Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力

オンデマンドフードデリバリーのUber Eats(ウーバー・イーツ)はいくつかのマーケットから撤退する。チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウルグアイ、ウクライナだ。

またアラブ首長国連邦(UAE)のUber Eats事業を、主に中東で配車サービスを展開している完全子会社のCareem(キャリーム)に移す。

「UAEでUber Eatsアプリを使っている消費者やレストランは数週間内にCareemプラットフォームに移行することになり、その後Uber Eatsアプリは使用できなくなる」と米証券取引委員会に提出された書類で事業移管について詳細に述べている。

「こうした決断は、いくつかの国に投資し、また別のマーケットでは撤退するなど、全マーケットにおいてUber Eatsが1番手か2番手でいられるようにするための戦略の一環として行われた」と書類には書かれている。

Uberの広報担当は、変更は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックとは関係なく、すべてのUber Eatsマーケットで1番手か2番手でいるために現在展開している戦略と関連するものであり、一部の国には投資する一方で別の国からは撤退することを意味する、と述べた。

例えば2020年初めUberはインドのEats事業をライバルだった地元企業のZomato(ゾマト)に売却した。インドではZomatoとSwiggy(スウィギー)がマーケットの2トップだ(売却の一環でUberはZomatoの株式9.99%を取得した)。

Uber EatsのライバルGlovo(グロボ)もまた、赤字削減と収益化を目指して競争力のある構造にしようと、2020年初めにいくつかのマーケットからの撤退を発表した。同社もまた、事業を展開するすべてのマーケットでシェア1位か2位のプラットフォームになることを最終目標としている。

オンデマンドフード配達業界は、収益化について大きな疑問に直面している。そして現在、そこに新型コロナ危機も加わっている(英国拠点の同業他社Deliverooは先週、大量のレイオフを明らかにした)。オンデマンド事業はかなりのマーケットシェアを握らなければ収益をあげることができないため、そのマーケットで誰がトップなのかが明らかになるにつれ、競合する事業者の数は減っていくようだ。

今回の撤退に関する声明文で、Uberは次のように述べている。「チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイで事業を停止することを決めた。またアラブ首長国連邦でアプリの提供を停止し、事業をCareemに移す。我々がトップシェアを握っている世界中の他のマーケットにエネルギーとリソースを集中的に注ぐという戦略を引き続き展開する」。

証券取引委員会への提出書類によると、事業が停止または移管されるマーケットは、Eatsの予約件数の1%、2020年第1四半期決算(EBITDA)の赤字の4%を占めた。

「戦略を実行することで、節約できた分をより良い投資リターンが得られそうな優先すべきマーケットに振り向けることができる」とも書かれている。

Uberは2020年初めに「6000以上の都市」で事業を展開しているとしたが、Uber Eatsの広報担当は今回撤退してもこの数字に変更はない、と語った。

同社がどのマーケットを今後優先すべきと考えているのかについての質問には答えなかった。またUberが撤退するマーケットの事業の譲渡先を探したのかどうかについても明らかではない。

証取委への提出書類によると、チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイの事業は2020年6月4日までに完全停止となる。

Uber Rides事業は影響を受けない、とも付け加えられている。

Uberに近い情報筋は、マーケット展開の見直しで同社がグローサリー配達など新たなビジネスラインにリソースを注ぐことができるようになる、と指摘した。

新型コロナパンデミックは多くのマーケットでオンデマンドフードデリバリー事業を一変させた。利便性を愛する顧客がロックダウンによりこれまでよりも自分で料理するようになり、多くのレストランが店を閉めていて(少なくとも一時休業)、こうした事態はプラットフォームプロバイダーにも影響を及ぼしている。

と同時に、グローサリー配達では需要が増えている。Uberは4月にフランスでのグローサリー配達を全国に拡大すべく、大手スーパーCarrefour(カルフール)との提携を発表した。また、スペインとブラジルでもグローサリー関連で提携を結んだ。

