NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

NASAがアルテミス計画で有人着陸システムを提供する企業を選出した。これには、1972年以降初めて宇宙空間から月面に宇宙飛行士を運ぶこととなる着陸船が含まれる。幅広い分野にわたる競合他社の中から選ばれたBlue Origin、SpaceX、Dyneticsは、月面着陸において初の女性飛行士と新たな男性飛行士を月面に運ぶための有人着陸システム(HLS)を開発および構築する予定だ。2024年までの達成を目指している。

SpaceXが提案したStarshipが、SpaceX Super Heavyロケットを用いて発射する着陸船として選ばれた。Starshipは同社が現在開発中の宇宙船で、軌道、月、火星へのミッションに完全再利用可能な宇宙船として設計されている。Super Heavyも現在開発中だ。これは完全再利用可能なブースターとして機能し、全ペイロードを搭載したStarshipを軌道に乗せることができる。Starshipは以前使用されたモデルやデザインとは非常に異なるため、着陸船として選出された事実は実に興味深い。

NASAによると、Starshipの柔軟な設計が長期的な目標に役立つようだ。OrionやGateway月軌道ステーションから月面までなどのより長い距離を移動する輸送乗務員に対し、地球軌道での燃料移送を提供できるようになる。SpaceXの提案には、宇宙空間における車両間の推進剤移送のデモンストレーションや、無人での月面着陸テストが含まれている。

興味深いことに、2024年までにOrionのクルーカプセルを月に運ぶために開発されたSpace Launch System(スペースローンチシステム、SLS)は人を輸送できる唯一の人間用ロケットとなるが、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官によると、必ずしも人が搭乗できる着陸船がSLSを使用して月に到達する必要があるわけではないと言う。理論的には、Super HeavyがStarshipを発射して月に運び、そこでオリオン(SLSを使用して移動)とドッキングして、月面への旅の最終行程にまでいたるというシナリオだ。

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

SpaceXによる有人Starshipのコンセプト

Blue OriginによるBlue Moonは、専用の着陸船に関してはより伝統的な設計になっており、Starshipほどは統合されていないマルチパートの降下および上昇システムを備えている。 昨年の国際宇宙会議でJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、Blue Originの入札の際、より詳細なデザインのほかパートナー企業やその役割を提示した。その「ナショナルチーム」では、Lockheed MartinがHLSを打ち上げる発射システムの「上昇要素」部分を構築し、Northrop Grummanが着陸船を打ち上げ機から降下位置に移送するシステムを提供。Blue Originは着陸船と実際に月面に降ろすための降下システムを開発する予定だ。また、Draperが航空電子工学と降下におけるガイダンスを提供。Blue Moonは、Blue OriginのNew GlennロケットとULAのVulcanの両方で打ち上げることができる。Starshipと同様に、Blue Moonの着陸システムも宇宙飛行士を運ぶ前に別の打ち上げ機を使って移動することが可能だ。

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Blue OriginによるBlue Moonの着陸コンセプト

Leidos(旧SAIC)の子会社であるDyneticsは、宇宙と防衛の専門知識を実証してきた長い歴史を持ち、1969年に設立されている。上昇および降下の機能を備えた着陸船1機を含むDynetics Human Landing Systemを開発し、月旅行の際にはULAのVulcan発射システムに搭載されて、月に向かう。DyneticsはSierra Nevada Corpなど、多くの下請業者と共に同システムの開発に取り組む。

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

Dynetics Human Landing Systemのコンセプトデザイン

この契約で競い合う企業のリストには、業界全域におよぶ共同チームを率いるベゾス氏のBlue Origin、NASAのCommercial Crewプログラムのプロバイダーの1社でもあるBoeing、Commercial Crew用の別の輸送船を開発し、5月下旬に初の乗員飛行を目指すSpaceXのほか、宇宙ステーションの補給を含むさまざまなミッションで使用するための再利用可能な宇宙往還機を開発するSierra Nevada Corporationや、同レースで驚きの勝者となったDyneticsなどの中小企業が含まれていた。

ここでの契約は、複数のプロバイダーに少なくとも2つのシステムを並行して開発させるというNASAの目標を反映している。これにより、大きな挫折に直面した場合にも冗長性が生まれ、またNASAは理論上少なくとも今後2つの有人着陸システムから選択が可能となるわけだ。アルテミス計画の目的は人を月面に再度送り込む事だけでなく、火星やその先を含む有人探査を見据え、NASAが深宇宙を目指すための中継地として確立させるためのものである。

契約は合計9億6700万ドル(約1030億円)に上る。支払いは10カ月の工程におけるプロバイダーのマイルストーン達成度合いに応じて行われる。NASAは電話にて、同ミッションを行うために必要な技術の多くはすでに存在し、参加している企業の多くはすでに彼ら自身の輸送船開発の追求に多大な投資を行っているため、今回の取り組みは前回月に行った際とは非常に異なるシナリオである事を言及している。

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Category:宇宙

Tags:NASA SpaceX Blue Origin Dynetics

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(翻訳:Dragonfly)