ハイテク業界の醜悪な真実を明らかにしたTechCrunch2019年調査レポートトップ10

Facebookがティーンエージャーをスパイしていたこと、Twitterアカウントがテロリストに乗っ取られたこと、そして児童性的虐待の画像がBingとGiphyで発見されたことなどが、2019年のTechCrunchの調査レポートで明らかになったもののなかでも、とりわけ醜悪な真実たちだ。安全性の欠陥や力の濫用が及ぼす影響が、ますます大きくなる中で、ハイテク業界はこれまで以上に多くの監視の目を必要としている。原因が悪意、無知、あるいは貪欲のいずれであろうとも、そこには嗅ぎつけられた数多くの不正行為があった。

TechCrunchは、セキュリティエキスパートであるZack Whittaker(ザック・ウィテカー)記者に率いられて、増大する問題に対処するために、より長期にわたる調査を実施してきた。実際、資金調達、製品発売、そしてすばらしいエグジットなどに関する私たちの記事は、物語の半分しか語っていないのだ。おそらくスタートアップ(と彼らのその後)に特化した、最大かつ最も長期間にわたって運営されているニュースソースである私たちは、そうした企業たちが誠実であり続けることや、技術に対するより倫理的で透明なアプローチを推進していくことに対して責任を負っている。

調査に値する潜在的なヒントがある場合は、TechCrunch(tips@techcrunch.com)に連絡するか、匿名のフォームから教えて欲しい。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

2019年に行われた調査レポートの上位10件と、その影響を紹介しよう。

1. Facebookはティーンエージャーたちのデータを覗き見するために、金を渡している。

Josh Constine(ジョシュ・コンスティン)記者の画期的な調査によって明らかになったことは、Facebookがティーンエージャーや成人に対して月額20ドル(約2200円)のギフトカードを支払い、VPNをインストールさせて、市場調査の名目ですべての機密モバイルデータをFacebookに送信させていたことだ。Facebook Researchが抱えていた問題として挙げられたのは、たとえば18万7000人のユーザーに「Project Atlas」に登録するまでデータがFacebookに送られることを通知しなかったこと、4300人以上の未成年者から適切な保護者の同意を受け取っていなかったこと、同プログラムに関して公言した場合、ユーザーに対して法的措置をとると圧力をかけたことなどだ。また、このプログラムは、App Storeのレビュープロセスを回避するために、企業内で従業員だけを対象にアプリを配布するためにデザインされた、Appleのエンタープライズ証明書プログラムを悪用していた。

影響は甚大だった。議員たちはFacebookに対して怒りの書簡 を送った。ほどなくTechCrunchは、同様の市場調査を行うScreenwise Meterと呼ばれるGoogle製のプログラムを発見した。Googleは直ちに同プログラムを中止した。Appleは、すべての従業員専用アプリを丸1日シャットダウンすることでGoogleとFacebookの双方を罰した。このことで、Facebookの従業員はシャトルスケジュールやランチメニューにアクセスできず、オフィスが混乱した。Facebookは、このプログラムが公明正大なものだと主張しようとしたが、最終的には反発に屈し、Facebook Researchと18歳未満のユーザー向けのすべての有料データ収集プログラムを中止した。最も重要なことは、この調査レポートによって、FacebookがそのOnavoアプリをシャットダウンしたことだ。このアプリはVPNを提供するという触れ込みだったのだが、実際はどのライバルを模倣すればよいかを知るために、大量のモバイル利用データを吸い上げるものだったのだ。Onavoは、FacebookがメッセージングのライバルであるWhatsAppを190億ドル(約2兆1000億円)で買収する必要があることをFacebookに認識させたものであったが、いまや同社に対する反トラスト調査の中心となっている。TechCrunchのレポートは、Facebookの搾取的な市場監視を弱め、技術の巨人同士を競わせ、データ収集に対する透明性と倫理の水準を引き上げた。

