ヨーロッパ初の培養サケ、マス、コイの供給業者を目指すBluu Biosciences

ヨーロッパで誕生したあるスタートアップが、培養魚肉分野での最初の大規模供給業者を目指すレースに加わった。

Bluu Biosciences(ブルー・バイオサイエンセズ)は、資金調達ラウンドで700万ユーロ(約9億円)を調達した。このラウンドには、Manta Ray Ventures、Norrsken VC、Be8、CPT Capital、Lever VCが参加し、BluNalu(ブルーナル)、Wild Type(ワイルド・タイプ)、 Shiok Meats(シオク・ミーツ)といったスタートアップと培養代替魚肉の市場を巡って競合することとなった。

持続可能な魚肉の市場は巨大であり、ますます成長を続けている。魚の需要が高まるにつれて、乱獲や水産養殖による影響への懸念がすでに山積している。その問題は、他の動物由来のタンパク質が抱えているものと同じだ。数十億もの地球人口からの上質なタンパク源の需要に、今ある資源では持続可能な対応はできない。

そのため、細胞培養で食肉を作る企業の多くが、ビーフやポークやチキンなどの肉ではなく、魚に注目している。

「ヨーロッパには優れた才能を持つ人間が大勢いますが、その分野で設立される企業が少なすぎます。哺乳類分野と比較すれば、企業数はさらに少なくなります」と、Bluu Biosciencesの共同創設者にして業務執行取締役Simon Fabich(ジーモン・ファビシュ)氏は話す。

ベルリンを拠点とするBluuはサケ、マス、中国で人気の高いコイに焦点を当てている。他社はマグロやサケやエビと格闘しているが、Bluuは世界でも最大級の人口を抱える国で愛されているコイを、特に魅力的なターゲットと考えている。

創設者立ちは、Bluuが優位な点に、共同創設者Sebastian Rakers(ゼバスチアン・ラーカー)氏の魚の細胞培養というワイルドな世界での深い経験があると主張する。

ヨーロッパで最も有名な研究所の1つ、ミュンヘンのフラウンホーファー研究所に数年間勤務していた海洋学者であり細胞生物学者であるラーカー氏は、製薬業界が有効に使える構成成分としての魚の細胞の可能性を見極める研究を指揮した後、細胞培養肉の商業的な可能性を見据えた特別部隊を率いていた。

Bluu Biotechnologiesの共同創設者ゼバスチアン・ラーカー氏(画像クレジット:Bluu Biosciences

その研究でラーカー氏は、20種類以上もの魚の80種類の細胞の培養を行った。しかも、それらの細胞株を不死化することに成功した。

世界を圧倒するような無限に増殖し続ける魚の細胞の大量生産という夢を語る前に、ここで不死の細胞株とは何かを説明しておくべきだろう。実際、永遠に大量に自己増殖が可能な魚の細胞株の実現は、もう目の前に来ている。

通常、細胞株は、決まった回数増殖を繰り返すと死んでしまう。そのため、大量に肉を培養したい場合は、複数の細胞株を同時に培養するために、同じ動物の生体検査を何度も行わなければならない。Bluuではそのプロセスを排除できた、とラーカー氏は話す。すでに「不死」のサケ、マス、コイの細胞品種を開発しているからだ。

「これは実に大きな競争力になります」とファビシュ氏。「不死化していない通常の細胞の場合、細胞分裂は20回から25回ほどしか行えず、また新しい生検からやり直さなければなりません。不死化した細胞なら最大10万回の細胞分裂が可能で、しかも私たちは毎日2倍にできます」。

このテクノロジーを手に入れたラーカー氏は、これを使って自身のキャリアにどんな道が開かれるかを考えていたとき、インパクト投資家でありPurple Orange Venturesの創設者Gary Lin(ゲイリー・リン)氏に会うことにしたと話す。

リン氏は、ラーカー氏とファビシュ氏を引き合わせた。そして2人は、ラーカー氏の研究を、Bluu Biosciencesの名の下に商品化することを決めた。この市場にはすでにスタートを切っている(そして資金調達を行っている)企業がいくつもあったが、遅れて参入することには特別な利点があったとラーカー氏はいう。

「5年前は、メディア開発を検討する企業はほとんどなく、また非常に大きな規模でバイオリアクター技術に焦点を絞る企業もほとんどなく、細胞培養肉のための培養基材の代替品を探る企業は皆無でした」と彼は話す。だが今は存在する。

それらの技術を提供する企業が市場に参入してくれたおかげで、同社は急加速ができ、2022年末までにはプロトタイプ製品が発表できる見通しが立った。

ファビシュ氏とラーカー氏が商品化に向けて最後に残った障壁という規制当局への働きかけも、彼らは強めている。基本的に同社は、アジア市場を強く意識している。持続可能性において「それが大きな違いをもたらします」とファビシュ氏はいう。「当地の生産挙動を変えられたなら、私たちは非常に大きな影響力を持てるようになります」。

Bluu Biosciencesの共同創設者ゼバスチアン・ラーカー氏とジーモン・ファビシュ氏(画像クレジット:Bluu Biosciences)

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Bluu Biosciences培養魚肉細胞培養水産業

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)