Facebook創業者夫妻の慈善団体が人体細胞地図プロジェクトに約73億円寄付

人間の体の細胞の地図を作る、現在進行形のグローバルなプロジェクトが、Chan-Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)から6800万ドル(約73億円)を寄贈された。文字どおり人間の細胞の地図を意味するHuman Cell Atlasプロジェクト(HCA)を構成する数ダースもの個別プロジェクトを、このお金が支えるだろう。

Human Cell Atlasは複数のプロジェクトの集まりで、それぞれが健康な人間の細胞を詳細かつ実用性のあるレベルで記録しようとしている。CZIはこれまでも数年間、いろんなやり方で支援してきた。それは、同団体の基礎研究における継続的慈善事業の一環だ。

実はCZIはかなり前に、期間3年のプロジェクトを38件、期間1年のプロジェクトを85件、今回と同様に支援することを発表している。しかし審査と承認のプロセスが長引いたため助成金の交付は遅れた。科学者や研究機関が、何をしてもいい白紙小切手のようなお金をもらうことはまれだ。

しかし今回の6800万ドルは、CZIのHCAとの関わりの範囲をより明確化している。支援が決まったプロジェクトの一覧がここにあり、関わっている研究者と研究機関も明記されている。

仕事の結果とそのために作られたツールは、ほかの研究者たちが無料で利用できる。CZIのプライオリティには、オープンソースやデータセットも含まれている。

CZIの科学部のトップCori Bargmann氏はプレスリリースで「Human Cell Atlasの最初の草案を目指す進歩を加速する学際的なコラボレーションをさらに支援し構築していくことに、喜びを感じている」とコメントしている。とても大きな仕事だから、数年後にその進捗をチェックしてみたい。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

腸内細菌の正常化で病気を治すWhole Biomeが2型糖尿病向け製品をリリース

マイクロバイオーム(体内微生物相)の応用企業Whole Biomeが、シリーズBで3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。投資家はSequoia、Khosla、True Ventures、Mayo Foundation、AME Venturesなどなど、大物揃いだ。資金調達の目的は、微生物の力で人間を健康にし、病気を治すことだ。

数年前から医学は、マクロバイオティックスとしても知られるこれらの微生物によって確保促進される腸の健康の重要性に着目してきた。そして今ではスタートアップたちがベンチャー資金を使って、新しいアイデアを次々と生み出している。

Whole Biomeの協同ファウンダーでCEOのColleen Cutcliffe氏はこう語る。「今は人類の歴史の上で、今しかないと言えるほどの希少かつ貴重な時期だ。そこではマイクロバイオームが最先端のテクノロジーおよび生物情報科学(バイオインフォマティクス)と合体して、まったく新しい分野の革新的な健康産業が生まれようとしている」。

DNA配列企業Pacific BiosciencesにいたCutliffeが、パートナーのJim BullardやJohn Eidと共に作ったプラットホームは、マイクロバイオームのさまざまな母集団の情報を計算によって求め、それらの遺伝子解析により、患者のフローラの欠陥と健康問題の関連を見つけ出そうとする。

今回の新たな資金の用途は、2型糖尿病を管理するプロダクトを立ち上げることだ。

市販されている糖尿病の処方薬の多くが、胃の不調やめまい、発疹、アルコールの消化不能など、副作用を伴う。しかしWhole Biomeによると、同社の製品には副作用がまったくない。

すでに本格的な治験を済ませ、2020年に発売予定のその製品は、特殊なプロバイオティクスを患者の腸にリリースし、血糖値スパイク(食後過血糖)を減少させる。

SequoiaのパートナーRoelof Bothaは語る。「Whole Biomeは新しい病気治療目的のマイクロバイオーム投与法を作り出しつつある。それによって、今日の人びとが直面している多くの重大な健康問題を改善できるだろう。彼らが作り出した学際的で統合的な方式による研究開発および商用化の手法により、複雑なマイクロバイオーム的生物学が開錠され、臨床効果と他に類のない安全性を併有する製品が作られている」。

Whole Biomeのこれまでの調達総額は5700万ドル(約61億5600万円)である。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

双子のDNAを検査したらおかしな結果が出た…DNA検査は眉に唾して受けよう

【抄訳】
あなたが自分の唾液を真面目に郵送したことのある方なら、今のDNA検査企業が送り返してくる予想外の結果にも興味津々だろう。あなたの祖先は、イベリア半島でうろうろしていたのか? あなたの家族の何代にもわたる言い伝えの中に、科学が認めるものがあるとすれば、それはなんだろう?

メールオーダーのDNA検査を利用する人たちの多くは、その結果の背後にある科学について無頓着だ。なにしろ、それは科学だから。でも、DNA検査企業は強力な監督機関を欠き、自分たちのアルゴリズムをオープンにしないから、ユーザーが得たいと思っている先祖に関する知見が、これらの企業がそうでないと言えば言うほど、主観的であることもありうるのだ。

その点に関して、CBCのMarketplaceのホストCharlsie Agroと彼女の双子の妹Carlyが、5社のDNA検査キットを郵送してみた: それらは、23andMe、 AncestryDNA、 MyHeritage、 FamilyTreeDNA、そしてLiving DNAだ。

CBCはこう報告した: “事実上同一のDNAでありながら、この双子たちはどの企業からも互いに合致する結果をもらえなかった”。

このことに、驚くべきではない。各社が、それぞれ独自の試薬を使ってDNAを分析するから、違いが生ずるのは当然だ。たとえばある一社、FamilyTreeDNAは、双子のDNAの14%が中東起源とした。それは他の4社にはない結果だった。

それ以外では、素人でも予想できるような当たり前の結果が多い。しかし、23andMeのデータだけはおかしい。

CBSはこう言ってる:

23andMeの所見では、先祖が“大まかにヨーロッパ人”(“Broadly European”)はCharlsieがCarlyより10%近く少ない。Charlsieにはフランス人とドイツ人が各2.6%あるが、Carlyにはない。〔下図〕

この互いに同一の双子は、東ヨーロッパ人の継承も異なり、Charlsieの28%に対しCarlyは24.7%だ。そしてCarlyの東ヨーロッパ人の祖先はポーランドに結びついているが、Charlsieの結果にはこの国がない。

この双子は彼女らのDNAをエール大学の計算生物学グループと共有し、二つのDNAが統計学的に同一、と判定された。疑問に対して23andMeは、同社の分析が“統計的推定”だ、と言った。あなたが顧客なら、この言葉を覚えておくべきだ。

覚えておいた方がよいのは、その検査が正しい科学ではないことだ。対照群はないし、標本サイズは双子のDNAワンセットだけだ。ここから決定的な結果は導けない。でも、興味深い疑問が生ずることは確かだ。

アップデート: 23andMeのスポークスパーソンが次のような声明で、問題の結果のコンテキストを明かそうとしている:

CharlsieとCarlyの23andMeの結果の変位は主に、“大まかにヨーロッパ人”の推定値にある。このカテゴリーはわれわれのアルゴリズムが確信を持ってヨーロッパ人と同定できる層を捉えているが、国などもっと精密な分類の確信はない。双子の一方がより多くの“おおまかにヨーロッパ人”を持っていても、それは矛盾していない。それが意味するのは、一つの個体に関してはアルゴリズムが、より細かい粒度の予測をできるほどの確信を持っていなかったことである。たとえば双子の片方に関しては2.6%のフランス人とドイツ人を同定できたが、他方関してはゲノムのその部分が大まかにヨーロッパ人に割り当てられたのである。

同社が強調するのは、23andMeの先祖検査と健康診断のそれとの違いだ。後者はFDAの規則があり、その基準と精度と臨床的有効性を満たさなければならない。

双子の調査は長年、科学研究において重要な役割を担ってきた。たとえば双子の調査により、中毒や精神病、心疾患などさまざまな特性への生物学的影響と環境的影響の違いを研究できる。23andMeのような企業の場合は、双子の調査が〔今回のように〕同社の秘密のアルゴリズムの特質を明らかにし、ユーザーに対する今後の知見や、企業としての売上のアップに貢献するだろう。

【中略】

民間のDNA検査サービスは、祖先の判定だけでなく、将来の遺伝子病発病の可能性や、健康的な生活のためのアドバイスなど、‘商品’のメニューが多様化している。しかも検査の方法は年々変化し進化している。それとともに検査の‘結果’も変わる。

そこでもう一度言えば、CBCの非公式な実験は決して本物の科学ではなく、またDNA検査サービスもそうだ。ご自分の検査結果をどきどきしながら待っている方に申し上げたいのは、これらの企業がどうやってその結論に到達したのか、その方法や過程や理論について、われわれは知らないことが多すぎる。そのような営利企業を介してあなたの遺伝学的データが大手製薬企業の手に渡るとしたら、そこにはプライバシーをめぐる大きなトレードオフがある。こいつは、よーく考えてみたい問題だよね。

関連記事: 23andMeの祖先判定ツールが黒人や黄色人種に対しても詳しくなった

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple Watchは最初の心電計ではないが、消費者に与える影響は膨大だ

Apple’s COOのJeff Williamsは、Apple Watchが一般販売用心電計としてのFDA認可を受けたと、Apple本社で行われたスペシャルイベントで高らかに宣言した。Appleはものごとの最初になるのが大好きだが、この陳述は虚偽である。

AliveCorはKardiaMobileという製品で昨年11月以来「初」の称号を保持している。KardiaMobileは100ドルのスティック型デバイスで、スマートフォンの背面に取り付けて使用する。しかも皮肉なことに、同じくFDA認可を受けているKardiabandは、Apple Watchと共に使うブレスレット型心電計でAppleストアで販売されており、今週FDAがAliveCorのテクノロジーを使って血液検査をすることなく血液疾患のスクリーニングを行うことにゴーサインを出したばかりだ。

しかし、Apple Watchは幅広い消費者に影響をあたえる最初の製品になる可能性をもっている。まず、Appleは世界ウェアラブル市場の17%という確固たるシェアを持っており、2018年だけで推定2800万台を売っている。AliveCorのKardiabandとKardiaMobileの販売台数はわからないが、これに近い数字であるとは考えられない。

もう一つ、多くの人は、たとえ自分の心臓の状態に不安をもっていたとしても、それを調べるためだけの装置を買うことには抵抗があるだろう。自動的な統合によって、関心のある人たちが別製品を買わずに測定を始めやすくなる。さらに、心臓疾患は米国で最大の死亡原因であり世界人口の大きな部分に影響を与えているにもかかわらず、おそらくほとんどの人は自分の心拍リズムを日々考えることがない。心電計を腕時計自身に組み込むことで、モニタリングすることへの障壁が減り、一部の人がもつであろう心臓の状態を知ることへの恐怖を取り除くことができるかもしれない。

そして、Appleブランド自体の存在がある。今や多くの病院がAppleと提携してiPadを使っていることから、Apple Watchでも協業体制をとると考えることは理にかなっている。

「医者や病院も健康保険会社も自家保険の雇用者も、Apple、XiaomiFitbit、Huawei、Garmin、Polar、Samsung、Fossilその他のウェアブルメーカーと個別の提携を結びたいとは思っていない。必要なのは、どの患者にも適用できるクロスプラットフォーム製品だ」、とCardiogramのファウンダーで、心電計研究者のBrandon BallingerがTechCrunchに語った。「だから、もしAppleが医療のAppleになるのなら、CardiogramかAliveCorはこの分野のMicrosoftになればいい」

Appleの発表は、AliveCorにどう影響するのか? CEOのVic Gundotraは一笑に付した。彼はTechCrunchに、AliveCorのビジネスは大部分がKardiaMobileによるものでApple Watchに統合する心電計ではない、と話した。「Appleは以前からこの手のしくみをWatchに組み込むことを匂わせてきた」とGundotraは言った、「だから予測はできていた」

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

HP、薬品を「プリント」して抗生物質試験をスピードアップ

米国では毎年少なくとも200万人が「スーパーバグ」と呼ばれる耐性菌に感染し、2万3000人以上がこの感染が直接原因で死亡していると疾病対策センター(CDC)は伝えている。そこでHPのバイオハッカー技術チームはCDCと協力して、抗生物質を「プリント」するバイロットプログラムに取り組み、抗菌薬耐性をもつ菌の蔓延を防ごうとしている。

HP D300eデジタルディスペンサーは、通常のインクジェットプリンターと同様の仕組みを利用するが、インクの代わりにさまざまな組み合わせた容積ピコリットルからマイクロリットルにわたる薬品を研究目的に調剤する。

こうした菌が急速に拡散する理由の一つは、抗生物質が誤って利用されたためである場合が多く、その結果バクテリアは既存の薬品に対する耐性を獲得する。CDCは全米の医療従事者がこの技術を利用して問題を解決できるようにすることを願っている。

「ひとたび薬品の使用が認可されると、耐性が生まれるまでのカウントダウンが始まる」とCDCの抗生物質耐性調整戦略部門の科学チーム責任者、Jean Patel医学博士が声明で言った。「人々の命を救い、守るためには全国の病院でこの技術を利用可能にすることが不可欠だ。このパイロットプログラムによって、われわれの最新の薬品が継続的に利用され、基準となる研究成果が医療従事者の手にわたることを期待している」。

3Dバイオプリンティング分野は、過去数年に急成長しており、今後10年はこのペースが続くだろう。その主な理由は研究開発のおかげであると市場調査関係者は言っている。

さらに、潜在的価値の高い抗生物質耐性の研究によって、現在治癒可能な疾病の治療手段がなくなり寿命が縮まるという恐ろしい未来の到来を阻止できる可能性がある。

現在HPのバイオプリンターは研究所や医薬品メーカーで使われており、たとえばGileadではエボラウィルスに用いられる薬品の試験に利用されている。プリンターはさまざまなCRISPR(クリスパー)応用研究にも利用されている。CDCは、これらのプリンターを抗生物質耐性(AR)検査所ネットワークを通じて全米に広がる4つの地域で使用し、新たな薬品の抗生物質耐性感受性テストの開発を行っていく計画だとHPは語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

バイオ専門のアクセラレーターIndieBioが初めてのデモデー、14社が勢揃い

[筆者: Neesha A. Tambe]
【抄訳】
今日(米国時間4/17)の午後2時から、本誌TechCrunchはIndieBioのデモデーをお届けする。

IndieBioは、バイオテク企業にフォーカスする生後4か月のアクセラレーターだ。初期段階の企業にメンター(mentor, 指導者, 個人指導)がつき、バイオセーフティーlevel 1と2のラボを利用でき、業界のエキスパートからのアドバイスと25万ドルの資金が得られる。

2018年度の14社は、ノンオピオイド鎮痛投薬管理や、合成木材の生成、そしてAIを利用する抗生物質耐性の抑止など、さまざまだ。

彼らのデモを、ご覧いただこう:

Antibiotic Adjuvant: AIを利用して抗生物質耐性をモニタし減衰する意思決定支援ソフトウェア。

BeeFlow: 農作物の受粉用の利口で強い蜂を開発中。収穫量を最大90%上げ、蜂の人口減を抑える。

Dahlia Biosciences: 研究や診断用の多重化イン・シトゥー単細胞RNA分析ツールの次世代型を作る。

Jointech Labs: 高品質な脂肪移植、脂肪由来の幹細胞、および細胞治療を安全低価格で提供。

Lingrove: 自然界にある繊維や樹脂から、外観や性質は高級木材のようでカーボンネガティブな合成木材を作る。

MezoMax: 骨折治癒の高速化、骨粗鬆症の治療の改善、高齢者の骨の強化を、新しいグルコン酸カルシウム立体異性体により実現する。

Neurocarrus: 慢性の痛みに対する、効果が長時間なノンオピオイド鎮痛剤。オピオイドのような習慣性や副作用がない。

Nivien Therapeutics: 化学治療と免疫治療の両方を強化する初めての低分子医薬。15例のがんで効果を実証。

Nuro: 手術やICU、介護、リハビリなどのあとで無力化している患者にコミュニケーション能力を持たせる。

Onconetics Pharmaceuticals: 腫瘍の細胞に対する遺伝子治療。遺伝子スイッチがアポプトーシスを誘起してがん細胞を殺す。

sRNAlytics: 新しいバイオインフォマティクスにより小さなRNAバイオマーカーをエラーフリーで見つける。ハンチントン病で概念実証を行った。

Sun Genomics: 各個人に合わせたプロバイオティクスにより腸内細菌の健全な状態を取り戻す。そのために消化管の細密なプロファイルを作成する。

Terramino Foods: シーフードの中でも、菌類や藻類の健康効果を強調した食品を作る。

Vetherapy: 猫、犬、馬などの新しい幹細胞治療を開発。傷の早期治癒や、自己免疫の治療、炎症の治療などで効果を実証。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

批判を浴びていたMITが脳を保存するスタートアップNectomeとの関係を断つ

MITが、Nectomeとの関係を断つことになった。この、Y Combinatorが支援するスタートアップは、将来のデジタルアップロードの可能性のために顧客の脳を保存すると称してきた。

協同ファウンダーのRobert McIntyreはその処置を、“100%致死的である”と述べている。それは、末期の患者をマシンに接続して動脈に防腐液を注入する、などの過程を含んでいる。

同社は申込者から10000ドル(返金可)を集めたが、今同社のWebサイトには“最近の報道への応答”と題する注記があり、処置の実行は今後のさらなる研究の後になることが示唆されている:

人間の脳の臨床的保存には人類にとって大きな利点の可能性があるとわれわれは信じているが、しかしそれは、医学と神経科学の専門家からの入力をもとにオープンに研究開発された場合に限る。現時点で生体保存を急ぐことはきわめて無責任であり、今後の正しい方式の採用を妨げるものになる、とわれわれは信ずる。

MITのTechnology Reviewにも書かれているが、MITとの関係が同社に信ぴょう性を与えている、と批判されてきた。MIT Media LabのEdward Boyden教授はNectome社への国の補助金の形で、金を受け取っていた。McIntyreと彼の協同ファウンダーMichael McCannaは、ともにMITの卒業生だ。

今回Media Labは声明を発表し、“同社のビジネスプランの科学的前提と、同社が発表している一部の声明を”検討した結果、“両者の合意に基づき、MITとNectomeの協同関係を終結する”、と述べた。

Media Labによると政府の助成対象になっていた研究プロジェクトは、“Nectomeの化学的側面と、Boydenグループの発明になる拡張顕微鏡技術を組み合わせて、基礎的科学と研究目的のためにマウスの脳のより良質な視覚化を得る”ことだった。Boyden教授とNectome社の間に、金銭や契約などをめぐって個人的な関係はなかったようだ。

その声明は最後に、Nectomeの背後にある科学に言及している。Media Labは、脳の保存と未来におけるアップロードの可能性を全面的に否定するものではないが、科学的確証はまだない、と示唆している:

神経科学はまだ十分に進歩していないので、記憶と心に関連するさまざまな生体分子をすべて保存できるほど強力な脳の保存方法がありうるか否かを、知っていない。また、人間の意識を再生することが可能かどうかについても、知っていない。

McIntyreはMIT Technology Reviewでこう述べている: “MITが私たちに与えた助力に感謝し、彼らの選択を理解し、そして彼らに最良を願う”。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

CRISPRがDNA鎖を切るとき何が起きているのか…分子レベルの3Dアニメーションが完成

CRISPR-Cas9遺伝子編集テクニックは、今日のバイオテクの進歩について知るべき重要な概念だが、それを正しく視覚化することは難しい。それは、分子の鋏(はさみ)のようなものか? DNAはどこにあるのか? それは大きな分子かそれとも小さな分子か? 今回、幸いにもあるグループが、そのプロセスを分子のレベルで見せる3Dアニメーションを作った。

ご覧いただくアニメーションを作ったのは、ロシアのSkoltech Instituteの生物学者たちとVisual Science社だ。ビデオは後者のWebサイトにある:

これは、どれだけ正確なのか? なんと、ほかならぬJennifer Doudnaがこのアニメを賞賛している。彼女は、CRISPRのテクニックを発見して磨き上げた人びとの一人だ:

分子レベルのアニメーションは、複雑な生物学的システムの謎を解き、説明するための必要不可欠な方法だ。驚異的な画像技術と細部への注視により、Visual ScienceとSkoltechはCRISPR-Casプロテインの動的メカニズムを捉え、その研究用ツールとしての用途を示した。

これらのアニメーションは“非営利的教育プロジェクト”の一環として作られているので、ライセンスも、変様も、そしてそのほかの教育的利用も自由である。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

細胞と組織が自然に発達発育していく能力をプログラミングして簡単に生物機械(バイオマシン)を作れそうだ

生物学とテクノロジーの境界は、研究者たちが両者間の相似性を次々と発見していくに伴い、ますます薄れつつある。今日(米国時間12/28)彼らが発見したのは、細胞中にパターンをプログラミングすることによって生きてる組織をハックすることが、比較的容易にできる、ということだ。それらの組織は、成長するに伴い、鉢、コイル、箱など、プログラミングされたとおりの形になっていくのだ。

上図の画像は、結果の一部だ。たとえば右下のオブジェクトは、組み立て式家具のように自分で自分を折りたたんでキューブ(立方体)になる。

生きた細胞から、生体にそのまま移植できるマシンを作ることは、長年の研究テーマだった。でもそれらの形の成形は、型(かた)を使ったり、3Dプリンターを使ったりする方法がもっぱらで、組織自体が目的の形に‘成長’していくことは、不可能だった。

しかしここでご紹介するテクニックでは、細胞はほぼふつうに成長していくが、その過程でDNA-programmed Assembly of Cells (DPAC)(DNAをプログラミングした細胞組み立て)と呼ばれる技法により、成長をガイドする。細胞そのものは正常に発達していき、プログラミングされたDNAは細胞自身の中にはない。しかし、それがある種のテンプレートになることによって、成長する細胞の形を変えていく。

ペーパーの図版は、事前に描いたパターンにより指定した形の折りたたみ構造を作れることを示している。

DNAのパターンに基づいて成長する組織の層が、自然にカーブしたり、折りたたまれたりして、目的の形になっていく(上図)。

この研究のペーパーを書いたZev Gartnerは、こう言っている: “このアイデアがあっさりと有効であることにも驚いたし、細胞の振る舞いがすごく単純なことにも驚いた。細胞の発達が、技術者がそこに絵を描くバイオ工学のキャンバスのようなものになるし、発達という本来は複雑な過程を、シンプルな工学的原理に還元できる。科学者たちは基本的な生物学の理解を深め、最終的にはそれをコントロールできるようになる”。

これもやはり、自然に逆らうよりも自然と協働した方がうまくいく、という例のひとつだろう。細胞が自然にやることをそのまま利用して、やりたいことを自然にやらせる。結果が前もって分かる(predictable)だけでなく、単純に実現する。このテクニックは最終的には生物機械の作成工程に使われるだろうし、医学のためのさまざまな構造物も作れるだろう。

この研究を行ったのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のチームで、ペーパーは今日(米国時間12/28)、Developmental Cell誌に載った

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

薬剤のリリースをコントロールして治癒を早めるスマート包帯をMITなどが共同開発

切り傷や擦り傷の治療は通常、包帯や救急絆などを何度か取り替えながら、その都度軟膏などを塗って行う。でも、傷薬(きずぐすり)の要らない包帯があったら、どうだろう?今、ネブラスカ大学リンカーン校とハーバード大学とMITが共同開発しているスマート包帯が、まさにそれなのだ。

従来からよく使われる、消毒綿などの繊維と違って、この傷口保護材は“感熱性のドラッグキャリアを含んだヒドロゲルで電熱ヒーターを包んだ複合繊維”で作られている(右図)。実は、これですべてを言い表しているのだ。

傷口を保護するなどの包帯としての機能は同じだが、そこに切手大のマイクロコントローラーが付いている。アプリやタイマーや織り込まれたセンサーなどによってそのマイクロコントローラーが起動すると、繊維に電気を送って温め、ヒドロゲルの中で寝ていた薬剤を活性化する。

その薬剤は、麻酔剤や抗生剤、あるいは治療を加速する成長ホルモンなど、何でもよい。電圧が高いとより多くの薬剤が活性化し、また、それぞれ薬剤の異なる複数の複合繊維を、ひとつのスマート包帯に使ってもよい。

“これは薬剤の投与量に依存しない治療が可能な初めての傷口保護材である”、とUN-LのAli Tamayolがニューズリリースで言っている。“リリースプロファイルの異なる複数の薬をリリースできる。これはほかのシステムに比べて大きな利点だ”。

チームはジャーナルAdvanced Functional Materialsに発表したペーパーで、動物に適用したときの良好な治癒効果を述べている(人間でのテストはまだこれから)。また、熱が薬剤の効果を妨げないことも、確認している。

ふつうの擦り傷なら普通の包帯や救急絆などの傷口保護材(bandage, 池の向こう岸のお友だち(イギリス人)ならplaster)で十分だが、人が頻繁に世話できない負傷者とか、包帯の頻繁な交換が難しい患部を持つ人には、このシステムが最適だろう。

さらにテストを重ねてFDAの認可が得られたら、今度は繊維とセンサーの統合という課題がある。血糖値やpHなど、治癒過程が分かる測度が包帯から得られれば、それを包帯の上のディスプレイに、プログレスバーで表示できるようになるかもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

米FDA、針を使わない血糖値モニターを認可

米国食品医薬品局(FDA)が現代科学技術に向けて準備運動している証拠がまた一つ見つかった ―― このたびFDAは、血液サンプル採取のために針を刺す必要ない初の連続血糖値モニターを承認した

今日(米国時間9/28)FDAは、Abbot社のFreeStyle Libre Flash Glucose Monitoring Systemを認可した。皮膚の下に挿入した小さなセンサーワイヤーを使って、成人糖尿病患者の血糖値を測定する装置だ。別の棒状の装置をセンサーにかざすことで血糖値の測定結果を読み取ることができる。

これはFDAにとって記念すべき一歩だ。現在米国には300万人近くの糖尿病患者がいて、一日数回、何かを食べるたびに自分に針を刺して血糖値を測定しなければならない。

ただし、針を使わない血糖値モニターのアイデアは新しいものではない。ここ数年多くのIT企業がこの巨大な糖尿病市場に関心を持っている。Appleもこの種のデバイスを開発しているという噂があり、CEO Tim Cookが、Apple Watchと接続するプロトタイプらしきものを装着しているところを目撃されたこともあった。

ほかにも現在まだ開発中のGlucowiseを始め、いくつもの会社が同様の製品開発に取り組んでいる。

しかし、針のない血糖値センサーの開発は容易ではなさそうだ。Googleは血糖値を検出するコンタクトレンズを作ろうとしたが、医薬品会社のNovartisが2014年にライセンスして以降、プロジェクトは行き詰っているようだ。やはりFDA認可済み非侵襲血糖値モニターのGlucoWatchは、2000年代初頭に認可されたが、消費者は使いにくいと感じ、中には悪性の皮膚疾患を起こした例もあった。

しかし、今日Freestyleのモニターがあらゆる苦難を乗り越えて認可されたことで、新たな希望がでてきた。この装置は18歳以上が対象で、12時間の始動期間の後最長10日間装着できる、とFDAウェブサイトの声明に書かれている。

「FDAは、糖尿病などの慢性疾患を抱えて暮らす人々の治療を、簡単かつ管理しやすくする新技術に常に関心を寄せている。」とFDA広報担当者のDonald St. Pierreは言う。「このシステムを使えば糖尿病患者は、時には痛みを伴う血液採取をすることなく治療に必要な情報を得ることができる ―― 読み取り装置をかざすだけだ」

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

遺伝子検査種目の増えた23andMeが研究開発拡大のため$200Mを調達

複数の情報筋によると、一般消費者向け遺伝子分析サービスの23andMeが、Sequoiaがリードするラウンドにより、2億ドル近い資金を調達している。このラウンドには、Fidelityも参加しているようだ。

ここしばらく、このパーソナル・ジェネティクス企業が研究部門の拡大と新製品開発のために資金を求めている、という噂が漂っていた。

新たに得られたキャッシュによって、23andMeはIPOのプレッシャーからも当面自由になり、成長のための努力に邁進できる。ふつう、どの企業も、上場は最後の資金調達ラウンドから一年以降後に行われることが多い。協同ファウンダーでCEOのAnne WojcickiはIPOにあまり乗り気でないらしいが、そうやって初期の投資家や社員たちに流動性を提供するのが、後期段階のベンチャー支援企業がたどる標準的な道筋だ。しかし23andMeに関しては、大手製薬企業などによる買収、という線もありうる。

23andMeは2013年に、同社の個人に対する遺伝子検査を売り物にすることをやめるよう、FDAに命じられて行き詰まった。それ以降同社は、研究努力に注力してきた。当時FDAは、同社のやり方がFDAの基準に合わない、と言った。その結果23andMeは、新たな顧客たちに遺伝子健康情報を売ることをやめ、別の売上源を探した。

その後同社は医学研究に力を入れ、科学者の雇用を増やし、複数の遺伝子関連企業とパートナーして高度な研究活動を続けた。たとえば女性の受胎能力について研究している遺伝子企業Celmatixは、同社と協働して女性の妊娠能力に影響を及ぼす遺伝子について研究している。

FDAは2015年に規制をやや緩め、ブルーム症候群のための遺伝子検査を認めた。そして今年初めには、唾液検査が許される疾病リスクが、後発性アルツハイマー病やパーキンソン病など、10種類に増えた。少なくとも一つの情報筋によれば、今同社は、乳がん関連の遺伝子BRCA-1とBRCA-2も検査に加えられるよう認可を求めている。認可が下りれば、同社はColor Genomicsなどと競合することになる。

23andMeはほかにも、たとえば家系調査のための遺伝子検査企業Ancestry.comなどとも競合している。

FidelityとSequoiaにコメントを求めているが、Sequoiaはコメントを断(ことわ)った。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBMが世界中のスーパーコンピュータのボランティアネットワークにより人体のマイクロバイオームと免疫疾患の関係を解明へ

体内の細菌が人間の健康に及ぼす影響は、まだその全貌と詳細が解明されていない。IBMは、World Community Gridと名付けたクラウドソースなスーパーコンピューター群の“コミュニティ”を利用して、人体のマイクロバイオームと、それが自己免疫疾患にもたらす役割に、光を当てようとしている。

このプロジェクトでIBMがパートナーしたのは、ハーバード大学のBroad Institute, MIT, Massachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院), カリフォルニア大学サンディエゴ校, そしてSimons FoundationのFlatiron Instituteだ。プログラミング学校も開設しているFlatiron Instituteは、人間の腸内のバクテリアの300万種の遺伝子の、染色体上の位置を解明しようとしている。

この研究は、これらのバクテリアが1型糖尿病や橋本病、クローン病、潰瘍性大腸炎などの疾患にどのように寄与貢献しているのかを、科学者たちが知る手助けになることを目指している。

腸の健康問題に取り組もうとしているのは、もちろんIBMだけではない。むしろそれは今、テクノロジー企業のあいだで流行になってるようだ。4月には、Alphabetのライフサイエンス部門Verilyが、10000名の協力者から得た腸とDNAのサンプルにより、マイクロバイオームに関する情報を集めるプロジェクトをローンチした。テクノロジー世界の億万長者Naveen Jainは、2016年に創ったViomeで、同様の研究を開始した。過去2年間で、このテーマでVCの資金を獲得したスタートアップが数社ある

IBMの研究は、上述の大学等の科学者を起用するだけでなく、世界中のボランティアが提供する膨大なコンピューティングパワーによってデータを分析し、それらの分析結果と所見を一般に公開する。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Googleのライフサイエンス部門Verily社が細菌に感染した蚊2000万匹をフレズノに放つ

Googleの親会社Alphabet傘下のライフサイエンス企業Verilyが、研究室で育てて、細菌に感染させた蚊2000万匹を、カリフォルニア州フレズノにリリースする計画を準備している。そしてそれは、良いことなのだ!

実は、ジカ熱を媒介するネッタイシマカがその地域に蔓延している。今年の初めには、ある女性がフレズノで、ジカ熱の最初の感染者と確認された。それは、それまで旅をしていたパートナーとの性的接触によるものだった。今では、何か対策をとらないかぎり、感染の流行が避けられないおそれがある。VerilyのDebug Projectと呼ばれるそのプランは、ジカ熱を媒介する蚊の人口(生息数)を一掃して今後の感染を防ぐ、というものだ。

蚊の人口をいじると予期せざる弊害はないのか? それはない。この種類の蚊は、2013年に初めてその地域に入ってきたのだ。既存生態系の一部ではない。

では、どうやって退治するのか? Verilyの雄の蚊はボルバキア菌に感染していて、人間には無害だが、雌の蚊と交配すると感染し、卵子を発生不能にする。

おまけに、雄の蚊は噛まないから、フレズノの住民が今以上に痒さを我慢することにはならない。

費用に関する発表はないが、蚊をリリースするチームのエンジニアLinus UpsonがMIT Technology Reviewで、次は同じことをオーストラリアでやる、と言っている。

“環境が変わっても同じ効果があることを、証明したいんだ”、と彼は同誌に述べている。

Verilyの計画では、フレズノの面積300エーカーの地域社会二箇所に、20週間にわたって、毎週100万匹の蚊を放つ。ボルバキア菌に感染している蚊をリリースする規模としては、アメリカでは過去最大である。

Fancher Creek地区の住民は今日(米国時間7/14)から、Verilyのバンがやってきて小さな虫たちの健康的な大群をリリースする様子を、目にすることになるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

3Dプリントで作ったソフトな人工心臓は本物そっくりに動く

人工装具の科学技術はここ数年飛躍的な進歩を遂げ、それを補完するソフトロボティクスの研究が特に際立っている。本物のように柔軟に曲がるロボットアームの技術を、もっと複雑な臓器 ―― 例えば心臓 ―― にも応用できることをスイスの研究者らが示した

人工心臓の問題の一つは、金属とプラスチックでできた機構を組織に同化させることが難しく、不自然な動きのために血液を損傷する恐れがあることだ。

スイス、チューリッヒ工科大学で博士課程の学生、Nicholas Cohrsが率いる少人数のチームが作ったのは、全体がソフトな初めての人工心臓と彼らが呼ぶもので、ポンプ機能はシリコン製の心室を本物の心臓と同じように動かすことで実現している。

いや、正確には本物と同じではない ―― 心室と心室の間は単なる壁ではなく部屋になっていて、膨らんだりしぼんだりすることでポンプ動作を実現している。それでも、かなり本物に近い。

この心臓を作るのに使用した3Dプリント方式では、ソフトでしなやかな材料を使って、複雑な内部構造を作ることができる。全体が一つの構造(「モノブロック」)からなるため、様々な内部構造がどう収まるかを心配する必要がない( 血液が入って出るための入出力ポートとの接続部分を除く)。

