EUがゲイツ氏のBreakthrough Energyと提携、クリーンテックの開発・浸透加速へ

欧州委員会は、今後5年間(2022〜2026年)で最大10億ドル(約1095億円)をクリーンテックと持続可能なエネルギープロジェクトへ新たに投資することを目的に、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の持続可能エネルギー投資ビークルとの提携を発表した

この提携がフォーカスする欧州連合(EU)ベースのプロジェクトはまず、欧州域内の二酸化炭素排出の大幅削減をもたらす可能性がある以下の4つの部門に絞られる。

  • グリーン水素
  • 持続可能な航空燃料
  • ダイレクトエアキャプチャー(大気中のCO2を直接回収するテック)
  • 長期間のエネルギー貯蔵

化石燃料ベースの既存のテクノロジーと競うには現在あまりにも高価であるテクノロジーを大規模展開するのが目的だ。

両者は今後、11月に開催される国連気候サミットCOP26会議で何か発表することを視野に入れながらプログラムの計画に引き続き取り組むと述べた。

欧州委員会とゲイツ氏のBreakthrough Energy(ブレークスルーエナジー)が持続可能な投資で協業するのは今回が初めてではない。しかし最新の提携の規模は、EUが2019年にBreakthrough Energyのベンチャー投資部門と設置した1億ユーロ(約134億円)のファンドを大きく上回る。

そして今、欧州委員会は低炭素社会を支えるのに必要なテクノロジーの開発と浸透を加速させることを目的とするゲイツ氏のBreakthrough Energy Catalystと提携した。クリーンテクノロジーのための大規模な商業実証プロジェクトを構築するのに、先の基金の10倍超の規模の資金を動員するためだ。

もちろん重要な目標は、パリ協定に沿ってCO2排出を大幅に削減するためにクリーンテックのコストを下げ、展開を加速させることだ。

欧州はCO2排出の主要地域だが、欧州グリーンディールの下で2050年までにネットゼロエミッションを達成することを約束している。

一方、2015年に設立したBreakthrough Energyビークルについてのゲイツ氏の哲学は、壊滅的な気候変動を回避するにはリニューアブル(再生可能)だけでは十分でなく、ハイリスクではあるが大きな効果をもららす可能性のあるさまざまなテクノロジーへの投資も必要、というものだ。

しかしこの手の投資のリターンを得るのは長期戦であることを考えると、官民の提携は資金調達パズルの重要な一部のようだ。

提携発表に関するコメントとして、 欧州委員会の委員長Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は声明文で次のように述べた。「欧州グリーンディールで、欧州は2050年までに初の気候中立大陸になりたいと考えています。そして欧州は気候イノベーションの大陸になるすばらしい機会も手にしています。このために欧州委員会は今後10年で、新しい、そして転換中の産業にかなりの投資を集中させます。だからこそ、Breakthrough Energyと手を組むことをうれしく思っています。提携はEUの企業やイノベーターが二酸化炭素排出を減らすテクノロジーの恩恵を受け、明日の雇用を生み出すのをサポートします」。

別の声明文でBreakthrough Energy創設者であるゲイツ氏は次のように述べた。「世界経済の脱炭素化は世界が今までに目にしてきたイノベーションにおいて最大の機会です。欧州は気候、そして科学、エンジニアリング、テクノロジーにおける長年のリーダーシップに早期から一貫したコミットメントを示してきて、今後も重要な役割を果たします。この提携を通じて欧州はクリーンテクノロジーが皆にとって信頼がおけ、利用可能で、そして利用しやすいものになるというネットゼロの未来のために確固たる土台を築きます」。

EU側では、提携のための資金はEUの主要R&D基金、Horizon Europe、そしてInvestEUプログラムのフレームワーク内の低炭素にフォーカスしたInnovation Fundから拠出される見込みだ。

Breakthrough Energy Catalystはいくつかの選ばれたプロジェクトの資金をまかなうために同額の民間資金と慈善事業基金を注ぐ。

提携はまた、InvestEUを通じてあるいはプロジェクトレベルでEU加盟国による国家の投資にもオープンだ、と欧州委員会は指摘した。InvestEU実行パートナーになるという意思表示は2021年6月まで受け付ける、とも付け加えた。

再生可能エネルギーと(これまで以上に)クリーンな運輸は、欧州委員会が2020年まとめた7500億ユーロ(約100兆3237億円)という巨額の「Next Generation EU」コロナ復興基金においても注力している分野だった。欧州委員会はコロナ復興のために債券発行を通じて金融市場で借金する、と述べた。コロナ復興基金は2021年から2024年の間にEUプログラムを通じて使われる。

欧州議員たちはまた、主要な投資が向かう他のエリアのデジタル化とAIテクノロジーが欧州のグリーン移行において大事な役割を果たすとの考えも示した。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:EUビル・ゲイツBreakthrough Energy二酸化炭素

画像クレジット:Mark Lennihan / AP

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi