現代自動車とEVスタートアップのCanooがプラットフォームを共同開発

現代自動車グループは、米国ロサンゼルス拠点のスタートアップであるCanoo(カヌー)と共同で電気自動車プラットフォームを開発すると明らかにした。現代自動車は電動化や他の未来のテクノロジー開発プロジェクトに870億ドル(約9兆5800億円)投資するが、その中でCanooは現代自動車がタッグを組む最新のパートナーとなる。

2月11日に発表された合意書によると、電気自動車プラットフォームはCanooが独自開発したスケートボードデザインのものをベースとする。このプラットフォームは、現代自動車や起亜自動車が将来展開する電気自動車、そして現代自動車グループのいわゆる“専用車(PBV)”に使用される。現代自動車が先月CES2020で展示したPBVはポッド状の車両で、同社が言うにはレストランやクリニックなど、さまざまな目的で使用することができる。コンセプトはトヨタのe-Palette車両と似ている。e-Paletteは理論上は小売店舗やレストラン、輸送用シャトルとして使えるようカスタマイズできる。

Canooとの提携は、現代自動車が電動化や自動運転技術、そのほか空飛ぶ車など未来的なモビリティにいっそう注力し、資金も注いでいることを示す最新の例となる。今月初め、現代自動車は英国のスタートアップArrivalに11000万ドル(約120億円)投資し、電動商業車を共同で開発すると発表していた。

現代自動車グループは今後5年間に870億ドル超を投資すると表明している。内訳として、現代自動車が「未来のテクノロジー」に520億ドル(約5兆7200億円)を、起亜自動車が電動化と未来のモビリティテクノロジーに250億ドル(約2兆7500億円)を投入する。最終的な目標は、エコフレンドリーな車両が2025年までに販売車両全体の25%を占めるようにすることだ。

Canooは、電動プラットフォームの開発にエンジニアリングサービスを提供する、と話した。

Canooは2017年にEvelozcityとして始まり、Faraday Futureを率いていたStefan Krause(ステファン・クラウゼ)氏とUlrich Kranz(ウルリッチ・クランツ)氏が創業した。同社は2019年春に社名をCanooに変更し、昨年9月に初の車両をデビューさせた。初のCanoo車は2021年までに道路を走るようになる見込みで、サブスクリプションでのみの提供となる。Canooは最近ウェイトリストの受け付けを始めたばかりだ。

Canoo車の特徴は、従来の電動SUVというよりマイクロバスのような外観であること、キャビン下のキャシーにバッテリーと電気駆動系を収めた「スケートボード的」アーキテクチャを有していることだ。このアーキテクチャに現代自動車グループは関心を寄せている。

同グループは生産のコストや複雑さを抑えるのにCanooのアーキテクチャに頼っていて、これにより変わりやすいマーケットの需要や顧客の好みに素早く対応できる。

「Canooが革新的なEVアーキテクチャを開発したスピードと効率に非常に感銘を受けている。Canooは我々にとって完璧なエンジニアリングパートナーであり、我々は未来のモビリティ業界で先駆者となる」と現代自動車グループのR&D責任者のAlbert Biermann(アルバート・バーマン)氏は声明文で述べた。「自動走行ができ、幅広く受け入れられる費用対効果の高い現代自動車のプラットフォームコンセプトを開発するためにCanooのエンジニアと協業する」

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(翻訳:Mizoguchi

ついにベールを脱いだCanooのロフト風電気自動車

ロサンゼルスに本社を置くスタートアップCanoo(カヌー)が、ついに初のモデルを発表した。その名も社名と同じCanoo。

Canooのデザイナーたちは、他の電気自動車メーカーが好むスタイルとは激しく異なる方向性でスタートした。中国のByton(バイトン)が目指すSUVや、米国のTesla(テスラ)やFisker(フィスカー)のスポーツカーやセダン、Rivian(リビアン)の電気トラックとは違う、フォルクスワーゲン・マイクロバスに近いスタイルだ。

際立っているのは、Canooが最初のモデルのデザインとエンジニアリングをわずか19カ月で完了させ、現在は契約製造業者に車両製造を引き渡せるよう準備をしているという点だ。現在のCanooの代表Ulrich Kranz(ウルリッチ・クランツ)氏によると、最初の車両は2021年に公道に登場する予定とのこと。

クランツ氏は、最高技術責任者としてこの会社に加わったが、Canooの共同創設者でCEOのStefan Krause(ステファン・クラウス)氏が個人的な理由で8月に会社を去ったあと、日々の業務を引き継いだとThe Vergeは伝えている

クランツ氏の話によると、Canooのデザインには2つの鍵となる特徴があるという。空間と価格だ。同社の最初の車には、その両方がふんだんに盛り込まれている。

ロサンゼルス本社にはCanooのベータ版の車両が置かれていて、提携を考えている企業や顧客が試乗できるようになっている。製造したのはミシガン州の非公開のメーカーだ。「私たちは2台ほど製造して、これまでに行ったシミュレーションの検証と確認を行うつもりです」とクランツ氏は話していた。

Canooは昨年1年を使ってプロトタイプの開発について製造業者との話し合を重ね、自動車のデザインと開発の方法についてアドバイスがもらえるようにした。

Canooは、ロサンゼルスの市場で最初の車両をローンチし、「スケートボード」プラットフォームを自社製の車両に使うだけでなく、顧客と共同でオリジナルのキャビンをそのプラットフォーム上に製作することも視野に入れているとクランツ氏は言う。

