アップルの天気アプリに空気質指数を提供するBreezoMeterが「山火事トラッカー」発表

BreezoMeter(ブリゾメーター)は、環境汚染による健康ハザードをできるだけ多くの人に知ってもらうことを使命としている。イスラエルを拠点とする同社は、空気質指数(Air Quality Index、AQI)の計算を通じて、今では数十カ国で数メートル単位の大気質を識別できるようになった。また、Apple(アップル)との提携により、同社のデータをiOSの「天気」アプリや自社の人気アプリに組み込み、さらに他企業が独自の目的でデータセットを利用できるAPI製品を通じ、数億人のユーザーにこれらの指標を提供している。

数週間前に3000万ドル(約33億円)のシリーズCラウンドを調達したのに続いて、同社は新製品「Wildfire Tracker(森林火災トラッカー)」を発表し、大気の質から山火事の周辺地域のリアルタイム検知へと製品を放射状に拡大した。

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この新製品は、同社のセンサーデータ、衛星画像、現地の目撃情報を融合して、山火事の範囲をリアルタイムに把握することができる。共同設立者兼CEOのRan Korber(ラン・コーバー)氏はこう語った。「人々は、正確な天気や湿度のデータを期待するのと同じように、正確な山火事情報を求めています。彼らの生活に、直接影響する情報だからです」。同氏はさらに、BreezoMeterは「気候テックと人の健康をつなぐ橋渡し役になっていきたい」と付け加えた。

火災危険区域はポリゴンの境界線で赤く表示され、従来通り、これらの区域とその周辺地域の大気質データを見ることができる。

BreezoMeterの大気質マップは、山火事の汚染の広がりを簡単に示すことができる(画像クレジット:BreezoMeter)

コーバー氏は、そうした境界線を数十カ国にわたって正確に把握するのは、簡単なことではないと強調した。特に山火事が発生するような森林では、センサーの数が少ないこともある。また、熱画像を中心とした衛星データは惑わされることがあり得る。同氏は「私たちは異常を探しているわけですが、多くの場合、誤検出が起こります」という。例えば、大規模なソーラーパネルアレイは、熱センサーでは非常に熱く見えるが、明らかに火災ではない。

このようにして特定された火災の周辺地域は、BreezoMeterの大気質マップウェブサイトで消費者に無料で提供され、まもなく同社のアプリにも導入される予定だ。また、2021年後半には、これらの境界線を同社のAPIから商業顧客向けに提供する予定だという。コーバー氏は、APIエンドポイントを利用することで自動車メーカーなどの企業が、ドライバーに火事が近づいていることを警告できるようになると期待している。

今回の新機能は、BreezoMeterが長年にわたって行ってきた製品の拡張の延長線上にあるものだ。「設立当初は、大気質のみ……それもイスラエル国内の大気汚染を予測するだけのものでした」とコーバー氏はいう。「それ以来、ほぼ毎年、新しい環境ハザードに製品ポートフォリオを拡大してきました」。2018年には花粉情報が追加され、アプリのグローバル化が進んでいることを同氏は指摘した。

山火事の検知は、VC投資家にとって最近ホットな分野だ(失礼)。例えば、Corneaは消防士が火災を検知して軽減することに焦点を当てたスタートアップであり、Perimeterは山火事の境界範囲を識別して、地図付きの明確な避難指示を出すことを目指している。シリコンバレーのあるカリフォルニア州をはじめ、世界中の多くの地域で森林火災が多発するようになってきている中、この分野への投資や製品の投入が増えることが予想される。

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画像クレジット:David Odisho/Bloomberg / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Aya Nakazato)

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Ran Korber(ラン・コーバー)氏は、喘息持ちで妊娠中の妻と一緒に、イスラエルに家を買おうとしていた。環境エンジニアである同氏は、大気汚染が早死の最大の原因であること、早産の原因になること、その他の呼吸器系の病気の原因になることを知っていた。コーバー氏はイスラエルで最も汚染の少ない都市を探し始めたが、そのような情報は存在しないことに気づいた。そこで感じた不満から、花粉、大気汚染、山火事、天候のカテゴリーで40種類の汚染物質を予測するツール、現在の「BreezoMeter(ブリゾメーター)」を作った。