人工心臓のテストは順調で、血液に似た液体を、人体に似た圧力に対して押し返した。ただし、もちろん裏がある。

この心臓は概念実証であり、実際の移植のためのものではない ―― このため使用している材質は数千回の心拍にしか耐えられない。心拍数にもよるが、約30分に相当する(新品の慣らし運転での心拍数はかなり高いに違いない)。もちろん、チームの目標は材料と設計を工夫してもっと長く使えるようにすることだ。

「機械技術者として、柔らかな心臓をこの手でつかむことなど想像もしていなかった」と、テストの責任者で大学院生のAnastasios Petrouが大学のニュースリリースで言った。「この研究には大いに魅了されたので、是非これからも人工心臓の開発を進めていきたい」。

研究チームの成果は今週論文誌 “Artificial Organs”[人工臓器] (当然)に掲載された。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AIでがん患者に最適な治療法を見つけるMendel.aiが200万ドルを調達

Dr. Karim Galilはうんざりしていた。がんで患者を亡くすことにうんざりしていた。散乱する医療記録にうんざりしていた。として、様々な効果をうたう数多くの臨床試験を掌握することにうんざりしていた。多くの患者を失い、忍耐力も失いつつあったGalilは、AIシステムを構築して担当する患者を、最適な治療方法とマッチングさせようと考えた。

彼はこの新システムを、近代遺伝学の父、Gregor Mendel[グレゴール・メンデル]に因んでMendel.aiと名付け、DCM Ventures、Bootstrap Labs、およびLaunch Capitalから200万ドルのシード資金を調達してプロジェクトを立ち上げた。

Mendel.aiは、英国拠点のBenevolentBioに多くの面で似ている。大量の科学論文に目を通して最新の医療研究の情報を収集するシステムだ。ただし、Mendel.aiは、キーワードデータの代わりにアルゴリズムを用い、clinicaltrials.gov の医療文書にある構造化されていない自然言語の内容を理解して患者の診療記録と突き合わせる。この検索プロセスによって完全にパーソナライズされた一致を見つけ、候補となる治療方法と患者の適合度を評価する、とGalilは説明した。

このシステムは、膨大な臨床データの最新動向を把握しきれない医者にとって有用かもしれない。

患者もまた、数多くの臨床試験の結果を読むのは大変だ。例えば、ある肺がん患者について、clinicaltrials.govにある試験結果が500種類見つかり、それぞれに適用分野が詳しく書かれたリストが付いてくる」とGalilは言う。「臨床データは毎週更新されるので最適な適合を人間が把握するのは不可能だ」。

Mendel.aiは適合に必要な時間を短縮することで、もっと多くの命を救おうとしている。現在同社は、カリフォルニア州ベーカーズフィールドのComprehensive Blood & Cancer Center (CBCC) のシステムと統合することで、同センターの医師は患者にあった治療法を数分のうちに見つけられるようにしている。

今後はCBCCのような病院やがん遺伝子企業とさらに提携を結び、Mendel.aiを改善し、システムを提供していく計画だ。間近の目標としては、IBMのWatsonに挑戦して、どちらが良い患者の適合を見つけるかを比べてみたい、とGalilは言う。

「これは、人が生きるか死ぬかの違いだ。冗談ではない。」とGalilはTechCrunchに語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

レーザーを使用する3D顕微鏡で小さなウィルスの体内航跡を観察する

もしもあなたがぼくみたいな人間なら、ウィルスが自分の体内を航行するときの経路が気になって気になって、まる一日がつぶれてしまうことがあるだろう。そんなぼくたちにとって幸運にも、デューク大学の研究者たちが開発した新しい顕微鏡は、おちびさんたちがたどる道を、ミクロン単位で見せてくれる。

Kevin Welsher助教授の研究チームが設計したシステムは、従来の顕微鏡の形をしていない。光学的に像を拡大するのではなく、少量の対象物をさまざまな角度からレーザーで何度も走査し、特殊な蛍光粒子を光らせる。そしてそれらの位置の変化を追う。

粒子の一つを何かにくっつけ、その後どうなるかを見る。いわばそれは、微生物学のためのモーションキャプチャー・スタジオだ。でもこれまで、そういう蛍光粒子は、ウィルスにくっつけるには大きすぎた。人間なら、体中(からだじゅう)にたくさんのバスケットボールをテープで貼り付けられて、ゴラムの物真似をやれ、と言われているようなものだ。Welsherのチームは最近、システムをより強力にして、もっと小さなドットを検出できるようにした。そして蛍光タンパク質分子をウィルスの体内で作れるようになった。その結果、上図に見るように、小さな動きを詳細に追えるようになった。

単純?だよね?

昔の漫画、Family Circusを思い出す。Billyかだれかが近所中を上図のウィルスのように動きまわり、犬を可愛がり、ご近所の家のポーチにある泥を調べたりする。ただしそのBillyは、ここではレンチウイルスで、そのご近所は細胞膜の外の液状質だ。

もちろんそれは、見て楽しむためのものではない。目標は、ウィルスが細胞に接触して侵入し感染するまでの過程を、観察することだ。ウィルスの行動を理解するためにとても重要なその瞬間は、直(じか)に見ることがほとんど不可能なので、よく理解されていない。

“われわれが調べる努力をしているのは、ウィルスが細胞の表面に初めて接触したときに起きることだ。それはどうやってレセプターを呼び出すのか、どうやって自分の包膜を脱ぐのか”、Welsherはデューク大学のニューズリリースでそう述べている。“その過程をリアルタイムで見たいし、そのためにはウィルスを最初の瞬間からロックオンできなければならない”。

そんなシステムができたら、私たちは、これまで作られたものの中でもっとも高度な生物学的マシンの理解に一歩近づくだろう。チームの研究は、Optical Societyの今週のジャーナルに発表される。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

メアリー・ミーカー、医療分野でのシリコンバレーの役割に言及

今日(米国時間5/31)、メアリー・ミーカー(Mary Meeker)のインターネット・トレンド・レポート最新版が公開され、そこには私たちの将来をテクノロジーががどう形作るかについての考察が満載だ ―― そして、今年は医療問題も取り上げられている。ミーカーが同レポートで医療に言及したのはこれが初めてであり、これは今後の私たちの生活を改善していく上で、テクノロジーが果たす役割の大きさを示すものだ。

レポートから重要な指摘をいくつか拾ってみた。

  • ウェアブルデバイスの勢いは増すばかりで、米国人の25%が所有している(2016年の12%から上昇)。一番多いのが移動速度を追跡するデバイスで、心拍数の測定がそれに続いている。
  • 多くの人々が健康アプリをダウンロードして、健康データを共有する意志を持っている。
  • ミーカーのレポートによると、2016年には60%の人たちが健康データをGoogleと共有してもよいと考えている。
  • 消費者は商用検体検査サービスをかつてないほど利用している。
  • そのほかの良い知らせ。病院や診療所で、患者が自分のデジタルデータをアクセスできるようになった。
  • 医療に役立つデータ量は3.5年ごとに倍増している(1950年には50年で2倍だった)
  • 利用可能な健康データが増加したことで臨床試験が加速され、科学者との共同研究も促進されることが期待される。

考察の多くは驚くものではない。ウェアラブルは遍在し、デジタル化によって従来のシステムを破壊するビジネスが生まれており、そのためにベンチャーキャピタルは健康スタートアップに多額の資金をつぎ込んできた。Rock Healthによると、2016年のこの分野への投資総額は 42億ドルに上り、ベンチャーキャピタルはバイオ分野の専門家を「大慌てで」雇っているらしい。

もちろん難点もある。医療は非常に規制の強い分野であり、アプリのようにとりあえず出して後から修正するというわけにはいかない。Theranosが悲しくも学んだように、製品は初めから正しくなければならない。しかし今年ミーカーが医療分野を掘り下げたことの意義は実に大きい。将来の健康で安心な暮らしを作るうえでシリコンバレーが持つ力をしめすものだ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

CRISPR-Cas9ゲノム編集でマウスのHIVウィルス除去に成功

AIDS撲滅の重要な突破口が開かれた。CRISPR-Cas9という技術を用いてマウスの細胞からHIVウィルスを除去する方法を研究チームが発見した。

現在この致死性ウィルスに侵された患者は、毒性のある抗レトロウィルス混合薬を服用してウィルスの複製を抑制しなくてはならない。しかしCRISPR-Cas9は、体内のあらゆる遺伝子コードを切り離すようにプログラムすることが可能で、その精度は極めて高い。例えば、体内のHIV-1 DNAをすべて除去できる可能性を持っている。そして、もしこのDNAを切り離すことができれば、ウィルスが自身の複製を作ることを抑止できる。


論文誌,Molecular Therapyで初めて発表したこの研究チームは、CRISPRを用いることでHIVを完全に消滅させられることを示した。しかもその効果は目覚ましい。わずか1回の治療によって、マウスの臓器及び組織から感染の痕跡をすべて取り除くことに成功した技法を紹介した。

ただしこれは永久的解決方法ではなく、研究チームにとって研究は初期段階にある ーー この研究は昨年実施した概念実証研究に基づいて行われたものに過ぎず、その技法はマウスでしか使用されたことがない。しかし、もし研究チームがこの発見を再現することができれば、将来の臨床実験につながる可能性がある。

「次の段階は、この研究を霊長類で再現することだ。潜伏感染しているT細胞や、脳細胞などのHIV-1聖域からHIV-1 DNAが除去されることをさらに示す上で、HIV感染によって疾患が誘発される霊長類はモデル動物として適している」と論文の共著者であるDr. Khaliliが声明で言った。「われわれの最終目標は人間の患者による臨床試験だ」。

原文へ
 
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Appleの秘密チームが採血する必要のないグルコースレベル測定製品を研究開発中

Appleは生物医学方面の研究者集団を雇って、センサーを利用して糖尿病患者をモニタする秘密のプロジェクトに取り組んでいる、とCNBCが報じている

糖尿病患者は世界中で3億7100万人いる、と推定されていて、近年ではいくつかのテクノロジー企業が新しい治療法の開発に取り組んでいる。たとえばVirtaという新進のスタートアップは、患者の行動をリモートでモニタし完全に治癒することを目指している。またベイエリアのLivongo Healthは5250万ドルを調達して、血糖値監視製品を開発している。

通常、患者が自分のグルコースをモニタするためには、腕などに針を刺して自分の血液を採取していたが、それをしなくてすむようになれば、大革命だ。CNBCにそのニュースを教えた人は、Appleが開発しているのは皮膚の下に埋め込む光学式のセンサーで、その光り方でグルコースの値を測定できる、と言っている。

針を使わない方法はこれまでにもいくつか考えられたが、いずれもうまくいかなかった。Alphabetの生命科学企業Verilyは、グルコースレベルが分かるコンタクトレンズを考えたが、一部の報道によると、すでに3年経ったそのプロジェクトは、あまり快調ではないようだ。

しかし報道ではAppleのプロジェクトも少なくとも5年は経っており、今ではフィジビリティテストを行うべき段階だ、という。また、この種の製品に対する規制をクリアするために、コンサルタントを雇った、とも言われている。

チームを指揮するのはAppleのハードウェア技術担当SVP Johny Srouji、メンバーは30名だそうだ。その中の少なくとも10数名は、Appleが生物医学分野(ZONARE, Vital Connect, Sano, Medtronicなどの企業)から熱心にスカウトした人たちのようだ。

このプロジェクトについてAppleに確認することはできない(Appleからの返事がない)が、同社はかなり前からこのようなビジョンを持っていた。Walter Isaacsonが書いたSteve Jobsの伝記によると、彼はAppleをテクノロジーと生物学が交わる場所にしたい、と考えていた。今すでにその場所にいるのが、ウォーキングの歩数を計り、燃焼カロリーを計算し、心拍などの生物学的測度を計るApple Watchだ。そして皮膚に埋め込むグルコースセンサーも、同じくユーザーがどこにいてもグルコースレベルを計ることができて、採血の必要もないから、業界を一変させる製品になるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))