スタートアップ企業がテレビCMを放映する狙いとその効果

独立系ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesが主催するB Dash Campは、例年春と秋に開催されるスタートアップの祭典だ。業界の著名人が数多く登壇するセッションが多いことでも知られる招待制のイベントで、今年の春は5月23日、24日に北海道・札幌で開催されている。

そのイベントで開催された「テレビ広告のベストプラクティスを探る」というテーマのセッションには、GOの三浦崇宏氏、ヘイの佐藤裕介氏、ラクスルの田部正樹氏、マネーフォワードの辻庸介氏が登壇した。

同一ジャンルで真っ先にCMを放映し純粋想起を促す


まずは、数々の広告を手がけているPR/マーケティング会社のGOでクリエイティブディレクターを務める三浦氏は「CMには驚きがないと視聴者は反応しない」とコメント。最近のCMでは「ハズキルーペのCMは素人くささの残る演出だが、それが逆に視聴者の驚きになって結果的には大きな宣伝効果を生んだ」と語る。

さらに「サービスへの信頼、好意を持たせるためにはタレントを起用するべき」とも。特にあまり知られていないサービスほど、タレント起用の意義は大きいという。最近の視聴者はどんどん疑い深くなっているが、知っているタレントが出ているCMであれば安心感を持つ人が多いとのこと。

例えば、三浦氏が手がけたクラウドファンディングのCAMPFIRE(キャンプファイヤー)のCMについては「(CAMPFIREのほか、MakuakeやReadyforなど)3大プレイヤーがいる業界なので、その中でいち早くCMを打って認知を高めたかった」という。クラウドファンディングといえば、CAMPFIREという純粋想起を狙ったCMだという。そのため「15秒版よりも30秒版のほうを多く配信している」とのこと。このCMの出演者は、タレントののんと、チャップリンパフォーマーのジェイソン・アーリンという、多くの人が知っているタレントを起用している。

ほかにもさまざなタレントと交渉したそうだが、金銭面での折り合いが付かなかったり、「自分が責任が持てないサービスには出演できない」「夢を叶えるサービスに夢をすでに叶えた人間が出るのかどうか」などの理由で断られたそうだ。

さらに三浦氏は、CMとタレントという文脈で最近の面白い会社として、腹筋などを低周波で鍛えるトレーニングギアの「SIXPAD」で有名な名古屋を拠点とするMTGを紹介。「MTGはCMにクリスティアーノ・ロナウドを使っているが、あれはロナウドに自社の株式を分けたことで成立した案件」とのこと。同社はスキンケアブランド「MDNA SKIN」も展開しており、このイメージキャラクターになっているマドンナにも同様の契約を結んでいるそうだ。

さて、CAMPFIREのCMについて三浦氏は「CAMPFIREなどのクラウドファンディングを始めたいと考えるターゲットユーザーはテレビの前にはいない」とも言う。テレビの前の99%の人はクラウドファンディングでプロジェクト始める人ではないが、そういう人に向けてクラウドファンディングが健全なサービスであることを周知するという狙いもあったという。実際にクラウドファンディングには「お金がないから支援してください」という負のイメージをもたれることもまだまだあるそうだ。

続けて三浦氏は「CM業界では、宣言編のあとに展開編が続くことが多いが、今回手がけたCAMPFIREのCMはクラウドファンディングを認知させる宣言編」だったという。CAMPFIREはまだ展開編のCMは作ってないそうだが、宣言編のCMを流したあとに鉄道駅などにポスターを掲示したところ、ポスターを見たユーザーがYouTubeでCMを見直すという現象も起きたそうだ。そしてCMを作る側の人間は「こういった宣言編のCMをやりたい人がいっぱいいる」とのこと。

同業他社にぶつけて認知度を上げるコイニー


ヘイの佐藤氏は、同社が提供しているキャッシュレス決済サービス「コイニー」のCMを紹介。このCMは、ナレーターなどを除くとほぼ社内で制作したそうだ。CMの目的は、キャッシュレス決済というカテゴリーと、コイニーの付加価値を訴求すること。より大手の同業他社がCMを放映している時期を狙い、一定期間は放映期間を被せつつ、CM内でサービス名を連呼して認知を高める作戦だったそうだ。

この戦略を採ることで、コイニーよりも資金を投下してタレントを使った他社CMを見た視聴者が「○○が出ているコイニーだよね」といった勘違いを誘導する狙いもあったそうだ。そのほか、トヨタなどの大手企業のCMのあとに流してもらって安心感を高めるという施策も実行したそうだ。ちなみにコイニーのCMについてラクスルの田部氏は「視聴者は上戸彩が出てるのは紳士服のアオキとコナカのどっちだっけ?というレベル。それならCMを打ちまくってやりきるのが大事」とコメントした。

ラクスルはABテストで放映CMを決定


そのラクスルの田部氏は自社のCMについて、コストを抑えられる地方、地方大都市、首都圏・関西圏にフェーズを分けてCMを配信したとのこと。第1フェーズではCM放映後にどういったキーワードが検索されるかをチェック、第2フェーズではタレントは女性がいいのか男性がいいのかを複数のCMを流して比較。こういったABテストを各2カ月、計4カ月繰り返したうえで、評価が高かったものを首都圏などに配信するという手法を採ったそうだ。

地方でCMを打ったところ「ネット印刷」というキーワードはさほど検索されず、「チラシ印刷1枚1.1円」や「ラクスル」という言葉への反応が高かったとのこと。そして好感度については、男性タレントよりも女性タレントのほうがウケがよかった。

