ディープリンクでスマホのウェブとアプリをスムーズにつなげるCircuit

「ディープリンク」という言葉を聞いたことはあるだろうか?本来の意味は、ウェブサイトのトップページ以外のリンクのことを指す。例えばとあるサイトやソーシャルメディアからTechCrunchのトップページではなくこの記事のページへのリンクはディープリンクと言える。

今では単にウェブサイトのリンクだけでなく、スマートフォンアプリの特定ページに遷移するリンクも指す言葉になっている。例えばFacebookのアプリ上でPinterestへ投稿された写真をクリックした際、Pinterestのアプリをインストールしているユーザーであれば、Pinterestのアプリが起動し、トップページではなく当該の写真が表示される。この当該写真へのリンクもディープリンクというわけだ。

そんなディープリンクがスマートフォンの世界で重要になっていく――ディープリンクソリューション「Circuit」ベータ版の提供を開始したふくろうラボの清水翔氏は語る。

僕らは普段あまり意識せずに利用しているのかも知れないのだけれど、実はプラットフォーマーは2013年以降、ウェブからアプリへの新しい動線を作るべくディープリンクへの対応を進めている。

Twitterでは2013年4月に「Twitter カード」を公開している。これは、ツイートに画像やアプリのリンクを埋め込むことができる機能だ。これを利用すれば、あるアプリをインストールしている環境であればアプリが起動して当該ページを表示し、アプリをインストールしていなければApp Storeが起動してそのアプリのダウンロードページを表示できる。冒頭にあったFacebookの例も、同社が2014年4月に公開した「App Links」という仕組みを利用している。またGoogleも、スマートフォン向けの検索結果画面にAndroidアプリのディープリンクをつけ、検索結果画面から対応アプリの当該ページに直接アクセスできるボタンを付けられるようにしている(ただし、日本ではヤフオク!やクックパッド、Hotpepper、pixiv、WEARなど対応サービスが限られている)。

ただし、このディープリンク対応、OSやブラウザ、リファラーごとに挙動が違うため、うまく動作をさせるには、OSやブラウザごとでコードを分け、さらにそれらのバージョンアップのたびに検証が必要になったりと、実装と運用には非常に手間がかかるのだそうだ。だがCircuitを利用すれば、ディープリンクのルールを設定したあと、ウェブサイトにJavaScriptを記述するだけで主要なOSやブラウザでのディープリンク対応を実現できるという。ベータ版の利用は無料。2015年2月をめどに正式リリースを検討している。同種のサービスとして、海外では「URX」「Deeplink.me」「Branch Metrics」などがある。

ではCircuitの導入で具体的にどんなことができるのか?清水氏は(1)端末内のアプリの有無を判別しての遷移先の振り分け、(2)前述のTwitter カード、App Linksへの対応、(3)ウェブサイト訪問者に対して、当該アプリの未ダウンロード時のみアプリのダウンロードを訴求、(4)広告や友人招待経由でのアプリ起動時に、指定のページに遷移する――といったことが可能になると説明する。ただし、App Linksは遷移元と遷移先の行き来ができる機能を有するが、Circuitを利用した場合はアプリ間での「戻る」機能は用意されていない。

僕はFacebookアプリを利用している際、友人がシェアしたコンテンツをクリックして、Web ビューが立ち上がり、アクセスの都度そのサイトへのログインを求められてうんざり……という経験が多々あるのだけれど(まさに下の図のとおりだ)、これがログインした状態で直接アプリで閲覧できるようになる(アプリを立ち上げるかどうかを確認するダイアログは表示される)のであれば非常にありがたい話だ。清水氏によると、すでにユーザベースのNewsPicksなどがCircuitを導入しているそうだ。

ふくろうラボでは「ディープリンク」を解説し、啓蒙するためにオウンドメディアも立ち上げているが、まだ理解はこれからといった状況だそうで、「いまはまだ、サービス説明の前にスマホ時代のディープリンクとは何かを担当者と会って説明し、理解してもらった上で導入を提案している状況」(清水氏)だという。同社は4月にインキュベイトファンドとEast Venturesから数千万円の資金を調達しており、現状はクライアントを拡大しつつ、サービス開発を続けている。将来的にはCircuitの利用料に加えて、広告事業者との連携を進めることで、マネタイズの道を模索していく。