メディアプラットフォーム「note」運営が日経らから4億円を調達、新サービスの共同開発も

写真左からピースオブケイクCXOの深津貴之氏、ピースオブケイクCEOの加藤貞顕氏、日本経済新聞の渡辺洋之氏

クリエイターメディアプラットフォーム「note」やコンテンツ配信プラットフォーム「cakes」を運営するピースオブケイクは8月3日、日本経済新聞社、日本ベンチャーキャピタル、新潟ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、約4億円を調達したことを明らかにした。

そのうち日経新聞社とは業務提携も締結(日経新聞側では今回3億円を出資したことを発表)。合わせて日経新聞社の常務取締役である渡辺洋之氏がピースオブケイクの社外取締役に就任している。

今後両社では双方の強みを生かした新しいサービスの開発・運営を共同で推進していく方針。具体的にはnote上での日経コンテンツの展開、日経上でnoteクリエイターの表現活動の展開、新サービスの共同開発などを進めるという。

ピースオブケイクは2011年の設立。代表取締役CEOの加藤貞顕氏がアスキーやダイヤモンド社で雑誌や書籍、電子書籍の編集に携わったのちに立ち上げたスタートアップだ。

2012年に公開したcakesは週150円でクリエイターの記事が読める定額制のサービス(8/3時点では2万本以上の記事が読み放題)。2014年からは個人がコンテンツを配信し、個人間で販売までできるプラットフォームnoteの運営も始めた。

特にnoteに関してはミレニアム世代を中心に月間600万人を超えるユーザーが集まるサービスに成長。多方面のクリエイターからTechCrunchにも登場したことのある起業家まで、さまざまな個人がnoteを通じて自分の意見を発信したり、コンテンツを販売したりしている。

今回日経新聞社と提携するにあたって加藤氏は「ピースオブケイクのミッションは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」ということです。創業以来一貫して、クリエイターが活躍できる場をつくることに注力してきました。今回の提携により、我々のサービスを利用するクリエイターが、ビジネスという新しい活躍の舞台を得られます。新しいものをつくる、次代のリーダーとなる人々が、活躍する場を一緒に作っていければと思います」とコメントしている。

なおピースオブケイクは2013年4月にフェムトグロースキャピタルとジャフコから3億円を調達。そのほか金額は非公開ながら、2012年から2017年の間にサイバーエージェント・ベンチャーズ電通デジタルファンドTBSイノベーション・パートナーズイードからも資金調達を実施している。

ベテラン編集者が手がける「note」は個人の発信とコミュニケーション、課金までをワンストップで実現する

週150円でクリエーターやコラムニストの記事約4600本を閲覧できる「cakes」。このcakesを手がけるピースオブケイクが、個人向けのメディアプラットフォーム「note」 を4 月7 日に公開した。

noteでは、トーク(Twitterのような短文と画像)、イメージ(写真やイラスト)、テキスト、サウンド、ムービーといったコンテンツを1つの「note」というプラットフォームに投稿して公開できる。note上でほかのユーザーとコミュニケーションをとったり、お気に入りの投稿に「いいね!」同様の「スキ」をつけたり、ほかのユーザーをフォローしてタイムライン上で更新情報を閲覧したりすることも可能だ。ユーザーの好みや時間帯に合わせて、最適なコンテンツもレコメンドするという。


また、コンテンツ単位での課金、コンテンツ全体での継続課金も可能(継続課金およびムービーへの課金は今後対応)となっているほか、課金する場合はどこまでを無料で「チラ見せ」するかも指定できる。決済手数料および、販売価格から決済手数料(5%)を引いた額の10%がコンテンツの販売手数料となる。決済手段は現在カードのみだが、今後は各種の決済手段に対応する。

「個人のクリエーターが気持ちよく活動できる場所、ここでビジネスをして、ごはんを食べられるようにするという場所にしたい」——ピースオブケイク代表取締役CEOの加藤貞顕氏はこう語る。加藤氏はアスキーやダイヤモンド社で雑誌や書籍、電子書籍の編集に携わったのちに起業。2012年にcakesを公開した。

cakesは著名人のコンテンツが中心となったプラットフォームだ。だが加藤氏は当時から誰でも個人で発信できるプラットフォームを作ることにも興味を持っていたのだという。「たとえばある作家が書籍を出した場合、それはファンが買っている。でも作家は雑誌にも連載を持っていたりする。作家にとっては雑誌は『出会いの場』であり、書籍は『コミュニケーションの場』。こういったものを、個人向けにも提案したいと思っていた」(加藤氏)

そういった出会いの場、コミュニケーションの場としてオンラインで機能しているのは、メールマガジンやオンラインサロンではないかと加藤氏は考える。だが、メールマガジンでは表現力も乏しく、インタラクティブな部分も質疑応答コーナーがある程度。一方でオンラインサロンはコミュニケーションが中心でコンテンツが乏しくなる。加藤氏は「ウェブの良さはインタラクティブで、オープンで、シェアできること。(メールマガジンやオンラインサロンのように)『閉じる』場所と、『開いている』場所を統合できれば、それこそが未来の本の姿になるのではないか」と説く。そこでnoteでは、無料ブログやTwitterのような開かれた場と、有料でコミュニケーションする場、有料でコンテンツを販売する場を1つにして提供するのだという。

こう書くと、クリエーター向けのサービスのようにも思うかもしれないが、加藤氏は「個人にブログ感覚で利用して欲しい」とも語っている。僕も実際にデモを利用してみたのだが、テキストの投稿などは(加藤氏は「Mediumを意識した」と語っていたが)非常に直感的なユーザーインターフェースを採用しており軽快だし、写真もアップロードするだけで、それなりの見栄えになる。将来有料でコンテンツを販売するかはさておき、まず無料ブログとして利用してみてもいいだろう。