2. WannaCryキルスイッチの擁護

急速に広がるWannaCryランサムウェアから、インターネットを保護したヒーローたちのプロフィールを描いたザック・ウィテカー記者の記事は、サイバーセキュリティの不安定な性質を明らかにしている。WannaCryのキルスイッチ(停止スイッチ)を確立したMarcus Hutchins(マーカス・ハッチンズ)氏の善意の仕事を描いた魅力的な記事は、別件のティーンエイジャーでマルウェアを作成したという罪で彼を10年の刑務所送りにするのではなく、わずか1年の保護観察付きで釈放となった判決に、影響を与えた可能性がある。

3. イーロン・マスク氏のトンネルの危険性

TechCrunchの寄稿者であるMark Harris(マーク・ハリス)記者の調査レポートは、ワシントンDCからボルチモアへのトンネルを掘るという Elon Musk(イーロン・マスク)氏のBoring Companyの計画の中に、不適切な非常口やその他の問題があることを明らかにした。火災安全およびトンネルエンジニアリングの専門家たちに相談し、ハリス記者は、州および地方政府に対して、公共インフラに近道を導入しようとする破壊的テクノロジーに対して懐疑的であるべきだという強い証拠を提示した。

4. Bingの画像検索は児童虐待で溢れている

ジョシュ・コンスティン記者の調査は、Bingの画像検索結果が、子供の性的虐待画像がどのように表示されているかを示すと同時に、何も意識していないユーザーが、そうした違法コンテンツを呼び出しかねない検索ワードも示唆した。コンスティン記者の示したヒントは、反児童虐待スタートアップAntiToxin(現在はL1ght)によるレポートへと繋がり、Microsoftは英国の規制当局に対してこれを防ぐための大幅な変更の約束を強いられた。だが、TechCrunchのレポートを引用したNew York Timesによる追跡レポートによれば、Bingがほとんど改善されていないことが明らかになった。

ザック・ウィテカー記者の調査が、その追放に疑問があったタフツ大学の学生、Tiffany Filler(ティファニー・フィラー)氏による、成績改ざん疑惑の中にある矛盾した証拠を明らかにした。記事は告発そのものに大きな疑念を投げかけ、学生自身が将来の学術的または専門的努力を狙う際の、助けになる可能性がある。

6. 教育用ノートPCの発火

Natasha Lomas(ナターシャ・ロマス)記者は教育用コンピューターハードウェアスタートアップであるpi-topのトラブル報告を行った。記事には米国のある生徒を負傷させたデバイスの誤動作が含まれていた。分解できるように設計されたpi-top 3ノートPCによって、その生徒が「非常に厄介な指の火傷」を負っていたことを内部電子メールは明らかにした。信頼性が大きく問われ、レイオフが続いた。このレポートは、生徒のような特に傷つきやすい者たちを中心に置き物理的な世界で事業を展開するスタートアップたちは、いかに安全を最優先にしなければならないかということを強調している。

7.Giphyは児童虐待画像をブロックできない

Sarah Perez(サラ・ペレス)記者とザック・ウィテカー記者は、児童保護のスタートアップL1ghtと協力して、性的虐待画像のブロックに対するGiphyの怠慢を暴露した。このレポートは、犯罪者たちが違法な画像を共有するためにサイトをどのように使用し、それが検索エンジンによって、誤ってインデックスされたかを明らかにした。TechCrunchの調査が明らかにしたのは、自らのコンテンツに対してもっと警戒する必要があるのは、公的な技術の巨人たちだけではないということだ。

8.Airbnbの反差別に対する弱み

Megan Rose Dickey(ミーガン・ローズ・ディッキー)記者は、盲目で耳が不自由な旅行者の予約が盲導犬を連れていたためにキャンセルされた際の、Airbnbによる差別的ポリシーが現れたケースを調査した。ディッキー記者のレポートが1カ月の営業停止のきっかけになるまで、Airbnb は差別行為によって告発されたホストを単に「教育」しようとしただけだった。調査は、Airbnbが収益を生み出すホストを保護するためにどんなこと、そしてポリシーの問題によりIPOを損なう可能性があることを明らかにした。