消費者が新型コロナ感染リスクを下げながら食材を確保する方法を模索する中で、グローサリー配達の需要はかなり増加している。

処方薬や個人用保護具など他の種のデリバリーもまた、オンデマンド物流事業者にとっては絶好のチャンスとなりそうだが、いくつの主要フードデリバリープラットフォームが参入するかにもよる。

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

配車サービス大手のUberが中東のライバルCareemを約3400億円で買収へ

何カ月もになっていたが、ようやく配車サービス大手のUberは、中東のライバル企業Careemを31億ドル(約3400億円、17億ドルが転換社債で、残りの14億ドルは現金)で買収すると明らかにした。

Uberは、この買収は規制当局の承認を得たうえで2020年第1四半期に完了する見込みだと発表文に書いている。

また、Careemのモロッコからパキスタンにまたがる広範な中東地域におけるモビリティ事業、デリバリー事業、そして決済事業の全てを買収する、とも記している。

Careemの主要マーケットはエジプト、ヨルダン、パキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦で、計15カ国120都市で展開している。

Crunchbaseによると、Careemはこれまでに7億7200万ドルを調達していて、出資者にはサウジアラビアのKingdom Holdings、中国の配車サービス大手Didi、そして日本のテック大企業の楽天が含まれる。

Careemは、Uberのライバルとして2012年に設立されたが、以来、食べ物や荷物の配達、バスサービス、送金など事業が多角化されてきた。この多角化はRoundMenuとCommutの買収(2つとも昨年発表された)も支えている。

UberがCareemに支払う額は、最近の評価額よりもかなり大きいという点で注目に値する。昨秋Careemが2億ドルを調達したとき、Careemの評価額は20億ドルほどと報じられていた。

また今回の買収額は、中東テックスタートアップのエグジットとしては最高額になると同時に、グローバルでの配車サービスがらみのM&Aの中でも最大規模の案件の1つとなる。(例えば、中国のDidiは昨年初めにブラジルの配車スタートアップである99に6億ドル超を払い、ラテンアメリカでの評価額は10億ドルになった)。

また東南アジアにおけるような事業撤退ではなく、Uberが中東で積極的に展開するというのも特筆に値する。

Careemの買収について、UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は以下のようにコメントしている。

我々のプラットフォームの強みを世界中で継続して拡大させるなかで、この買収はUberにとって重要な局面だ。イノベーティブなローカルソリューションをつくりだすことができることからもわかるように、Careemは中東におけるアーバンモビリティの未来形成で重要な役割を果たし、この地域で最も成功したスタートアップの一つとなった。Careemの創業者らと親密に連携し、我々が動きの速いこの業界で乗客やドライバー、都市に優れた結果をもたらせると確信している。

一方、CareemのCEOで共同創業者のMudassir Sheikha氏は別の声明文で以下のように述べた。

Uberと手を携えることで、人々の生活をシンプルにして改善させ、影響を与えるような素晴らしい組織をつくるというCareemの目的をさらに推進させることができる。この地域におけるモビリティと幅広いインターネットの機会は巨大で、手付かずだ。そしてデジタルの未来に向けてこの地域を飛躍させる可能性を持つ。今回Daraがリーダーシップを発揮したことで実現し、我々はUberよりもいいパートナーを探すことはできなかった。これは我々、そしてこの地域にとって記念すべきマイルストーンだ。世に出始めた起業家が地元や世界の投資家から資金を得る機会を増やすことで、我々はこの地域のテックエコシステムに刺激を与える存在となるだろう。

買収完了後は、CareemはUberの全額出資子会社となる。そしてSheikhaのリーダーシップのもと、自社ブランドで事業展開を続ける。

そしてUber傘下企業として、Careemの役員会はUberからの1人と、Careemからの2人で構成される見込みだ。

2社の事業は最近、地方マーケットでいくらか重複がある。カイロやカサブランカのような都市で2つのブランドが事業をそれぞれ継続させるのか、あるいは中東といくつかのアジアマーケットにおけるブランドとしてCareemに統一するのかは不明だ。

この件についてUberの広報は「規制当局の承認次第ではあるが、この買収が2020年第1四半期にクローズするまでは何も変わらない。その後、我々は2つの個別のブランドとして現在展開している全マーケットで事業を続ける」。

2社が独立したブランドとしてそれぞれに事業展開するとUberが強調していたこともあって、最初は主要マーケットに大きな変更はなさそうに思えた。しかし、この2社合併は競争とイノベーションを制限するものではないと規制当局を安心させるねらいがある可能性も否定できない。

Uberはこの買収を、「Careemの地域におけるテクノロジーインフラと、イノベーティブなローカルソリューションを生み出す能力でもって、グローバルリーダーシップとテクニカルな専門性」の結婚、と表現する。これは、買収が地域の交通インフラを「スケール展開」するのを支える一方で、「幅のあるモビリティ、デリバリー、支払いのオプション」の共有をサポートすることを意味している。

Careemのデジタル決済プラットフォーム(Careem Pay)やラストマイル配達(Careem Now)といったサービスを提供する消費者向けのスーパーアプリの開発を通じて、この買収は地域に住む人へのデジタルサービスの提供をスピードアップさせる」とも述べた。

Uberはまた、配車を依頼する消費者を幅広い価格帯で誘う、「バラエティーに富んだ信頼の置ける」サービス拡大もこの買収で実現する、と語る。2つのブランドのドライバーに関しては、ドライバーの時間を最大限活用することで、より良い労働機会と「今よりも高く、予測のつく収入」を提供する、ともしている。

配車サービスでライバル関係にあった2社による今回の合併が、価格面などでどのように好影響をもたらすのかはまだ見えない。

CNBCが入手した、Uberスタッフにあてたメモで、Khosrowshahi氏はパキスタンや、女性の運転が解禁され配車サービスに追い風が吹いているサウジアラビアのようなマーケットで急成長がみられることを指摘しながら、今回の買収はUberにとって「“大きなジャンプ」と表現した。

このメモでは言及されていないが、Uberの事業は西欧マーケットでより厳しい規制制度に直面していることをメモは物語っている。西欧マーケットでは法規制や当局の厳しい監視により事業コストが増大している。昨年Uberがヨーロッパ全体に拡大した、ドライバーや荷物配達者向けの無料保険などはその例だ。

また、行政が渋滞や大気汚染に関する規制を強化するのに伴い、Uberは配車サービスから、マイクロモビリティ(昨年、電動自転車スタートアップのJumpを買収した)を含む多様なサービス展開へと舵を切ってきた。

それとは対照的に、石油が豊富な中東は規制がさほど厳しくなく、気温が高いためにエアコンのきいた交通手段が好まれていて、間違いなく配車サービスにとっては完璧なマーケットコン状況だ。ゆえに、この地域はおそらくUberにより確かな需要を提供する。

Careemが独立したブランドを維持し、運営も別に行うというこの構造について、Khosrowshahi氏は熟慮の末に至った、とスタッフへのメモに記している。

このフレームワークは、新たなプロダクトを作ったり、2社にまたがる新たなアイデアを試したりするうえでメリットがあると判断した。我々のネットワークを部分的に統合することでより効率的な運営ができ、待ち時間を短くし、大型車両や決済のような新たなプロダクトを拡充させられる。そしてこの地域で展開されているイノベーションの驚くべきペースをさらに加速させることができる」と書いている。また、両社は買収後もほぼ別々に運営されるので、両社のチームの日々のオペレーションに変更はほとんどないと考えている、とも付け加えた。

2つのブランドを展開するという戦略は、中国のDidiが2016年にUberの中国事業を買収するのに同意したときにもとられた。

その他の要素としてはUberのIPOがある。これはようやく来月に行われると報道されている。

Careemの獲得は、今後予定されている株式公開で株主となりえる人たちに成長ストーリーを提供する。これを相殺することになるのが、頑固な損失だ。現金で14億ドルをCareemに支払わなければならず、四半期決算での損失計上は続く。

