視覚障害者のテクノロジー利用を拡大する

テクノロジーは、世界2億8500万人の視覚あるいは視力障害者にとって生活の中心をなす ―― ただし、使い方を知っていれば。視覚・視力障害者の支援団体、LightHouse for the Blind and Visually Impairedのアクセステクノロジー担当ディレクター、Erin Lauridseに話を聞いた。

Lauridsenの役目は、視覚障害者が「生活に必要なテクノロジーの利用方法を知る」手助けをすることだと、本誌のBullishシリーズ最新回のインタビューで私に話した。支援はコンピューターリテラシーやスマートフォンの利用からスクリーンリーダー、拡大機能といった補助機能の使い方まで多岐にわたる。

彼女はGoogle、Uber、Lyft、FacebookなどのIT企業のユーザーテストに協力して、「すでに存在するものと今作られているものが、視覚に障害のある人たちでも等しく利用できること」を確認しているとLauridsenは言った。

しかし、米国で法律上失明している人たちの失業率は70%だ。この統計データは1970年代から更新されていないが、今も数値は高いとLauridsenは言う。IT業界にどの程度の失明者や視力障害者がいるのかわからないが(IT企業は通常このデータを報告しておらず、プライバシーの懸念もある)、おそらく極めて少ない。

視覚障害者が就職するうえでの障壁のひとつはリテラシーだとLauridsenは言う。点字など視覚障害者対応の資料が利用できなければ、リテラシーの格差は人生のごく最初の段階から生まれる。

「そうした教育を受け仕事の世界に入ると、ほとんどが認識の問題だ」とLauridsenは言う。「雇用担当者にとってあなたが初めて会う障害者であれば、面接の間中どうやってここまで来たのか、どうやって靴紐を結ぶのか気になってばかりで、おそらくあなたのスキルには集中していない。つまりは認識の問題がある」。

もう一つの問題は、デベロッパーツールのアクセシビリティ対応だとLauridsenは言う。彼女には素晴らしいプログラマーである盲目の友人が何人かいるが、デベロッパーツールがアクセシビリティ対応していないために就けない職があるという。

Lauridsenが最終的にIT企業に望むのは、アクセシビリティを「プロセスの最後にある小さなコンプライアンス用のチェック欄」以上に考えることだ。彼女の願いはアクセシビリティが「ものづくりの開発サイクルにとって重要で必要な部分になること。なぜなら障害のある人たちはハッカーでありイノベーターであり、それが私たちのふだんしていることだから。」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

3DPhotoWorksは、偉大な芸術を視覚障害者に届ける

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芸術は人類全員の所有物であり、誰もが啓発される機会をもつ。だから私たちは、ここに3DPhotoWorks、「世界の一級芸術作品」を目の見えない人に届けるプロジェクトを紹介する。John Olson率いるチームは、有名な絵画をデジタル彫刻に変換し、全盲の人が触れて体験できるようにしたいと思っている。

Olsonは21歳で雑誌Lifeの写真家になり、1968年には世界的に知られるテト攻勢の写真を撮影った。学習や生活における視覚の重要性を理解した彼は、「目が見えないとはどういうことかを知りたいと考えた」。

「私は数々の盲人コミュニティーを訪れ、視覚物に対する驚くべき渇望を知りました。故ポール・バキリタ博士の神経可塑性の研究を参考にして、私は絵画をデジタル彫刻画像に変換し、触覚フィードバックを与える方法を開発しました。目の見えない人たちが繰り返し私に、『見える』と言っていたしくみです」と彼は言った。

出来上がった彫像は驚くほど精細な美術館品質で、長年にわたり触れて楽しむことができる。Olsonは、こうした絵画を世界に広めるために、50万ドルという大きな目標で資金を募っている。

これは決して安いものではなく、実質的にOlsonは、作品のスポンサーを探している。まだ3Dプリンティング技術を利用できないため、各作品は特殊な方法で削り出して作らなくてはならない。5000ドル、7500ドル、または1万ドルを寄付すれば、会社はあなたのお気に入りの絵を好きな美術館に送ってくれる。3000ドル出せば、自分の持っている写真から触覚アートを作ることもできる。美術館の絵画全部に触ることは恐らくできないだろうが、3Dのモナリザや3Dのデラウェア川を渡るワシントンは、見えない人にも見える人にとっても、格好の題材だ。

「盲人にとって、自分自身で芸術作品を見られることは、独立、平等、自由の証しです」とOlsonは言う。「3D触覚画像によって、彼らは自身の意見を確立し、自身で決定を下し、自身の結論を導くことができます。もう、作者の言葉に頼ったり、ガイドの見解を受け入れたり、教育者の公式を当たり前だと思ったりする必要はなくなります」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebook、視覚障害者が画像を「見る」方法を開発中

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Facebookは世界15億の人々をつないでいるが、視覚障害のある人たちにとって、つながるための巨大プラットフォームをアクセスすることは難しい。Jeff Wieland率いるFacebookのアクセシビリティーチームは、そのために立ち上がった。アクセシビリティーチームの目的はただ一つ、障害者がFacebookでシームレスな体験を得られるようにすることで、最終的には、世界をつなぐというミッションを達成する。

現在、視覚障害があり、スクリーンリーダー(画面に表示されたものを認識するツール)を利用できる人たちは、みんながFacebookに書いたものを聞くことはできるが、毎日Facebookでシェアされている何百万もの写真で何が起きているかを知る術はない。

「あなたのニュースフィードがどれだけビジュアルか考えてみてほしい ― おそらく殆どだろう。そして多くの人たちが写真についてコメントしたり、投稿したものについて何かを書いているが、その〈写真〉が何であるかについてはあまり語らないことが多い」とFacebook初の全盲エンジニア、Matt KingがTechCrunchに語った。「つまり私のような人間にとっては、『で、何の話?何を議論しているの?』ということになるのです」。

だからFacebookは、人工知能ベースの物体認識ツールで、目の不自由なユーザーにFacebookで人々がシェアした写真に何が写っているかを伝えるしくみを開発している。わずか3ヵ月前に入社したKingは、彼がどのようにスクリーンリーダーを使ってFacebookを操作しているかを見せてくれた。

「私にとってページは完全に順列です」とKingは私に説明した。「一度に全体を見渡すことはできません。小さな断片が一つ見えるだけです」。

彼がページをスクロールダウンすると、スクリーンリーダーはKingに、6項目のリストがあることを伝え、それはその時点で彼に通知が6件来ていることを意味していた。そして彼が “convo box”[会話ボックス]に到達すると、このツールを使ってコメントを残せることをツールが知らせた。

やがてKingは、テキストと写真からなる友達の投稿までスクロールした。友だちのAnneは、「一年生の写真撮影の日に向けて準備完了」と書いて、写真を載せていた。Facebookが試作中の物体認識技術によって、Kingは、「この画像に含まれるかもしれないもの、コロン、1人以上の人物」という音声を聞いた。これがなければ、KingにわかるのはAnneが「一年生の写真撮影の日に向けて準備完了」と書き、写真を載せたことだけだ ― 何の写真かは全くわからない。別の写真についてツールは彼にこう言った:「この画像に含まれるかもしれないもの、コロン、自然、アウトドア、雲、葉っぱ、草、樹木」

下のフォトギャラリーで、スクリーンリーダーを使って写真を見た時に聞こえる説明を見ることができる。

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「まだ100%ではないかもしれないが、たとえそこから生まれるつながりや得られる楽しみの半分だとしても、少なくとも、得られるものが0%から50%に増えることです」とKingは言った。「これは大きな飛躍であり、これからも伸びるばかりです。私はFacebookのこうした取り組みへの投資を、非常に力強く楽しみなことたと考えています。そしてこれは、障害のある人々とすばらしい体験とをつなげる方法の一つにすぎません」

残念ながらスクリーンリーダーの習得には少々時間がかかる。Kingの目標が、視覚障害者にとってもっと敷居を低くすることにあるのはそのためだ。障害のある人たちが、障害のない人たちと同じくらい簡単に、世界のどこにいようともウェブを利用できるようにすることが彼の願いだ。

「Facebookでは、情報と情報テクノロジーの利用を人権とほぼ同じ物であると考えるようになりました」とKingは言った。「つまり、これは雇用への入口であり、あらゆる機会 ― 政府やあらゆることへの参加 ― への入り口です。だから私たちがこの段差を埋められた時が、アクセシビリティーの究極のゴールであり、Facebeookはそれを実現するための特別な立場にいると思っています。それが私の心をとらえました。これは、障害のある人々が他の全員とつながるのを手助けすることによって、彼ら全員に尊厳を与える方法なのです」

チームはこのシステムを年内にウェブまたはiOSどちらかのプラットフォーム向けに提供し、この体験にオプトインできるようにすることを目標にしている。

「何が写っているかを確信を持って伝えなくてはいけません。間違えたくありません。だからAIに投資を続けてこれをすばらしい物にする必要があります。私たちは比較的早く出荷できると楽観しています」とWielandは言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook