ザッカーバーグ氏がFacebookによる新型コロナウイルス感染症への取り組みを詳しく説明

マーク・ザッカーバーグ氏は、Facebookならびに彼が家族で運営する非営利団体のチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブが、COVID-19として知られる新型コロナウイルス感染症と、病気に関する誤ったウイルス情報の広がりに対応するために行っていることの概要を、米国時間3月3日夜の早い時間に投稿した声明の中で説明した。

Facebookの対応は、3つの分野に焦点を当てている。正確な情報の提供、誤まった情報報をくい止めること、そして研究のためのデータ(これはFacebookが提供する普通のデータだ)提供である。

Facebookは、正確な情報を提供するために、そのプラットフォームで新型コロナウイルスに関する情報を検索するユーザーに対して、自動ポップアップを介して世界保健機関(WHO)または地元の保健当局サイトへの訪問を提案する。また、情報に関するそうした通知は、世界保健機関が人から人への感染の事例を報告した国にいる、すべての人のニュースフィードに自動的に挿入される。

「進行中の状況を考慮して、私たちは保健省やWHO、CDC、そしてユニセフなどの組織と協力して、新型コロナウイルスに関するタイムリーで正確な情報を入手できるよう協力しています」とザッカーバーグ氏は述べている。「私たちはWHOに対して、新型コロナウイルス対応に必要とされる無料広告枠と、それに相当する支援も提供しています。また、他の組織に対しても、広告クレジットのかたちで多大な支援を提供していますし、必要に応じて追加の支援を提供するために、グローバルな健康の専門家たちとも緊密に協力します」

Facebook上での誤った情報の拡散を止めるために、ザッカーバーグ氏は、グローバルな健康機関によって疑義のある虚偽情報と陰謀説をFacebookから排除し、怪しげな治療法を売り込むことで大衆の不安を煽るような広告を出すアカウントをブロックする、と書いている。

最後にそしておそらく最も議論になる内容として「人々が私たちのサービスを使って、アウトブレイクを封じ込めるためのより広範な努力に、どのように貢献できるかにも目を向けています」とザッカーバーグ氏は書いている。「研究者たちは、ウイルスがどのように拡散しているかをよりよく理解するために、モビリティデータや人口密度マップを含む、集計され匿名化されたFacebookデータをすでに利用しています」という。

匿名化されたデータに誰がアクセスできるのか、ユーザーがそのデータを使用して何を行えるのか、またはウイルスからの脅威が和らいだあとに、どれくらいの期間アクセスが可能なのかという点について、Facebookがどのようにコントロールしていくのかについての疑問は残されている。Facebookは、この記事公開に間に合うタイミングではコメントを返していない。

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブも、病気の拡大を食い止めるための医学的努力を支援している。ゲイツ財団と協力することで、2つの組織から資金提供を受けた研究者たちは、数日でCOVID-19を引き起こすウイルスのゲノム配列を完全に特定することに成功し、ウイルスに感染した人々の特定が容易になった。

また同じチームは、他の科学者たちがまた別の病原体の場合でも全ゲノムを研究できるようにするIDSeqツールの公開バージョンを作成した、とザッカーバーグ氏はいう。

チャン・ザッカーバーク・イニシアチブが設立資金を提供した医学研究センターのBiohubは、体内のさまざまな細胞タイプをマッピングする細胞アトラス(地図)の開発にも取り組んでいる。一部の研究者は、このアトラスを使用して、新型コロナウイルスが肺をどのように損傷させるかを研究し、ウイルスによって引き起こされる肺の損傷を抑える可能性がある治療法を、特定し評価しようとしている。

「人々の孤独感を和らげ、助け合うためにできることはまだまだあります。そして今後数週間でみなさんと共有できるアイデアにも取り組んでいますが、現時点ではアウトブレイク自体の広がりを遅らせることに焦点を当てています」とザッカーバーグ氏は述べている。「多くの人が困難に向き合っています。私は、病気の人も隔離された人も、そうした人たちの友人たちや家族も、そしてもちろん、いつでも流行の最前線にいる医療従事者のみなさんのことも気にかけています。近いうちに、より多くの進捗情報をお知らせします」

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(翻訳:sako)

Facebook創業者夫妻の慈善団体が人体細胞地図プロジェクトに約73億円寄付

人間の体の細胞の地図を作る、現在進行形のグローバルなプロジェクトが、Chan-Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)から6800万ドル(約73億円)を寄贈された。文字どおり人間の細胞の地図を意味するHuman Cell Atlasプロジェクト(HCA)を構成する数ダースもの個別プロジェクトを、このお金が支えるだろう。

Human Cell Atlasは複数のプロジェクトの集まりで、それぞれが健康な人間の細胞を詳細かつ実用性のあるレベルで記録しようとしている。CZIはこれまでも数年間、いろんなやり方で支援してきた。それは、同団体の基礎研究における継続的慈善事業の一環だ。

