フランス競争当局がGoogleにニュース再利用の対価支払いを命じる

フランスの競争当局は、コンテンツのスニペット(Googleの「ニュース」アグリゲーションや検索結果に表示される抜粋)再利用に伴う対価支払いについて、掲載元と交渉するようGoogle(グーグル)に命じた

フランスは欧州議会でで著作権法の改正案が可決されたことを受け、ニュースに関する著作隣接権を国内法として施行した最初のEU加盟国となった。

さまざまな物議を醸している改正案の項目には、Googleニュースなどのアグリゲーターが切り取って表示するニュース記事のリード文などを適用対象とする著作権拡張規定が含まれている。欧州議会で2019年3月に著作権改正案が採決に付されたことを受け、掲載元の権利を拡張するフランスの国内法が2019年10月に施行された。

ドイツやスペインなどのいくつかのEU加盟国では、ニューススニペットの使用を対象とする同様の法案が先に可決されていた。だが、各国の議員らが望んだのとは裏腹に、Googleに支払いを強制するには至っていなかった。

例えば掲載元への支払いが義務付けられていたスペインでGoogleは、「Googleニュース」サービスから全面的に撤退した。だが、EU改正案のためロビー活動を行った掲載元側は、より広範に圧力をかけてGoogleへの締め付けを強めようとした。同社はこの種のコンテンツに対する支払いに関して厳しい姿勢を貫いてきている。

Googleは2019年9月のブログ投稿で、あからさまな皮肉は加えずに、詳細にこう書いている。「当社は広告を売る。検索結果ではない。Googleの広告は明確にそれとわかるよう表示されている。検索結果のリンクをクリックしたときに掲載元に支払いを行わないのは、1つにはこのためだ」

またEuractivが2019年に報告したように、フランスでもGoogleニュースのコンテンツの表示方法が変更されている。見出しとURLのみを表示し、他のほとんどの市場で表示されるテキストスニペットは外している。

フランスにおけるGoogleニュースのコンテンツ表示のスクリーンショット

しかし、フランスの競争当局はGoogleの戦術を一蹴した。支払いを拒否するためのGoogleの一方的なスニペット表示の撤回は、市場での支配的地位の乱用として成立する可能性が高いとの見方だ。当局は「深刻で直接的な損害を報道業界に与えた」と記載した。

Googleは欧州の検索市場で支配的な地位を占めており、市場シェアは90%以上だ。

当局は、Googleの「掲載元が無料の許可を示さない限り、さまざまなサービス(Google検索、Googleニュース、ディスカバー)内でより長い形式での記事の抜粋、写真、インフォグラフィック、ビデオの表示は行わない」とした一方的な措置を不公正な行為だとした。

「記事掲載元の大多数は、実際には保護されたコンテンツの使用と表示についてGoogleにライセンスを付与している。これについて交渉は行われず、Googleから対価を受け取ることもない。さらに、Googleの新しい表示ポリシーの一環として、掲載元や報道機関が付与したライセンスによって、以前よりも多くのコンテンツをGoogleが利用できる可能性が広がった」とフランス語で書かれている(筆者がGoogle翻訳で翻訳した)。

「このような条件下で、当局は実態に言及した上で、コンテンツの再利用に関する対価支払いについて誠実に協議するようGoogleに求める暫定措置命令を要求した」。

こうして緊急命令が出された。Googleには3カ月の猶予が与えられ、報道機関や掲載元との間で、コンテンツの一部の再利用に関する対価支払いの交渉を「誠実に」行うことになった。

現段階の調査でGoogleの乱用行為として当局が疑っているのは、不公正な取引条件の強制、脱法行為、差別的行為(すべての掲載元に対して支払わないという一方的なポリシーによる)だ。

命令の下で、Googleは交渉期間中、掲載元の希望に従ってニューススニペットを表示する必要があり、交渉プロセスを通じて合意された条件は法律施行日から(つまり2019年10月から)遡及適用される。

Googleはまた、意思決定をどう実行に移しているかに関する月次レポートを送る必要がある。

「この命令は、交渉を経てGoogleが実際に支払いの提案をすることを求めている」と付け加えている。

TechCrunchはフランス競争当局(FCA)の動きについてGoogleにコメントを求めた。同社のニュース担当副社長であるRichard Gingras(リチャード・ジングラス)氏は、声明で次のように述べている。「欧州著作権法が昨年フランスで施行されて以来、ニュースへのサポートと投資を増やすために掲載元と協力してきた。FCAの命令を精査するが、交渉を続ける間はFCAの命令に従う」。

Googleの広報担当者はまた、2019年の同社のブログ投稿に言及し「当社はすでにニュースの掲載元と協力して状況の把握に努めている」と強調した。

Googleはブログ投稿で、ニュースサイトへのトラフィック誘導、多くの掲載元が利用する広告技術の提供、「インターネットとともに出現したさまざまな出版市場に適した新製品やビジネスモデルを世界中のニュース掲載元が開発するのを支援するため」に3億ドル(約330億円)を注ぎ込んだ投資ビークルついて説明している。

暫定措置は欧州の競争当局が最近になって食器棚の奥から引っ張り出してきて、ほこりを払い始めた独占禁止法上のツールの1つだ。

EUの競争責任者であるMargrethe Vestager(マルグレテ・ベスタジェ)氏は2019年10月、チップメーカーのBroadcom(ブロードコム)に対し暫定命令を出し、同社の主要顧客6社との合意に基づく独占権条項の適用を停止させた。本件は引き続き調査を受けている。

競争委員会でEUのデジタル戦略を統括するエグゼクティブ・バイスプレジデントでもあるベスタジェ氏は、デジタルエコノミーの急速な発展に歩調を合わせるため、暫定命令を執行手段としてもっと活用すると述べた。これは、インターネット時代における市場での乱用削減に当局が効果的に対応できていないという懸念に対応する動きだ。

フランスの競争当局は、Googleの掲載元コンテンツの扱いに関する調査に関して、命令に基づく暫定的な保護措置は「実態」に関して決定が下されるまで有効であると述べている。

画像クレジット:Beata Zawrzel/NurPhoto / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Wikipediaのスペイン語イタリア語ポーランド語ページがEU議会の著作権改定に抗議して黒塗りに

【抄訳】
Wikipediaのイタリア語とスペイン語のページが、著作権の改革に関するEU議会の明日(米国時間7/5)の票決に抗議するために一時的にアクセスを遮断している。

アップデート: ポーランド語のWikipediaも、この黒塗り抗議に参加した。

EU議会の法務委員会が先月決めた‘改革案’には、この抗議活動を惹起した問題箇所が二つある:

[第13条] 著作権物のユーザーが直接的に著作権侵犯者になるので、アップロードされるすべてのコンテンツを事前にフィルタしなければならず、表現の自由を損なう。

[第11条] ジャーナリストのコンテンツの断片(部分引用など)を利用するニューズアグリゲーターのようなビジネスモデルは、著作隣接権侵犯とされる。これは、‘リンク税’と揶揄されている。

EU(やその外)の多くの部分で、Wikipediaの訪問者たちは、EU議会の問題の法案に抗議してオープンなインターネットを守ろうとするバナーを目にする。抗議文は法案を‘検閲マシン’と呼び、‘Wikipediaのベースである価値観と文化とエコシステムを弱体化する’と主張している。

‘call your MEP’(議員に電話しよう)のリンクボタンをクリックすると、第13条反対運動のWebサイトsaveyourinternet.euへ飛び、自分の国の議員を検索したり、彼らに抗議のメールを送ったりできる。この運動は、EFF, Open Rights Group, Center for Democracy & Technologyなど、有力な人権市民権団体も支援している。

スペイン語のWikipediaの説明には、“この法案が承認されたら、ソーシャルネットワーク上でニュースを共有したり、検索エンジンからそれにアクセスすることが、とても難しくなり、Wikipediaも危険にさらされる”、とある。スペイン語Wikipediaは、7月5日の10時(UTC)から始まるEU議会の票決の間、黒いままにされる。

イタリア語のWikipediaは、昨日(米国時間7/3)、黒塗りになった。

なお、これらの抗議的表現は、各国のWikipediaコミュニティの意思によるものであり、Wikipedia全体の決定事項ではない。

【後略】

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa