缶バッジをスマホで読み取れば独自コンテンツにアクセスできる「DDDisc」——人気ゲームの特典に続々採用

Beatrobo代表取締役CEOの浅枝大志氏

Beatrobo代表取締役CEOの浅枝大志氏

スマートフォンのイヤフォンジャックに差し込むことで、様々なエンターテインメントコンテンツにアクセスできるガジェット「PlugAir」。この製品を開発してきたBeatroboが次に用意していたのは「缶バッジ」だった。

同社が12月8日にリリースした缶バッジ型ガジェットの「DDDisc」は、リアルな缶バッジの一部にBeatroboが独自開発した「D3コード」と呼ぶ認識コードを印刷したもの。SafariやChromeといったウェブブラウザからスマートフォンのカメラを起動して画像を撮影。サーバ上でコードを認識することで、ユーザーに対して画像や動画、さらにはシリアルコードの発行といったさまざまなコンテンツの提供ができる。D3コードはあくまでIDだけを保持しているもので、サーバ側でIDごとのコンテンツ管理を行っている。

それぞれユニークなコードが印刷された「DDDisc」

それぞれユニークなコードが印刷された「DDDisc」

コードはバッジ1つ1つでユニークなものとなっており、最大で「10の18乗(100京)まで発行できる」(Beatrobo代表取締役CEOの浅枝大志氏)という。PlugAirでは専用のアプリが必要だったが、DDDiscはカメラとブラウザ(SafariもしくはChrome)さえそなえていれば、どんなスマートフォンでも利用ができるのが強みだ。Beatroboでは現在、DDDiscについての特許を出願中だという。

ブラウザでの認証は現在DDDiscのサイトにアクセスする必要があるが、認証用のカメラ起動ボタンはコードを張れば各種ウェブサイトに埋め込み可能。そのためキャンペーンでDDDiscを利用する企業が、自社のコーポレートサイトやキャンペーンサイトに誘導し、そこでカメラを起動させるといった使い方ができる。

すでにセガゲームスの人気タイトル「龍が如く6」の古本市場オリジナル特典への採用が決定している(オリジナルの壁紙がダウンロードできる)ほか、スクウェア・エニックスの「サガ スカーレット グレイス」についても古本市場オリジナル特典への採用が決まった。今回の特典ではDDDiscの認証を行うことでゲーム内で利用できるシリアルコードが発行される。

特典に採用されたDDDisc。なお写真のコードは取材用のものであり、無効化されております

特典に採用されたDDDisc。なおこのDDDiscは撮影用のため、コードは無効化されている

ではこれはQRコードと何が違うの? という疑問が出るかも知れない。QRコードであれば読み取り用にリーダーアプリが必要になるし、キャンペーンでユニークなコードを印刷し、配布するのは面倒なこともある。さらにコードごとにコンテンツの再生回数を制限するといったセキュアな運用は難しい。こういった課題を解決できるのがDDDiscだと浅枝氏は語る。こういったバックグラウンドの処理について浅枝氏は「PlugAirでコンテンツ管理の仕組みを作ってきたBeatroboだからできたもの」(浅枝氏)だという。さらにデザイン面での強みもあると浅枝氏は語る。DDDiscは缶バッジの外周にさえコードを印刷していればいいので、正方形、かつある程度の面積を必要とするQRコードに比較して自由度の高いデザインを入れることができるそうだ。

誕生のきっかけはiPhone 7

Beatroboがこれまで提供してきたPlugAirは、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿入するタイプのガジェットだ。だがiPhone7ではイヤフォンジャックの採用がなくなった。付属の変換ケーブルを利用すれば継続してPlugAirが使えるのは確認できたが、新たなプロダクトの必要性に迫られたという。

「PlugAirについてもよりセキュアな製品などの開発を続けていたが、その一方でイヤフォンジャックに頼らないプロダクトを作らないといけないと思った。PlugAirのライバルはQRコードだと言われることが多かった。PlugAirは(個別にIDを管理しており)セキュリティは強いが、精密機器であることから製造コストがかかる。そういった強みと弱みを考えた中でたどり着いたのが缶バッジ。モノとして分かりやすく、コストも高くない」(浅枝氏)

PlugAirと比較しても安価な価格設定(1万個発注で単価198円)のため、キャンペーンの販促グッズのようにバラマキでの利用もしやすいとしている。すでにエンタメや音楽フェス、アパレルブランドなどから引き合いもあるという。同社では2017年中にコンサートやスポーツなどのオフィシャルグッズ、ゲームや雑誌、CD等の付録などを中心に年間50万個の販売を目指すとしている。

音楽業界に入り込むBeatroboの「PlugAir」が今度はTMNとタッグ

4月にローソンHMV エンタテイメントなどから110万ドルを調達したBeatrobo。調達の際にも紹介したのだけれども、彼らが手がけているイヤホンプラグ型マルチデバイス「PlugAir」は、スマートフォンのイヤホンジャックに挿入して専用アプリを立ち上げることで、コンテンツのダウンロードや視聴などができるというものだ。

スタートアップのハードウェアながら、すでに米国の人気バンドLinkin Parkがファンクラブ向けの特典として採用しているほか、Universal Musicやアミューズ所属のアーティストの楽曲販売、ツアーグッズとして提供された実績がある。そんなPlugAirが今度はTM NETWORKの先行チケットの購入特典として採用された。

「TM NETWORK 30th WINTER TOUR 2014」の先行チケットをアーティストのファンクラブで購入(抽選)すると、専用のPlugAirを特典として受け取ることができる。これをスマートフォンのイヤホンジャックに差し込めば、オリジナルのオンラインコンテンツをダウンロードできる。

Beatrobo CEOの浅枝大志氏は調達の際にも「今後、より多くのアーティストとの取り組みを進める」と話していたけれども、正直音楽業界とのアライアンスを手がけているスタートアップはそう多くはいない。あくまで提携先が1つ増えただけと見ることができるかも知れないけれども、Beatroboにはガンガンこの分野を切り開いていって欲しい(もちろんPlugAirは音楽に特化しているワケではないらしいので、他の分野も、だ)。


BeatroboがローソンHMVエンタテイメントなどから110万ドルを調達–「PlugAir」事業を加速

Beatroboは4月21日、ローソンHMVエンタテイメント(LHE)と Genuine Startupsから110万ドルの資金調達を実施したことを明らかにした。米国デラウェア州に登記するBeatroboだが、1月に100%子会社となる日本法人を設立。まもなく日本オフィスを代々木に移転、拡張する。

同社では、最初のプロダクトであるソーシャル音楽共有サービス「Beatrobo」に加えて、スマートフォンのイヤホンジャックにデバイスを挿して音楽を再生したり、デジタルコンテンツを配信できるデバイス「PlugAir」を開発している。今回調達した資金をもとに、PlugAirの開発や人員強化を進めるとしている。

LHEといえば、エンターテインメントやイベントのチケット販売、CDやDVDのオンライン販売などを手がけている。同社に対しては、今後国内でのPlugAirの製造に関するライセンスを提供することも予定する。これによって製造コストなどの課題をクリアして、PlugAirの普及を狙う。PlugAirは、これまでに米ロックバンドLINKIN PARKのファンクラブ向けグッズとして提供されたほか、Universal Musicやアミューズ所属のアーティストの楽曲販売、ツアーグッズとして提供された実績がある。今後はこういった事例も増やしていくという。

デバイスとしてのPlugAirの動作は、専用アプリを立ち上げてスマートフォンのイヤホンジャックに指すことで固有のIDを認識。そのIDに合わせてクラウド上の音楽や動画をアプリ上にダウンロードしたり、ストリーミング再生したりできるというものになる。アプリへのプッシュ通知にも対応しており、定期的なコンテンツ配信も実現するという。端末には電池を搭載しておらず、スマートフォンから発せられる音波を電力に変えることで給電している。

「IDのない世界」目指す

今回の調達について語ってくれたBeatrobo CEOの浅枝大志氏の発言の中で心に残ったのは、PlugAirが「ID、パスワードの概念を取り払う」という考えのもとに作られたサービスだということだった。

実はPlugAirには、「親」と「子」の関係も設定できる。つまり最初にアクティブにした端末を「親」、それ以外を「子」とすることで、PlugAirの持ち主(親)にはフルアルバムの音楽ファイルを、その友人(子)には再生期間や楽曲数を制限した試聴版の音楽ファイルをそれぞれ提供するといったこともできるのだという。

このような形でIDやパスワードを入力せずともユーザーを特定できる仕組みを作りたいと浅枝氏は語ってくれた。「友人にPlugAirを紹介して、その場で手渡して使うときに、(IDなどを取得、入力せさる必要のない)手軽な価値を提供する」(浅枝氏)。