実はCZIはかなり前に、期間3年のプロジェクトを38件、期間1年のプロジェクトを85件、今回と同様に支援することを発表している。しかし審査と承認のプロセスが長引いたため助成金の交付は遅れた。科学者や研究機関が、何をしてもいい白紙小切手のようなお金をもらうことはまれだ。

しかし今回の6800万ドルは、CZIのHCAとの関わりの範囲をより明確化している。支援が決まったプロジェクトの一覧がここにあり、関わっている研究者と研究機関も明記されている。

仕事の結果とそのために作られたツールは、ほかの研究者たちが無料で利用できる。CZIのプライオリティには、オープンソースやデータセットも含まれている。

CZIの科学部のトップCori Bargmann氏はプレスリリースで「Human Cell Atlasの最初の草案を目指す進歩を加速する学際的なコラボレーションをさらに支援し構築していくことに、喜びを感じている」とコメントしている。とても大きな仕事だから、数年後にその進捗をチェックしてみたい。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

プリシラ・チャン、インタビュー――移民の両親の苦闘からチャン・ザッカーバーグ基金のビジョンまで

今回のTechCrunch Disrupt SFにはチャンプリシラ・チャンが登場した。チャンはFacebookのファウンダー、CEO、マーク・ザッカーバーグの妻だというだけの存在ではない。チャン自身が教師、小児科医であり、さらには世界最大の慈善家の一人だ。チャンは恵まれない人々を助けようとする断固たる決意を持っている。

Facebookがハーバード大学の寮の一室で誕生したことは広く知られているが、チャンのインパクト投資への決意は教師として経験した貧しい子どもたちの遊び場から始まっていたという。

チャンによれば、遊び場で見た歯の治療を受けていない子供がヘルスケアの問題に取り組もうと考えたきっかけだった。「どうやったらそんな悲しいことが起きないようにできるのか? 誰が悪いのか? きちんとヘルスケアを得ているのだろうか? ヘルスケアには痛みや感染の防止を含めて適切な歯の治療が含まれているだろうか? …こういう問題に取り組むためにもっと高い能力が必要だと私は思い知らされたました」とチャンは涙ぐみながら語った。

この決意がやがて慈善を目的する総額450億ドルのChan Zuckerberg Initiativeの設立へ、なかんずく疾病対策のための30億ドルの拠出へとつながる。 難民としてアメリカにやって来た中国系ベトナム人の両親が苦闘しながら娘を大学に進ませてくれたことに常に感謝しつつ、「誰かが私を難民の娘からすくい上げてハーバードに進ませてくれました。私は幸運でした。しかし助けが必要な子供たちがもっともっとたくさんいるのです」とチャンは述べた。

ここでチャンは明確な目標を持った慈善活動が重要だとしてビジョンを語った。チャンはFacebookの裏町ともいうべきボストンのベイエリア地区でヘルスケアの欠陥や家庭の問題によりスタートからハンティキャップを背負われている大勢の子どもたち見てきた。そうした子どもたちに機会の平等を保証するのがこの投資の目的だという。

CZI(Chan Zuckerberg Initiative)の非政治的アプローチについて説明し、政権の政策がどうあろうと、超党派的な協力を得ていくことが重要だと強調した。CZIは特定の政策を推進するために公職への立候補者に献金することはしないという。チャンはデジタル・ウェルビーイングの考え方についても触れ、祖父母にビデオを通話することは「スマートフォン中毒」ではないという例を上げた。チャンは幼い娘のマックス、オーガストにも正しい使い方を教えているという(今回のインタビューはマーク・ザッカーバーグの作り上げたプロダクトの是非を問うというよりプリシラ自身の生き方と動機を語ってもらうのが目的だった)。

特に重要なポイントは「誰もがその人に適切な方法で(チャリティーに)参加して欲しい」とチャンが述べたことだろう。誰もがチャリティーへの多額の出資確約をしたり、フルタイムで有意義な社会活動ができるわけではない。しかしシリコンバレーに大勢いる成功者たちに「もう少し深く」関与してもらいたいという。ある場合にはエンジニア、プロダクト・デザイナー、アーティストとしての能力を提供することが良いのかもしれない。問題を解決するための努力が長続きできることが重要だという。ときには富が少数者の手に集中することを支えている社会構造そのものと戦うという困難をもたらしかもしれない。チャンは「なんども既存のルールと戦っているうちに、そんなルールを作ったシステムのほうが壊れているのだと気づくのです」とチャンは結論した。

〔日本版〕CZIは節税可能な非営利団体ではなく、営利、政治活動も自由な有限責任会社(LLC)の体制をとっている。インパクト投資とはおおむね「利益を得つつ社会的に有意義な結果を得るような投資」を意味するとされる。

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滑川海彦@Facebook
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