アマゾンの中国販売者にVCやロールアップ戦略の企業は熱視線を送っている

Amazon(アマゾン)で販売している中国の販売業者は、今まさにチャンスが訪れている。郊外の工場地帯を歩き回り、常に資金繰りに追われることに慣れている無骨な輸出業者は、突然、次のSHEINAnkerを探すために多額の小切手を持ってきている中国のトップベンチャーキャピタルやインターネット大手の投資担当者とコーヒーを飲んでいる。ベンチャーキャピタルは、彼らが迅速にスケールするための資金提供はできるが、多くのVCには戦略的な面で支援するための専門知識がない。

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そこでブランドアグリゲーターという人たちが現れ、小売に関する有効なノウハウを提供する。また彼らはロールアップと呼ばれる手段で、将来性がありそうなeコマースブランドを経営の相乗効果を狙って買収していく。ロールアップ戦略は当初、米国とヨーロッパで始まり、最近は東南アジア、今ではひっそりとと中国に上陸している。中国では、従来のホワイトレーベルのメーカーがバリューチェーンを拡大し、独自のブランドを確立しようとしている。

中国に進出した最新のロールアップ戦略の企業がBerlin Brands Group(BBG)で、創業者でCEOのPeter Chaljawski(ピーター・チャルジャウスキー)氏によると、同社は今後数年間で数十件のブランドを買う予定だという。現在、このドイツ企業のポートフォリオの中身は、自社ブランドが14、買収したブランドが20だが、中国進出で大きく膨らむだろう。

中国進出に備えてBBGは2億4000万ドル(約265億8000万円)を借入金で調達し、企業買収に3億ドル(約332億3000万円)をつぎ込むと発表した。同社が負債を選んだ理由の1つは、すでに創業時から利益を上げているためだ。しかし創業者によると、最近の資金調達が最後ではなく、将来的には他の金融手段を利用することもあるという。

チャルジャウスキー氏は、VCや企業投資家をブランド探しの直接のライバルとは考えていない。「中国には、Amazonで大きな収益を上げている販売者は何万もいます。VCの資金が適用されるのは一部の企業だけであり、ロールアップモデルはさらにそのうちの一部にしか適用されません。しかしその『一部』はとてもとても大きな数字なのです」とチャルジャウスキー氏はいう。

BBGにとって中国は初めてではない。15年前に創業した同社はこれまで、中国のメーカーに依存して同社のキッチンウェアやガーデニングツール、スポーツ用品、家電製品などを作ってきたし、今でも同社製品の90%はこの国で作られている。ブランド買収という新しいビジネスでも、深圳に数十名のスタッフを雇っており、チャルジャウスキー氏によると、グローバルな輸出と製造、最近はデザインにおいても重要な役割を果たしていることからて、深圳は「Amazonのシリコンバレー」だという。

Amazonに代わるブランド

BBGは、中国の消費者製品に、Amazon上の無名のブランドであることを超えて、ヨーロッパと米国で成長する新しい道を提供したいと期待している。販売業者は米国の巨大な怪物から自由になって、自分で消費者データをコントロールしたい。しかし彼らが自力でD2Cブランドを構築するのは、難しすぎる。

チャルジャウスキー氏によると、Amazonのサードパーティービジネスとして好調な販売業者も、その多くは、自前のロジスティクスなどでAmazonを超えるだけのインフラを持たない。ヨーロッパでは、BBGが計12万平方メートルのフルフィルメントセンターを管理しており、Amazonへの依存を解消できる。

ヨーロッパにおいて、中国のブランドはAmazonではないブランドで勝負したいと考えているかもしれないとチャルジャウスキー氏はいう。ヨーロッパでは、eコマースの状況も米国よりずっと細分化されているからだ。

チャルジャウスキー氏は「米国はAmazonが支配している。しかしヨーロッパでは、Amazonが握っているオンラインリテールのシェアはわずか10%です。つまり、90%はAmazon以外なのです。オランダにはBolというブランドがあり、ポーランドにはAllegroがある。そしてフランスには複数の上位プレイヤーがいる」という。

ヨーロッパを狙っている国際的なブランドが抱えているギャップを埋めるためにBBGは、20近いD2Cブランドを、Amazonで販売するだけでなく、それらのウェブ専門店をヨーロッパの主な国でオープンしている。また同社の売上は、米国でも伸びている。現在、同社の売上の60%以上がAmazon以外の流通経路からによるものだ。

BBGはすでに中国の一部のブランドとの交渉を進めているが、現時点ではその名前は明かされていない。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Berlin Brands GroupAmazon中国eコマース

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

独Berlin Brands GroupがD2CとAmazon加盟店を約318億円で買収

D2C(消費者直接取引)事業の興隆が直近10年の大きなeコマーストレンドの1つであるなら、D2Cプレイヤーを統合するための巨大な資金を調達するスタートアップの成長は間違いなく2020年のテーマだった。

その最新の動きとして、Berlin Brands Group(ベルリンブランドグループ、BBG)というドイツのスタートアップは中小企業の買収・統合に2億5000万ユーロ(約318億円)を投資する計画であることを発表した。

統合レースにおける競合相手となりそうな企業の多くが、流通とロジスティックでAmazon(アマゾン)のフルフィルメント(配送センター)に頼っているAmazon Marketplaceに主にフォーカスしている一方で、創業者でCEOのPeter Chaljawski(ピーター・チャルジャウスキー)氏は欧州の既存のターゲットマーケットにおいては少し状況は異なる、と話す。

