オンライン学習のCourse Heroが論文執筆のための校正・編集サービスを提供するScribbrを買収

オンライン学習プラットフォームのCourse Hero(コース・ヒーロー)が、アカデミック・ライティングの校正・編集サービスを提供するScribbr(スクリバー)を非公開の金額で買収した。

これはCourse Heroによる一連の買収で最新の案件であり、同社はこれまで、CliffsNotes(クリフスノーツ)、LitCharts(リットチャーツ)、QuillBot(クイルボット)、Symbolab(シンボラブ)などを買収してきた。そのすべては、Course Heroの評価額が11億ドル(約1300億円)となった2020年7月のシリーズB、そして36億ドル(4250億円)となった2021年12月のシリーズCという、2度の資金調達によってもたらされたものだ。

2012年に設立されたScribbrは、700人の編集者を擁する国際的なネットワークを持ち、校正から注記、明瞭度のチェックまで、さまざまなサービスを提供しているという。Scribbrはオランダを拠点とする企業であるため、今回の買収はCourse Heroが欧州における足場を拡大するためにも役立つだろう。

全般的に見て、Scribbrが専門とするのは、Course Heroが2021年に買収したQuillbotを特に補完するものだ。Quillbotは、どことなくGrammarly(グラマリー)を連想させるような、文章の明確化を支援するAIツールである。

Course HeroのAndrew Grauer(アンドリュー・グラウアー)CEOは、同社のミッションについて、学生のために極めて具体的なレベルのQ&Aプラットフォームを構築することだ説明する。同社は、教師や出版社によって作成されたコース固有の教材を含む、すべての学習・教育コンテンツへのアクセスを、サブスクリプション形式で学生に販売している。

このスタートアップは教科にとらわれず、つまり、ニッチな文法規則であろうと、単発の代数の問題であろうと、学生が助言を必要とするあらゆる専門分野に接続することができるようにしたいと考えている。ある意味、これは教育の未来と言えるかもしれない。学生たちは、各教科からアドバイスを寄せ集める必要はなく、しかもそれがオンデマンドの助言として得られるのだ。異なる科目で同じ生徒を支援するEdTec企業なら、生徒の理解における一貫したギャップを突き止めることもできる。例えば、ある中学生が、科目が違っても常に推論問題でつまずく傾向にあると判ったら、そのことを生徒に教えてあげることができるというわけだ。

しかし、その裏返しは無視できない。ある生徒がCourse Heroに数学のヘルプを求めに来るからといって、その生徒がシェイクスピア作品の要約を求めるとは限らない。このような現実は、顧客を惹き付け、顧客にとってより有用な製品を作るというCourse Heroの想定した目標から外れてしまう可能性がある。

その懸念に対するグラウアー氏の回答は、Course Hero傘下の新しい別の会社間の統合を急ぐつもりはない、というものだった。

「私たちは『分散させ、個々の企業に力を与え、起業家精神を継続的に発展させよう』というテーマで始めます」と、グラウアー氏はいう。「そして、その時々に応じて、さまざまなコンテンツやツール、サービスの統合を進めて提供するようにします」。この回答は、Course Heroが買収したこれらの企業を統合して有料化し、より多くのサブスクリプションを促すのではなく、これらの企業のライフの中で、より多くのプラットフォームが役割を果たせるように、Course Heroは後方支援したいと考えていることを示唆する。

2006年に会社を設立し、最近になってからベンチャーキャピタルを活用してコアビジネスを成長させ始めた創業者の言葉を信じると、すべての買収した企業は、それぞれの専門とする分野で独立して活動を続けていくと思われる。それ以上のことは、これからだと、グラウアー氏は筆者に語った。つまり、このEdTech企業の食欲の正体は、規模が大きくなったからわかる、ということらしい。

「私たちは、比較的独立した、自律的なブランドの集まっている会社です」と、グラウアー氏はいう。「お互いの技術やサービスを融合させるすばらしい機会がたくさんあります。問題は、それらをどのようにスタック順位付けし、優先順位を決めるかということです」。

画像クレジット:ivanastar / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EdTech大手Course Heroが古典文学の要約サービス「LitCharts」を買収

実は、英語の授業で私を含むクラスの半分が、実際に原文を読まずにSparkNotesを使ってシェイクスピアの「Twelfth Night(十二夜)」を読んでいた、と先生に告げ口したのはこの私だ。そのサイトは本の各章の要約を教えてくれるので、テストの前に長編小説などを復習するのにとても便利だった。あるいは、多くの本が積ん読状態で、その本を開いたことさえないようなときの土壇場の救世主でもある。

そんな歴史を考えると、誰もが愛する読書先延ばしツールSparkNotesの開発者たちが、EdTechのユニコーンの目に留まったのも当然だ。米国時間6月10日、SparkNotesの子孫であるLitChartsが、新進のEdTechユニコーンCourse Heroに買収された。その価額は公表されていない。しかしCourse Heroは2020年8月のシリーズBで8000万ドル(約87億7000万円)を調達しているため、その一部が今回の買収に投じられたことは確かだろう。

SparkNotesを開発したBen Florman(ベン・フローマン)氏とJustin Kestler(ジャスティン・ケストラー)氏が作ったLitChartsは、彼らの成功作の延長線上にある。LitChartsは2000あまりの文学作品の原文の注記や定義、そして翻訳を提供する。SparkNotesと同じくLitChartsも、複雑な章句を簡略化する。Course Heroを創業したAndrew Grauer(アンドリュー・グラウアー)氏の推定によると、LitChartsの会員の約30%は教師や教育者だ。

グラウアー氏はCourse Heroの長期展望について次ぎのように語る。「私たちは特定分野のベストソリューションを正しいTPOで提供したいと考えています。学習者であるユーザーの役に立つ良質なツールの、信頼できる推奨者でもありたいのです」。生徒をあるリソースから別のリソースに結びつける、こういったネットワーキングは、バーチャル教育の利点の1つだ。なぜなら、1つのエラーにも、これまでの生徒たちが犯してきたさまざまなつまづきの履歴があるのだから。

グラウアー氏によると、Course Heroの中核は、生徒1人ひとりの特異性をぎりぎりまで重視する質疑応答のプラットフォームだ。有料会員である生徒は、学習と教授のためのすべてのコンテンツにアクセスでき、その中には教師と発行者が作ったコースの教材もある。当然ながらCourse Heroの戦略の大きな部分は、生徒が苦戦している共通の主題に関する教材を提供することだ。英語も、そんな教材の1つだ。

「私たちのプラットフォーム上のデータをよく見れば、生徒が最も行き詰まっている箇所や助けを必要としている箇所、多くの質問が集中する箇所などがわかります。そんな情報が役に立つのです」とグラウアー氏はいう。

同社はこれまでの5〜6年間、自力で文学ライブラリを構築してきた。LitChartsを手中に収めたことにより同社は、その文学ライブラリと、そこにある膨大な量のビデオやイラストレーション、注記、そしてテキストに大きな投資をしたことになる。

これはCourse Heroにとって、8カ月ぶりの買収だ。同社は2020年10月に、人工知能を利用する計算アプリSymbolabを買収している。これは生徒が複雑な数学の問題を解いたり理解するのに役に立つ。その買収でCourse Heroの数学の部分が強化され、そして今日の買収では文学のリソースが充実した。どちらのブランドも独立した運用を続けるが、それはグラウアー氏の「起業家たちを分散状態で強くしていく」という哲学の表れだ。

関連記事:EdTechのCourse Heroが数学専門の解答エンジンSymbolabを買収、他科目の買収も目指す

「すべてを一元化すれば、同じように見えるので力を発揮するかもしれませんが、実際には、あまりにも多くの小さな特定のユースケースに最適化しているため、動きが遅くなり、迅速な意思決定や目標への前進ができなくなります」とグラウアー氏はいう。Course Heroが最近買収した2つのスタートアップは、10年以上の歴史があり、その規模とブランド力は、無理に包括的なブランドにするのではなく、そのままにしておく価値があると同氏は考えている。

さまざまなプラットフォームを抱えるCourse Heroは、現在の有料会員数が推定200万〜300万人で、1年前の100万から大きく増加している。

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カテゴリー:EdTech
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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

EdTechのCourse Heroが数学専門の解答エンジンSymbolabを買収、他科目の買収も目指す

8000万ドル(約84億円)を調達したシリーズBラウンドから数カ月、Course Hero(コース・ヒーロー)はSymbolab(シンボラボ)を買収した。Symbolabは、学生が難しい数学の問題の答えを出したり理解したりするのを手伝うAI(人工知能)で動く計算機だ。

買収の価格は明らかにされなかった。テルアビブ拠点の9人のチームであるSymbolabはCourse Heroに加わる。Course HeroのCEOであるAndrew Grauer(アンドリュー・グロウアー)氏によると、Symbolabのプラットフォームは当面、独立したブランドとして継続する。

2011年創業のSymbolabは、高度な計算機かつ問題解決プログラムであり、2020年は10億もの問題を解くことになりそうな勢いだ、とグロウアー氏は話す。Symbolabのサービスは大学レベルの数学にフォーカスしており、難しい幾何学の問題を説明し、証明する。

Course Heroは問題と解答のプラットフォームだ。計算機、そして最も質問が多い数学の問題についてのデータセットを持つ企業を取り込むことで、Course Heroは数学のサービスをさらに充実させることができる。同社によると、現在同社のサービスを利用する学生の間で最も人気の科目の1つが数学だ。SymbolabはCourse Heroのユーザーに魅力的なサービスとして提供される見込みだ。

行き詰まった生徒へソリューションを与えるために計算エンジンを使うモデルは、かなり一般的だ。リモート教育の世界では、授業についていけなくなりそうな学生にとって柔軟性が重要となる。教師やチューターは限られた時間しか対応できないかもしれないが、AIで動くテクノロジーサービスは365日24時間いつでもお金を払って頼ることができる。

Symbolabは人気の計算エンジンWolfram Alphaに似ている。Wolfram Alphaは「パワフルなツール」だとグロウアー氏は話す一方で、Symbolabは掘り下げていること、そして説明において一日の長があると考えているという。Google(グーグル)のような大企業もまた似たようなサービスを取り込んでいる。同社は2019年に宿題手伝いアプリのSocratic(ソクラティック)を買収した。そしてMicrosoft(マイクロソフト)は同じ年にMicrosoft Solverを構築した。

グロウアー氏は自社で構築するか、あるいは買収かを決断しなければならなかった。同氏は結局テクノロジーを買収することを決めた。なぜなら、プラットフォームがデータを繰り返し混ぜ合わせることができる場合にのみ、AIの真の成功はもたらされるからだ。Symbolabは10年ほど前に創業された。バックエンドの情報は価値あるものだ。グロウアー氏は、グーグルやマイクロソフトと違うアプローチを取っていることに興奮していると話す。

「短い時間では無理です」と同氏は述べた。「学生は、正確な答えをどのようにして得るかを求めています。しかし、どのようにしてそこにたどり着くかが問題で、単に正確であるだけでなく、真に役立つステップバイステップのソリューションが大事です」。

これまで資金不足だったこの分野において、統合はまだ稀なものだ。EdTech(エドテック)の買収は着実に増えているものの歩みは遅い。2018年のEdTech業界の買収は40件に満たなかった。Crunchbaseによると、同年フィンテックでは193件の買収があった。

それでも、EdTechは大きなブームを迎えており、今回の買収は理に適っている。Course Heroはつい最近、これまでで最多の資金を調達し、年換算売上高は1億ドル(約104億円)を超え、黒字化を達成した。かくして同社は、十分な買収資金を手元に持っていたと思われる。2012年にCourse HeroはInstaEduの創業者からCardinal Scholarsを買収した。

Course Heroは今後、さまざまな科目でより多くの買収を行うだろうとグロウアー氏は話す。概してEdTechにおいては、今後5〜10年に多くの買収があると同氏は考えている。

「15年前を振り返ると、教育テクノロジー事業はそんなに多くはありませんでした。しかし現在では、潜在的にこの規模になる企業は十分にあると思います。ディストリビューションのテクノロジーに関するメトリクスを持っており、拡大期にプロダクトマーケットを構築したEdTech企業はたくさん存在します」とグロウアー氏は語る。

関連記事:Googleがモバイル学習アプリSocraticを買収してiOS版を再提供

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(翻訳:Mizoguchi