オープンソースのコントリビューター行動規範がエシカルソース推進団体へ移管

オープンソースのプロジェクトにおいて技術の管理は往々にして問題となる。しかもコントリビューター間の対立が避けられない場合、各自が自分が正しいと信じているだけに状況はさらに悪化する。オープンソースコミュニティのグランドルールを作ろうとする努力の1つが、2014年のCoraline Ada Ehmke(コラリーヌ・エイダ・エームケ)氏によるContributor Covenantコントリビューター行動規範)だ。オープンソースのプロジェクトの多くがそうであるように、Contributor Covenantもエームケ氏の情熱が込められていた。数年間にわたる最初の2回の改訂の間に、その規範書をCNCFやCreative Commons、Apple、Google、Microsoft、Linuxプロジェクトなどが採用し、他にも数百のプロジェクトが彼らに続いた。

今度バージョン3.0に取り組むにあたり同規範書は、 エームケ氏が共同創業者で事務局長でもあるOrganization for Ethical Source(OES、エシカルなソースのための団体)にその管轄を任せることになった。

このことについてエームケ氏は次のように語っている。「Contributor Covenantは、オープンソースプロジェクトの行為規範としてこの世界で初めてのドキュメントですが、それは信じられないほどの議論を誘発し、今でもそれらの議論は鎮まっていません。私がいたのはRubyのコミュニティでしたが、そのコミュニティは規範書のコンセプトと文書そのものを真剣に受け入れていました。そしてそこから、多くのオープンソースプロジェクトやオープンソースのコミュニティに広がっていきました」。

ドキュメントの中核にあるのは「年齢、体の大きさ、目に見えるまたは目に見えない障害、民族性、性別、 性同一性、表現、経験のレベル、教育、社会経済的地位、国籍、人格、人種、宗教、または性的同一性と性的指向性に関係なく、コミュニティへの参加を誰にとってもハラスメントのない体験にする」という誓いだ。そしてコントリビューターは、多様で開放的で誰でも歓迎するコミュニティに貢献すべく、行動しなければならない。

Ehmke氏によると、これまでの数年間で進化したのは、メンバーが行動規範に違反したときの結果をどうすべきか、コミュニティのリーダーが判断できるための、規約の執行指針を加えたことだ。

「この文書が批判を浴びたとき私が考えたのは、そんなにまじめでない議論も含めて、そこには、何らかの具体的な行動に結びつくべきフィードバックがあるのではないか、ということだ」、とEhmke氏は語る。「これまで何年間も、Contributor Covenantに対する批判の多くは、『何か間違ったことを言ったらプロジェクトから永久追放になるのかい?厳しすぎるし不合理だよ』というものだ。つまり、違反に対してプロジェクトリーダーに何をされるか、という結果を心配している。その心配はもっともだ、と私も感じた」。

エームケ氏はCovenantをOESに置くことを「コミュニティへの出口」と呼ぶ。それは企業などが、成熟したオープンソースプロジェクトをファウンデーションの傘下に置くようなものだ。彼女によると、OESにはコミュニティ管理やプロジェクト統轄のエキスパートが多い。彼らなら、このプロジェクトをもっとフォーマルなかたちにしてくれるだろう。「Contributor Covenantの進化には今後も関与していきますが、開発はOESのワーキンググループが担当することになるでしょう」と彼女は説明した。

バージョン3.0に関してエームケ氏が期待するのは、Covenantが「ツールキット」のようなものになり、OESが定めている倫理原則は堅持しつつ、さまざまなコミュニティが自分たちの目標と価値に合ったかたちに変えていくことだ。

MicrosoftのOpen Source Program OfficeのプログラムマネージャーEmma Irwin(エマ・アーウィン)氏は、次のように語る。「MicrosoftがContributor Covenantを採用したことは、私たちが本気で、健全で多様性と包容力のあるコミュニティを築き、エコシステムの多くのメンバーとともに貢献し構築して行きたいと考えていることの表れです。会社のこの意図と私の能力をOESのContributor Covenant 3.0ワーキンググループに持参できることは、名誉です」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:オープンソースContributor Covenant

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)