「M&Aマーケットでの米国と欧州の大きな違いの1つは、欧州の方がより細分化されていることです」と同氏は述べた。「米国ではD2CセラーはAmazonをかなり利用しています。欧州では代替の選択肢が多くあります。フランスような一部のマーケットでは消費者はAmazonに対して好意的ですらありません」。もちろんこれは消費者に直接販売し、またすべてのマーケットプレイスを迂回することに加わる要素であり、BBGにとって大きなフォーカスであり続けるエリアだと同氏は述べた。BBGはプロダクトを販売するのに計100のチャンネルを使っている。

BBGはほぼ自力で巨大で儲けの多い事業を構築したという点で、消費者にとって典型的なeコマーススタートアップではない。ベルリンで大きなeコマースプレイヤーであるにもかかわらず、BBGはベルリンで創業された有名なeコマース事業インキュベーターであるRocket Internet(ロケットインターネット)とつながりはない。

買収に割り当てた2億5000万ユーロはBBGの懐から拠出される。TechCrunchが把握しているところでは、同社が成長を続けるために自社外でかなりの額の資金を調達するのに先駆けて行う。BBGは過去に資金を調達しているが(PitchBookによると額は非公開)、今回のものはクローズすれば初の大きなエクイティラウンドになる。

BBGは収益を上げている自前のD2C事業をゼロから構築した。2005年に創業された当初はオーディオ機器を専門とし(チャルジャウスキー氏は過去にDJになるという野望を抱いていた)、いまでは14ブランドの2500ものアイテムを扱っている。順調に成長を続け、28のマーケットで販売している。

BBGがとってきたコングロマリットモデルはさまざまな部門を網羅している。その多くは電化製品(オーディオ機器やフィットネス機器、家電を含む)で、auna、Klarstein、Capital Sportsといったさまざまなブランドの下で販売されている。これまでに1000万点超のプロダクトを販売し、収益を上げていて、2020年の売上高は3億ユーロ(約380億円)だったと同社は話す。

新たな買収ではガーデニング、家庭リビング用品、スポーツ、電化製品、家電のブランドやプロダクトに注力し、50万〜3000万ユーロ(約6300万〜38億円)の売上を目指す。

BBGはほぼオーガニック成長してきた一方で、2020年12月に家庭用品ブランドSleepwiseを買収し、非オーガニックの事業拡大に初めて足を踏み入れた。チャルジャウスキー氏いわく、Sleepwiseは「とてもすてきな毛布」を作っているとのことだ。

すてきな毛布の快適さは、助けになるかもしれない。これまでの成功にかかわらず、多くの難題がBBGを待ち受けている。

まずは競争だ。BBGの戦略変更と買収計画は、この分野における統合が始まろうとしている最中でのものだ。Amazonのようなマーケットプレイスで成功を収めたものの拡大に向けはっきりとした道筋を描けていない小さなブランドを統合するのにひと握りの資金を用意している。

競合相手にはThrasio(最近企業を買収するのに借金で5億ドル=約524億円を調達した)、SellerXHeydayHeroesPerchなどがある。

ファイナンシャルタイムズ紙が2020年12月に報じた記事では、これら企業がこのモデルに基づいて新しいオンライン消費者帝国を築くのに合計で少なくとも10億ドル(約1047億円)を調達したと推測している。

これら企業のビジョンは実に明快だ。次のUnilever、あるいはP&G、Sony(ソニー)を作り出したいのだ。そして実現するために製造やロジスティック、規模の経済、セールス分析、マーケティングにおける新たなイノベーションに新経済モデルやテクノロジーを活用している。

別の難題は、これまで意図的にそしてオーガニックな道をとってきた同社が多くの新ブランド統合でいかに成功し、効率的に統合を行うかだ。そうしたブランドにはカルチャーがあり、事業提携の関係もともなう。

そして3つめの難題は、高品質ブランドのソーシングだ。以前TechCrunchが指摘したように、Amazonを例にとると、そこでは膨大な数のどうしようもないようなものが売られている。卸売サイトを買い取ってAmazonで再販するような人たちの産業も含まれる。これが、多くの販売業者が特定の部門で似たようなプロダクトを販売する1つの理由だ。こうしたマーケットプレイスのセラーは、検索結果の長いリストのトップに自分たちのプロダクトがくるようにSEOやたくさんのレビューのようなものを活用している。消費者にとっては実際にいい買い物ではなくてもだ。つまり、手に入れたいホットな企業を探している企業にとって誤解を招くようなシグナルとなることを意味する。

マーケットプレイスにいかに力を加えるか、そしてどれくらいのブランドやそれらのオーナーがこうしたものを自前で構築するのか。その間のバランスは今後数年興味深いものになりそうだ。Amazonやそれに近い企業は成長を続け、かなり効率的になった。しかし、これはそうした企業がサードパーティにとって使い勝手がいいというより、あまりにもパワフルすぎることをときに意味する。

一方で我々は別の永続的なテーマを目の当たりにしている。スタートアップと大手企業の存在が小規模のプレイヤーがゲームに参戦し続けられるようサポートするためにツールを作り続けているということだ。ここにはShopifyのような大手企業だけでなくGoSiteShogunXentralといった新手のプレイヤーも含まれる。

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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi)