Bentley Motorsがテクノロジーとコーチビルドを融合させたContinental GT Speed 2022年モデルを発表、贅沢な時間の歪みを味わう

Bentley Motors(ベントレー・モーターズ)は、旧世界と現代を股にかけているようだ。100年以上にわたり、自動車のラグジュアリーとパフォーマンスの最先端を走るこの自動車メーカーは、長年、時代の変化に対応しつつも、クラシックなフィーリングのコーチビルディングには、常にその精神を宿している。

自動車製造におけるこのようなロマンティックな考え方は、現代のテクノロジーの進歩や高級志向の消費者の需要とはほとんど相いれないものかもしれない。

ベントレーが何かを心得ているとすれば、それはクラシカルな魅力にこだわり続けながら、時代にも歩調を合わせていることだろう。その最たる例が、Bentley Continental GT Speed(ベントレー・コンチネンタルGTスピード)2022年モデルだ。このパワフルな2ドアグランドツアラーは、現在、道を走るクルマの中でもひときは異彩を放っている。

基本概要

画像クレジット:Alex Kalogianni

ベントレー・コンチネンタルGTは、4ドアのBentley Continental Flying Spur(ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー)セダンの2ドアバージョンにあたる。多くの要素を共有しているものの、GTは大きな車体を小ぶりにしただけではなく、デザインや性能など他の要素で差別化を図っている。

GTの中核となるのは、6.0リッターのツインターボW12エンジンだ。この巨大なパワーユニットは、内燃機関が縮小(あるいは消滅)に向かう時代にあっては、異端の存在といえる。GTスピードを特徴づけるこのシステムからは、標準のContinental GT W12(コンチネンタルGT W12)を24HP(18kW)上回る650HP(485kW)のパワーと、最大664lb・ft(900Nm)のトルクが生み出され、デュアルクラッチ式の8速オートマチックギアボックスを介して出力される。

そして、強化されたシャシーシステムにより、そのパワーは4つのホイールを介して余すところなく伝達される。

「当社のシャシーエンジニアは、ドライバーがドライブダイナミクスコントロールを使ってドライブモードを制御し、真の意味での乗り心地とハンドリングの両立を実現するために、信じられないほど多くのテクノロジーを駆使していた」とベントレー・モーターズのプロダクトコミュニケーション部長であるMike Sayer(マイク・セイヤー)氏は、TechCrunchに対して述べる。そして「シャシー剛性の変化を可能にするために、3チャンバー・エアサスペンションを採用し、3つの異なるサスペンション剛性を実現している。スポーツモードでは、各エアサスペンションの1つのチャンバーを利用して、高いバネ剛性を確保し、コンフォートモードでは、ソレノイドバルブが3つのチャンバーを低圧で作動させ、ソフトなサスペンションを実現する。そしてさらに、48V電動アンチロールコントロールであるBentley Dynamic Ride(ベントレー・ダイナミック・ライド)が加わる」と同氏は説明する。

今回のGTスピードでは、電子制御リアディファレンシャルと後輪操舵をはじめとするいくつかの新しいテクノロジーがGTモデルとして初めて採用された。

電子制御デフは、スポーティな運転をする際、ターンイン時のバランスとコントロールを確保するために、リアアングルにトルクを配分するものだ。後輪操舵は、最初にフルサイズのラグジュアリー4ドアであるフライングスパーに採用され、回転半径を小さくするとともに、高速走行時の安定性を高めている。2ドアのGTスピードでは、セダンよりもはるかに積極的に適用され、シャープな旋回性に寄与している。

そうこういいながら、このGTは、総重量が5000ポンド(2273キログラム)を超えるにもかかわらず、最高時速208マイル(時速335キロメートル)で走行し、わずか3.5秒で時速60マイル(時速約97キロメートル)に到達するロケットスタートを実現している。これは、クルーズ船のような豪華な装備を持たないクルマでも達成するのが難しいことだ。

テクノロジーを散りばめるベントレー

画像クレジット:Alex Kalogianni

コンチネンタルGTスピードの内側には、ベントレーのクルマの特徴である丹念に作り込まれたインテリアが備わっている。

このクルマの組み立ては、自動化された作業もあるが、かなりの部分が手作業で行われており、ほぼすべての要素に熟練した職人の注意が払われている。インテリアには、プレミアムレザーや、バールウォールナットから自然に倒れた希少なレッドウッドまで、さまざまな種類の木製素材が使用されている。

シートやハンドルにはすべて手縫いのステッチが施され、メタルスイッチ類はダイヤモンドパターンのローレット加工が重厚さを醸し出している。

セイヤー氏は「主要なロータリーノブに使用されているローレット加工は、18カ月かけて開発され、ローレットのカット面の角度を正確に表現するためにアルゴリズムを作成した」と語り、細部にまでこだわっていることを強調する。緻密に作りこまれた壮麗なインテリアは、高度な最新テクノロジーの基で生み出され、しかもそれが見事に融合しているのだ。

画像クレジット:Alex Kalogianni

ダッシュボードの中央には12.3インチのタッチスクリーンがあり、最新の高級車を購入する人の期待に違わぬ機能を備えている。タッチスクリーンは、ナビゲーションやエンターテインメントを提供するとともに、いくつかの車両機能のインターフェイスでもある。ドライバーは、スロットルとステアリングの設定を好みに応じてカスタマイズしたり、クリアランスを取るためにサスペンションを上げたり、必要なときには詳細なドライバーズマニュアルにアクセスしたりすることができる。

また、タッチスクリーンに表示される情報の多くを反映するようにカスタマイズできる完全デジタル式のメータークラスターと組み合わせて使用することもできる。さらに、安全な夜間走行のために前方をハイライト表示する熱感知タイプのナイトビジョンのオプションも用意されている。これには歩行者認識機能も組み込まれており、夜間に人を検知した場合には、赤いボックスで強調表示される。

高解像度のスクリーンに配置されている特徴的なグラフィックは、職人技を感じさせる。

セイヤー氏は「メーター類のグラフィックは、物理的な部品と同じように細部にまでこだわってデザインした。それ以上に、複数のタッチスクリーンに頼らず、物理的な手触りのあるボタンやロータリーノブを残すことも、当社の理念に沿ったものだ」という。

それでも先進すぎるデザインが趣味に合わない場合は、スクリーンはパネル内に収納され、代わりに、時計、コンパス、温度計の3つのアナログメーターに置き換えることもできる。ちょっとした車内ガジェットシアターのようかもしれない。しかし、別の見方をすれば、ある意味で車内の将来性を確保しているともいえるだろう。美しさという点では、ディスプレイよりも車内の他の部分の方がはるかに古びるだろうし、それを目立たないように収納する方法は、このラグジュアリーグランドツアラーの持つ包容力ならではのものだ。

ユーザーエクスペリエンス

画像クレジット:Alex Kalogianni

GTスピードのハンドルを握ると、最初はきらびやかなクロームやポリッシュされた化粧板に目を奪われるが、エンジンをかけた瞬間からドライバーが中心に据えられていることがすぐにわかる。

ヘッドアップディスプレイや交通標識認識などのアシスト機能が状況の認識を助け、長距離走行時にはレーンキープアシストやアダプティブクルーズコントロールが負担を軽減してくれる。便利な機能だが、GTスピードが最も魅力を発揮するのはフル稼働したときだ。

W12エンジンは、その力強く堂々としたエキゾーストノートを後ろから鳴り響かせる。アクセルを踏み込むと、まるでGTスピードの系譜に連なる単発の戦闘機で加速しているような感覚と音に包まれる。しかし、古風さを思わせるのはここまでだ。それ以外の部分では古さとは程遠い。パワーの伝達はスムーズかつ力強く、加速の頭打ちを感じるためには制限のない高速道路を走る必要がある。

その点では、GTスピードはフライングスパーと同様に、蒸気機関車のような重厚な接地感がある。そのため、急なカーブを曲がるときには大きな戸惑いが生じる。しかし、信頼と勇気を持って走れば、GTスピードは驚くほどダイナミックな動きを見せる。

風の強い田舎道では、このクルマの良さが最大限に発揮される。クルマの大きさと重さはやはり明白だが、アクティブテクノロジーのおかげで、ベントレーは自信を持ってコーナーを回ることができる。しかし、状況の厳しさが増すと楽しさは萎んでいく。物理法則に逆らうようなエンジニアリングを駆使しても、クルマの重さをごまかすことはできない。そのような時には、もっと小さくて小回りの効くものに乗り換えようと心に決めることになる。

