持続可能な自動車製造を目指すBMWが二酸化炭素を排出しない製鉄技術を開発したBoston Metalに投資

Boston Metal(ボストン・メタル)が開発した二酸化炭素を排出しない鉄鋼生産技術を支援する投資家グループに、BMWが加わった。

ボストンを拠点とするこのスタートアップ企業は、TechCrunchでも報じたように、2021年初めに5000万ドル(約54億5000万円)の資金調達を目標としていたが、同社の関係筋によると、BMWが加わったことでこのラウンドは終了したとのこと。

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自動車メーカーの投資部門であるBMW iVentures(BMW iベンチャーズ)の支援を受けることで、Boston Metalはより持続可能な製造方法を大規模に求める企業と関係を築くことになる。例えば、欧州にあるBMWグループのプレス工場では、年間50万トンを超える鉄鋼を加工しているという。

「当社は、サプライヤーネットワークにおいて、生産時のCO2排出量が最も多い原材料や部品を体系的に特定しています」と、BMW AGの取締役会メンバーであり、購買およびサプライヤーネットワークを担当するAndreas Wendt(アンドレアス・ヴェント)博士は、声明の中で述べている。「鉄鋼もその1つですが、自動車の生産には欠かせません。そこで私たちは、鉄鋼のサプライチェーンにおけるCO2排出量を継続的に削減することを目指しています。2030年までに、CO2排出量を現在よりも約200万トン削減する必要があります」。

従来の鉄鋼生産では、二酸化炭素を排出する高炉が必要だが、Boston Metalによると、同社が開発した方法では、電気分解セルで鉄鋼に加工される銑鉄を生産することができるという。

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が率いるBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)をはじめとする既存の戦略的・財務的投資家とともに、BMWは業界に莫大な影響力を持つ企業パートナーとしてこの投資家グループに加わり、今回の資金調達プロセスを締めくくることになった。

「当社の投資家は、上流の鉱山・鉄鉱石会社から下流の最終的な顧客まで、鉄鋼のバリューチェーン全体に及んでおり、高品質の鉄鋼を競争力のあるコストで大規模に生産できるBoston Metalの革新的なプロセスを評価してくれています」と、最高経営責任者で創業者のTadeu Carneiro.(タデウ・カルネイロ)氏は述べている。

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ビル・ゲイツ氏が支援するBoston Metalが金属産業の脱炭素化を目指し51.6億円調達

地球規模の気候変動に寄与する炭素排出量の約8%を鉄鋼生産が占めていいる。それは現代経済の根幹に位置する産業の1つであり、脱炭素化から最も程遠いものの1つだ。

世界中の国々が環境への影響を減らし、より持続可能な生産方法を採用しようと競争する中で、金属ビジネスから炭素を除去する方法を見つけることは、その努力に対する最も重要な貢献の1つとなるだろう。

この問題に対処するために新技術を開発しているスタートアップの1つが、Boston Metal(ボストンメタル)だ。Bill Gates(ビル・ゲイツ)が出資するBreakthrough Energy Venturesファンドが支援してきたこの新会社は、米国証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、事業拡大のための約6000万ドル(約51億9000万円)の資金調達ラウンドのうち、約5000万ドル(約51億6000万円)を調達したところだ。

コンサルティング会社McKinsey & Co.(マッキンゼー・アンド・カンパニー)が引用した調査によれば、世界の鉄鋼業界は環境への影響を削減できなければ、潜在的な価値の約14%が損なわれる可能性があるという。

2019年には2000万ドル(約20億6000万円)を調達したBoston Metalは、溶融酸化物電気分解(MOE、molten oxide electrolysis)と呼ばれるプロセスを利用して合金鋼を作り、最終的にはエミッションフリーの鉄鋼を生産する。同社CEOのTadeu Carneiro(タドゥ・カルネイロ)氏によれば、実際の資金調達は今から2年前の2018年12月に行われたのだという。