つい先日、Uberは2018年第4四半期の決算で売上高30億ドル、純損失8億6500万ドルを計上した。損失の方は本当は12億ドルだったが、税制上の優遇措置で縮小した。

一方、年間ベースでは、2018年の損失は18億ドルで、2017年の損失22億ドルから少なくとも縮小している。

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(翻訳:Mizoguchi)

中国のDidi Chuxingが10社対象のタクシー呼び出しサービスを日本で展開

中国のDidi Chuxingは自分の国で火消しに追われているが、海外では新しい市場を開拓中で、今度日本ではタクシーの予約サービスを始めることになった。

すでに人口900万の都市大阪と関西国際空港などの周辺地区でサービスを開始しており、そのDidi Japanは乗客を地元のタクシー会社10社のドライバーとリンクする。Didiによるとそれは、AIを利用する配車と車両管理システムにより効率を上げている。

時価総額560億ドルのDidiは、SoftBankとのパートナーシップにより日本に進出した。SoftBankはもちろん、他の投資家たちと共に同社に投資もしている。Didiによると、今後は京都、福岡、東京などの大都市にサービスを拡張する計画だ。

同社のサービスはライセンスを持つタクシーに限定され、私有の車のライドシェアは日本では禁じられている。しかし日本では、従来型のタクシーがビッグビジネスである。売上(取引総額)は130億ドルで、世界第三位のタクシー市場だ。タクシー免許車両はおよそ24万台ある。

Uberも日本で似たようなタクシーサービスを試みているが、この分野はもっと大きな選手がいる。

JapanTaxiは、川鍋一朗が経営するライドシェアスタートアップで、彼は日本最大のタクシー会社日本交通のトップであり、タクシー企業の全国団体全タク連の会長でもある。JapanTaxi株式会社は、最近の6900万ドルの投資ラウンドでトヨタがリード投資家になるなど、ビッグネームの支援者がいる。

さらにまた、人気のメッセージングアプリLineがライドシェアを初めており、そしてアメリカ市場でUberのライバルであるLyftが、日本進出を検討している

Didiは、旅行者と地元民の両方に訴求することによって競合に抜きん出ることをねらっている。日本を訪れる観光客の関心を引くために、外国(中国、メキシコ、オーストラリア、香港、台湾など)のDidiアプリのユーザーが日本の通常のDidiアプリを使える“ローミングパスポート”という機能を作り出した。

SoftBankとDidiは2月に合弁事業を発表したから、日本進出はそのときから匂っていた。そしてこれは、Didiが今年行なう5つ目の拡張だ。同社は昨年末に40億ドルの資金を調達し、その資金をAIと同社のコアテクノロジー、および国際市場に投入した。

Didiのグローバル展開は、ブレーキを踏むことなく着実に行われている。メキシコオーストラリアには支社の形で進出し、またブラジルではユーザーのライバル99を10億ドルで買収、そして台湾はフランチャイズ方式で進出した。そのほか、投資や株式保有の形でのグローバル化もある。それらは、アメリカではUber、インドではOla、東南アジアではGrab、中東ではCareem、そしてヨーロッパとアフリカではTaxifyなどなどだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ライドシェア業界で事業統合が活発化ーCareem出資の楽天、Uberとの合併についてはノーコメント

Bloombergによると、配車サービス大手のUberは中東でのライバルCareemと合併の可能性について協議しているようだ。この件に詳しい3人の話を引用して報道している。

記事では、これまで協議されたいくつかのバージョンを示唆しているが、そのどれもまだ合意には至っていない、としている。どれかが合意に至るかもしれないが協議はまだ続いていて、結局どれも合意に至らなかった、ということもあり得る。

Bloombergの情報筋は、もしUberがすぐさまCareemを買収するという形をとらずに合併会社という形式をとる場合には、Uberは半分以上の株式を取得する必要があると主張している、と伝えている。

これまで協議され、今後合意に至る可能性のある選択肢の一つは、Careemの現在の経営陣が合弁会社を運営するというものだが、状況は流動的で、この2つのブランドが中東で現在の形態でビジネスを展開するというのもあり得る。

