「500円のスキル売買」から「相談のゲートウェイ」に——ココナラが8月下旬にも法律相談サービス開始

ココナラ代表取締役の南章行氏

ココナラ代表取締役の南章行氏

500円でユーザー同士が経験や知識を売買できるCtoC型のサービスECサイトとして、2012年にスタートした「ココナラ」。サービスを手がけるココナラ(2014年にウェルセルフより社名変更)が、2015年11月にジャフコ、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、VOYAGE VENTURESらから総額5億4000万円の資金調達を実施した同社が、「2018年上場」の目標を掲げてサービスを拡大する。その第1弾となるのは弁護士に無料・非公開で相談ができるマッチングサイト「ココナラ法律相談」。8月下旬のローンチを目指してティザーサイトを公開。サービスに登録する弁護士の募集を開始した。

まずはココナラのこれまでについて紹介しよう。このサービスがローンチした2012年当時といえば、まだ今どきのCtoCだのシェアリングエコノミーだのという波が日本に押し寄せていない時期。一方米国を見てみると、5ドルでユーザー同士がスキルやサービスを売買できる「Fiverr」が2010年にローンチしており、ココナラはいわばそのクローン的なサービスの1つという印象が強かった。ココナラ代表取締役の南章行氏は、当初から“その先”の展開を見据えていたと語る。「2016年に入るまではマーケティングも行わず、会社の目指す姿もあまり発信せずにここまで来た。だが大型な調達を行い、2018年に上場すると打ち出し、プレゼンスを取って行くフェーズになった」(南氏)

ココナラの現在の出品数は8万件。カテゴリーの上位3位は占い・鑑定、心の悩み・健康、似顔絵・イラストだが、これ以外にも幅広いスキルが売買されている。また、過去4年間、約10%の月次流通高成長率を維持。7月は月次流通高8000万円超を達成する見込みだという。当初500円均一だった売買額も、おひねり機能やランク制度の導入などを経て上限金額を上げていった(現在500〜5万円で設定可能)ことも流通高の向上に寄与した。

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また特徴的なのが継続課金率。一度購入したユーザーの課金率は最初の数カ月で10数パーセント〜20%程度に落ち込むものの、以後、ほぼ継続して課金を続ける。また出品者がブログやソーシャルメディアで告知することで、口コミでそのファンが流入するということが起こっているそうだ。

「ココナラのメインユーザーはざっくり言うとPCで来訪する男性ビジネスマンと、スマホで来訪してプライベートな相談をする女性。案件ベースで言えば占いなどが多いが、どんなことでも『相談するならココナラ』と考えてもらえる立ち位置を取れている。ユーザーごとの購入カテゴリーを見ても、3〜5カテゴリーと複数にわたるケースが6割以上。もちろん継続課金率自体を上げていく施策は必要だ」(南氏)

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「500円のスキル売買」から「相談のゲートウェイ」に

そんなココナラがこれから目指すのは「相談のゲートウェイ」。無料のQ&Aサービスや一般的なクラウドソーシングでは解決できないような重要性・緊急性・個別性の高い相談の依頼者(購入者)と、固有のスキルを持っているが集客に向けた広告費を負担したくない、できない出品者、さまざまなジャンルで存在するそんな依頼者と出品者を結ぶための入り口になるという。

具体的にはどういうことか? これまで占いやデザインなどの低単価・高頻度の案件が発生する業界についてはトランザクション単位で課金する手数料モデルでビジネスを展開してきたが、今後は高単価・低頻度の案件が発生する業界にも参入。こちらは広告モデルで出品者から課金するのだという。その第1弾が冒頭で触れたココナラ法律相談だ。

このサービスは、ユーザーが遺産相続なり男女のトラブルなりの相談を投稿すると、最大5人の弁護士が回答をくれるというもの。相談は無料で、他のユーザーに相談内容が見えることはない。そして相談の結果、訴訟などを行う場合、ユーザーは最適な回答をくれた弁護士に連絡をして、直接依頼ができる。

このサービスで弁護士にかかる費用は月額3〜6万円程度になる予定。無料版のサービスも用意するが、有料版ではプロカメラマンによる撮影などで弁護士紹介ページを拡充するほか、得意領域の登録機能などで露出を強化する。なお早期本日から一定期間までは無料でサービスを提供する。2018年8月までに弁護士2500人の登録(うち有料1000人)を目指す。

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実は法科大学院の設立などを背景に、2000年以降弁護士の数は大幅に増加し、その結果弁護士所得は減少傾向にある。そのため若手弁護士を中心にウェブでの集客は進んでいるという。そこにいち早く目を付けたのは弁護士ドットコムが運営するQ&Aサイト型の「弁護士ドットコム」。また最近では弁護士トークの運営するチャットアプリ型の「弁護士トーク」なども登場している。

ココナラでは法律相談の運用を踏まえて、2017年以降新カテゴリーでのサービス展開を狙う。また2018年にはサービスEC領域のM&Aや海外進出なども進める計画だという。

個人の特技を売買できる「ココナラ」、次の一手は1分100円の有料電話相談

個人間でスキルや知識を売買できるサイト「ココナラ」が29日、1分100円の有料電話相談サービスを開始した。ココナラは似顔絵の作成や恋愛相談、SEOのアドバイスなど、個人のスキルや知識が一律500円で売買されている。2012年7月にスタートし、登録ユーザーは10万人、取引成立数は約13万件。有料電話相談は、ココナラの出品者が相談者の悩みに答えるものだ。

相談者は、ココナラのスマートフォンサイトから相手を選び、希望の時間を予約する。予約時間になるか、待機中の出品者がいれば即座に、出品者と相談者の双方が登録した電話番号にココナラのシステムから電話を転送する。お互いは電話番号を伝えずに通話でき、匿名でのやりとりも可能だ。料金は1分100円で、出品者が受け取る報酬は50%。双方の通話料は当面、ココナラが負担する。

電話相談の内容とはどんなものなのか? サービスを運営するココナラ代表取締役の南章行は、女性のプライベートな悩み、起業や転職、マーケティングなどのビジネス系の相談が中心になると予想する。相談者からすると、ネット上のやりとりと比べて、スピーディーに対応してもらったり、じっくり相談に乗ってもらえるのがメリットだという。

有料電話相談を使う動機は?

ところで、ネット上にはタダで相談に応えてくれるサービスは山ほどある。それこそ、TwitterやFacebookでつながる友人や知人に相談すれば無料。個人が特定されるのが嫌であれば、匿名でQ&Aサイトに投稿することもできる。あえて有料電話相談サービスを利用する動機は何なのか? この点について、南は次のように説明する。

「無料だと、答える側も相談する側も本気度がぐっと減ってしまう。有料になったとたんに、それは500円だろうと1万円だろうと、相談する側は本気の相談をしますし、お金をもらう以上、答える側も本気で回答します。1対1のクローズドの場で、有料サービスならではの本気のやり取りが満足度を生むと思っています。」

電話相談で費やされる時間はユーザーによって振れ幅がありそうだが、南は平均45分と見込んでいる。従来のスキル売買が1件あたりの500円だったことを考えると、電話相談の単価は9倍の4500円となるわけだ。ココナラはまず、既存ユーザーに電話相談の利用を促し、1年後には既存ユーザー経由の売り上げだけで月額800万円を目標に掲げる。さらに、広告経由で外部ユーザーも取り込んでいく。

類似サービスとして最も知られているのは、Googleが手がける専門家とのビデオチャット「Helpouts」だろう。検索してもわからないことを専門家に教えてもらえるというもので、Google+のHangoutsとGoogle Walletを融合させたサービスだ。日本ではオールアバウトが2014年3月、専門家が電話相談に応じる「navitell(ナビテル)」を開始している。