9.期限切れのメールがテロリストたちにプロパガンダをツイートさせる

ザック・ウィテカー記者は、乗っ取られたTwitterアカウントを通じて過激派組織IS(イスラミック・ステート)のプロパガンダが拡散されていることを発見した。彼の調査により、Twitterアカウントに関連付けられたメールアドレスの有効期限が切れると、攻撃者はそれを再登録してアクセスし、Twitterから送信されたパスワードリセットを受信できることが明らかになった。記事は、ビッグテクノロジーのセキュリティ上の欠点を悪用する、巧妙だが決して高度ではないテロリストグループの手段を明らかにしただけでなく、すべてのサイトがふさぐべき危険な抜け穴を特定した。

10.ポルノとギャンブルのアプリがAppleを出し抜く

ジョシュ・コンスティン記者は、数十におよぶポルノおよびリアルマネーのギャンブルアプリが、Appleのルールを破りながらエンタープライズ証明書プログラムを悪用することでApp Storeのレビューを回避していることを発見した。それらのアプリの多くが中国を拠点にしたものだ。このレポートは、企業証明書が脆弱で簡単に詐取される要件を明らかにした。7カ月後、Apple は中国からのポルノおよびギャンブルアプリの削除リクエストが急増していることを明らかにした。この調査は、Appleが企業証明書ポリシーを厳しくする後押しをすることになり、さらにCEOのティム・クック氏が日頃他の技術大手のポリシーに対して頻繁にジャブを繰り出しているにもかかわらず、同社自身にも対処すべき問題がたくさんあることを証明した。

ボーナス:HQ Triviaの従業員たちがCEOを解任しようとして解雇された

『ゲーム・オブ・スローンズ』にも負けない物語は、その影響がすべてのスタートアップエグゼクティブへの警告であるにしても、除外するには興味深いものだった。ジョシュ・コンスティン記者は、ゲームスタートアップ、HQ Triviaの業績が急降下した際に、CEOの無能さと不作為に対して従業員たちが起こした反乱の物語を明らかにした。CEOを解任するために、取締役会への請願を組織した従業員は解雇され、さらなる人材の離職と停滞につながった。調査レポートは、スタートアップの幹部たちに、(団結したり離職することで力を発揮する)従業員たちに対する責任があることを思い出させるのに役立った。

ジョシュ・コンスティン記者へのタレコミ情報がある場合には、暗号化されたSignalアプリ、米国(585)750-5674へのSMS、joshc at TechCrunch dot com、あるいはTwitter DMを介して連絡することができる。

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(翻訳:sako)

イーロン・マスク氏のトンネル会社がLA地下交通事業を受注

Elon Musk(イーロン・マスク)氏のトンネル掘削・交通スタートアップThe Boring Company(ボーリング)が、ラスベガスコンベンションセンター周辺で地下Loopシステムを使って人々を輸送するという4870万ドルのプロジェクトを獲得した。同社にとってこれが初の商業契約となる。

Campus Wide People MoverまたはCWPMの名称が付けられたこのプロジェクトの初期デザインは、CES 2021のころまでには完了する見込みの拡張工事の最中にあるラスベガスコンベンションセンターにフォーカスしていた。新たに拡張されるラスベガスコンベンションセンターは工事が完了すれば広さは約200エーカーとなる。LVCVA(ラスベガス観光局)は施設内を歩き回る人は端から端まで2マイルを移動することになると試算し、これにより移動手段を確保する必要があるとの結論に至った。

3月、LVCVAはボーリングを推薦した。そしてLVCVAの取締役会は5月23日に事業契約を承認した。

この承認はかなりの条件が付随し、ボーリングに特定の目標を達成するよう求めている。その目標については、今月初めのThe Guardianに詳細が記されている。契約では、建設が完了するまで支払いの3分の2は保留され、ボーリングは利用者輸送に関する特定のゴールを達成しなければならない。

LVCVAはボーリングへの支払いとして、2019年に初めの120万ドル、そして翌2020年に1500万ドル、そして最終年の2021年には3247万ドルを見積もっている。

プロジェクトは現在のところ限定的だが、いつの日かダウンタウンとコンベンションセンター、ラスベガス・ブールバードのリゾート街道、マッカラン国際空港を結ぶことができるかもしれない、とボーリングは過去に述べている。

契約書類によると、この地下乗客輸送には車両用のトンネルと歩行者用のトンネルの計2本の建設が含まれている。2つのトンネルの長さは1マイル以下になることが想定されている。乗客が乗り降りする3つの駅、そして乗客が各駅へアクセスするためのエレベーターもしくはエスカレーターが設置される。

客を乗せるムーバーが完成すれば、部分的に変更が加えられたTesla(テスラ)の電動車で人々を高速で運ぶようになる。契約書にはこれらは自動運転車両と記されている(現在のところテスラの車両は自動運転ではなく、その代わり高度なドライバーアシスト機能を搭載している)。また、供用が開始される前に、ボーリングがシステムを3カ月間テストする、とも契約書にある。

マスク氏のボーリングが1つの契約を獲得した一方で、ワシントンD.C.とボルティモアを結ぶ、より野心的なLoopシステムのデザインについては安全面で懸念が出ている。

長さ35.3マイルのシステムの詳細は、505ページに及ぶ環境影響評価のドラフトで最近明らかにり、そこではデザインがいくつかの主要安全基準を満たしていないことがわかっている。この地下システムには非常用出口が十分になく、また最新のエンジニアリングプラクティスを無視していて、とある教授が「狂気の沙汰そのもの」と呼ぶ避難はしごを客に使わせようとしているようだ。

イメージクレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

イーロン・マスクの掘削会社、ニューヨーク・ワシントン間Hyperloopの予備認可を取得

ワシントンDCからニューヨークまで29分で行けるというのはウソのような話だ。実際、ウソっぽい。しかし、だからといってElon Muskの東海岸にHyperloopを走らせる計画は止まりそうにない。

そして、これはごくごく小さな一歩にすぎないが、Muskのトンネル掘削会社であるBoring Companyは、米国首都内で同計画の準備および予備掘削を実施するための認可を得た。正確な位置は「53 New York Avenue NE」、マクドナルドの隣で「アルコールたばこ火器爆発物取締局」の近くだとWashington Postは伝えている。

昨年7月、Elon Muskはツイッターで、東海岸の複数州にまたがる地下Hyperloopの建設について政府の許可を口頭で取り付けたと書いた。そのような許可は正式には存在しないが、Bloombergはトンネル計画について、ホワイトハウスとBoring Companyの間で前向きな会話があったことを確認した

この許可というのは、実際のトンネル —— ニューヨークからフィラデルフィア、ボルチモアを経由してワシントンDCに向かう —— を掘るために必要な許可とは大きく異なるが、まずは第一歩だ。最近Muskは、メリーランド州ホーソーンで総延長10.3マイル(約16 km)の運行を開始するための条件付き認可を取得した。メリーランド州政府は、トンネルは295号線の下を通ること、およびワシントン― ボルチモア間が最初に建設されることをWahington Postに話した。

Hyperloopの駅は、ニュヨークのユニオンステーションやペンステーションなどの見慣れた駅と比べると比較的小さなものになる。上記4都市をつなぐ主要路線のほかに、ニューヨークの中心駅から放射状に広がる小路線も計画されている。

現在ニューヨークからワシントンDCまでおよそ3時間かかる。移動時間1時間でミーティングに行けるならたしかに嬉しいが、この最初の認可は、レース前のアスリートがストレッチしているところに相当する。始まるのはこれからだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook