局、IntelがBasisの買収によって達成したことと言えば、Peakよりおしゃれでスーツに似合うTitaniumのリリースくらいだ。

そして現在、Intelの内情に詳しい情報源によれば、同社はこの分野への投資を大幅に削減することを検討中だという。もしくは、この分野から完全に撤退する可能性もある。これにより大勢のNGDのメンバーが解雇されることになる。今年4月にNGDを統合したNew Technologies Groupも同様だ。この件はウェアラブル端末部門に対するIntelの不快感の現れだと考えている者もいる。

すでに何人かの従業員には解雇通告がされており、彼らは今年の終わりまでにIntelを離れる予定だ。各メディアがこの件について報じており、その内容は今のところバラバラだ。しかし、そのすべてがNDGの大型解雇、そして部門の完全閉鎖の可能性を伝えている。

screen-shot-2016-11-19-at-6-27-36-am

この方針転換によってNDGのプロダクトが今後陽の目を浴びることもなくなるだろう。そのようなプロダクトには未発表のフィットネス・ウォッチ「Basis Ruby」も含まれる。少なくとも、Basis RubyはPeakの失敗で落ち込むIntelを支えてきたのかもしれない。

私たちはこの件に関してIntelに取材を試みている。彼らからコメントが得られればすぐにお伝えする予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

今年のCE Weekはウェアラブルだらけ

今もっとも騒々しいバズワードといえばウェアラブル(wearable, 着脱型)だ。それは、単にGoogle GlassやAppleの今度出るiWatchだけのことではない。企業は、大も小もこぞってこのトレンドに乗ろうとしているし、そのことはCE WeekのショウルームイベントShowStoppersを見ても明らかだ。

上のビデオでお分かりのように、その演し物は、スマートウォッチあり、骨伝導方式の音楽帽子、ウェアラブルでポータブルなビデオカメラ、ブルーライト(*)を利用する治療用眼鏡などなど、とても多彩だ。

まず訪ねたのがBasis、ここのスマートウォッチはそんじょそこらのスマートウォッチに比べてはるかに多種類のセンサを搭載している。また、バンドを交換可能にして、ファッション性も目指している。革製もあれば、カラフルなのもある。著名なアーチストの作品もある。Basisのストアが、ここにある。

次に足を止めたのが、Cynapsという特殊な帽子を作っているMaxVirtual。音源をBluetoothで受信し、その帽子に入力すると、骨伝導により音楽が脳に伝わる。ヘッドフォンをしなくても音楽を聴けるし、帽子だから日よけにもなる。すでに発売されていて、お値段は79ドルだ。

オーディオの次は、ビデオを忘れちゃいけない。Icon Cameraのブースへ行くと、いろいろなカメラと撮影機材がある。AirPro 2は、5mpから14mpまで、マイク内蔵で、ワンクリックで撮影が始まる。Adventurerは、カメラの移動スピードや、位置、高度、方角などの情報をファイルに記録する。ホームページはここだ。

もう一つ忘れてならないのは、Psioだ。Clockwork Orangeのような刺激も、場合によっては良い効果をもたらすという。Psioの眼鏡は、有害といわれるブルーライをを目に当てることによってストレスを緩和し集中力を高めバイオリズムを整える。十種類の“エクササイズ”が付いていて、お値段は399ドル99セントから

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))