音声フィットネスアプリ「BeatFit」が総額2億円を資金調達

写真:BeatFit CEO 本田雄一氏(右から3人目)、COO 宮崎学氏(右から2人目)、CPO 永田昌一氏(左から3人目)

フィットネストレーナーによる音声ガイドでトレーニングをサポートするアプリ「BeatFit」。プロのトレーナーが音声でコーチするこのアプリでは、筋トレやランニング、ウォーキング、ランニングマシンやインドアバイクなどのマシントレーニングにヨガ・瞑想、ストレッチなど、多様なジャンルのクラスを提供し、ジムやアウトドア、自宅など、独りで運動する際の力強い味方となっている。

このアプリを開発・運営するBeatFitは3月29日、シリーズAラウンドとして総額約2億円の資金調達実施を発表した。2019年1月末に行われた第三者割当増資の引受先は、既存株主のSGI Japanと新たにラウンドに参加した大和企業投資。今回は2018年9月のシードラウンドに続く調達で、2018年1月の創業からの累計調達額は約3億円となる。

音声コーチでトレーニングが継続できるアプリ

BeatFitの特徴は「音声」ガイドのみでトレーニングが進められること。詳しい内容については以前の記事でも紹介しているので、ぜひご覧いただきたいが、動画メインのコンテンツでは画面を確かめながら運動することになりがちなところを、トレーナーが横について励ましながらトレーニングしているのに近い感覚になり、運動に集中できる。

さらに最近のバージョンでは、トレーニング前に運動の内容を短い動画で「チラ見」できるようにソフトウェアがアップデートされ、動きをチェックすることも可能になっている。

アプリを運営するBeatFit代表取締役CEOの本田雄一氏は「創業以来、音声でフィットネスのコンテンツを提供することに集中してきたが、市場もよい反応だ。2019年はさらにこれを推し進め、数万人から数十万人規模のユーザーを狙っていく」と話している。

代表取締役COOの宮崎学氏によれば、リリース当初は運動好き、トレーニング好きで激しいトレーニングを求めるユーザーの利用が多いのではないかと予想していたそうだが、実際には「女性ユーザーの割合が約7割と多く、運動強度も低めのクラスが人気だった」とのこと。ボディメイクだけでなく、運動不足解消やストレス軽減など、幅広い目的で利用されており、ダイエットや質の良い睡眠につながるメニューは特に人気が高いという。

本田氏も「日本ではゼロから運動習慣をつけたい人が『音声コーチがあるから続けられる』と利用してくれている。より多くの層へユーザーを広げたい」という。

2018年4月にベータ版、9月に正式版アプリをリリースしたBeatFitは、リリース以来、トレーナー14人を採用し、掲載クラス数は300を超えた。各クラスは定額制でいつでも、いくらでも利用可能。月額980円と有料ではあるが、順調に有料会員数を増やしているという。

パーソナライズ機能追加と提携で利用者拡大目指す

宮崎氏は、今回の調達の目的をアプリの機能強化とコンテンツ強化に充てるため、と話している。機能面では、AIを活用してアプリにパーソナライズ機能を追加し、レコメンドコンテンツの表示ができるようにしたい、とのことだ。

「アプリをしばらく使ってみて、『もう少し運動強度の強いトレーニングにトライしたい』『次にどんなトレーニングを取り入れればいいだろう』となったときに、現状のジャンルから探すメニューだと面倒なので、オススメのトレーニングを表示できるようにしたい」(宮崎氏)

代表取締役CPO(Chief Product Officer)の永田昌一氏も、米国と日本とのフィットネス環境の違いを引き合いに「自分にフィットしたトレーニング探しが日本では難しい」と説明。その人に合ったトレーニングクラスを、クラスの再生履歴(途中でやめてしまったか、最後までやれたか、といった行動履歴)やクラスの属性(ジャンル、強度などプロパティ)をもとにオススメを出す機能を開発する、と話している。初めて利用する人にも、初回に利用目的や普段の運動状況などをアンケートして、クラスを提案していく。

コンテンツについては著名人を採用したトレーニングを取り入れるなどの施策で、競争力強化を図るとしている。

またBeatFitでは、資金調達発表と同時にフィットネスクラブなどを運営するルネサンスとの事業提携開始も発表している。提携により、ルネサンスの運営するジム内でのプロモーションにも取り組んでいく。

「ルネサンスは入館システムやユーザー個々の接客の好みに合わせたパーソナライズなどでは、デジタル化やテクノロジーへの理解が進んだ企業。一方で、スタッフ不足に悩みがあり、セルフトレーニングを補える当社のメニューには期待されている。短時間でもしっかりトレーニングする層、若年層を取り込み、長期継続を促したい思惑もある」(宮崎氏)

本田氏も「ハウツーコンテンツや動画は多いが、分からなければ続かない。BeatFitなら『寄り添って一緒にトレーニングしてくれる』と評価されている」と

宮崎氏は「トレーニングをする場があることでアプリの解約防止に、トレーナーコンテンツがあることでジムの解約防止につながる」と提携で期待される効果を説明する。また法人営業に力を入れるルネサンスの営業力にも注目しているという。

将来的にはルネサンスの会員のデモグラフィック属性と、アプリ利用状況を踏まえた行動データとの掛け合わせにより、さらに開発を進めることも検討している、ということだった。

提携によるアプリの販売促進は、まずルネサンスの運営する関東20店舗でスタート。全国展開も予定しているという。

また、生命保険会社やほかのジムなど、提携企業はさらに加えていきたいと宮崎氏は述べている。

近年は「健康経営」に取り組む企業も増え、各社からもこれを支援するサービスが出ているが、本田氏は「健康診断結果から情報管理・コメントまでのサービスはあるが、続けて支援するサービスを組み込むところまでBeatFitでは考えている」と話す。

宮崎氏も「年に一度の診断や単発の取り組みではなく、本当に効果を上げるには日常化がカギ」と話す。BeatFitについては「ユーザーの声を聞いていると、ダイエットや睡眠の質を上げるなどで効果を現しており、カスタマーサクセスを実現してきている」といい、これまでの展開に自信を見せる。

「我々のサービスの価値は『やる気になっている人がトレーニングを継続できること』に加えて、『やる気がなかった人の行動を変えること』。これまでのアプリ提供でデータが増えてきたので、これを実証してビジネスへ取り入れたい」(宮崎氏)

さらに同社では、大学などの学術機関や医療機関からアドバイザーを招いて、共同研究の推進も予定している。

「独りで」から「みんなで」トレーニングできるアプリへ

独りでトレーニングができるアプリとして開発されたBeatFitは、今後どのようなアプリに進化していくのだろうか。宮崎氏は「現在はパーソナライズへの開発が始まっているところ。2019年後半にはさらにモチベーションを維持する機能、コミュニティ機能などを追加したい」と話している。

永田氏も「開発から1年、個人がトレーニングやケアを楽しめるように作ってきた。これからは『誰かと/みんなで』楽しんだり、がんばったりできるような機能を強化して、オープンなアプリにしていく」と述べる。

具体的には、目標をコミュニティで共有して励まし合う機能や、心拍計測などを同時に行うライブ機能による同時体験、ゲーミフィケーションの取り入れなどが検討されているそうだ。

宮崎氏は「僕たちが目指しているのは、運動をさせよう、ということではなく、『世界から不健康をなくす』ということ。世の中のすべての人が肉体的にも、精神的にも健康に暮らせるようにしたい。また、単に運動、健康、ケアを手がけるのではなく、テクノロジーを使ってそれを実現するのがミッションだ。創業から1年経ち、アプリを提供してきてそれがよりクリアになった」という。

世界的にもヘルスケア関連のアプリ市場は、ゲーム以外にもアプリ販売が伸びている中でひときわ大きく成長している分野だ。

米国ではフィットネスバイクの販売とバイク向け中心のクラス配信を行うユニコーン企業・Pelotonが2018年、8億ドルを売り上げたとみられている。またメディテーション・睡眠コンテンツ配信アプリのCalmも2017年時点で1億ドルを売り上げている。

同じく米国のAaptivはBeatFitと同じくオーディオ特化型アプリでフィットネスクラスを配信するスタートアップ。20万人以上の有料会員を抱え、ディズニー、ワーナー、BOSEなどと提携しており、2018年6月にはAmazonやディズニーから2200万ドルを調達した。時価総額は2億ドル以上と推定される。

本田氏は、BeatFitの海外展開についても視野に入れている、として「(ローカライズなどの)ハードルはそれほど高くない。アジアを皮切りに海外へも打って出たい」と語っていた。

