カーボンナノチューブを撚って作った糸は引っ張ると発電する…スマート衣料の実用化へ

スマートな服は誰もがほしいと思っているけど、みんな、バッテリーパックを着るのは嫌だ、と言うだろう。まあ典型的な第一世界問題だけど、そのソリューションの中には単純におもしろいものもある。テキサス大学ダラス校の研究者たちが、カーボンナノチューブを撚(よ)って作った撚り糸で発電する方法を作り出し、しかもそれに、ツイストロン(twistron)というかっこいい名前をつけた。

引っ張ったり押したりすると発電する圧電素子素材は、これまでにも多種類あるけど、このツイストロン撚り糸には強度と柔軟性があり、おまけにスーパーキャパシター(超コンデンサー)として動作する。極細のカーボンナノチューブを集めて撚り、コイル状にすると、伸展性、伝導性など、役に立つ資質を持つようになるのだ。

同校のナノテク研究所のトップRay Baughmanが、ニュースリリースで述べている: “電子織物には大きな商業的関心が集まっているが、では、それらにどうやって電力を供給するのか? 人間の体の動きから電気エネルギーを得ることは、バッテリーを不要にする方法の一つだ。われわれの撚り糸は、これまでの各種文献に報告されているそのほかの可織繊維に比べて、伸展したときに得られる電力が100倍以上大きい”。

とは言っても、それが微々たる大きさであることに違いはないが、でも組込みシステムは電力要量が小さい。では、何が問題か?

そう、つまり問題は、このツイストロンは電解液に浸けないと動作しない。しかし、たしかにそれだけを想像すると大変そうだが、実際にはそれほどでもない。チームがScience誌に発表したペーパーによれば、ツイストロンを固体電解質…塩性のポリマー…で包むことによって、液体に浸けなくても発電できた。

研究チームがツイストロンで編んだシャツは、着用者の呼吸から実用レベルの電気を生成した。数分おきにバーストでデータを送るワイヤレスのトランシーバーなど、低電力のデバイスをシャツに編み(織り)こめば、この微小な電力で十分実用になるだろう。

チームは、海の波でもテストした。ペーパーの共著者の一人Shi Hyeong Kimは、ツイストロンの撚り糸で作ったおもりに風船をつけて、彼の故郷韓国のしょっぱい海に投じた。波の動きから撚り糸は力を受けて伸展し、電気を生成した。この方法はスケール(規模拡大)も容易であり、用途に応じ自由にカスタマイズして、海から電力を取り出すだろう。

“われわれのツイストロンを使った電力収穫機をもっと安価に作れるようになれば、大量のエネルギーが海の波から得られるようになるだろう”、とBaughmanは述べている。

チームはすでに特許を申請し、その応用を研究しているが、クールな技術がいつもそうであるように、世の中で一般的に見られるようになるまでは時間がかかる。なお、同大のナノテク研究所のサイトへ行くと、そのほかのおもしろいプロジェクトも見られる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

カーボンナノチューブを使って、高速CPUと長寿命バッテリーを作る

carbon_nanotubes

カーボンナノチューブは、いわゆる超素材の一つであり ― 直径1~2 nmの管 ― スーパーコンピューターから超低消費電力スマートフォンまで、夢見る応用分野が山ほどある。問題は、製造が困難なことで、こうした応用分野の商品化には10~15年は必要だ。

ナノチューブは管状の分子構造で、単一の元素(通常は炭素)から成る。中でもカーボンナノチューブ(1991年に偶然発見された)は、並外れた電気特性と機械的特性で知られている。

こうした特性はナノチューブの構造に起因する。ナノチューブでは、炭素原子が六角形配列から成るらせん状に配置されている。よく見るハチの巣を思い浮かべてほしい。あのロウでできた六角形の小部屋の集まりだ。次にこのハチの巣構造を小さな円筒形のロールにしたところを想像してほしい。のり巻きの2500万分の一以下の大きさだ。こうしてカーボンナノチューブのワイヤーが出来上がる。

この「ハチの巣状ロール」の対称性と極小の直径が相まって電子状態密度に著しい変化をもたらし、ナノチューブに独特な電子的性質を与える、とPulickel M. Ajayan、Otto Z Zhou両教授は書いている

応用の可能性は膨大だ。例えばMITの研究者らはウェアラブルな毒物センサーをカーボンナノチューブ満載の回路を基に開発した。コンピューターが少ない消費電力で高速に走らなくてはならない世界で、カーボンナノチューブは、極小トランジスタとしてシリコンよりも高い性能を約束する。