同社は米国時間6月28日、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)が主導するシリーズCラウンドで、3000万ドル(約33億2000万円)を調達したと発表。これまでに同社が調達した資金の総額は4500万ドル(約49億8000万円)に達した。イスラエルに拠点を置くこの会社は、コーバー氏が妻と家を探していた時から約2年後の2014年に設立された。

BreezoMeterの共同創業者で、現在CEOを務めるコーバー氏は「多くの国では、人々は自分の周りの空気について何も知りません」と、TechCrunchに語った。

BreezoMeterは、AIと機械学習を活用して、世界中に設置されている4万7000基以上のセンサーを含む複数のソースからデータを収集・把握し、100カ国以上の街頭レベルの大気質データ(5メートル間隔)と、花粉、汚染物質、火災のデータを提供している。

Apple WatchやiPhoneを持っている人でも知らなかったかもしれないが、どちらもApple(アップル)の「天気」アプリにBreezoMeterが組み込まれている。どこの都市の天気でも、下にスクロールすると、BreezoMeterによる大気質の指標が表示される。米国のAQI(大気汚染指数)は、0から500のスケールで表示され、0が最もクリーンな状態。ここマイアミの空気の質は、昨日は36(良い)、今日は51(中程度)だった。それに比べてニューヨークの空気は、今日は34(良い)で、マイアミよりも良好だ。

BreezoMeterは、現在の空気の質を測定するだけでなく、予測することも可能なので、自分の感受性に合わせて準備しておくことができる。

コーバー氏は「花粉の飛散時期がいつから始まるのかを予測し、2つの異なる場所の間で花粉がどのように移動するのかを予測することができます」と語っている。

自分の感受性がよくわからなくても、自分がいる場所の空気の質を知っていれば、少なくとも症状に用心することができるだろう。

「空気中の汚染物質の種類によって、BreezoMeterはそれが引き起こす症状を教えてくれます」と、コーバー氏はいう。

問題は、汚染そのものだけでなく、大気質について大きな情報格差があることだ。環境保護庁(EPA)によると、米国では約1億2000万人の人々が、大気汚染のモニタリングが行われていない地域に住んでいるという。

「BreezoMeterが作られる以前は、誰もが同じセンサーのデータを使用していましたが、今ではそれらのセンサーに加えて、交通量、山火事、衛星、ローカルセンサーなどのデータを収集し、花粉については土地利用も考慮しています」と、コーバー氏は語る。

センサーが簡単に破壊されてしまうのは、山火事の時だ。「センサーは文字通り燃えてしまうのです」と、コーバー氏はいう。この問題を回避するために、BreezoMeterは衛星からのデータを含む、他の多数のセンサーを頼っている。

「毎日3億人以上の人々が当社のプラットフォームを利用して、環境上の危険を回避するための情報に基づいた意思決定を行っています」とコーバー氏は述べているが、誰もがアップルの天気アプリのみを利用しているわけではない。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息を持つ人であれば、Resmed(レスメド)傘下のPropeller製品に組み込まれたBreezoMeterの恩恵を受けているかもしれない。Propellerは、空気質に応じて、窓を閉めたり、吸入器を使用したりなど、健康状態を改善するために何をすべきかを患者に伝えるデバイスを製造している。

BreezoMeterによると、PropellerがBreezoMeterを製品に組み込んで以来、Propellerの患者は、喘息発作が約50%減少し、ER訪問も減ったという。

BreezoMeterは今回調達した資金を、より多くの製品カテゴリーの開発や、チームを3倍の約120人に増やすことに充てる予定だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:BreezoMeter空気監視iPhone資金調達イスラエルアプリ

画像クレジット:BreezoMeter

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)