筋トレやランニングなどの“独りフィットネス”をプロトレーナーが音声でサポートする「BeatFit」

最近、都市部を中心に24時間営業のジムが増えている。マシン特化型で、セルフサービスでトレーニングを行うため、比較的低価格で、いつでも好きなときに利用できるのが特徴だ。ただ「いつでもできる」「自分でできる」というのは反面、自らモチベーションを上げて、やる気をコントロールする必要があるのも確か。これは24時間ジムに限ったことではなくて、ランニングやウォーキングなどでも同じことだ。

ともすれば、くじけやすく怠けがちな私たちの心を励ますように、トレーニングの管理やフィットネスの支援をする、さまざまなアプリが誕生している。「BeatFit」もそうしたアプリのひとつ。ランニングや筋トレなど、1人で行うフィットネスをプロのトレーナーによる音声ガイドでサポートするというものだ。

トレーナーの音声ガイドに加えて、BeatFitでは、トレーニングに合ったノリのいい音楽も流れる。4月にベータ版が登場したBeatFitは、アウトドアランニング、ランニングマシン、インドアバイク、筋力トレーニング、ストレッチといったジャンルで、運動レベル別・時間別にコンテンツを配信。レベルは初心者から上級者まで幅広く、運動時間も6分から60分まで選ぶことが可能だ。アプリは最初の1カ月は無料、その後は月額980円の定額で、全コンテンツを利用できる。

現在BeatFitでは、120を超えるクラス(トレーニングコンテンツ)を配信。9月1日には「トレーニングログ機能」「お気に入り機能」「フィルター機能」を追加し、またジャンルに「ヨガ・瞑想」を加えて、正式版としてリリースした。主に24時間ジムを利用するユーザーを中心に利用されており、アプリの利用をInstagramやTwitterなどに投稿する「熱量のあるユーザー」も増えているという。

トレーニングを長く続けるための購読型アプリ

アプリを運営するBeatFitは2018年1月の設立。創業者であるCEOの本田雄一氏、CPOの永田昌一氏、COOの宮崎学氏の3人が共同で代表取締役を務める。3人がBeatFitの着想を得たのは2017年12月のことだ。それまではフィットネスについて別々のアイデアを持ち、議論も白熱したというが、BeatFitで構想が一致してからは、スピーディーに起業が決まり、開発がスタートしたという。

CEOの本田氏は、福岡で一度起業した後、2015年から2017年にかけてアメリカへ留学。アメリカのフィットネス文化に触れ、日本でもこのジャンルは伸びると感じたが「ジャンルに、はやり廃りがある」ことに懸念があったという。そこで「プラットフォームとしてコンテンツを提供する形にすれば、流行に左右されないサービスができる」と考えたそうだ。

「もともとフィットネスおたくだった」という本田氏は、パーソナルトレーナーを付けることで「体が変わったことを実感した」という。「でも週2回で数万円から数十万円の費用がかかるトレーナーは、高額すぎてサステナブルでない。これを継続させるためにはどうすればいいか、ということを考えていた」(本田氏)

プロダクトのデザイン・開発を担当する永田氏も、本田氏と同時期にアメリカへ留学している。留学中、高齢者向けVRシステムの開発を手がける中で「お金があれば施設へ入ることはできるが、そこで過ごす人が必ずしも幸せでないのでは、と感じ、健康寿命について考えた」という。

また、永田氏は留学中に10Kgほど太り、帰ってきてからトレーニングを始めたが、継続して運動することが難しかったそうだ。ところが「トレーナーを付けてみたら全然違った」という。「2時間かけてジムにいて運動していたことが、トレーナーを付けることで30分で効率よくできる。トレーナーの重要さが分かった」(永田氏)

COOの宮崎氏は、電通からSpiral Venturesへ移り、プリンシパルとしてシンガポールに在住。その後、スパークスグループで未来創生ファンドの運用に携わった。スパークスでは、リハビリ系ロボットへの投資なども行っていた宮崎氏。投資先への助言の合間に、医師から聞いた「ロボットなどの機器はある。だがリハビリを続けるためのモチベーションを保つ仕組みがない」という言葉が印象深かった、と話している。

宮崎氏は「以前から、アメリカやシンガポールなど医療保障が十分でない国では、健康習慣への関心が強かったが、近年は日本でも24時間営業のフィットネスジムが増え、少子化時代を見据えた医療費問題などもあって健康意識が高まっている。またApple WatchやFitbitなどのウェアラブル端末も普及した」と日本のフィットネス市場を分析する。

その一方「パーソナルトレーナーについては、RIZAPのCMが話題になるなど、存在は知られるようになったが、いざ依頼するとなると金額が高いため、短期間の利用で終わってしまう人が多い」と宮崎氏。「継続して運動を続けるためには、アプリを通じて、低価格でトレーニングのクラスをサブスクリプション(購読)型で受けられるのは理にかなっている」と話す。

本田氏も「サブスクリプション型はフィットネスジムと構造が似ている。1回通うのも100回通うのも同じ額なら、多く通おうと考えるものだ。お金を払うから行く、続けられる、というスタイルはヘルスケアと相性が良い」と述べる。

こだわり抜いた音声コンテンツによるガイド

BeatFitでは「音声」ガイドのみで、トレーニングが進められる点がキモとなっている。世の中を見ると、YouTubeを始め、アプリでも、動画でトレーニング内容が見られるものが多い。そうした中で、あえて音声にこだわる理由を宮崎氏に聞いた。

「確かにビデオコンテンツは多いし、動きをどうするかを確認するには有効だ。でも『じゃあトレーニング中に動画を確認しながら運動するか?』と言われたら、どうだろう。BeatFitでは運動しながら聞く、ということにこだわって『聞くだけで分かるコンテンツづくり』に注力している」(宮崎氏)

確かに私も、BeatFitでいくつかのクラスを試してみて、ストレッチでどこの筋を意識すればいいのか、足や手の形や位置はどうすればいいのか、といった点をトレーナーが声できめ細かく指示してくれるので、気持ちよく運動できるな、という印象を持った。ただ、例えばヨガのポーズなど、自分が一度も見たこともやったこともない動きを、音声の指示だけで正しくやるのは、さすがに難しいのではないかと感じた。

こうした分かりにくい部分については、近日中に、要所要所を短い動画で事前にチェックしてからトレーニングできるように、機能とコンテンツを追加するとのことだった。開発中のバージョンを見せてもらったところ、音声ガイドを一時停止して、動画で動きを確認してからまた元のトレーニングに戻る、といったことも可能になるようだ。

だが、あくまで「動画はサブで、メインは音声」とのこと。その背景には「音声ベースだと安く、大量に、高品質なコンテンツが提供できる」側面もあるという。「動画ではちょっと間違えた、というときにうまく編集することが難しく、一から撮り直しになってしまう。音声のみなら、簡単に編集できるので多くのコンテンツが供給できる」(本田氏)

BeatFitでは、オフィスに録音ブースとトレーニングができる空間を備えた、自社スタジオを構えている。本田氏は「自社スタジオがあることで、たくさんのクラスを用意することができ、更新も頻繁に行える。結果としてユーザーがいろいろなトレーニングを選べて、飽きずに続けられる」と話す。

BeatFitのコンテンツにはもうひとつ特徴がある。トレーナーの音声ガイドの後ろでBGMとして流れる音楽だ。洋楽ポップスやロック、ヒップホップなどのヒット曲をふんだんに使い、リズムに合わせて楽しくトレーニングができるようになっている。

「音楽にトレーナーの声を掛け合わせ、DJプレイに近いような、高度なコンテンツづくりを行っている。こうした加工をともなうコンテンツでは、音楽の権利処理のハードルが高い。そこをきちんと押さえている点も我々のアドバンスだ」(宮崎氏)

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同社は9月3日、シードラウンドで総額1億200万円の資金調達実施を発表した。資金のうち、8200万円はJ-KISS型新株予約権方式により、SIG Global Japan Fund、MTパートナーズ、谷家衛氏、宗清晶氏、Asia Venture Group、ほか個人投資家から調達。また日本政策金融公庫から2000万円の融資を受けている。

資金調達を受けて、BeatFitでは、よりよいコンテンツづくりとソフトウェアの改良を目指す。また、健康増進への取り組みを保険料に反映する、健康増進型の保険を導入している生命保険会社や、フィットネスジムなど、法人とのアライアンスも進めたいとしている。さらにフィットネスマシンやウェアラブル端末との連携、AIスピーカーによるサジェスチョンなどにも取り組んでいく構えだ。

本田氏は「BeatFitは、パーソナルトレーナーの市場を食いに行くものではなく、共存できると考えている」と話している。「費用面で頻繁にはトレーナーが付けられない、という方が、合間で自習的に使ってもらうことで、トレーニングを継続して行うことができる。フィットネスジムでも、インストラクターがいないときや、グループレッスンの待ち時間などに活用してもらえれば」(本田氏)