別の選択肢は、UberがすぐさまCareemを買収するというものだ。

Bloombergはまた、このドバイ拠点のCareemが5億ドルの資金調達を検討しているとも報じている。この資金調達が実現すればCareemの企業価値は約15億ドルになるという。Careemは1月にもIPOをする可能性があり、すでに銀行と話し合いの場を持ったとされている。

これまでのところ、Uber、Careem共にこの件については何も公表していない。

Careemと話し合いをしているかどうかUberの広報に尋ねたが、コメントを拒否された。

一方、Careemの広報Maha AboueleneinはTechCrunchに次のように語った。「我々は噂に対してコメントはしない。我々の目指すところはそれぞれの地域で一番のインターネットプラットフォームを構築することにある。それは、新マーケットを開拓し、プラットフォームに新商品やサービスを投入して既存マーケットを倍に広げていくことを意味する。その取り組みは始まったばかりだ」。

Uberは近年、グローバル事業展開の再構築を図っている。今年初めには東南アジア事業を現地でライバル関係にあったGrabに売却して東南アジアから撤退し、その一方でGrabの少数株式を取得しようとしている。

加えて、Uberは2016年に中国で同様の事業売却をもう一つのライバル企業Digiに行なった。

また、Uberは昨年ロシアのタクシー配車Yandexとジョイントベンチャーという形で業務提携をするという賭けに出たーYandexに株式の大部分を譲ってのことだ。

しかしこのところUberは中東での展開と可能性に関心があるようだ。CEOのDara Khosrowshahi は5月にあった会議で、中東、そしてアジアとインドで“勝者”になれる、このマーケットでの成否が我々の運命を握っている、と述べている。

公にはUberは、他の地域でもそうだが中東で弱小な存在でいるつもりはないとしている。しかしこれは必ずしもUberとCareemの交渉を除外することを意味するわけではない。

4月、CNBCからCareemを買収するのかと尋ねられ、それに対しCOOのBarney Harfordは過半数以下の株式取引を否定し、次のように述べた。「急成長中の我が社にとってポテンシャルのあるパートナーシップを検討しないというのはありえない。しかし確かなのは、現在我々が展開しているマーケットというのは我が社にとって中核マーケットであるということだ」。

Harfordはまた、他のマーケットで収益をあげているおかげで、Uberは選んだ成長著しいマーケットで“不特定ベース”で投資を行うことができるとも語っている。加えて、Uberは2019年のIPOを目指している。

3月にFinancial TimesはUberがインドでのライバルであるOlaと合併について交渉していると報じた。そしてそのニュースのソースは、Uberがその合併で少数株式を取得しようとしているとケチをつけた。

当然のことながら、Uberはすでに縮小したグローバル展開をさらに小さいものにしようとは思っていないだろう。しかし、見込みがあると選んだマーケットですでに劣勢にあるなら、縮小もやむなしということになるかもしれない。

このように、始まったばかりのCareemとの胸膨らむような話し合いは、Uberの投資家にとって引き続き投資を行うという勇気をつなぎとめるものになるはずだ。

Careemは昨年、シリーズEラウンドで5億ドルを調達し、時価総額は10億円超となったが、その投資家にはサウジ拠点のベンチャーキャピタルKingdom Holding、ドイツ車メーカーDaimler、そして日本のテック大企業の楽天が含まれる。伝えられているところによれば、楽天がシリーズEを主導したようだ。

楽天の携帯電話業界への投資をリードし、またCareemの役員も務める楽天キャピタルの業務執行社員Oskar Mielczarek de la Mielは、我々が彼に話しかけた時、UberとCareemの合併の噂についてコメントするのは避けた。

しかし、ライドシェアリング事業に出資する人がさらに予想されるという、機会の拡大については喜んで話した。そして我々にこう述べた。「この業界を見渡せば、誰もが誰かと話し合いをしている。統合が明らかにトレンドなりつつあるが、これはライドシェアリング事業者に限定されるのではなく、いくつか挙げるとテック企業や、OEM、支払い会社などの参画を引き出している」。