スポーツモードでもコンフォートモードでも、GTのデュアルクラッチ・トランスミッションのギアチェンジの速さはほとんどシームレスであり、アクティブなドライバーには欲しいだけのパワーを、クルージング中のドライバーにはより穏やかな感覚を与えてくれる。高速道路でも、街乗りでも、GTスピードは一切の妥協を感じさせず、27万4000ドル(約3150万円)を超える価格に見合う価値を披露してくれる。少なくとも、そう願いたいものだ。

ライバルたち

スポーティなラグジュアリークーペが不足しているからという訳ではなく、同じミッションをいかにユニークに遂行するかという点で、競合他社から見ると、GTスピードは独特の存在だ。このセグメントの大手であるBMW(ビー・エム・ダブリュー)やMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、ベントレーが醸し出す豪華さや高級感には遠く及ばず、同じようにダイナミックさでもやはり劣ってしまう。ハンドリングとパワーの面では、AMG S63 Coupe(メルセデスAMG S63クーペ)が17万3100ドル(約1990万円)からと比較的安い価格で近づいてきているが、同じ重量クラスとしては、コンチネンタルGTスピードの方が明らかに優れている。

本当の意味でのライバルといえば、そう遠くない従兄弟にあたるRolls-Royce Wraith(ロールス・ロイス・レイス)が最も近い存在だろう。レイスは、同じような高級車の血統と独自性に加えて、624HP(465kW)の6.6リッターV12という巨大なパワーユニットを誇る。この2ドアのグランドツアラーは、30万ドル(約3450万円)という同じく目が眩むような価格設定であり、加速や走行の滑らかさの面でGTスピードと同様の神業を成し遂げている。

何事にもいえることだが、ベントレーがこの新旧の融合をどのように続けていくのか、将来は不透明だ。過去の例からわかるように、ベントレーは先を見越した計画を立てている。

「まず、製品群をハイブリッド化する。すでにBentayga(ベンテイガ)とフライングスパーのハイブリッド車を発売しており、コンチネンタル・ファミリーもそれに続く予定だ。その後、2025年に最初のBEV(フルバッテリー電気自動車)を発売し、2030年までにベントレーを電気自動車のみのブランドにすることを目指す」とセイヤー氏は述べる。

今のところ、ベントレー・コンチネンタルGTスピードがある。このほとんど時代錯誤なパワーに溢れた高級車は、12気筒エンジンのビートを響かせて走りながら、このセグメントの標準を確立している。それは、変化の風にも柔軟に対応しながら、自分たちが最も得意とすることを粘り強く貫き通す、ベントレーの集大成だ。

画像クレジット:Alex Kalogianni

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

高級感とテクノロジーが両立したデザインを追求する自動車メーカーたち、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」開催

2021年の夏はモントレー、デトロイト、そして夏の終わりには英国オックスフォードで恒例のカーイベントが開催され、自動車コレクターが集結して高級車やビンテージカーを鑑賞し、オークションを楽しんだ。

2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で多くのカーイベントが中止。2021年は屋外に高級車を集めたイベントが復活し、7月の「Goodwood Festival of Speed(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード)」、8月の「Monterey Car Week(モントレー・カーウィーク)」「Woodward Dream Cruise(ウッドワード・ドリーム・クルーズ)」、そして9月上旬に開催された「Salon Privé(サロン・プリヴェ)」などのイベントでは、魅力的なクーペや派手なハイパーカーだけではなく、さまざまなクルマが展示された。

COVID-19の変異株「デルタ」の流行にもかかわらず集まった観客と、豪華な会場に並んだ自動車に対する彼らの反応は、ビンテージカー、そして未来の超高級車に対する抑えきれない興奮を反映したものだった。

Gooding & Company(グッディングアンドカンパニー)のオークション・スペシャリスト、Angus Dykman(アンガス・ダイクマン)氏は「現地で参加できるオークションの需要が高まっていました」「私たちは現地でのセールスに強い関心があり、ビジネスは活発です。皆がさまざまな自動車を応援してくれました」と話す。

カリフォルニア州ペブルビーチの「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2021」に出品されたPorsche 917(2021年8月15日)(画像クレジット: Getty Images、撮影:David Paul Morris / Bloomberg)

この屋外の展示には、新興自動車メーカーも歴史あるブランドも、未来を反映させた最新の自動車を顧客に提示する必要がある、という緊迫感があった。高級車メーカーにとって、8月のモントレーは、次世代モデルのデザインをアピールできる重要なイベントだ。Bentley(ベントレー)、Bugatti Automobiles(ブガッティ・オートモービルズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)などの老舗の自動車メーカーに加え、新規参入のRimac Automobili(リマックアウトモビリ)やLucid Group(ルシードグループ)もモントレーでの存在感のアピールに資金を投じた。

ビンテージカーでもコンテンポラリーカーでも、その一貫したテーマは新しい顧客を惹きつける見事なデザインである。

マイクロチップが不足し、車両数も限られている中、カーコレクターは生産開始前から新型車の予約を行っていた。各ブランドのトップもコレクターたちと交流を図り、ペブルビーチでは、Ford Motor(フォード・モーター)のJim Farley(ジム・ファーレイ)CEO、メルセデス・ベンツ米国プレジデントのDimitris Psillakis(ディミトリス・プシラキス)氏、Aston Martin(アストンマーティン)のTobias Moers(トビアス・モアーズ)CEO、Lamborghini(ランボルギーニ)のMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)CTOなど、少なくとも十数名の経営幹部が目撃された。

現地時間2021年8月13日(金)、米国カリフォルニア州カーメルで開催された「The Quail, A Motorsports Gathering(ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング)」で、ブガッティ・オートモービルズのSAS Bolideを鑑賞する参加者たち(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg via Getty Images)

モアーズ氏は、アストンが建設した大きなスタンドからビンテージカーショーを見下ろし「私たちのラグジュアリーカービジネスに関していえば、この場所が最適です」と話す。「ここでは、これまで会ったことのない新しい顧客に出会うことができます。私たちのブランドは、F1(フォーミュラワン)でかつてないほどの注目を集めています」。

同社は未来のレース仕様のアストンを展示。F1マシンを中心に、ValkyrieやValhallaなど、アストンの今後の方向性を示す指標となっている。

「これは私たちのメッセージです」とモアーズ氏。「2020年は、誰もがアストンは終わったと思っていたでしょう。そこにLawrence Stroll(ローレンス・ストロール)氏が乗り込んできて、多額の投資をしてくれました。私たちは復活し、お客様との関係はかつてなく強化されています」。英国で多くの地域がロックダウンされている中、同社はベントレー、フォード、Porsche(ポルシェ)から新しい部門長を採用した。

モアーズ氏自身もパンデミックの最中に新しいCEOとして就任しているが、同氏は北米の従業員、ディーラー、顧客と初めて顔合わせをした。

Mercedes-AMG(メルセデスAMG)出身のモアーズ氏は自信に満ちた経営者で、電動化の経験が自分の強みになると考えている。同氏は「アストンは超高級車を開発しており、その美しさは昔から有名でした。新しい技術を使えば、もうどこにも妥協する必要はありません」と語る。

ペブルビーチの観客を魅了することも重要だが、同氏はアストンの中国でのビジネス、そしてメルセデスのエンジニアリングをアストンの事業拡大にどのように利用するかという点にも注目している。

「中国では北米とは異なり、18歳~30代の若い顧客層に対応する必要があります。それから60代以上。その間の購買層は今のところ存在しません。中国のペースは信じられません。世界の富豪層の増加という点では、中国とアジアがトップだと思います」。

アストンにとっての未来とは、電動化と車内のユーザーエクスペリエンスの再考であり、これはメルセデス・ベンツの前世代の技術を採用するという過去の計画を破棄することを意味する。

「私たちは、メルセデスのインフォテイメント(情報とエンターテインメントを組み合わせた造語)やHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を使用しないと決めました。未来を見据えてHMIを構築するなら、もう少し魅力的なものが必要です」とモアーズ氏。同社はメルセデスのMBUXインフォテイメントを取り入れずに、ランボルギーニやApple(アップル)と仕事をしているイタリアのサプライヤー、ART(アート)と一緒に新しいインフォテイメントシステムを構築しているという。

アストンマーティンは、電動化という業界の要求に応えるため、メルセデスのV8エンジン技術を利用して効率化を図る計画だ。

パワー、情熱、テクノロジー

Audi skysphere concept(画像クレジット:Tamara Warren)

ペブルビーチでは、自動車メーカーの経営者たちの間で、コンプライアンス基準を満たすために新しい動力源を開発する一方で、顧客の自動車に対する情熱を維持し、最新の車内エクスペリエンスで新しい顧客を惹きつけるというテーマが浮上した。

1社でできることではない。オーダーメイドの小さな超高級車ブランドは、エンジンや電子プラットフォームの供給を大手自動車メーカーや親会社の投資に頼っている。また、開発には競争力のある人材が必要だ。その上で、これらの小さなブランドは、大企業とは異なる独自性を強く打ち出す必要がある。

ランボルギーニのレッジャーニCTOは次のように話す。「将来に向けて一年前から開発が続けられている最も重要で高価なものの1つが、電子プラットフォームと呼ばれるものです」「ユーザーが電子プラットフォームに触ることはできません。電子プラットフォームはまさしく自動車の神経系(nervous system)です。私たちはグループ内でこれを使おうとしています。そうすれば、従来の車両に使用されていたパーツの多くや、識別できなかったシステムやコンポーネントを使用することが可能になります」。

ランボルギーニはVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)の傘下にあり、ブガッティ、ベントレー、Audi(アウディ)、ポルシェなどの主要な競合車もフォルクスワーゲングループの企業である。

「グループで共有できるものは利用していますが、私たちは他とは違うことをしようとしています」とレッジャーニ氏。ランボルギーニはAmazon Alexaとのパートナーシップに着手した最初の自動車ブランドであり、顧客にAlexaが受け入れられたことで将来的な思考への扉が開かれたと話す。「『音』は、音声認識のフィルターを構成する手段です。未来を想像してみてください。トラブルが発生してランプが点灯しているときに、Alexaに『どうすればいいか教えて』と尋ねたとします。Alexaは、車を停め、サービスアシスタントを呼ぶようにと教えてくれます。そして人工知能が訓練されます」。同氏は、サウンドデザインと音声の新しい使い方を構築するためのデータ収集に取り組んでいるという。

しかし、目の肥えたランボルギーニの顧客には、高価なテクノロジーも時代遅れにならないような魅力的なデザインで魅せる必要がある。「デザインはランボルギーニを購入する1つ目の理由です」とレッジャーニ氏は話す。「しかし、従来のようにデザインが良ければそれでいい、というわけではありません。今や多くが、美学の中にエンジニアリングを統合したデザインになっています。車を構成する部品の1つ1つに機能性が求められます。そして空気力学と冷却の融合。PHEV(プラグインハイブリッドEV)の登場で、冷却系はますます複雑になりました。バッテリーマネジメントも今後ますます複雑になるでしょう。それらすべての要件を満足するクールなデザインが必要です」。

今という時代のテクノロジーとデザイン

モントレー・カーウィークに展示されたビンテージカーと比較すると、特にモータースポーツカーでは、空気力学と重量配分が常に車の設計原理を支配し、進歩を促してきたことがわかる。しかし、現代におけるテクノロジーとデザインとは、スピード、電動化、ADAS(先進運転支援システム)、コネクティビティなどが、時代を超越する洗練されたシステムに収められていることを意味する。レッジャーニ氏は「最も重要なポイントの1つは、必ず感動を呼び起こすデザインであることで、これは譲れない条件です」と話す。

未来をデザインするということは、その方向性を伝えることだ。急速に変化する世界で、高級車メーカーはそのペースに必死で追いつこうとしているが、これは非常に難しい課題である。モントレー・カーウィークに参加しなかったTesla(テスラ)は、同社のAIの発表をこの週に合わせて行った。テスラでさえも電動化を進化させようとしている。

モントレーで、完璧に手入れされ、限られた数しか生産されず、それゆえに数億円もの価値があるビンテージカーを運転することは魅惑的な体験だ。筆者は1957年式Mercedes-Benz 300 SLというエレガントなマニュアルトランスミッション(MT)オープンカーを太平洋沿いの道路で試乗し、(パンデミックにより入場料が高額な)この神聖な世界を少しだけ垣間見ることができた。

グッドウッド、ウッドワード、そして今週末に終了したサロン・プリヴェも同様に魅力的だったが、豪華な屋外イベントが終了した今、自動車業界は、輸送機関の未来に焦点を当てたショーに視線を移したようだ。

現地時間9月7日にミュンヘンで開幕したIAAモビリティ(旧フランクフルト・モーターショー)では、旧態依然の自動車ショーのイメージを一新しようとする自動車メーカーの姿勢が感じられ、より臨場感のある体験を楽しむことができる。展示されているEVのモデルやコンセプトの数々は、進化のスピードは金銭では予測できないものの1つであることを思い出させてくれる。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

モントレー・カーウィーク開催、未来のEVと高性能ハイブリッド車が注目を集める

現地時間8月15日(日曜日)に閉幕したMonterey Car Week(モントレー・カー・ウィーク)では、ペブルビーチにコンクール・デレガンスが戻ってきた。太平洋を望むペブルビーチ・ゴルフコースで開催され、2021年で70回目を迎えるこのショーでは、黒の1938年式メルセデス・ベンツ540K Autobahnkurierがベストショーの栄冠に輝いた。しかし、2021年目立ったのは、ビンテージカーではなく、EVハイパーカーや高性能ハイブリッド車である。

絵画のように美しいモントレー半島一帯で、自動車レース、展示、パレード、販売を中心としたさまざまな催しが一週間以上も開催されるモントレー・カーウィーク。このペブルビーチのイベントは年を追うごとに華やかになり、2020年は中止となったが、2021年は(新型コロナウイルスの蔓延が懸念されていたにもかかわらず)シャンパンが振る舞われた。

デルタ型変異ウイルスの懸念を受け、2021年8月初めにニューヨークモーターショーの中止が決定した際には、モントレー・カーウィークも中止になるのではないかという憶測が流れた。しかし、秋に向かって先行き不透明なパンデミック禍でもショーを行う必要があることから、カーウィークは事実上のショーとして開催された。

2021年8月15日、ペブルビーチで開催された「2021年ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」で、ベスト・オブ・ショーを受賞した1938年式メルセデス・ベンツ540K Autobahnkurier(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

コンクール・デレガンスまでの数日間、カーメルやモントレーの街は静かで人通りも少なく、走行しているビンテージカーも少ないように感じられた。駐車スペースでは、ランボルギーニやベントレー、フェラーリなどのモダンカーがスタンバイしていた。霧のような雨と低い気温にもかかわらず、ほとんどが屋外で行われたイベントでは、多くのゲストがマスクをつけたり外したりしていた。日曜日になると、大勢の観客がやってきて、コンクールは例年のような賑わいとなった。

メインイベントであるペブルビーチ・コンクール・デレガンスは、かつては戦前のレストアされたビンテージカーを対象としたイベントだったが、世代や嗜好の変化に伴い、会場のゴルフコース上には新車も登場するようになった。来場者の年齢層が若くなったことから、今では高性能なスポーツカーが数多く展示されている。

8月13日(金曜日)の夜に行われたGooding & Company(グッディングアンドカンパニー)のオークションでは、1995年式マクラーレンF1が2000万ドル(約22億円)という記録的な高値で落札された。一方、自動車メーカー各社は、高額なスーパーカーの限定モデルを、メディアやプライベートイベントに参加している上顧客に向けて、慌ただしく発表した。

Lamborghini(ランボルギーニ)のCTOであるMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏は「ペブルビーチは要です」と話す。「ペブルビーチのイベントは、車の美しさという側面で、人々が何を好んでいるかを教えてくれます」。

注目すべきは、現地時間8月11日(水曜日)、Audi(アウディ)が未来的なSkysphere conceptを展示したことだ。金曜日にはMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が、カリフォルニアスタイルの新しいコンバーチブルSLをプレビューしたが、このモデルは9月まで正式には発表されない。Aston Martin(アストンマーティン)は、ペブルビーチのゴルフコースを見下ろす広々としたスタンドで「Valkyrie」と「Valhalla」のモデルを展示したが、モデルを間近で見ることができたのはメディアと十分に吟味された顧客のみだった。

Rimac Automobili(リマックアウトモビリ)とLucid Group(ルシードグループ)の両社は、最も高価なEVパワートレインに投資する余裕のある潜在顧客と接触するためにペブルビーチに登場。Rimacは台座の上に圧倒的なスピードを誇るスポーツカー「Nevera」をデビューさせた。2021年のモントレー・カーウィークは、モダンカーと新しいプレイヤーが、周りの古い車を追い抜いてしまったように見えた。

超高級車に対する1年越しの鬱積した需要の高まりの中で、モントレーやカーメル周辺のレーストラック、道路は、パンデミック禍で購入したすべての車を披露できる最高の舞台だ。オークション価格が高騰し、7桁台(日本円では1億円以上)のスポーツカーが完売する中、ハイパフォーマンスカーへの情熱が衰えていないことが明らかになった。今回、ペブルビーチでお披露目された新車には、高価格、スポーツカーテクノロジーの集結、生産台数が少ないという共通点がある。以下、ハイライトを紹介する。

Aston Martin

画像クレジット:Tamara Warren

ここ数年、何度か延期されていたAston Martin Valkyrie Spiderだが、新CEOのTobias Moers(トビアス・ムアース)氏によってすでに完売したと発表された。Valkyrieは、取り外し可能なルーフパネルを備え、最高速度は時速350kmにも達する。パンデミック中にCEOに就任したムアース氏は、同社の生産方法を大幅に改良している。

ムアース氏は、新しい車載技術を加えることはブランドの将来にとって不可欠であり、それによって前世代のメルセデス・ベンツの技術から脱却できると話す。Astonのブースでは、ハイブリッドパワートレインを搭載したValhalla(2024年モデル)も展示されていた。

Audi Skysphere

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」(カリフォルニア州カーメル)に出展されたEVコンセプトカー「Audi AG Skysphere」(画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg)

自動運転のコンセプトカー「Skysphere」は、ビンテージカーのコンクールというよりも、CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)に出展されているような印象を受けたが、ペブルビーチで発表された車の中で、最も興味深い車として注目を集めていた。Audiによれば、グランドツーリングモードとスポーツモードでホイールベースを変化させられるとのこと。

Bentley Flying Spur Mulliner

Bentley Flying Spur Mulliner(画像クレジット:Bentley)

Bentley Flying Spur Mullinerの豪華なインテリアは、贅沢なレザーで賛辞を集めたが、Bentley(ベントレー)にとって重要な意味を持つのはハイブリッドパワートレインを搭載するというニュースだ。

Bugatti Bolide

2021年の「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」でBugatti Bolideの横に立つBugatti Automobiles(ブガッティ・オートモービルズ)のプレジデント、Stephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏(画像クレジット:Bugatti)

Bolideはペブルビーチではなく、金曜日にザ・クエイルで開催されたプレスカンファレンスで発表された。超高級自動車メーカーにとって、新型車は大きな意味を持つが、特に最後のガソリン車となるモデルは重要である。Bugattiによれば、Bolideは40台製造され、価格は1台400万ドル(約4億4000万円)。最高速度は時速480kmにもなるという。

Lamborghini Countach LPI 800-4

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」に出展された「Lamborghini SpA Countach」(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

デビュー50周年を記念し、初代モデルをオマージュしてデザインされたCountach。ボンネットの中には2.8秒で時速100kmに達するというハイブリッドパワートレインを搭載した、まったく新しいモデルである。

Acura NSX Type S

Acura NSX Type S(2022年モデル)。(画像クレジット:Acura)

Acura(アキュラ)は、現行最後のスーパーカー「NSX」の最終モデルとして、ハイエンドのハイブリッドバージョンを発表した。350台限定生産を予定し、価格はおよそ17万1000ドル(約1900万円)から。

Rimac Nevera

「ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング」に出展された高級EVスーパーカー「Rimac Nevera」(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg)

Rimacは、244万ドル(約2億7000万円)のEVスーパーカー「Nevera」を米国でデビューさせ、モントレーにその名を刻んだ。Rimacによると、Neveraはフル充電で最大400マイル(約640km)走行可能で、最高速度は時速258マイル(約410km)とのこと。モントレーでのRimacの華やかな存在感は、かつてはビンテージカーの象徴だったペブルビーチで、競争相手を凌駕する新たなEVプレイヤーが求められていることを示している。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)