その結果、首都圏など放映されているCMには「チラシ印刷1枚1.1円」のキーワードやタレントののんが起用されている。田部氏は、チラシなどの印刷市場は3兆円ほどと言われていて、最近はネット印刷が1年100億円規模で増加している。競合大手がいる中でラクスルはこの年間の増加額の過半数をとっているとのこと。「一度CMをやりきって認知させておけば、その広告費を減らしても売上が落ちない。こういった数字は資金調達の際にも重要」と語る。

タレント起用で認知度を高めたマネーフォワード


マネーフォワードの辻氏は、自社のCMについて「当初私は、タレントなんて使わなくていいのはないかという反対派だったが、実際に放映してみるとタレントを起用したCMのほうが圧倒的だった」とのこと。本当は会社の使命などの想いをCMでも伝えたいが、詰め込んでも視聴者の頭からは抜けてしまうのが悩みどころとのこと。理想としているのは、巨人軍の終身名誉監督である長嶋茂雄氏が出演しているセコムのCMとのこと。ちなみに辻氏の「これから起用するなら誰?」という問いに、クリエイティブディレクターの三浦氏は「イチロー氏」と即答。


マネーフォーワードCMは、チュートリアル徳井、オリエンタルラジオ、ローラなどを起用してきたが、現在では藤田ニコルをはじめさまざまなタレントやキャラクターが出演している。現在のCMは出演するタレントに実際にお金に対する考えて書いてもらってからCMに臨んだそうだ。ちなみに「つば九郎のCMは社内で評価が高かったのですが、つば九郎はしゃべらないというキャラ設定のため、CMでもフリップをめくるだけで音がなく、視聴者に刺さらなかった」と苦笑いした。

そのうえで、CPA(顧客獲得にかかる広告の費用対効果)は2年できっちりと刈り取るため、CMを受けてのウェブのほうにはかなり力を入れたそうだ。「なぜCMを放映したのか?」という問いには、「競合のプレーヤーがいるカテゴリーで真っ先にCMをやりたかった」とのこと。辻氏は続けて「そのために、資金調達したらすぐにCMに投下していた」と振り返る。CAMPFIREのCMと似た傾向だ。

プロダクトやサービスが一定水準に達したあとに、スタートアップ企業が新たな資金調達に成功するとテレビCMを打つというのは、最近では当たり前になってきた。今回のセッションを終えて個人的に感じたのは、至極当たり前だが「とにかく目的を持ってやりきることが大事」ということだ。

“1000部読み手がいれば本が出せる”出版クラウドファンディング「EXODUS」始動

CAMPFIREと幻冬舎の共同出資により、「クラウドパブリッシング」事業を提供しようと2018年3月に立ち上げられたエクソダス。2017年12月の設立発表から1年以上動きがなかったエクソダスだが、5月13日、ついにクラウドファンディングを使った出版プログラム「EXODUS(エクソダス)」が始動した。

満を持してスタートしたEXODUS。記念すべき第1号プロジェクトでは、駐車場シェアリングの「akippa(アキッパ)」を運営するakippaの代表取締役社長、金谷元気氏がプロジェクトオーナーとなり、営業会社からITスタートアップに転身した、金谷氏自身の起業ストーリー出版を目指す。

エクソダスは、出版不況の背景にあるのは若者の活字離れではなく、「本の情報が的確に届かない、欲しい本があってもすぐ買えない」ことにあると考えている。「1万部売れることが見込めないと本が出せない」と言われる出版界。クラウドファンディングの活用により、1000部読み手がいれば出版できる仕組みを構築し、本を最適な読者に届けようというのが、エクソダスの狙いだ。

EXODUSは一般ユーザーから、フリーライターや出版社、編集プロダクションなどの業界に属する企業までを対象とした出版プラットフォームを目指している。CAMPFIREはクラウドファンディングのノウハウを、幻冬舎は企画力や編集力、宣伝力をそれぞれ提供し、持ち込まれた出版アイデアを「本」にする支援を行っていく。

CAMPFIREは2011年のクラウドファンディングサービス開始以来、現在までに2万1000件以上のプロジェクトを掲載、支援者は述べ121万人以上、流通金額115億円に達している。クラウドファンディングの「CAMPFIRE」「polca」といったサービスのほか、金融サービス「CAMPFIRE Bank」、コミュニティウォレット「Gojo」、プロジェクトメンバー集めのプラットフォーム「tomoshibi」などを運営する。5月6日にはシリーズCラウンドで総額22億円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

CAMPFIREがJR東と共同で地域商品開発を支援、日本酒やいちごチョコなど

CAMPFIREは3月13日、地域商品開発を目的としたプロジェクト5件を同社のプラットフォーム上に公開、支援をスタートした。

この支援は、2018年11月に東日本旅客鉄道(以下JR東日本)とJR東日本スタートアップが主催する「JR東日本スタートアッププログラム2018」にCAMPFIREが採択され、共同で地域振興を図る「地域にチカラを!プロジェクト」の一環として行われるもの。

2社共同プロジェクトでは、「地域商品開発」「無人駅の活用」の2つのテーマで新規事業案を募集し、CAMPFIREはクラウドファンディングのプロジェクト立ち上げをサポートし、JR東日本はPR・販路をサポートする。

2018年12月から約1カ月間、事業案を公募したところ、50件を超える応募があったという。その中から2社が選んだ地域商品開発部門の5件のプロジェクトを対象に、先行してクラウドファンディングが始まった。

今回選出されたプロジェクトは以下の通り。いずれも地域の食文化や素材を反映したユニーク(でおいしそう)な商品だ。

1)こだわり農園の果汁はじける 青森県産”完熟”りんごジュレを全国へ発信したい!