「カーボンナノチューブは、シリコンを補完する候補として理想的」とスタンフォード大学コンピュータ・サイエンス学科で電子工学を教えるSubhasish Mitra准教授は言う。

Mitraは同僚で同大学電子工学教授のH.-S. Philip Wongと共に、IBMをはじめとする共同研究先と協力して、カーボンナノチューブを用いた新世代のコンピュータを開発している。目標は、カーボンナノチューブを利用して、電力消費効率を高めたコンピュータのプロトタイプを作ることだ。

「シリコン製トランジスタをカーボン製トランジスタで置き換えれば、エネルギー効率が最大1000倍向上する」とMitraは言った。

スマートフォンもコンピュータである、とMitraは言う。「理想的ワトソンマシンの計算能力を持つスマートフォンが実現するかもしれない。何百万ものセンサーがデータを収集し、それを使ってスマートフォンが膨大な計算を行う場面も考えられる」。もし大規模なコンピューター能力を提供できればそのために金を出す人はいる、とMitraは言う。この新世代スマートフォンは、今より30倍速く、充電は月に1回でよくなるかもしれない。

「モノのインターネットとそれ以降」への応用に言及した後、Mitraはカーボンナノチューブの基礎研究と、製品化との相違を強調した。研究は進んでいるものの、おそらくスマートフォンメーカーは、「絶対的確信」がない限り新しい物には飛びつかない。メーカーが早くこれを使って実験を始めてくれることを願っている」とMitraは言った。

10~15年が、商品化の現実的なスケジュールだ、とMitraは言った。

カーボンナノチューブの製造方法は大きな課題だが、他の大学が実現に向けて動いている。例えばライス大学の研究所では、Teslaforesisと呼ばれるプロセスでカーボンナノチューブを自己生成させる方法を発見した。

「私たちはこの電界の中でナノチューブ同志が自らつながってワイヤーを作ることを発見しました」とライス大学の化学准教授、Paul Cherukuriが同大学の公開しているビデオで語った、「これからここで新しい科学が生まるのです」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

カーボンナノチューブを使って、高速CPUと長寿命バッテリーを作る

carbon_nanotubes

カーボンナノチューブは、いわゆる超素材の一つであり ― 直径1~2 nmの管 ― スーパーコンピューターから超低消費電力スマートフォンまで、夢見る応用分野が山ほどある。問題は、製造が困難なことで、こうした応用分野の商品化には10~15年は必要だ。

ナノチューブは管状の分子構造で、単一の元素(通常は炭素)から成る。中でもカーボンナノチューブ(1991年に偶然発見された)は、並外れた電気特性と機械的特性で知られている。

こうした特性はナノチューブの構造に起因する。ナノチューブでは、炭素原子が六角形配列から成るらせん状に配置されている。よく見るハチの巣を思い浮かべてほしい。あのロウでできた六角形の小部屋の集まりだ。次にこのハチの巣構造を小さな円筒形のロールにしたところを想像してほしい。のり巻きの2500万分の一以下の大きさだ。こうしてカーボンナノチューブのワイヤーが出来上がる。

この「ハチの巣状ロール」の対称性と極小の直径が相まって電子状態密度に著しい変化をもたらし、ナノチューブに独特な電子的性質を与える、とPulickel M. Ajayan、Otto Z Zhou両教授は書いている

応用の可能性は膨大だ。例えばMITの研究者らはウェアラブルな毒物センサーをカーボンナノチューブ満載の回路を基に開発した。コンピューターが少ない消費電力で高速に走らなくてはならない世界で、カーボンナノチューブは、極小トランジスタとしてシリコンよりも高い性能を約束する。

「カーボンナノチューブは、シリコンを補完する候補として理想的」とスタンフォード大学コンピュータ・サイエンス学科で電子工学を教えるSubhasish Mitra准教授は言う。

Mitraは同僚で同大学電子工学教授のH.-S. Philip Wongと共に、IBMをはじめとする共同研究先と協力して、カーボンナノチューブを用いた新世代のコンピュータを開発している。目標は、カーボンナノチューブを利用して、電力消費効率を高めたコンピュータのプロトタイプを作ることだ。

