日本円の出金は401億円、事業継続と業者登録を目指す——コインチェック大塚COOが説明

コインチェック取締役COOの大塚雄介氏

仮想通貨「NEM」の不正流出事件が起こり、仮想通貨の売買や日本円の出金を停止していた仮想通貨取引所「Coincheck」。サービスを運営するコインチェックは2月13日、日本円の出金を再開した

コインチェックでは同日20時から本社が入居するビルのエントランスで会見を実施。同社取締役COOの大塚雄介氏が現状を説明した。なお、同日午後には複数メディアで同社が会見をするとの報道があったが、報道後も同社広報は「会見は行わない」としていた。

冒頭、大塚氏は「まだすべて話をするわけではなく、後日改めてその機会を設けさせていただきたいと思う」とした上で、現時点での同社の状況を説明した。

コインチェックでは2月13日付けで金融庁の業務改善命令に対して、報告書を提出。「継続して事業をさせて頂くところを一歩一歩、改善を進めている。まず一歩目だが、日本円の出金を再開した」と説明。すでに13日だけで401億円の出金を終了しているという。また明日以降についても、順次出金を行うという。すでに発表済みのNEMに関する補償については「ある程度の目処はついている」としたものの、時期や詳細については「確定したらご報告する」とするにとどめた。

現時点ではいまだ中止している仮想通貨の送金や売買に関しては、外部のセキュリティ専門会社と安全を確認した後に再開するという。ただしこちらに関しても具体的なスケジュールは明示せず、「明確に決まり次第、ちゃんとご報告をさせていただく」とした。

大塚氏かra

説明があったあと、報道陣との質疑応答が行われた。以下はその概要だ。なお会見は「後ろの予定が詰まっている」(同社)とのことで20時20分で終了した。最後に報道陣が投げた「被害者に対してひと言」という質問に回答することなく、大塚氏はその場を去っている。

–業務改善報告書の内容、金融庁とのやり取りについて
お答えすることができないかたちになっている。(記者からの話せる範囲で、という質問に対しても)ちょっとお答えできない。すみません。基本的には今、進めている最中。内容についても、プレスリリースには出しているが、改善報告書の項目の中身に関しては答えられない。

–再発防止策において、不正監視の回数増加やコールドウォレットの扱いについて
今の時点でお答えできない

–経営体制や第三者委員会の設置について
(前の質問と)一緒で、そこについてもお答えできることない

–補償のめどについて
改善計画については、お答えできない。補償のめどなど日付については正式に決まったら。補償金額と数量については報告していることがすべて。(残りの入金額については)今時点ではお答えできない。(ユーザーから返金依頼があれば返せるかについては)はい。

–NEMの補償時期がはっきりしない理由について
資金自体はすでにある。そこの調整を行って、問題ないことを1つ1つ確認していく。補償の資金となる現金は手当できている。(財務状況を金融庁に報告しているかについて)金融庁とのやり取りに関しては話せない。

–NEMの補償時期が言えないと不信感がある
おっしゃることはまさにそうだが、お答えできない。1つずつ確認しているので、確認できれば報告させて頂く。

–顧客資産と会社資産を分別した上で返せるということか
はい。もともと分別管理が前提。今回の日本円の出金も、預かった資金から出している。
(補償の資金についても)自己の資金から。(他の仮想通貨も分別管理しているかについては)、はい。

–そもそも金融庁の仮想通貨交換業者登録が遅れた理由について
事件と関係がないのでお答えしかねる。

–売買機会を逸したユーザーからの損害賠償の動きについて
売買については今しばらくお待ち頂く。(補償については)まだ確認できていないのでお答えしかねる。

–事業者登録ができる確信があるか
はい。基本的には事業を継続する。登録もさせて頂く。(登録ができなければ)違法になるので事業ができないと思う。

–NEM流出からの2週間で決まったことは
外部の専門家にセキュリティの確認をして、日本円の出金ができるようになった。加えて仮想通貨売買も前に進めている。(解決までの時間について)ある程度の見通しはついているが、正式にはまだ。目処についてもお伝えできない。私たちのシステムとして安全に送金できるのかどうかを確認中。一番はユーザーの資産が手元に戻る事。

–だいたいでいいので目処を示せないのか
見通しとズレがないようにしてから正式に報告する。

–なぜ代表取締役社長の和田晃一良氏はいないのか。
私が責任を持っているから。(和田氏は)今日は業務改善命令の報告をしていた。今もオフィスにおり、サービス改善に関わっている。