りんごの名産地、青森県で採れた完熟ストレート果汁を原料比70%使用した夢のりんごジュレ。人工キャビアの製造ノウハウを生かし、口当たりが抜群なジュレはまさに「飲む果実」です。

2)絶景が一望できる海の街・銚子 体にやさしいお煎餅「素米ruコーン」で笑顔を増やそう!
“醤油の街”としても知られる千葉県・銚子で、ぬれ煎餅やおかきを製造販売する創業69年の米菓専門店が、お客様の声に耳を傾けて開発したグルテン・アレルゲン・添加物フリーのとうもろこしパウダーを使った、体にやさしい煎餅「素米ruコーン」です。
3)岩手県宮古湾産「牡蠣の佃煮」を日本全国で、そして海外でも売れる商品にしたい!
岩手県宮古湾産の、厳選した大粒の牡蠣だけを100%使い、シンプルな味つけでコトコト炊きあげた佃煮。牡蠣本来の旨味が味わえる、この佃煮はお酒の肴としてはもちろんのこと、研いだお米に混ぜれば炊き込みご飯としてもおいしく召し上がれます。
4)【北海道産夏いちごのしみチョコ】北海道の新しい定番のおみやげを作る!!
北海道産夏いちごをフリーズドライにし、ホワイトチョコレートを染みこませた「しみチョコ」。特許を取得した製造機を使用することで、夏いちごは収縮しないまま、色彩・香り・風味を損なわずにサクサクとした新鮮な食感が楽しめます。
5)180ml→90mlへ。これで日本酒がもっと楽しめる、日本酒ハーフカップ。
酒造数全国一を誇る“日本酒王国・新潟”にある、越後のお酒ミュージアム「ぽんしゅ館」からお届けする飲みきりサイズのハーフカップの日本酒。「越後魚沼のドラマを食で語る」をコンセプトに、生産者の思いとともにお客様へお届けします。

目標金額を達成したプロジェクトには、JR東日本からのサポートのもと、デザイナーが商品のパッケージデザインを手がけ、リブランディングが行われる。また、対象商品はJR東日本の地産品ショップや駅構内での販売も予定されている。ファンディング募集期間は4月29日まで。

CAMPFIREがコミュニティウォレット「Gojo」をBrainCatより事業譲受

CAMPFIREは1月10日、BrainCatが運営していたコミュニティウォレット「Gojo」(ゴジョ)の事業譲受を発表した。事業譲受自体は2018年12月に済ませており、2019年1月より運営移行を開始している。

Gojoは、スマートフォンアプリを通じてコミュニティのメンバー同士が、お金や情報を共有できるプラットフォームサービス。BrainCatが2018年6月に運営開始し、2018年12月末時点で流通金額累計は約4000万円となっていた。

Gojoという名称は、日本には昔から存在する地域自治会、無尽、マンション管理組合といった「相互扶助」から名付けられている。具体的な使用例としては、祭りの青年会、フリーランスが協業するためのオンラインスペース、シェアハウスの共益費管理などで使われてきたそうだ。

CAMPFIREが事業譲受に至ったのは、Gojoの理念である「人民間の助け合いをベースにした金融システムの構築」と同社の「小さな経済圏への支援」がマッチしたからとのこと。本事業譲受によってGojo単体で2022年度中に流通金額累計100億円到達を目指すという。

CAMPFIREが金融サービス「CAMPFIRE Bank」開始、支援者への融資など対象領域を拡大へ

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を軸に、プロジェクト起案者向けの融資サービス「CAMPFIRE レンディング」やフレンドファンディング「polca」などお金に関する複数の事業を展開してきたCAMPFIRE。

同社は10月23日より金融サービス「CAMPFIRE Bank」の提供を開始した。

CAMPFIRE Bankは個人・法人問わずCAMPFIREでプロジェクトを実施したユーザー、支援したユーザーを対象に、上限200万円の融資を行うサービスだ。2017年7月に開始したCAMPFIREレンディングでは起案者者のみが融資の対象となっていたが、それを支援者にまで広げることになる。

具体的には起案者向けの融資サービスとして、従来のCAMPFIREレンディングを「CAMPFIREステップアップローン」の名称に改め提供。支援者向けの融資サービスとして「CAMPFIREユーザーローン」もスタートする。

CAMPFIREステップアップローンは過去にCAMPFIREで「All-or-Nothing」または「All-in」のいずれかでクラウドファンディングを実施し、資金調達に成功したことがあるユーザーが対象。商品の追加制作費やイベントの追加開催費など、プロジェクト終了後の資金ニーズに応える。

一方のCAMPFIREユーザーローンは過去にCAMPFIREでプロジェクトを支援し、リターンを購入したことがあるユーザー向けのサービス。限定個数が設定されている高額なリターンを支援する場合など、急遽発生した資金ニーズに対応するためのものだ。

双方とも借入上限金額は200万円で貸付利率が8〜15%(年利)。返済期間は最大12ヶ月になる。

特徴はCAMPFIRE独自の支援者による評価を軸とした「評価型与信モデル」を採用していること。過去のクラウドファンディングにおける支援実績をスコアリングして与信材料のひとつとしているため、起案者の場合は支援者数や支援金額を集めているほど、支援者の場合はクラウドファンディングを支援しているほど借入条件がよくなるという。

CAMPFIREでは今後、ソーシャルレンディング事業を含む金融サービスの新規開発や、アジアを中心とした海外融資事業の展開も計画。引き続き「資金調達の民主化」を目指して事業を広げていく方針だ。

CAMPFIRE、APAMANグループ会社と資本提携——fabbitとの業務提携に続きスタートアップ支援を推進

クラウドファンディングプラットフォームの「CAMPFIRE」などを運営するCAMPFIREは8月1日、APAMANグループに属する子会社を通じて出資を受け、資本提携を結んだことを明らかにした。この提携は6月に行ったAPAMANのグループ会社fabbitとの業務提携に続くもの。出資金額などは公開されていない。

コワーキングスペース運営やスタートアップ支援を行うfabbitとの6月の提携では、クラウドファンディング実施時のプロジェクトページの作成サポートやイベント実施時の会場レンタル、プロダクトの常設展示場所提供による「スタートアップ支援プログラム」を開始した。

このプログラムは、CAMPFIREの持つ資金調達ノウハウと、国内外で35カ所のコワーキングスペースを運営、約3000社(名)の会員を持つfabbitの施設と会員をつなげてサポートを実施することで、個人やスタートアップ企業の資金調達を支援するというもの。fabbit会員はCAMPFIREの手数料を、CAMPFIRE会員はコワーキングスペースやイベント会場を特別価格で利用することができる。

今回のAPAMANグループ資本提携により、両社はスタートアップ支援プログラムをより強力に推進することを目指すとしている。

CAMPFIREはこの数カ月、他社との連携を積極的に進めている。6月1日には老舗アパレル企業のワールドと資本業務提携を締結。ファッション領域でクリエイターや企業などを支援する取り組みを始めている。またパルコとの業務提携により、7月26日からパルコが運営していた購入型クラウドファンディング「BOOSTER(ブースター)」の共同運営を開始している。

「服作りをもっと自由に軽やかに」CAMPFIREとワールドが新たなファッションの仕組み作りへタッグ

写真左からCAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏、ワールド代表取締役 社長執行役員の上山健二氏

「イメージとしてはファッション業界版のインキュベーションのような仕組みに近い。もっと自由に、軽やかに、ファッションやブランド作りに挑戦できる環境を作りたい」――CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏は、これから老舗アパレル企業と始める取り組みについて、そのように話す。

このアパレル企業とは、約60年に渡ってさまざまなファッションブランドを世の中に展開してきたワールドのこと。CAMPFIREは6月1日、ファッションの領域で新たなチャレンジをしたい個人やクリエイター、企業、自治体を支援するべく、ワールドと資本業務提携を締結したことを明らかにした。

双方のノウハウをクリエイターに還元、ブランド作りの支援を

CAMPFIREではこれまで資金集めの民主化をテーマに掲げ、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を軸に複数のプロダクトを運営してきた。特にクラウドファンディングと相性がいい分野については領域ごとに特化型のサービスを展開。たとえば社会貢献分野の「GoodMorning」や地域に関する「CAMPFIRE×LOCAL」がそうだ。

同じようにファッションに特化したプラットフォームとして2016年10月に「CLOSS(クロス)」をスタート。コンテスト型のFashion Forwardも実施し、選ばれたブランドにはPRや流通面なども含め、ブランドを育てていくために必要なサポートも行ってきた。

「(ファッションに限らず)それぞれのジャンルにおいて僕らにできることは何かを突き詰めていくと、すでに各業界で事業を展開されている大手企業と組むという選択肢もでてきた。ワールドの上山社長と話をしていく中で『一緒にできそうなことがいろいろありそうだよね』となり、ファッションの領域で共に仕組み作りをしていくことになった」(家入氏)

具体的な取り組みについては今後詰めていく部分も多いそうだが、軸となるのはクラウドファンディングを始めとするCAMPFIREの資金調達ノウハウと、ワールドの持つファッションのアイデアを形にしていくノウハウやアセット。これらを掛け合わせてクリエイターや企業に提供し、ファッション産業全体の活性化を目指していくという。

「ファッションは受注から製造、販売までのサイクルが長いビジネス。若手のデザイナーに話を聞くと入金までの期間がながいことがネックで、資金繰りでつまずくことも多い。その点クラウドファンディングは先にお金を集められる仕組みなので、クリエイターにとって助かる部分もある。ワールドがブランド立ち上げのノウハウ面で強みを持っている一方で、僕たちはレンディングなど他の手段も含めた資金調達の仕組みを使ってクリエイターを支えたい」(家入氏)

ファッションをもっと自由で軽やかに

家入氏によると、ワールドではパターンを作るノウハウや流通、PRに至る知見まで、自社の保有する資産をオープン化し、ファッションプラットフォームの構築を進めているそう。今後はこのような双方が持つナレッジに加えて、ワールドが青山に持つスペースの提供など、リアルな場も絡めた支援を進めていく方針。この点で冒頭でも触れたように、ITスタートアップのインキュベーションに近い側面もあるという。

「さまざまな業界において、産業構造や市場、経済状況が変化する中で、高度経済成長時に作られたモデルが成り立たなくなってきている。そこで1番大変な思いをしているのは、末端にいる個人のクリエイターやアーティスト達。(彼ら彼女らが)それでも声を上げたいと思った時に、どんな支援をできるのかということが、ずっと取り組んできたテーマでもある」(家入氏)

フレンドファンディングサービスの「polca」もこのような文脈で生まれたサービスであり、幻冬舎と取り組む新しい出版のモデル作りについても同様だ。

実はCAMPFIREでもすでに新しいファッションの形が生まれてきているそう。一例として家入氏があげるのが、隔月で新たなクラウドランディングプロジェクトを立ち上げ続けているブランド「ALL YOURS」。同ブランドでは小さなコミュニティの中で熱量を高め、その中で自分たちの思いやアイデアを発信し、実現している。

家入氏は「オンラインサロンなどのファンコミュニティとも共通するような、今っぽい感じの服の作り方」と表現するが、このようなモデルがこれからどんどん広がっていくのかもしれない。

「ITスタートアップのように、少人数で作りたいものをぱっと作って、ファンに直接届けるという形がもっと増えるとおもしろいと考えている。近年、起業のイメージがだいぶライトになって、それこそバンドを組むようにスタートアップをする人たちも増えてきた。ファッションやブランド作りも同じように、もっと自由で軽やかなものにしていきたい」(家入氏)

クラウドファンディング版“ライブコマース”「CAMPFIRE Fireball」1月22日から提供開始

動画でライブ配信しながら物を売る、ライブコマース。中国の動画配信プラットフォームでの成功を得て、2017年には日本でも続々と各社の参入が始まっている。国内の先駆者によれば「猛烈に売れるのは100人もいないのでは」との声もあるが、新たなECのスタイルとして注目を集めていることは間違いない。

今日、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」から発表された、分散型ライブファンディング機能「CAMPFIRE Fireball」は、ライブコマースのクラウドファンディング版、と言えば分かりやすいだろうか。CAMPFIREのプロジェクトオーナーが配信するライブ動画上にリアルタイムで支援金額やコメントを反映・表示させ、双方向コミュニケーションも可能となるこの新機能は、1月22日から提供開始される。プロジェクト掲載者であれば誰でも、無料で機能を利用することができる。

対応するライブ配信ソフトは「OBS(Open Broadcaster Software)」と「Wirecast」、動画配信プラットフォームは「YouTube Live」「ニコニコ生放送」「SHOWROOM」「LINE LIVE」「FRESH!」「Facebook Live」「Twitch」「Periscope」への対応が確認済みだ。

実はCAMPFIREでは2017年2月に、動画ストリーミングとチャットを組み合わせた似たような機能を「FIRESIDE」ベータ版として提供していた。この時には、動画配信機能はCAMPFIRE自前のものが提供されていたのだが、今回は既存のプラットフォームを取り入れて、活用する道を選んだようだ。

CAMPFIREは「一つの動画配信サービスに依存する集約型ではなく、複数の動画配信サービスから選択可能な分散型として提供することにより、特定のサービス(既存のプラットフォーム)内にフォロワーやファンを持つ方の既存のコミュニティをクラウドファンディングプロジェクトと繋げることができる」と説明している(カッコ内は筆者注)。YouTuberはYouTuber、ニコ生主はニコ生主として活動してもらって、クラウドファンディングをするならCAMPFIREを使ってね、ということだろう。

1月22日からのCAMPFIRE Fireball正式提供に先駆け、1月6日に行われたテストでは、3人組アイドルグループ「TOKYO SWEET PARTY」の楽曲とMV制作費用を集めるプロジェクトが、1時間余りのライブ配信中に150万円の目標金額の半分を達成。公開から48時間後には目標額を達成したそうだ。

また正式版リリース日の17時からは、民間の観測ロケット「MOMO」2号機の打ち上げプロジェクトについて、公開イベントで初回配信を行う予定だという。

仮想通貨やICOは資本主義をどう変える?——CAMPFIRE、VALU、Timebankが語る

左からフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

8月3日から4日にかけて北海道・札幌市で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」。初日のセッション「仮想通貨がもたらす信用経済と新たなビジネス」には、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏が登壇。ICOの可能性や評価経済のこれからについて語った。モデレーターはフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏が務めた。

そもそも、ICO(Token Sales)とは何か?

最近ではTechCrunchの誌面でもよく見かける「ICO」というキーワード。Initial Coin Offering、つまり仮想通貨を発行することでの資金調達を指すこの言葉だが、実はまだその実情を理解できている人は少ないのではないだろうか。モデレーターの佐藤氏はまずそう語り、増島氏がICOの特徴を解説するところからセッションはスタートした。

ICO(増島氏はToken Salesとも表現した)はつまりトークン(独自の仮想通貨)を発行することで、資金を調達する手法。これを有価証券(株式)を使った資金調達と比較すると、次の図の通りだ。

増島氏が説明した有価証券とICO(Token Sales)の違い

株式でもトークンでも、特定の資金調達目的のために発行するが、その価値の基準は、株式での調達は事業体のキャッシュフローの割引現在価値を表す(ざっくり言えば、事業体が金を稼いでいるか、今後稼げるか)ことに対して、トークンでの調達はネットワーク全体の価値を表す(事業体が稼げるかだけでなく、ソーシャルグッドなアクションをすることで価値が高まることなども価値になる)という。

また株式はリアルな取引を行うため、流動性は低く国ごとの規制がかかる、トークンの取引はインターネットで完結するため、流動性が高く、国ごとの規制にはかからないという。流動性が高い分、ボラティリティも高くなるという。増島氏はICOについて、「やってることの本質は『グローバルな購入型のクラウドファンディング』だ」とまとめる。

ICO設計時の注意点

日本では昨日テックビューロがICOプラットフォーム「COMSA」を発表したばかりだが、世界を見ると、すでに直近12カ月(6月時点)でブロックチェーン関連企業がICOで調達した資金の総額が、VCからの調達額を上回っているのだという。

そのCOMSAの導入第3弾企業としてプレスリリースにも名前が挙がっていたのがCAMPFIREだ。家入氏は「早速株主から電話がかかってきて『どういうことだ』と聞かれた」と導入についてぼかして語った上で、クラウドファンディングとICOの関係について説明する。

「サービスを開始して6年、7年とやってきて、ICOの流れが急にやってきた。クラウドファンディングとしてこの波に対して“我関せず”のままではむしろ死んでしまう。自分たちに何ができるかを考えた結果、自分たちがICOをやろうかと。そう検討している中で(COMSAに)声をかけてもらった」(家入氏)

CAMPFIREが取り組むのはICOだけではない。ビットコインでプロジェクトを支援できる仮想通貨取引所の「FIREX」、プロジェクト終了後の資金ニーズを支援する融資サービス「CAMPFIREレンディング」なども展開している。家入氏は、「インターネットの本質は声を上げたくても上げられなかった人が声を上げられるという1点に尽きる。経済格差も広がっている中で、社会からこぼれ落ちてしまう人がいる」と語った上で、ICOが社会貢献的な領域の資金ニーズを解決できることがまだまだあるのではないかとした。

仮想通貨でプロジェクトを支援する「FIREX」

ここでフリークアウト佐藤氏は、ICOがIPO、つまり既存の証券取引所に上場することの代替になるのかを増島氏に尋ねる。

「まだ実証されていない領域なので試行錯誤ではあるが、現状トークンを出している上場企業があるかないかというとある。(東証JQGの)フィスコが『フィスココイン』をやっている。問題があるか、ないか、というと『ないはず』だと思っている。トークンと株の関係が論点になるかもしれないが、(トークンは)有価証券ではないので不明だ」(増島氏)

VALUのユーザーは想定の10倍に成長

テック業界から人気に火が付いたVALUは、ユーザーが自身を上場企業に見立てて、自分の価値を「VA」という単位でビットコインをつかって売り買いできるサービスだ。小川氏はVALUが直接的にICOであることを否定した上で、「個人をトレーディングカードのようにして上場させるサービス」だと説明する。

サービスのローンチは6月だが、ICOの隆盛といった追い風もあって、「想定していたユーザーは5000人くらい。だがそれが10倍ほど集まった。土日や夜9時以降のサービスは提供していなかったが、想定外の反響を集めている」(小川氏)と語る。サービス開始当初は取引の制限がなかったこともあって、価格が高騰するような事態にもなったが、その後はマンガ家やクリエーターなどが続々参入。コミュニティも形成されつつあるという。小川氏はVALUのミッションについて、「人の価値を発掘し、高める」ことにあると語る。

Timebankは個人の価値が大きい時代のためのサービス

メタップスが今秋提供予定のサービスは「Timebank」。これはスペシャリストの「時間」を時価で売買するというサービスだ。メタップスの佐藤氏はサービス提供の経緯について、「『空間』を売買することは『不動産』として以前からあるが、『時間』を売買できないのが不思議だった。時間こそ時価でやり取りすべきものではないか」と語る。

「Timebank」のイメージ

また佐藤氏は、Timebankがいわゆる「評価経済」の文脈から提供されているのではなく、中国のライブストリーミングなどに影響されて企画されたサービスだと語る。「中国の女の子たちが、働かないで(ライブストリーミングで)歌って投げ銭が来るとかそういうところからきた。まずは私の価値か会社の価値、どちらが大きいか試してみたい。個人的には個人の(価値が大きい)時代になって欲しいと思っている」(佐藤氏)

ところで、こういった新しい「価値」たちは、実際にどんな機能を果たしているのだろうか。小川氏はVALU上でのクリエーターの立ち位置についてこう語る。「今は画像しか投稿できないが、クリエーターやマンガ家さん、面白いことをやっている人はかなり人気になっている。フリーランスは社会的信頼は低いが、VALU内では人気を集めている」(小川)。これに対して、増島氏は、ネットワークを作るタイプのビジネスと、ICOや新しい価値の経済がマッチすると語る。

評価経済は資本主義をひっくり返す?

フリークアウトの佐藤氏は、最後にICOをはじめとした新しい価値の経済が広がれば、どんな世界が待ち受けているのかとパネリストに問いかけた。

「あまり中央集権化が重要ではなく、経済も自由に選べるようにしたい。選択肢が増えれば、勝ち組負け組もない。(今の経済での負け組は)『自分の経済が違う』となる。それをやっていきたい」(メタップス佐藤氏)

「色んなものが『価値化』されていくと思う。NPO法人などを、今のVCが支援してもいい。それをトークンで担保したりできる。生まれた時点で違う価値をどう評価するのか、そこに面白みを感じる」(小川氏)

「CAMPFIRE自体はいろいろ考えていかないといけないが、ICO的な手段がどうなっていくかというと、時代がやってくるのは分かっていて、その先にあるのが評価経済。『こいつだめだなあ』という人を助ける世界。今シェアハウスを作ろうとしているが、ICO的なものでできないか考えている」(家入氏)

クラウドファンディングだけで解決できない資金ニーズを解決——CAMPFIREが企業向け融資を開始

クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」を手がけるCAMPFIREが、プロジェクト実行者を対象にした融資を行う。同社は7月28日、「CAMPFIRE レンディング」を開始すると発表した。

CAMPFIREと言えば、「○○を制作する」「○○を開催する」といったさまざまな“プロジェクト”を立ち上げ、そのプロジェクトを支援する人達(パトロン)が商品や作品を閲覧する権利といったリターンを提供することで資金の調達を目指す、クラウドファンディングサービスを展開している。

だが通常のクラウドファンディングは、プロジェクトの立ち上げを支援する一方、その先のアクション——例えば想定以上の支援が集まって追加生産する場合や、飲食店で追加設備の費用がかかる場合などの資金を集めることが難しかった。CAMPFIRE レンディングは、そんなプロジェクト実行後の支援を目的としたサービスだ。

融資の対象になるのは、このクラウドファンディングのプロジェクト実行者のうち、資金調達に成功した企業(7月28日以降に「All-or-Nothing:目標金額を達した場合のみ資金を集められる方式」、もしくは「All-in:目標金額の達成・未達成に関わらず資金を集められる方式」いずれもが対象)。融資額の上限は100万円。

金利は、10万円未満の場合は上限が年20.00%、10万円から100万円未満は上限が年18.00%、100万円を超える場合は上限が年15.00%となっている。なおCAMPFIREでは本サービス提供に先立って、貸金業の登録を行っている。

CAMPFIREが仮想通貨取引所「FIREX」を開設、ビットコインでプロジェクトを支援

1月にソーシャルレンディング事業への参入を明らかにしていたクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」運営のCAMPFIREが3月27日、仮想通貨取引所「FIREX(ファイヤーエックス)」を開設した。

CAMPFIREはFIREXの開設について、個人がより気軽に少額からクラウドファンディングに参加できる環境を整備することが目的、としている。FIREXは、ブロックチェーン技術「mijin」と仮想通貨取引所「Zaif」を提供するテックビューロの仮想通貨システムのOEM版としてスタート。現時点では、ビットコインと日本円の取引が可能で、今後、CAMPFIRE独自のトークン「CAMPFIRE COIN(仮称)」などの取引も計画されている。クラウドファンディングサービスの決済手段として仮想通貨を利用できるようにするほか、プロジェクト支援時の送金手数料の負担削減やプロジェクト実行者への送金スピードの改善など、クラウドファンディングと仮想通貨をつなぐことでメリットを出す機能追加を検討している。

また、レンディング事業を行うことを前提に第二種金融商品取引業登録及び貸金業登録を進め、2017年夏にはソーシャルレンディングサービスの開始を予定。仮想通貨のトークン発行・流通などの技術面、法律面を網羅した活用や、仮想通貨を使ったファンディングやトークンの発行支援なども行っていくという。

1月のTechCrunch Japanの取材に対し、レンディング事業への参入について「お金をよりなめらかに流通させることが目的」と話していたCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏は、今回のFIREX開設に寄せて、こうリリースでコメントしている。

“FinTechの本質とは何か。あらゆる金融サービスの体験、貨幣や流通のトランザクションを身近にするものかもしれません。
(中略)
従来のクラウドファンディングでの支援体験や、2017年夏のリリースを予定している動画ストリーミングサービスでの仮想通貨を使った支援体験など、今後、様々なサービスを予定しています。道なき未知を体験すること、それこそがFinTechなのかもしれません。”

ブロックチェーン技術の研究開発や導入検討は広がっているが、技術的検証には企業間の提携が前提となることが多く、実用に向けた開発例はまだ多くないとされる。CAMPFIREでは「既存事業との相乗効果を目的としクラウドファンディング業界の仮想通貨取引所の開設を行うことで、ユースケースの開発・実現による“資金調達の民主化”を目指す」としている。

CAMPFIREによれば「将来的にはFIREX運営により蓄積したノウハウを元に、今回OEM提供を受けたものとは異なる独自のサービスも展開していきたい」ということだが、その提供時期などについては未定、とのことだった。

プロジェクト実行者と支援者をライブ配信で結ぶ「FIRESIDE」、CAMPFIREが提供

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2016年2月に共同創業者である家入一真氏が代表取締役に就任してから、手数料の大幅値下げソーシャルレンディング事業への参入大規模プロジェクトのサクセスなど、活発な動きを見せているクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」。今度は動画配信機能を提供することで、プロジェクト実行者とその支援者の距離を近づけていくという。サービスを運営するCAMPFIREは2月15日、「FIRESIDE by CAMPFIRE(FIRESIDE)」ベータ版の提供を開始した。

FIRESIDEでは、動画のストリーミング配信と、同じ画面上で利用できるチャットの機能を提供している。現状はベータ版のため、CAMPFIRE側で選んだプロジェクト実行者のみが配信をしている。4月には正式版を公開し、全てのプロジェクト実行者が利用できるようになる予定だ。なお、チャットへの参加にはFacebookアカウントでのログインが必要になる。

ちなみにこの「FIRESIDE」という名称は、フランクリン・ルーズベルト大統領が実施した、国民向けラジオ演説の「Fireside Chats(炉辺談話:ろへんだんわ)」から取っているとのこと。余談だが僕たちのイベント「TechCrunch Tokyo」でもFireside Chatsという形式でセッションを行っていたりするが、Fireside、つまり暖炉を囲むようにインタビュアーとインタビュイーが近い距離で語り合うスタイルは、日本のイベントなんかでも定着しつつある。

なおCAMPFIREは今回の発表に合わせて手数料を5%から8%に引き上げる。冒頭で触れたとおり、同社は2016年2月、手数料を20%から5%に引き下げていた。今後はFIRESIDEをはじめとした新機能や、支援者を保護する仕組みなどを順次提供するよう検討中だとしている。

日本のCAMPFIREが約3億円を調達:レンディング事業参入とAIの研究開発へ

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クラウドファンディング・プラットフォーム「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIREは本日、第三者割当増資を実施し、合計で3億3000万円を調達したと発表した。

今回の資金調達に参加した投資家は以下の通りだ:D4V1号投資事業有限責任組合、GMOインターネット株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、East Ventures、株式会社iSGSインベストメントワークス、株式会社サンエイトインベストメント、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社フリークアウト・ホールディングス、ほか個人投資家3名。

また今回の資金調達に伴い、お金のデザインを立ち上げた谷家衛氏が取締役会長に、フリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏が社外取締役に、富士山マガジンサービスCTOの神谷アントニオ氏が社外取締役に、データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーの原田博植氏が執行役員CIOに就任する。

支援金の総額は16億円

CAMPFIREがクラウドファンディング・プラットフォームを立ち上げたのは2014年6月のこと。その後、2016年2月に共同代表である家入一真氏が代表取締役に就任し、同時期にサービス手数料をそれまでの20%から5%にまで大幅に引き下げた。同社によれば、この手数料率は国内最安値の水準であり、これがCAMPFIREの特徴1つでもある。

実際、手数料率を引き下げた頃から掲載プロジェクトへの「支援金」が急速に伸びた。現在の支援金総額は16億円で、過去4年間の支援金総額を2016年の1年で上回るほどに急成長している。

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レンディング事業への参入と、人工知能のR&D

今回調達した資金を利用して、CAMPFIREはレンディング事業への参入と、機械学習を中心とした人工知能の研究開発を行う。

レンディング事業への参入を決めた背景について代表取締役の家入一真氏は、「現状の購入型のビジネスモデルにとらわれないところにチャレンジしたかった。お金をよりなめらかに流通させることが目的」と語る。

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CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

もう1つの資金の使い道は、人工知能の研究開発だ。家入氏によれば、CAMPFIREはこれまでにも機械学習の研究開発を進めていたという。

具体的にはプロジェクトの審査にこのテクノロジーを利用しているようだ。家入氏は、「機械学習を利用して目視による審査を自動化することで、手数料を下げることができると考えた。これから参入するレンディングビジネスでは難しいとは思うが、これまでの購入型のクラウドファンディングでは審査をほぼ全自動化することも可能だと考えている」と話す。

機械学習の活用方法はもう1つある。それは、掲載するプロジェクトの「見た目」の改善だ。プロジェクトの支援金額はタイトル付け方や本文の構成によって大きく左右される。CAMPFIREはこれまでに同社に蓄積されたデータを分析し、支援を受けやすいタイトルの付け方やコンテンツの構成方法を提案していく。

国内におけるクラウドファンディングの市場規模は約480億円。CAMPFIREによれば、そのうちの8割が貸付型であり、今後は数千億円規模の成長が見込まれるという。CAMPFIREが次に狙う領域はここだ。

クラウドファンディングのCAMPFIREが手数料を20%から5%に大幅引き下げ「小さな声も拾い上げられる場所に」

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国内クラウドファンディングサービスの黎明期にスタートした「CAMPFIRE」が1つ大きなサービスの方向性を示したようだ。サービスを運営するCAMPFIREは2月24日、CAMPFIREのサイトリニューアルを実施。あわせてこれまで20%に設定していた手数料を5%に変更。また審査基準も見直し、より多くのプロジェクトを掲載していくという。

CAMPFIREは2011年のローンチ。ツクルバが手がけるコワーキングスペース「co-ba」の立ち上げを始めとして、さまざまな場所作り、作品作りのプロジェクトを支援してきた。

CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

だが最近は彼らのプロジェクトに関する話もあまり聞かなくなったと感じることが多かったし、最近ではサイバーエージェント・クラウドファンディングの手がける「makuake」をはじめとして、クラウドファンディングを新商品のテストマーケティングの場として使うようなケースが増えてきた。

共同創業者であり、2月から同社の代表取締役を務める家入一真氏は、テストマーケティング的なクラウドファンディングの利用について肯定しつつ、「それだけがクラウドファンディングではない。CAMPFIREはクラウドファンディングの原点に立ち返ってサービスをリニューアルする」と語る。ではCAMPFIREが考えるクラウドファンディングとはどういうものか? 家入氏はこう続ける。

「ネットの本質は『声の小さな個人』が声を上げることができることだと思う。例えば家から出られない人、気が弱い人。そんな小さな声だって拾い上げられるの場所こそがインターネット。そういう声を1つずつ拾い上げ、ファンとお金を集めるプラットフォームにしたい。競合がtoBを狙うのであれば、僕らはtoCを取っていきたい。5万円あればギャラリーで個展を開けるといった、個人の『何かやりたい』のを背中を押してあげる場所にしたい。そうすると手数料も取り過ぎだと思った」

そのため、これまで20%取っていた手数料を大幅に削減(とは言え米国のサービスなどは手数料が1桁パーセントなのが一般的だ)。プロジェクトの審査条件も緩和して、小さな個人であっても、ファンを作り、お金を集めやすい場にするという決断をした。20%と5%、大した差でもないと思う読者もいるかも知れないが、例えば100万円集めるプロジェクトで20万円取られるか5万円取られるかの違い、と考えるとその差が大きいことは理解できるのではないだろうか。

思いとしてはすごく共感するところだけれども、気になるのはマネタイズと掲載されるプロジェクトの品質だ。家入氏は「いくつか案は検討しているが、まずは流通総額を伸ばすのが大事。また品質については、『ごった煮』になると思う。でもそこから本当にいいモノが生まれてくる方が夢がある」と語る。

最近では銀行からの融資を断られた納豆メーカーや方眼ノートを制作するも宣伝費用がないという印刷所がソーシャルメディアを通じて注目を集めるなんて話があった。家入氏はそれらを例に挙げて、「クラウドファンディングは、1人1人の声は小さくても、集まったら何かを動かすというもの」だと語る。

加えて家入氏は「そもそもの話で、プロジェクト単位のビジネスモデルから脱却しないといけない」とも語る。さまざまなクラウドファンディングサービスの関係者とこれまで話して僕も感じでいるのだが、今のクラウドファンディングの大きな課題の1つは「プロジェクト」という切り出し方にあると思っている。期間を設定したプロジェクトでお金を集めることはもちろん大事だ。しかしお金が集まり、商品(やサービス)が支援者に届けば終了。その後のコミュニケーションは途絶えてしまう。

もちろんこれに対して各プラットフォーマーは対応手段を検討している。例えば先日紹介したReLicの「ENjiN」は、プロジェクト終了後も同社が出展するECモールにて商品を継続販売するようなアプローチを取るなどしている。具体的な説明はなかったが、CAMPFIREでも同様に継続的な支援ができる、ある種のコミュニティ的な機能を組み込んでいくことも検討しているという。