その最後の調達から月日は流れ、Boston Metalは当時の8人体制から今では50人近くの規模へと成長した。マサチューセッツ州ウォバーンに拠点を置く同社は、合金鋼を生産する3つのパイロットラインを1カ月以上継続的に稼働させることができている。

鉄鋼生産プログラムが最終的な目標であることに変わりないものの、同社は合金生産プログラムの商業化に向けて急速に進んでいる。カルネイロ氏によれば、従来のインフラやサンクコストに依存していないからだという。

Boston Metalの技術は、紀元前1200年の鉄器時代の幕開け以来、大きく変わっていない業界の技術を根源的に再考するものだと、カルネイロ氏は語る。

最終的には、技術開発者として鉄鋼を生産する鉄鋼メーカーやエンジニアリング会社にその技術をライセンスし、部品を販売することが目標だ。

Boston Metalにとって、製品ロードマップの次のステップは明確だ。同社は、2022年末までにウォバーンで準工業的小規模ラインを稼働させ、2024年か2025年までには最初の実証プラントを稼働させたいと考えている。「その時点になれば、私たちはこの技術を商業化することができるようになるでしょう」とカルネイロ氏は述べている。

同社のこれまでの投資家の顔ぶれは、Breakthrough Energy Ventures、Prelude Ventures、MITが支援する「ハードテック」投資会社のThe Engineなどだ。彼らは全員、投資会社Devonshire Investorsとともに、最新の現金注入に投資するために戻ってきた。Piva Capitalや別の匿名投資家とともに、金融サービス大手Fidelityが今回の投資を主導したが、Devonshire InvestorsはそのFidelityの親会社であるFMRと提携している。

SECへの提出書類によれば、今回の投資の結果、Shyam Kamadolli(シャム・カマドリ)氏が同社の取締役会の席に就くことになるという。

MOEは、金属を酸化物のままの状態で取り出し、溶融金属製品へと転換する手法だ。MITのDonald Sadoway(ドナルド・サドウェイ)教授の研究に基づいて、マサチューセッツ工科大学で発明された手法を使うBoston Metalは、特定の原料や製品に合わせた溶融酸化物を製造している。電子を利用してスープを溶かし、対象の酸化物を選択的に還元するのだ。精製された金属は容器の底部に溜まり、高炉技術から適応されたプロセスを使用して容器に穴を開けて取り出される。穴は塞がれ、その後処理が続行される。

同社によれば、この技術の利点の1つは、そのスケーラビリティにあるという。生産者はより多くの合金を作る必要性に応じて、生産能力を高めることができる。

同社の最高経営責任者(CEO)であるカルネイロ氏は、2019年に行った2000万ドル(約20億6000万円)の資金調達の際に「溶融酸化物電気分解は、幅広い金属や合金を生産できるプラットフォーム技術ですが、当社の最初の産業展開は、当社の最終目標である鉄鋼への道筋である合金鉄をターゲットにします」との声明を出している(Business Wire記事)。「鋼鉄は現代社会の必需品であるとともに、これからもそうあり続けるでしょう。しかし現在、鋼鉄の生産によって2ギガトン以上のCO2が生産されています。何千年も前から、鉄鋼を製造するためには同じ基本的な方法が使われてきましたが、Moston Metalは石炭を電子に置き換えることでそのパラダイムを打ち破ります」。

テック業界における最高の著名人であるビル・ゲイツ氏自身も、金属事業の脱炭素化の重要性を強調している。

ゲイツ氏は自身のブログであるGatesNotesの中で「Boston Metalは石炭の代わりに電気を使って、同じように安くて強い鉄鋼を作る方法を開発しています」と書いている。一方ゲイツ氏は「もちろん、クリーンな電力を使ったとしても、電化は排出量の削減を助けることができるだけです。それがゼロカーボンの電気(GatesNotes投稿)を手に入れることが重要であるもう1つの理由なのです」という注意も喚起している。

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(翻訳:sako)