–コインチェックの現預金について
お答えしかねる。(売上高や営業利益、純利益なども)お答えは控える。(開示の意向について)現時点では、ない。

–経営責任について
繰り返しになってしまうが、業務改善命令の中身に関してお答えできない。(責任の取り方については)今ちゃんと考えているところ。正式な内容がきまれば報告する。(経営陣の辞める意向については)そこらへんも含めて中身が決まれば報告する。

–出金停止、業務停止の是非について
ユーザーの資産を一番に考えて、これ以上被害が出ないためにも妥当な判断だと思っている。

–破産申請の可能性について
破産するつもりはなく、事業継続の意思がある。ある程度の見通しも立っている。事業の継続と金融庁への登録を継続する。

–不正アクセスの原因究明について
報告の内容になるため話せない。(ユーザーへのアナウンスについて)目処が立ち次第報告する。

–不正流出したNEMが換金されているという話について
捜査関係の話はできない。

コインチェックが580億円のNEM不正流出について説明、補償や取引再開のめどは立たず

既報の通り、仮想通貨「NEM(ネム・XEM)」の不正流出が明らかとなり、NEMを初めとした仮想通貨の売買を中止している仮想通貨取引所「Coincheck」。サービスを運営するコインチェックは1月26日、その詳細を説明する会見を東京証券取引所で行った。23時30分にスタートした会見は(当初のアナウンスは23時開催)、27日1時過ぎまで続く異例のものとなった。

会見には、コインチェック代表取締役社長の和田晃一良氏、取締役COOの大塚雄介氏、同社の弁護士である堀天子氏が出席。冒頭、和田氏は「本件に関しまして、皆様をお騒がせしていますことを深くお詫び申し上げます。たいへん申し訳ございませんでした」と謝罪。その後、大塚氏が状況を説明し、記者からの質疑に回答するかたちで会見は進められた。

大塚氏による説明および当日配布された資料によると、今回の不正送金の経緯は以下の通り。

2時57分(以後、すべて1月26日):事象の発生(コインチェックのNEMアドレスから、5億2300万NEM(検知時のレートで約580億円)が送信される。

11時25分:NEMの残高が異常に減っていることを検知

11時58分:NEMの入出送金を一時停止

12時7分:NEMの入金一時停止について告知

12時38分:NEMの売買一時停止について告知

12時52分:NEMの出金一時停止について告知

16時33分:日本円を含むすべての通貨の出金を一時停止について告知

17時23分:ビットコイン以外の仮想通貨の売買、出金を一時停止・告知

18時50分:クレジットカード、ペイジー、コンビニ入金の一時停止について告知

コインチェックでは、今回の不正アクセスによる送金を金融庁および警視庁へ報告。NEMのコミュニティをとりまとめるNEM財団やNEMを取り扱う国内外の取引所と連携して、送信されたNEMの追跡および売買停止要請をしているという。なお、今回の取引に関しては、NEM財団との話し合いの中で、ハードフォークやロールバックによって被害を受けたユーザーを救済することはできかねる、といった旨の回答を受けているという。

被害ユーザー規模は調査中、運用体制に不備

流出の影響を受けるユーザーの数は「現在調査中」(大塚氏)で、規模感も把握できていないという。補償については、「お客さまの保護を最優先に検討しており、対応中」という表現にとどめて、現時点で具体的な施策を明らかにしていない。コインチェック社への財務的な影響についても精査をしている状況であり、確認ができ次第対応を報告するとしている。また、サービス復旧の見通しについては、原因を究明中であり未定。見通しは立っていないとした。

今回の不正流出の原因は、現時点では不明。だが、NEMはホットウォレット(ネットワークに接続されたウォレット。手軽に仮想通貨を取り出しやすい一方で、今回のように不正な送金をされる可能性がある)で管理されており、マルチシグ(仮想通貨の秘密鍵を分割し複数管理することでセキュリティを高める技術)を実装していない状態だったという。一方でコインチェックはビットコイン(BTC)に関してはコールドウォレット(ネットワークに接続されていない環境に秘密鍵を保存したウォレット)を利用し、マルチシグを実装。Coincheckで取り扱う代表的オルトコインのイーサリウム(ETH)に関しても、コールドウォレットでの管理を行っていた。

会見では、この運用体制に関する質問が報道陣から相次いだ。大塚氏、和田氏はセキュリティに関しては「何より最優先していた」と説明するも、マルチシグ実装予定についての質問には「他の優先事項が高い項目もあり、具体的な見通しがついていたわけではない」(大塚氏)と回答。それに対して記者が「結果的にこういう自体を引き起こしたのは、やはりセキュリティが甘かったのではないか」とさらに追求し、大塚氏が数十秒の間回答に窮するという場面もあった。

あくまで主観的に現場の空気を伝えると、マルチシグの未実装、ホットウォレットでの管理という観点で「セキュリティの甘さ」について何度も具体的な回答を求める報道陣(会見の後半になると、参加している僕ですらうんざりするような質問の仕方もあったけど)に対して、「セキュリティは万全だった」と答えるコインチェックが噛み合わない状況だった。会見後に話した投資関係者からは、「これはセキュリティの不備を認めることで、善管注意義務違反に問われることを避けたのではないか」といった声も聞いた。

数字の公開「株主を含めて協議」

また、影響を受けるユーザーの数をはじめとして、金額以外の数字を公開しなかったことに対しても質問が集まった。これに対して、大塚氏らが「公表するかどうか株主を含めて協議する」と回答したが、和田氏、大塚氏が株式の過半数を持っていると説明したところ、会場の報道陣の一部からは笑い——どちらかというと失笑だ——が起き、「(過半数あるのであれば)2人が情報の公開を決めれば他の株主の反対を排除できるのではないか」といった指摘も飛んだ(これについては、「株主」という言葉がスタートアップコミュニティと、一般の市場で異なる性質を持っていることをより認識してもよかったのではないかとも感じた。スタートアップにとっては過半数未満の株主も成長を支援するパートナーという意味もあるが、世のマーケットを見ている人たちからすればそれは想定している「株主」とは異なるからだ)。

もう1点質問が多かったのは、テレビCMと仮想通貨交換業者の登録についてだ。コインチェックは仮想通貨交換業者への登録申請をしているが、現時点までに登録が完了していない(登録申請自体は行っており、受理されてはいるが認められていない状況)。だがその一方で、すでにテレビCMを含めたマーケティングを積極的に行っている。業者登録前にCMを積極的に流すのは良識が無いのではないかと問われると、「登録申請、セキュリティに関しては、経営上最優先でやってきた。その上で、さらに使っていただきたいというところで……優先順位としては2番目で、CMもやらせていただいた」(大塚氏)と回答した。

会見の後半、和田氏は、今回の最悪のケースについて「顧客の資産が毀損し、お返しできないことだと考えている」と語った。コインチェックは「顧客最優先」と再三説明し、今後情報も開示していくことを検討しているという。だが、現状はその内容のほとんどが「調査中」という状況だ。

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

仮想通貨取引所のコインチェック、Fintechスタートアップへの投資を開始

仮想通貨取引所のコインチェックが「Coincheck investment program」と名付けた取り組みで、スタートアップへの投資を開始する。投資事業有限責任組合を使ったファンドの組成ではなく、コインチェックからの直接投資となる。

コインチェックは2012年8月設立のスタートアップ企業。なぜスタートアップがスタートアップ投資? という疑問符が頭に浮かぶ読者も多いだろう。コインチェック取締役COOの大塚雄介氏はTechCrunch Japanの取材に対して、仮想通貨・ブロックチェーンのユースケースを増やす目的があると語る。仮想通貨のユースケースが増えることが、取引所としてのコインチェックの事業拡大に繋がるからだ。

コインチェック取締役COOの大塚雄介氏

「自社だけでやるより他社を巻き込んだほうが速く仮想通貨市場全体が広がると考えています。ただ、これまでにも『ICOがやりたい』、『ブロックチェーンがやりたい』と言って起業しようという人たちが私のもとに相談に来ているのですが、法律面はどうなってるかと聞くと、特に若い人たちは『いや、とりあえず出してみようと思っています』という回答が多かったりするのが現実です」

「われわれも金融出身ではないので、初めのうちは苦労しました。だから分かるのですが、Fintechは技術に加えて金融や法律の知識も必要で、学習コストが高い。初期のスタートアップに対してそこを支援するのが狙いで、ファンド金額や投資額がどうというよりもハンズオンが重要だと思っています」

例えば、いきなり問題のあるICOプラットフォームを世に出して潰されてしまようなことがあると、当人たちにとっても社会的にも損失となる可能性がある、という。

投資はコインチェック本体から直接行い、期間や総額は決めていないものの、投資1件あたり数百万円から5000万円程度までを考えているという。特に2〜3人のスモールチームで、どういった法的懸念があり、誰に相談すれば良いのか知らないような、走り出したばかりのチームを想定しているという。

ちなみにコインチェック自体は7月の月間取引高がビットコインだけで2326億円(日本全体では4673億円)。売買手数料、レバレッジ、スプレッド、決済時の1%の手数料の4つの収益源で、すでに事業は黒字化しているという。コインチェックの決済はメガネスーパーやエアレジ導入店舗などで使える。

コインチェックは2012年の創業時にはレジュプレスという社名で、履歴書関連サービスを提供。後にビリギャルを生んだプラットフォーム「STORYS.JP」を運営していたが、仮想通貨サービス「coincheck」を2014年8月に開始。先日、2017年8月2日にはSTORYS.JP事業を1010株式会社へ事業譲渡して、今は仮想通貨サービスに注力している。今回の枠組みで、さまざまなアイデアに投資することを考えているものの、coincheck自体は今後も取引サービスを主幹業務としていく。法人需要の掘り起こしも検討しているそうだ。

ビットコイン取引所「Coincheck」でサービス障害、現在は復旧済み

ここ数日で価格が高騰している仮想通貨。代表格のビットコインは、5月9日午後時点で1ビットコイン=20万円台にまで上昇している。

そんな中、コインチェックが手がけるビットコイン取引所「Coincheck」で5月9日午前、サービス障害が発生。入出金や売買などの取引を停止したと発表した。

コインチェックによると、5月9日午前11時台から正常はでない価格が表示されるという障害が発生したため、取引を停止。アプリやウェブサービスへアクセス・ログインできない状況が続いた。その後、障害が起きた5月9日午前11時25分へのロールバックを実施。

午後4時30分には全機能を復旧させ、Twitterアカウントでもアナウンスをしている。なお、取引再開時点でのレート前後の金額の注文はキャンセルになり、障害発生前の時点で対象となったロスカットが実行されている。

同社では、この障害がハッキングなど外部からの攻撃によるものではないと説明。ユーザーの個人情報や資産流失はないと説明している。原因や再発防止施策については、Twitterアカウントやブログ等を通じて逐次報告する予定だ。

ビットコイン決済が身近に、bitFlyerがビックカメラ2店、Coincheckが26万店展開のAirレジで

bitFlyerはビックカメラの旗艦2店舗にビットコイン決済サービスを提供する。

お店でビットコインを使って買い物をすることが、ごく近い将来に普通の光景になるかもしれない。2017年4月5日、家電量販大手ビックカメラが旗艦2店舗でbitFlyerのビットコイン決済の導入を発表した。同日、26万店舗にサービスを提供中のPOSレジアプリ「Airレジ」がこの夏をめどにCoincheckのビットコイン決済に対応することが明らかになった。

Airレジでのビットコイン決済のイメージ。店舗側のiPhone/iPad上のPOSレジアプリと、顧客のスマートフォンのQRコード読み取り機能付きのウォレットアプリを使う。

同じ日の2件の発表には共通のトリガーがある。ビットコインの法的位置づけを明確にした改正資金決済法が2017年4月1日より施行されて、いわば政府の“お墨付き”を得た形になったことがひとつ。法的位置づけが明確になったことで、大手事業者がビットコインを堂々と取り扱えるようになった。

もうひとつのトリガーは海外から訪日する観光客によるビットコイン決済の利用を見込んでいることだ。訪日観光客にとって、ビットコインは両替の手間がなく使える便利なお金という訳だ。

bitFlyerはビックカメラ旗艦2店舗に提供

bitFlyerとビックカメラは、2017年4月7日より「ビックカメラ有楽町店」と「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」の旗艦2店舗でビットコイン決済サービスを開始する。1会計につき10万円相当までを上限とする。ポイント付与率は現金と同等だ(つまり、クレジットカード払いよりも多くのポイントが貯まる)。またbitFlyerは、ビックカメラ店舗でbitFlyerのiOSアプリを使ってビットコイン決済をする先着200名を対象に500円相当のビットコインをプレゼントするキャンペーンを実施する。

ビックカメラは、今回の取り組みを「試験導入」と位置づける。旗艦2店舗で有効と判断すれば、ビットコイン決済の取り組みが広がっていく可能性もある。

Coincheckのビットコイン決済機能を26万店導入のAirレジに提供

iPad/iPhoneをPOSレジとして使えるようにする「Airレジ」は、2017年夏頃をメドにビットコイン決済に対応する。ビットコイン決済サービスCoincheck paymentを提供するコインチェック(この2017年3月にレジュプレスから社名変更)、決済事業を手がけるデジタルガレージの子会社のベリトランス、イーコンテクストの3社が連携し、リクルートライフスタイルが提供するAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にビットコイン決済機能を提供する。

Coincheck Paymentは、2017年1月時点で、日本国内で約4000件以上の導入実績がある。その中のいくつかはTechCrunch Japanでも紹介してきた(DMM.comでの利用開始寄付金の受付電気料金支払いの事例)。

今回は、新たにAirレジでビットコイン決済を受け付けるようにした。リクルートライフスタイルが提供するAirレジは、iPhone/iPadをPOSレジとして利用できるようにするサービスで、店舗側は無料で利用できる。IT投資額が大きくない普通の飲食店でも利用できる手軽さが特色だ。利用者数は約26万件に達する。Airレジを入り口に店舗向けのサービスを強化しつつあり(例えば「ホットペッパーグルメ」と連携したサービスなど)、今回のビットコイン決済の導入もAirレジを取り巻く店舗向けサービス強化の一環といえる。

モバイル決済 for Airレジ」は、「Airレジ」と連携する決済サービスで、現状では中国からの訪日観光客の利用が多い決済サービスAlipay(支付宝/アリペイ)と、日本での利用者数が多いLINE Payに対応している。新たにビットコイン決済が支払い手段として加わる形だ。

このAirレジがビットコイン決済に対応すれば、Airレジを導入した多くの店舗が特別な手間をかけずにビットコイン決済を導入できるようになる。現在の約4000店舗から最大26万店舗へとビットコイン決済の導入数が伸びることが期待できる。

もともとCoincheck Paymentは、カフェ、寿司屋のような店舗でも手軽にビットコイン決済を利用できることを「売り」として展開してきた。顧客は、スマートフォン上のQRコードを読み取ってビットコインを送金できるアプリを使う(これは複数あるウォレットアプリやQRコード対応のビットコイン取引所アプリを使うことができる)。

ビットコイン決済は客と店舗の双方にメリットがある

ビットコイン決済は、客(特に訪日外国人客)と、店舗の双方にメリットがあるサービスといえる。

海外から日本に来たばかりの外国人が日本円を利用するには両替が必要だ。クレジットカードは後払いというメリットがあるが、別の通貨で支払う場合の手数料や、スキミングのリスクというマイナス材料がある。Suicaや楽天EdyのようなFeliCa対応の電子マネーは日本国内では便利だが、外国人が旅行中だけ利用する使い方はあまり考慮されていない。ビットコインは外国人であることの不利を感じずに済むお金だ。

店舗側から見れば、ビットコイン決済はカード決済よりも早く入金する(また日本円で受け取ることができる)。決済会社のマージンは1%とクレジットカードより割安だ。店舗側にとってもメリットがあるサービスという訳だ。

決済システムとして見たビットコインには、値動きがあり、決済確定までに6承認で1時間かそれ以上の時間がかかる点が課題としてよく指摘される。だが店舗向けビットコイン決済サービスでは、値動きや決済時間の問題は事業者(bitFlyerやCoincheck)が肩代わりしてくれる。利用者や店舗から見れば、難しいことは考えず、日本円建てと同じ感覚で決済がすぐ完了する「便利なお金」として使える。

ビットコインをめぐって膨大な量の議論があり、今でもビットコインへの懐疑的な意見を聞くことがある。その一方で、法制度の整備やサービス投入は着々と進んでいる。管理する「中央」がないお金に関する法整備が進み、サービスが増えている。これは目の前の観測された事実だ。ビットコインには注目しておいた方がいい。

ビットコイントレーダー向けのダッシュボード「coincheck tradeview」、レジュプレスが提供

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いつでも決済でき、また手数料もかからないことから、少額決済にも有効だとそのメリットをうたっているビットコイン。しかし日本での利用はまだまだこれからという状況で、現在は投資目的の取引が大半を占めるという。ビットコイン取引所「coincheck exchange」を運営するレジュプレスは6月10日、そんな投資目的のビットコイントレーダー向けのサービス「coincheck tradeview」をリリースした。

coincheck tradeviewでは、FXのオンライントレードにあるようなグラフィカルなUIでユーザーのビットコイン運用をサポートする。

レジュプレスによると、coincheck exchangeの月間取引額1.6億円のうち、8割の取引はトレード目的で運用しているユーザーだという。そしてそのユーザーというのは、入金額でいえば上位5%のユーザーで、それぞれ100万円以上入金しているそうだ。tradeviewはそんな高額取引者向けの機能となる。FXトレーダーに馴染みやすい機能やユーザーインターフェースを採用。ビットコインにこれまで触れたことのない新規ユーザーの獲得にもつなげるとする。

tradeviewの利用は無料だが、利用には一定の条件がある。具体的には以下の条件のいずれかをcoincheck exchangeで満たしている必要があるという。

  • 合計25万円以上の日本円を入金したユーザー
  • 合計20BTC以上のビットコインを入金したユーザー
  • これまでに25万円分以上の取引をしたユーザー

tradeviewではこれまで指値注文(レートを指定しての売買)のみだった取引に加え、成行注文(その時点のレートで売買)にも対応する。将来的には海外ビットコイン取引所の売買情報やチャートのテクニカル分析なども追加する予定だ。

マネタイズに関してだが、coincheckではリリース記念で取引手数料が無料(原稿執筆時点)なこともあり、tradeviewのリリースで取引額が増えても同社の利益には直結しないという(レジュプレス取締役の大塚雄介氏)。それよりもまずはビットコインのマーケットを拡大するということに狙いがあるそうだ。

なお大塚氏は国内におけるビットコインサービスを改善すべく、米国ニューヨークに2週間の視察調査に向かうという。クラウドファンディングのReadyForで支援者を募集中だ。

ビットコインの売買サービスcoincheck、ECサイトの決済手段としての普及狙う

ユーザーが自らの体験を投稿する「STORYS.JP」。すでに複数のユーザーの投稿が書籍化されることが決まっているらしいこのサービスを手がけるのは、スタートアップのレジュプレス。同社が次に始めるのは、これまでのサービスとはまったく異なる「ビットコイン」を使ったサービスだ。同社は8月19日、ビットコイン購入サービス「coincheck」の提供を開始した。

coincheckは、メールアドレスを登録してアカウントを作成の上、指定の銀行口座への入金をすれば、ビットコインの売買や送金ができるサービス。1日1万円以上の日本円を出金する際には本人確認書類の提出を義務づけている。同社では、(1)最短1時間で購入可能、(2)24時間いつでも売買可能、(3)誰でも使える簡単な操作画面——でサービスの優位性をうたう。

ただしこのサービス、実は裏側は既存のビットコイン交換所のAPIを利用しており、リテラシーの低いユーザーでも利用できるUIがウリなだけとも言える。また同社の売上となるのは1%の手数料のみ。正直なところ、たかが1%の手数料でマネタイズできるのかと思ったのだけども、同社が狙うのはこのcoincheckを使った決済サービスにあるそうだ。

同社では、ECサイト向けにビットコイン決済を導入できるサービス「coincheck for EC」を9月に提供する予定だ。同サイトでは利用を希望するECサイトの事前募集も開始している。このサービスを導入すると、ECサイトは基本利用料無料、決済手数料1%、外貨両替手数料0円でビットコイン決済を導入できるという。レジュプレスではcoincheck for ECをECカート事業者などと組んで提供することで、利用者の拡大を狙う。また将来的には、自ら取引所を立ち上げることも検討する。

グノシー代表取締役社長の木村新司氏やインキュベイトファンドが出資するBitflyerを始め、国内でもビットコイン関連事業者が登場している。しかし現状は投機目的の利用者が多い状況。レジュプレスでは「ビットコインの仕組み自体は、決済・送金に非常に優れた仕組みであり、低コスト手数料の実現・外貨両替手数料ゼロ・かんたんなモバイル決済などの利点がある」と説明。よりスマートな決済方法としてcoincheckを提供するとしている。