「シリコン製トランジスタをカーボン製トランジスタで置き換えれば、エネルギー効率が最大1000倍向上する」とMitraは言った。

スマートフォンもコンピュータである、とMitraは言う。「理想的ワトソンマシンの計算能力を持つスマートフォンが実現するかもしれない。何百万ものセンサーがデータを収集し、それを使ってスマートフォンが膨大な計算を行う場面も考えられる」。もし大規模なコンピューター能力を提供できればそのために金を出す人はいる、とMitraは言う。この新世代スマートフォンは、今より30倍速く、充電は月に1回でよくなるかもしれない。

「モノのインターネットとそれ以降」への応用に言及した後、Mitraはカーボンナノチューブの基礎研究と、製品化との相違を強調した。研究は進んでいるものの、おそらくスマートフォンメーカーは、「絶対的確信」がない限り新しい物には飛びつかない。メーカーが早くこれを使って実験を始めてくれることを願っている」とMitraは言った。

10~15年が、商品化の現実的なスケジュールだ、とMitraは言った。

カーボンナノチューブの製造方法は大きな課題だが、他の大学が実現に向けて動いている。例えばライス大学の研究所では、Teslaforesisと呼ばれるプロセスでカーボンナノチューブを自己生成させる方法を発見した。

「私たちはこの電界の中でナノチューブ同志が自らつながってワイヤーを作ることを発見しました」とライス大学の化学准教授、Paul Cherukuriが同大学の公開しているビデオで語った、「これからここで新しい科学が生まるのです」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Teslaphoresisで自己を組み立てるカーボンナノチューブは、こんな言葉では言い表せないぐらいクールだ

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重要な科学研究のすべてがクールに見えたり、名前がクールだったりするわけではないが、でもときには、その両方の場合がある。この、自分で自分を組み立てるカーボンナノチューブ(self-assembling carbon nanotubes)は、Teslaphoresis〔仮訳: テスラ泳動〕と呼ばれる工程で作られる。あなたが今日見たあらゆる文の中に、これよりもクールな響きを持つ文*が一つでもあったら、教えてほしい。〔*: 全文: These self-assembling carbon nanotubes are created with a process called Teslaphoresis.〕

ライス大学(Rice University)の化学者Paul Cherukuriの研究室も、まるでマッドサイエンティストの隠れ家みたいだ。でも、そんなけばいびらびらに騙されてはいけない。これはきわめて重要な研究開発なのだ。

ナノチューブは一連のカーボン製卓越機能素材(supermaterials)の一種で、グラフェンと同じく、興味深い特性がたくさんあり、理論上の応用技術/製品も多い。しかし、これまたグラフェンと同じく、安価で信頼性の高い製法が難しい。このテスラ〜〜法は、超薄型で超強力で超伝導性のあるカーボンナノワイヤを作るための、画期的な方法かもしれない。

Cherukuriは、子どものころから今日まで、テスラコイルのファンだ。それは、強力な交流電界を作り出す。

同大学が発表したビデオの中で、彼はこう言っている: “われわれが発見したのは、この電界下ではナノチューブが自分自身でひも状につながってワイヤーを作ることだ。Teslaphoresis〔という言葉〕は、それが離れた空間における自己組み立てであることを理解するための、いちばん簡単な方法だ”。

コイルの交流電流が、ナノチューブの小片に極性を与えるようである。すると彼らは直ちに隣同士で列を成(な)し、長い鎖(さ)を作る。下図のように:

teslaphoresis 1teslaphoresis 2

上の二つめのgifでは、ワイヤーが実際に二つのLEDを接続し、それらに電気を送っている。これまでで最長の鎖は15センチだ。ワイヤーがやや毛羽立って見えるのは、たくさんのナノチューブが、われもわれもと列に並ぼうとするからだ。面にパターンがあって、余分なのをそぎ落としたり、行き先をガイドできたりすれば、この現象は防げる。あるいは、コイルを複数使ってもよい。

この研究のペーパー執筆を監督しているLindsey Bornhoeft(テキサスA&M大学の院生)によると、“これらのナノチューブワイヤーは神経のように成長し行動する”、という。“ナノ素材のコントロールされた組み立てがこのようにボトムアップで行われるのなら、再生医療のためのテンプレートなどの応用がありえるだろう”。

恒久性のある電子回路インプラントとか、可撓性のある電子回路なども、この技術の応用として可能になるのではないだろうか。もうすぐ、それらが世の中の当たり前になる。研究者たちは彼らの仕事を、アメリカ化学学界の機関誌Nanoに発表している

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))