Careemのウェブサイトには、Careemが事業展開するマーケットは15カ国とある。そのほとんどが(しかしそれだけではないが)中東で、合計80都市でサービスを提供している。

一方、Uberのウェブサイトにあるサービス展開リストは、中東15都市、アフリカも15都市となっている。

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(翻訳:Mizoguchi)

ライドシェアリングで新たなユニコーンが誕生:Careemが楽天などから3億5000万ドルを調達

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2016年も残すところあと少しだが、ライドシェアリング業界に誕生したもう1つのユニコーン企業を紹介する時間はまだ残されている。エマージング市場におけるUberのライバル企業Careemは、楽天とSaudi Telecom Company(STC)がリードするラウンドで3億5000万ドルを調達したことを発表し、世界中の脚光をあびることとなった。

今回の資金調達により、ドバイを拠点とするCareemのバリュエーションは10億ドルとなる。STCが発表したところによれば、同社はCareemの発行済株式数の10%を1億ドルで取得するという。

4年前に創業したCareemは現在、11カ国47都市でビジネスを展開しており、そのほとんどがトルコ、パキスタン、北アフリカ諸国など中東の国々だ。同社が「Captains」と呼ぶドライバーの数は15万人にものぼり、すでに600万人のユーザーを獲得している。Crunchbaseによれば、Careemがこれまでに調達した合計金額は7200万ドルであり、今回の調達ラウンド(シーリズD)は同社にとって大きなステップアップだったと言えるだろう。

今回調達した資金は、主にマーケット拡大のための費用に充てられるようだ。先日Careemはトルコへの進出を発表したばかりであるが、その他にも、12月中にパキスタン、サウジアラビア、エジプトの15都市にもビジネスを拡大すると発表している。これにより100万人の雇用を創出することを目指すだけでなく、R&Dにも一定の資金を投下していくとのこと。今年の夏、Careemは中東地域における「交通関連のテクノロジー・インフラストラクチャーを加速する」ための1億ドル規模の研究計画を発表している。

Careemの共同創業者兼CEOであるMudassir Sheikhaは、プレスリリースのなかで「楽天やSTCのような世界クラスの戦略的パートナーをもつことができ、身の引き締まる思いです」とコメントしている。「彼らとのパートナーシップは新しいCareemを支える大きな力となるだけでなく、彼らがもつグローバル・テクノロジー業界におけるリーダーシップとローカルマーケットにおける豊かな経験によって、この地域に住むすべての人々の生活を改善するという私たちの目標にさらに一歩近づくことができました」。

Careemに投下される資金はこの3億5000万ドルだけではない。同社によれば、今回の調達金額はCareemが現在交渉中の5億ドル規模の資金調達の一部でしかない。この資金調達が完了するまでの具体的なタイムフレームは公表されていない。

本調達ラウンドには、UberのライバルであるLyftと南アフリカのCabifyにも出資する楽天と、中東最大の通信企業であるSTCの他にも、Abraaj Group、Al Tayyar Group、Beco Capital、El Sewedy Investments、Endure Capital、Lumia Capital、SQM Frontier、Wamda Capitalなどが参加している。

STCはこれまでにも、STC Ventures(同ファンドはSTCとは独立して運営されており、STCも主要LPの1つとして参加している)を通してCareemの株式をすでに取得している。しかし今回の調達ラウンドは、STC本体が「イノベーティブなデジタル企業への投資戦略」の一環として直接Careemの株式を取得するというものだ。

Uberがビジネスを展開する都市には中東諸国の都市も含まれているが、それだけではなく、同社とこの地域には財政的なつながりもある。Uberは今年6月、サウジアラビア政府が出資するPublic Investment Fund(PIF)から約620億ドルのバリュエーションで35億ドルを調達したと発表している。その当時、中東地域におけるUberドライバーは39万5000人だった。女性による運転が禁止されているサウジアラビアでは、Uberを利用する乗客の約8割が女性だという。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter