香港で6歳児からプログラミングを教えるFirst Code Academyが順調に成長…現代社会の必須の第三外国語に

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[筆者: Josh Steimie]…デジタルマーケティングサービスMWIのCEO。同社のオフィスは合衆国と香港にあり、彼はCMOs at Work: How Top Marketers Build Customer Loyaltyの著者。

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#ILookLikeAnEngineerの人気の高まりとともに、プログラマのステレオタイプが壊されつつある。First Code AcademyのファウンダMichelle Sunも、そんなプログラマのステレオタイプ像から外れた人物の一人だ。同社は、6歳から上の子どもたちに、プログラミングを教えている。

自分にその気はなかったのに、ある種の集団セクハラ事件を契機にILookLikeAnEngineerを始めざるをえなかったIsis Wengerと同様、Sunも若くて女性で美人で、そしてプログラマだ。多くの人が、この4つのうちの1つは他の3つとミスマッチだ、と思うかもしれない。でもSunは、まさにそれによって、プログラマのステレオタイプをぶち壊そうとしているし、そこからさらに次の歩みを始めようとしている。

Sunは香港生まれだが、ここでは3歳にも満たない子どもたちが名門幼稚園の面接試験を受け、その後も子どもたちは学歴競争に明け暮れる日々を送る。

子どもたちのすべての関心や興味を、学歴競争が踏みにじる。若い脳を、丸暗記主義が支配する。香港の地下鉄の駅には、入試専門の家庭教師のポスターが氾濫している。まるで彼らが、ポップスターであるかのように。

香港っ子の目標は何だろう? 銀行やそのほかの金融企業に安定的な職を得て、企業内の出世の階段を上(のぼ)っていくことだ。でもSunは、それが未来に向かう理想のキャリアパスだとは思っていない。“これからの世界は、成績優秀な学生など求めていない”、と彼女は語る。“自分の記憶から情報を取り出すことだけが上手な人間は、もはや必要とされない。そんなことは、Googleがやってくれる。私たちにとって本当に必要な人間は、何かを創り出して、世界をもっと良い場所にできる人たちだ。そしてプログラミングは、子どもたちをそんな道の上に乗せる”。

SunはFirst Code Academyを始めるまでに、いくつかの起業を経験した。たとえばその中の、二人がお互いにスマートフォンをぶつけ合えば情報を共有できるBumpは、2013年にGoogleに買収された。スケジュールを共有するソーシャルメディアBufferも、彼女の作だ。Bufferを作ったあと彼女は、また新しいホットなアプリを作ることではなく、別の方向へ関心を向けた。

Sunはこう語る: “最初私は、テクノロジとその製品が多くの人びとに与えるインパクトに、心を惹かれた。プログラミングは最初のスタートアップを作ったときに始めた。そのとき、デベロッパのチームと一緒に仕事をして、彼らがやってることの中身に関心を持った。技術者たちと、もっと内容のあるコミュニケーションをしたかった。そこでまず、プログラミングに関する本を山のように読んだ”。

それから彼女は、女性のためのソフトウェアエンジニア育成校として有名なHackbright Academyに入学した。その、毎日一日中プログラミング漬けという環境の中で、プログラミングのスキルを磨いた。

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“Hackbrightでは、LinkedInやDropboxのような大きなテクノロジ企業が主催するハッカソンに参加した。そして、プログラミングの能力があれば仕事も人生も無限の可能性が開けることを確信した”。

卒業後ベイエリアで仕事をしていたSunは、中学校の女子生徒たちにプログラミングを教える機会に遭遇し、そのときの経験から、あらためてアジアにおける教育について考えるようになった。香港に帰国した彼女は、児童生徒にプログラミングを教える教育をアジアでも始めよう、と思い立った。彼女のFirst Code Academyは最初、女の子だけの一日かぎりのプログラミング教室だったが、その後の2年間で、6歳から18歳までの学齢層に、さまざまなコースを提供するようになった。

“私たちの使命は、次世代の人たちに、テクノロジを利用するクリエイターになれるための力をつけていくこと”、とSunは語る。“この世代でリーダーになる人たちは、どんな分野でも、テクノロジをしっかり理解していることが、必須の要件だ。テクノロジだけでなく、医療でも法律でも金融でも何でも”。

クラウドベースのBIソフトウェアを提供しているDomoのCMO Heather Zynczakも、同じ考えだ。ZynczakもSunと同じくプログラマ出身だが、Domoにおけるマーケティングの仕事をうまくやるためには、その経験と知識が必須だ、と痛感している。

Zynczakは語る: “最初に就職したのは、今AccentureになってるAndersen Consultingだったけど、そこでプログラミングをやらされた。週に80時間、プログラムを書いたが、その経験があったおかげで、今の私はCTOとも話ができるし、ソフトウェアシステムを選べるし、だれかが‘multi-tenancy systems’*なんて最新のテクノロジ用語を使っても、すぐに理解できる”。〔*: multi-tenancy systems, ref1ref2。〕

本当に必要なのは、何かを創り出して、世界をもっと良いところにできる人たちだ。そしてプログラミングは、子どもたちをそんな道に乗せる。
— Michelle Sun

Zynczakは続ける: “マーケティングも最近はますますデジタル化し、テクノロジの導入が進んでいるから、プログラミングの経験は今の私の本業にも役立つ”。

Sunはこう語る: “プログラミングは読み書きの次のリテラシーだ。英語の次に、誰もが学ぶ必要のある外国語だ。中国とビジネスをするためには中国語を学ぶ必要があるのと同じように、ビジネスだけでなく今の社会で生活するために勉強する必要のある新しい言葉が、プログラミングだ”。

SunのFirst Code Academyは、同社のオフィスと、香港市内の学校で教えている。カリキュラムは5年で、6歳から始まる。コースはプログラミングの基礎に始まり、最後は生徒が完全なアプリ/アプリケーションを自分で作れるようにする。

また、プログラミングを学んでいる子どもとまともな会話ができるようになりたい、という親の要望に応えて、親子教室も開いている。それは効果を上げている。また、今年の夏は3人の生徒がMITの招待でボストンへ行き、自分たちのアプリケーションを見せた。最近ではシンガポールでも体験教室を開いている。

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Sunによると、いくつかの点でアジアは、プログラマに向いた環境だ。“アジアの子は算数や理科がよくできるし、そのほかの学科の成績も良いから、プログラミングの上達も早い。でも卒業して子どもでなくなった人たちのための、簡便な勉強と体験の場がない。大学に入ってやっとプログラミングの基礎を教わるのでは、遅い。一般的に新しい言葉は、大人よりも子どもが早く覚える。子どもたちはプログラミングを、遊びや趣味として学んでいく”。

First Code Academyでプログラミングを勉強するようになると、そのほかの重要な生活スキルも身につく。たとえば失敗を悪と見なすアジアの文化的規範を無視し、むしろ失敗から、重要な学習体験を得る。そういう前向きの姿勢が、日常の生き方にも反映する。Sunによると、失敗をおそれて、人前では話もできない慢性ビビリ少年がある日入学してきた。

“最初の二つのコースを終えたころから、彼は問題の答を確信をもって大声で言えるようになった。彼は、失敗は全然OKだ、ということを学んだ。自分が作ったアプリケーションがクラッシュしたら、問題を見つけ、直し、それを、ちゃんと動くようになるまで何度も繰り返す。人生も、それと同じよ”。

画像提供: Kevon Cheung(First Code Academy)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

貧困地区East Londonの子どもたちがプログラミングを学べるための奨学制度が発足


 
イーストロンドン地区の非学卒者にデジタルの技能を身につけさせるための学資制度が1月から始まる。このローン制度には、イギリスの技術者人口の不足に対応し、また技術的技能の有無によって大きく拡大している社会的・経済的格差を解消する、という二重の目的がある。

この奨学資金はTech City Fellowshipと名付けられ、18〜25歳の非学卒者に一人あたり最大11600ポンドが、ソフトウェア開発技術を学ぶための学費として貸し付けられる。

この12週間のプログラミング特訓を実際に行うのはMakers Academyで、ここはこの奨学制度の協力企業の一つだ。ローンは、学費だけなら8000ポンド、生活費込みならこれに毎月1200ポンドがプラスされる。

このMakers Academyの特訓コースを終了した者には、この奨学事業の一環として見習いデベロッパやインターンの仕事が保証される。

見習いデベロッパやインターンの受け皿としては、今のところ二社が名乗りを上げている。それらは、ファッションeコマースのアグリゲータLystと、コラボレーションプラットホームProFindaだ。この奨学制度は最大で毎年100名の対象者を予定しており、そのためにもっと多くの受け皿企業を集めたい、としている。

最初のパイロット事業のローン対象者数は不明だが、協力企業がまだ2社だから、100名には遠く及ばないだろう。

アップデート: この奨学事業への現在の出資はProFindaからの12000ドルと、そのほかのVCや技術コミュニティからの寄付から成り、この2月に一人の生徒を受け入れるぶんには十分である。Maker Academyの広報によると、目標額は2015Q1までに10万ポンド、生徒数8名だそうだ。生徒100名までは、まだまだ遠い。

“今後は出資パートナーの数を増やしてこの奨学制度を年間100名の若者たちに提供したい。すでに奨学制度の枠組みはできたので、この目標は十分に達成可能だ”、と同社は述べている。

この奨学事業は、Connecting Tech City(CTC)プロジェクトの一環で、イーストロンドンのテクノロジブームがもたらす利益を当地の住民にも及ぼそう、という趣旨だ。CTCを企画し実施しているCentre for Londonは、環境問題や住宅、そのほかの社会経済的問題など、今のイギリスの首都が抱える課題に挑戦している非営利のシンクタンクだ。

ロンドンのイースト・エンドが政府のTech City事業などを契機に最新流行のスタートアップハブになる前は、当地区は非常にさびれていた。2010年には、ロンドン自治区内のHackneyとNewhamは、英国自治省(Department for Communities and Local Government)の評価で最下位1%の‘もっともさびれた地区’に入っていた。Tower Hamletsも、ほぼこれらに近かった。

しかし2012年のロンドンオリンピックと、それに次ぐTech City事業により、これらロンドン東部地区にはお金と注目が集まるようになり、企業やスタートアップが進出してきた。これらは当然、地域経済に影響を与えた–スタートアップのオフィスの家賃も高くなったが。ただし、それでもまだ、イーストロンドン地区の貧困は持続し、格差はむしろ拡大している。地元の失業者たちは、新たに入ってきたスタートアップなど技術系企業には就職できないのだ。

シンクタンクNew Policy Instituteが2013年に発表した報告書は、East London Boroughsの中心部にやや改善が見られるものの、一般的には格差、貧困児童、失業、19歳以上の無資格者、給与の不平等などが、Tower Hamletsなどではロンドンの平均を下回って悪化している、と報じている。

そういうイーストロンドン地区の若者にテクノロジのスキルを身につけさせ、地元に雇用者を吸引することは、確かに良いことではあるが、ただし地区の社会経済状況を目に見えて変えるためには、今回の奨学事業のようなものを何倍ものスケールで展開する必要がある。

まだこの奨学ローンの返済条件などは、明らかでない。そのローンの額は、通常の3年間の高等教育の学費に比べて少ないとは言え、返さなければならない借金であることは同じだ。テクノロジとその実用教育(プログラミング)を軸として地域経済を盛り上げようとする今回の試みも、その実際の成果は未知数である。

イーストロンドンに住む当該年齢の方は、ここで今度の奨学制度の詳細を知ることができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))