同社は、まったく新しいビジネスモデルで市場に参入しようと考えている。月ごとのサブスクリプション料金で車両を提供するというものだ。このサービスには、顧客のスマートフォンのひとつのアプリから自動的に、車両登録、メンテナンス、保険の管理、支払いができるといった特典が含まれるようだ。Canooによると、これはNetflixの映画配信サービスの利便性と経済性を自動車業界にもたらすものだという。

最初の車両は、面積が小型車並みであるにも関わらず、7人がゆったり乗れて、SUV並みの車内空間が確保されているとのこと。後部の座席は、サイドとリアの壁に沿ってコの字型に配置され、フロントのキャビンはソファーのような配置になっているとクランツ氏は教えてくれた。

「これまで自動車は、ひとつのイメージと感性が伝わるようにデザインされてきました。しかし、私たちは自動車のデザインを根底から考え直すことにして、未来のユーザーが実際に必要とするものにフォーカスしました。そうして出来上がったのがロフト風の自動車です」と、Canooのデザイン責任者Richard Kim(リチャード・キム)氏は言う。「サブスクリプション契約をすると、自動車の考え方が変わります。今や、車の価格はユーザーの利益によって決まるのです。私たちはバウハウスの哲学を吹き込みました。ミニマリズムと機能性を中心に据えて、絶対的に必要最低限なものへ要素を削ぎ落としてゆきます。次に、そのアプローチを顧客が最も大切にしているパーソナルなデバイス、つまりスマートフォンとのシームレスな接続性に適用します」。

娯楽システムは、顧客が所有するデバイスに依存するが、CanooはiOSにもAndroidにも対応する。中央ディスプレイは配置せず、ドライバーや乗客がそれぞれが自分のナビやアプリを車内で使うようになることを同社は期待している。

クランツ氏によれば、自動運転も念頭に置いているという。現在のシステムには7台のカメラ、5つのレーダー、12基の超音波センサーが装備され、レベル2の自動運転が可能になっている。クランツ氏がとくに自慢する新機能に、ビデオカメラでドライバーの運転中の挙動をモニターし、安全に運転しているときには余計な警告を出さないようにするというものがある。

「ドライバーの顔と意図をカメラで監視します」とクランツ氏。「ドライバーが何かに注意を向けたとカメラが認識したとき、たとえば、右側の影になっている部分を見ようとしているときは、警告のアラームは出しません。なぜなら、人はよくアラームシステムを切ってしまうからです」。

だが、Canooのシステムの心臓は、前述のスケートボード構造だ。キャビンの下のシャシーにバッテリーとドライブトレーンが組み込まれている。Canoo製の車両にはすべてこれと同じ基礎構造が使われ、その上にいろいろなキャビンを載せることで、目的に合わせてさまざまな車両を作ることになる。

最初の車両の安全性は5つ星の評価を獲得しており、車内全体にドライバー用と同乗者用のエアバッグが設置されている。スケートボードプラットフォームは、デュアルモーター、フロントモーター、リアモーターの設定が選べる。

最後に、この車は本当の意味での市場で最初のステア・バイ・ワイヤー車両だと同社は話していた。ハンドルと車輪との間をつなぐ機械装置は存在しない。

ステアリングは、電気信号によってのみ伝えられる。完全な冗長性を持たせたコントロールシステムは、将来のデザインに長期的な恩恵をもたらすものだと同社は説明している。ステア・バイ・ワイヤーは軽量化に貢献し、またハンドルの位置を自由に決められるため、室内デザインやドライバーのポジションに柔軟性を与えられる。

走行距離だが、Canooの最初の車両は250マイル(約400km)で、30分以内に80%まで充電が可能だ。バッテリーパックはスケートボード構造の中に直接組み入れられていて、専用の構造体を必要としないため広い空間が確保できる。さらにシャシーに直接組み込まれていることから、バッテリーは車両のねじれ剛性を高める役割も果たす。

サブスクリプションの料金がいくらになるかクランツは明かさなかったが、7年から10年の期間で車両の価格を落とすことができるためコストが下がると話していた。「この節約ぶんを顧客に還元するのです」と彼は言う。価格は下がっても、この新しい会社で儲けを出すことは可能だとクランツは期待している。「私たちは、電気自動車で利益を出す最初の電気自動車メーカーになります」と彼は話していた。

レンタルモデルは、同社の保守的なロールアウトプランの助けになる。クランツ氏によれば、Canooの提供はひとつの地域から開始して、ゆっくりと広げてゆくという。

「私たちは、都市ごとにロールアウトしてゆく予定です」と彼は言う。「8から10の都市で、電気自動車人口全体の70%以上をカバーできます。(そのため)全国展開する必要はないのです」

2021年の計画では、ロサンゼルスでローンチした後、その他8つの都市で同社の米国市場を構築する。つまり、西海岸に4つ、東海岸に4つだとクランツは言う。

「米国でローンチした後、中国でのローンチも考えています。中国では電気自動車人口の75%を18の都市でカバーできます」と彼は話す。

統制されたスケールの拡大と控えめな地理的リーチの目標によって、大きな利益が得られるとクランツ。

「それには、車両の保有台数を簡単にコントロールでき、慎重な方法でステップアップできるという大きな利点があります。何千何万台もの自動車を生産できるなどと、私たちは自慢したりしません」と彼は言う。「早いペースで高品質な車を作ることがいかに難しいかを、私たちはよく知っていますから」。

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    Canoo
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    Canooのリアインテリア
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    Canooのフロントキャビン
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    Canooのスケートボード・プラットフォーム
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    Canooのステアリングコラム
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(翻訳:金井哲夫)