「コピーされて殺された」、ショート動画アプリPhhhotoがフェイスブックを反トラストで訴える

Instagramのかつてのライバル企業が、Meta(旧Facebook)が競合製品のクローンを作成し、最終的に同社のビジネスを消滅させたと、反トラスト法違反の疑惑で訴訟を起こしている。

2014年に登場した「Phhhoto」というアプリは、GIFのような短い動画を作成してユーザーに共有を促すというものだ。聞き覚えがあるとすれば、それは同じ機能がInstagramアプリ「Boomerang」で普及したからだ。その機能は現在、Instagramの主要機能の一部になっている。

新たに提出された訴状(本記事の下部にリンク)によると、Facebookがソーシャルグラフへのアクセスを遮断し、提案された関係の進捗を遅らせ、最終的にはPhhhotoの主要機能である数秒のループ動画のコピーを独自にリリースしたことで、Facebookの行動が独占禁止法に違反したと主張としている。

この訴訟では、メンローパークに拠点を置く弁護士であるGary Reback(ゲイリー・リバック)氏がPhhhotoの代理人を務める。リバック氏は、連邦政府がMicrosoftに対して行った反トラスト法違反の訴訟を成功させたことで広く知られている。この訴訟は結局、巨大ハイテク企業の分裂にまで至らなかったが、同社はコンピュータ事業の一部を開放することを余儀なくされ、その結果は今日のハイテク業界にも影響を与えている。

リバック氏は、Phhhotoの経験は、巨大なハイテク企業が競合他社を買収してそれらの事業を運営し始めることが、なぜ市場にとって有害なのかを示していると主張する。

「この記録は、FacebookがPhhhotoと提携して、Instagramと競合していたであろうこのすばらしい新ソーシャルネットワークを立ち上げていたことを示しています」とリバック氏はいう。Facebookのトップが、この生まれたばかりの競合他社に対して、異例ともいえる積極的なアプローチをとったことをリバック氏は強調しています。

Phhhotoはリリース後、iOSアプリのチャートを賑わせた。話題のソーシャルアプリが注目を集めると、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏をはじめとするFacebookの幹部たちも関心を寄せました。

「2014年8月8日頃、ザッカーバーグ氏は携帯電話にアプリをダウンロードしてインストールし、Phhhotoアプリに自分の端末の電話番号を入力して個人アカウントを作成し、新しいPhhhotoアカウントに自分のプロフィール写真(以下に再現)を投稿した」と訴えている。

訴状には、そのときのレシートとして、彼がそのアプリを試しているときに撮った自撮り写真が含まれている。

画像クレジット:Phhhoto

また、当時Instagramを率いていた同社の共同創業者のKevin Systrom(ケヴィン・サイストロム)氏も、このアプリをダウンロードしてその機能を探っていた。訴訟によると、FacebookはPhhhotoとの提携の機会を提供し始めたが、後に撤回した。

……Facebookの戦略的パートナーシップマネージャーだったHurren(ハーレン)がPhhhotoに接近して「Phhhotoは本当にすばらしい」と主張した。ハーレンはまず、Phhhotoの技術をFacebookのMessengerサービスに組み込むことを提案した。Phhhotoがそれを断ると、ハーレンはPhhhotoのコンテンツをFacebookのユーザーのニュースフィードに組み込むことを提案した。Phhhotoはこのプロジェクトにかなりの投資を行ったが、結局ハーレンは社内での「法律的な会話」を理由に、このプロジェクトを進めなかった。

この関係が実現しなかった後、訴訟では、FacebookがPhhhotoを廃業に追い込むために、アプリ上のコンテンツの発信元を示すInstagramのハッシュタグがあらかじめ入力されていない状態にするなど、さまざまな行動を取ったと訴状にはある。また、Instagramは、Phhhotoをソーシャルグラフから切り離し、競合他社と思われるユーザーがInstagramの友人とアプリ内で接続できないようにした。

Phhhotoの終焉にはドラマチックな瞬間もあった。2015年10月22日、同社がアプリのAndroid版を発表することになっていたその日に、InstagramがBoomerangを発表したのだ。訴訟では、BoomerangのプロダクトマネージャーJohn Barnett(ジョン・バーネット)氏は「熱心はPhhhotoユーザー」とされている。発売当時、TechCrunchはBoomerangがPhhhotoに「疑わしいほど似ている」と指摘していた。

この訴訟では、BoomerangがFacebookの反競争的な取り組みの頂点であり、Phhhoto社の革新的技術を「機能ごと」再現した模倣アプリによって、小規模な企業を事実上消滅させたと主張している。

訴訟によると、Phhhotoは当時、Facebookが他の競合他社に対してどの程度の攻撃的な行動をとっているのかさえ知らず、2018年末に英国議会が同社の内部文書を大量に公開した後に詳しく知ったという。

Phhhotoは、このような事態になっても、Facebookの動きについて発言することを恐れていない。「Boomerangがリリースされるほぼ1年前に、サイストロム氏と彼のプロダクトチームがPhhhotoをこっそり使っているのを見ていました」と、Phhhotoの共同設立者であるChamp Bennett(チャンプ・ベネット)氏は2017年にTechCrunchに語っている

アプリが閉鎖された後、Instagramが独自のクローンを立ち上げたことは「まったく驚きではなかった」とベネット氏は述べている。


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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

InstagramがTikTok対抗のためBoomerangに新エフェクトを加える

TikTokはそのクリエイティブなエフェクトから、無数のミームフォーマットを生み出し、フィルタ加工されたビデオ投稿の王座を巡ってInstagramに挑戦している。Boomerang(ブーメラン)フィルターのリリースから5年近くが経って、Instagramの繰り返しビデオループ作成機能は、ようやく編集オプションを大幅に更新した。

世界中のユーザーは、いまやSlowMo(スローモーション)、Echo(ブラー)、およびDuo(高速リワインド)といった特殊効果をBoomerangに追加したり、長さをトリミングしたりできるようになった。これは、このモバイルで最も人気のあるビデオクリエーション作成ツールにとって、これまでで最大のアップグレードだ。

このエフェクトは、Instagramの面白さを保ち続けるために役立つだろう。何年も使われてきたBoomerangは、いまや多くのユーザーにとって、ストーリーの中で最初の1回をみてスキップしてしまうものになってしまっていた。なぜならそれはとても単調だからだ。新しいビジュアル効果は、人々の注意をさらに数秒間引きつけ、新しいフォーマットのコメディ作成を可能にするだろう。Instagramは、多くの特殊効果を備えて独自のミームフォーマットを生み出したTikTokと競合しようとしているため、これはとても重要だ。

本日から、Instagramのユーザーの方々は、新しいSloMo、Echo、DuoといったBoomerangモードを、Instagram上で共有できるようになります」とFacebookの広報担当者はTechCrunchに語った。「Instagramカメラは、自分を表現し、自分のやっていること、考えていること、感じていることを友人たちと簡単に共有する方法を提供します。Boomerangは最も愛されているカメラフォーマットの1つです。Boomerangを使用して、日常の瞬間を楽しくて予想できないものに変える、クリエイティブな方法を拡大できることを嬉しく思っています」。

新しいBoomerangツールを見つけるには、Instagramで右にスワイプしてストーリーコンポーザーを開き、シャッターセレクターの下で左にスワイプする。Boomerangを撮影した後、画面上部の無限大記号ボタンは、代替エフェクトとビデオトリマーを表示する。モバイル研究者のJane Manchun Wong(ジェーン・マンチュン・ウォン)氏 は、2019年にInstagramの中に新しいBoomerangフィルターとトリマーのプロトタイプを発見していた。

通常、Boomerangは1秒間のサイレントビデオをキャプチャし、それを順方向および逆方向に3回再生して、ビデオとして共有またはダウンロードできる6秒間のループを作成する。以下に紹介するのは、追加できる新しいエフェクトと、Instagramが声明で私に説明した方法だ。

  • SlowMo:Boomerangsの速度を半分にして、各方向に1秒ではなく2秒間再生するようにする。「細かいところがわかるように、Boomerangを遅くします」
  • Echo:モーションブラーエフェクトを追加して、動きのあるものの後ろに半透明の軌跡を表示することで。酔っ払ったりよろけているような効果をみせる。「二重視効果を生み出します」。
  • Duo:ガタガタ動くデジタル化された映像で、クリップを冒頭へと素早く巻き戻す。「Boomerangの速度を上げ下げし、テクスチャー効果を追加します」。
  • Trimming:iPhoneのカメラロールまたはInstagramフィードビデオコンポーザーと同様の操作で、Boomerangを切り取る。「Boomerangの開始時点と終了時点を編集し、長さを変更します」。

こうしたエフェクトは完全なオリジナルというわけではない。Snapchatは、2015年にBoomerangが初めてローンチされてから数日後に、スローモーションと早送りのビデオエフェクトを提供している。一方TikTokも、いくつかのモーションブラーフィルターとピクセル化されたトランジションを提供している。しかしこうしたエフェクトは、InstagramのようにBoomerangsの中だけに限定されているわけではなく、通常のビデオに適用可能であるため、エフェクトを使用してテイク間のカットを隠したり、人々の声で遊んだりできるクリエイティブな柔軟性がある。

TikTokは、これらのツールを用いて、多数の独創的なミームを獲得した。ユーザーは、Echo風の機能を使用して自分自身とハイタッチし、アクション満載の瞬間や大きな音をDuoスタイルのガタガタしたカットで強調し、無限クローンエフェクトで背後にドッペルゲンガーの軍隊を並べることができる。Instagramストーリーズは、その代わりに拡張現実フェイスフィルターとレイアウトなどの、より高機能なツールに焦点を合わせている。

TikTokスクリーンショット

うまくいけば、Instagramの新しい編集機能は、主要なストーリーとビデオ制作者に利用されるようになるだろう。ストーリーの冒頭が退屈だとユーザーはすぐにスキップしてしまうので、動画のトリミング機能は特に有用だろう。

Instagramはこれまで、ソーシャルビデオの世界で長年にわたって支配的な地位を占めてきた。しかし、Snapchatがついに再成長を始め、TikTokも世界的現象になりつつあるため、Instagramはその優位性を維持するためにもう一度戦わなければならない。そろそろ10歳を迎えるのにあたり、もしユーザーに魅力的なコンテンツを素早く作成する手段を与えられないならば、時代遅れのものとなるリスクがある。

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(翻訳:sako)