BlockFiの米SECとの約115億円の和解は、今後のDeFiレンディングにとって何を意味するのか?

暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)は、同社が利子口座の提供を通じて証券法に違反したという主張に対する和解で、米国証券取引委員会(SEC)に1億ドル(約115億円)を支払うと規制当局が米国時間2月14日に発表した。この和解は、暗号資産会社が被った中では最も記録的なペナルティにあたるとAxiosは最初に報じている

SECの声明によると、BlockFiはペナルティのうち5000万ドル(約57億6500万円)をSECに直接支払い、残りの5000万ドルは米国32州に罰金というかたちで支払い、同様の容疑を精算するという。

SEC執行ディレクターのGurbir S. Grewal(グルビール・S・グレワル)氏は「暗号資産分野で十分な情報に基づいた投資判断を行うために必要な情報と透明性を投資家に提供するためには、当委員会の登録および開示要件を遵守することが重要です」と述べている。

BlockFiは創業以来、投資家から4億5000万ドル(約518億8400万円)の資金を調達している。最新のラウンドは2021年3月の3億5000万ドル(約403億5400万円)のシリーズDで、Bain Capital Ventures(ベイン・キャピタル・ベンチャーズ)、DST Global(DSTグローバル)、Pomp Investments(ポンプ・インベストメンツ)、Tiger Global(タイガー・グローバル)のパートナーが主導し、同社を30億ドル(約3459億円)と評価した。

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BlockFiのウェブサイトによると、同社の金利口座では、ユーザーは保有する暗号資産に対して最大9.25%APY(年利)に相当する毎月の利息を得ることができたという。今回のSECの判決では、BlockFiの口座は、ユーザーが同社に通貨を貸し出していることになるため、証券とみなされることになる。

また、BlockFiは18カ月間、投資会社として違法に運営されていたとSECは述べている。この間、同社は証券を発行し、投資会社として登録されていないにもかかわらず、投資会社として適格な資産ベースの基準値を満たしていたのだ。

登録の問題に加え、SECはBlockFiがローン・ポートフォリオと融資活動のリスクレベルについて投資家を欺いたと主張している。

和解の一環として、BlockFiは無登録の融資商品の販売を停止することに同意した。また、BlockFiは本日、BlockFi Yieldと呼ばれる、法に準拠した新しい融資商品を登録する意図を発表し、これはSEC登録した最初の暗号資産利付証券になるとしている。

このニュースは、新興の分散型金融(DeFi)エコシステムに大きな打撃を与えると、デジタル資産弁護士のMax Dilendorf(マックス・ディレンドルフ)氏はTechCrunchに語っており、SECはBlockFiに対する措置でDeFi融資ビジネスモデルを本質的に「一掃」したと述べている。

暗号資産企業が有利子DeFi製品の販売を続けようとするならば、S-1登録届出書を提出して実質的に株式公開企業になる必要があるとディレンドルフ氏はいう。S-1登録届出書は新規株式公開(IPO)に相当し、これはコストがかかるプロセスで、DeFi製品を購入する投資家は、特定の免除を求め(そして許可され)ない限り、認定された者でなければならないと彼は付け加えました。

「S-1を提出することは、DeFiとはまったく相性が悪いのです。BlockFiが成功したのは、メタマスク・ウォレットなどをつないで利息を稼いでいるだけの個人ユーザーがたくさんいたからです」と同士は述べた。

この分野の小規模なプレイヤーにとっては、新規則の規制負担とそれにともなうコストが足かせになる可能性がある。

「BlockFiは30億ドル(約3459億円)規模の企業なので、結果が確実でなくても(登録証券を)提供する余裕があるのでしょう」とディレンドルフ氏はいう。「小規模なDeFiプロトコルはどうでしょうか?同様の強制措置の対象になれば、一掃されることになるでしょうね」。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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仮想通貨ブームに疑念があるとしたら、この分野における特定の企業の急成長に注目してみるのがいいだろう。

BlockFiはそうした会社の1つだ。同社は米国時間3月11日、シリーズDの3億5000万ドル(約381億円) の資金調達を完了し、評価額は30億ドル(約3300億円)に達したことを発表した。このニュース自体が注目を集めているのは確かだが、2020年8月にシリーズCで5000万ドル(約54億円)を調達し、評価額は4億5000万ドル(約490億円)だったことを考えるとさらに印象的だ。シードラウンドからシリーズCラウンドにかけての合計調達額は1億ドル(約109億円)となっており、今回の資金調達で同社の創業以来の総調達額は約4億5000万ドルに達したことになる。

BlockFiは、消費者金融出身のZac Prince(ザック・プリンス)氏がFlori Marquez(フロリ・マルケス)氏とともに2017年に設立したスタートアップだ。ニュージャージー州ジャージー市に拠点を置く同社は、2018年に完了したシードラウンドで160万ドル(約1億7400万円)を調達、このラウンドではConsenSys Venturesが主導し、SoFiの参加も得ている。

プリンス氏によると、BlockFiは仮想通貨市場の投資家向けに金融サービスを提供する会社で、小売や機関を対象とした一連の製品を提供しているという。同プラットフォームの小売側では、同社のモバイルアプリを利用して、保有する暗号の利回り(ビットコイン6%、ステーブルコイン8.6%)を得たり、暗号を売買したり、暗号ポートフォリオの価値によって担保される低コストのローンを受けたりできるため「売却せずに流動性を得ることができます」と同氏は述べた。具体的には、クライアントはデジタル資産(ビットコイン、イーサリアム、Linkをはじめ、ライトコイン、PaxG、および複数のステーブルコイン)をBlockFi上で直接売買することができる。

同スタートアップはまた、デジタル資産市場に参加している機関向けの取引執行サービスのレンダーおよびプロバイダーでもある。

このモデルはかなりうまく機能しているようだ。2019年末以降、BlockFiの顧客ベースは1万から22万5000以上に増加しており、現在までに資金提供を受けた小売顧客は26万5000社、機関顧客は200社を超えている。

小売、法人、機関投資家の顧客への融資額は100億ドル(約1兆円)を突破した。

過去1年間で、BlockFiは次のことも達成している。

  • プラットフォーム上の資産数が2020年3月の10億ドル(約1090億円)から150億ドル(約1兆6300億円)に拡大。貸出ポートフォリオ全体の損失率は当初から0%にとどまっている
  • 月間売上は5000万ドル(約54億4000万円)を超え、前年同期の150万ドル(約1億6300万円)から大幅に増加
  • 従業員数を2020年3月時の100人から約530人に増員

「シリーズCを完了して6カ月も経たないうちに、ビットコインや他のデジタル資産が多くの投資家のポートフォリオ、そしてより広範な金融市場において中心的な役割を担うようになっています」とプリンス氏は語る。「デジタル資産が金融の未来であるという私たちの信念は、2020年に前年比10倍に成長し、2020年末から倍以上になった顧客ベースによって証明されています」

シリーズDでは、新しい投資会社、Bain Capital Ventures、DST Globalのパートナー、Pomp Investments、TigerGlobalが共同で主導したが、ここには既存の投資会社Valar Ventures、Breyer Capital、Susquehanna Government Products、Jump Capital、Paradigmなど多数の企業も名を連ねている。1年以上勤務したBlockFiの従業員には、資金調達ラウンドの一環として、二次的な公開買い付けを通じて株式の一部の流動性を受け取る機会が与えられる。

BlockFiは、シリーズDラウンドへの投資家の熱意は、同社の力強い事業の成長と「資産クラスとしての仮想通貨への幅広い確信」の両方を反映していると考えている。

「個人投資家、機関投資家、企業の財務部門はいずれも、仮想通貨に投資する方法を模索しています」とBlockFiは述べた。

同社でオペレーション担当SVPを務めるマルケス氏は次のように語っている。「BlockFiの目標は一貫して、仮想通貨を主流化することでした。そして日々、そうした現象が今まさに起きているという証拠を提供し続けています」

Bain Capital Venturesのパートナー、Stefan Cohen(ステファン・コーエン)氏も同意見だ。同氏は、現在暗号保有者が利用できる銀行サービスは限られているため、BlockFiは有利な立場にあるとみている。

同氏はメールで「ビットコインはすでに時価総額で1兆ドル(約109兆円)を突破しており、価値の貯蔵を実現するべくさらに高値に向かう可能性があります。BTC保有者に富が蓄積されるにつれ、住宅や自動車、教育といった従来型の資産購入のために保有資産から利回りを得たり、借り入れたりする方法を模索する人が増えていくでしょう」 と述べた。「BlockFiは、仮想通貨保有者にシンプルで安全な日常的な金融サービスを提供するリーダーとしての地位を確立しています」。

この1年間の同スタートアップの大きな成長は「BlockFiのサービスには明らかに大きなニーズがあった」ことを証明している、とコーエン氏はいう。

「彼らのビジョンは、仮想通貨を主流にするための使いやすく信頼できるプラットフォームを構築することでした。そして、彼らは真の成功を収めました」と彼は付け加えた。

一方コーエン氏によると、Bain Capitalはビットコインが価値の貯蔵庫になるという長期的な考えを持っており、現在1兆ドルを超える市場を支える「ピックアンドショベル事業」に積極的に投資してきたという。

「信頼できる金融サービスはこの分野の重要な柱であり、私たちはそれを市場における極めて戦略的な要素だと考えています」 と同氏は続けた。

今後については、同社は第2四半期にビットコインのリワードクレジットカードをローンチする計画だ。これによりBlockFiの顧客は、取引ごとにビットコインのキャッシュバックを得ることができる。今回調達した資金は、同社の製品群の成長、新たなグローバル市場への進出、そして戦略的買収のために利用される。プリンス氏によると、同社は年末までに人員を倍増する計画だという。

BlockFiはすでに世界100カ国以上で小売事業者向けサービスを展開している。2020年、同社はロンドンとシンガポールに法人顧客サービスオフィスを開設した。2021年中にはヨーロッパ、アジアパシフィック、中南米でもサポート開始を予定している。

この1週間、BlockFiは別の理由でニュースになっていた。同社は、3月7日に攻撃者が偽のサインアップと暴言でプラットフォームにスパム攻撃を仕かけた「異常な攻撃」の被害者となったのだ。

最終的に同社は、3月7日に無許可の第三者がプラットフォーム上で一括サインアップを試み始めたことを認識したことを認めている。

「私たちはこれらの『サインアップ』に使われたメールアドレスの出所を把握していませんが、それらは私たちから発信されたものではなく、BlockFiクライアントのメールでもありません」と同社はTechCrunchに語った。「私たちはこのイベントを悪質なスパムと判断しています。影響を受けた有効メールの総数は1000件未満でした」

同社は、BlockFiのデータはアクセスされておらず、データは漏えいしていないと主張している。

「当社の顧客の資金とデータは、インシデントの間ずっと保護されていました」と同社は付け加えた。「それ以来、当社のエンジニアリングおよびセキュリティチームは、このようなできごとが今後発生しないように対策を講じてきました。さらに、有効なメール受信者全員に直接連絡を取り、この件について謝罪の意を伝えました」。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:BlockFi仮想通貨資金調達

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)