SpaceXのCrew Dragon宇宙船がISSとのドッキングに成功

米国時間5月31日にEndeavor(エンデバー)と名付けられたSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船はISS(国際宇宙ステーション)に計画どおり無事ドッキングした。これにより商用有人宇宙飛行が可能であることが実証され、新しい時代の幕が開いた。SpaceXにとって初の有人宇宙飛行のテストパイロットに選ばれたのはNASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の二人の宇宙飛行士だ。民間企業が開発した機体で人間が宇宙に出たのはこれが史上初となる。

ドッキングは、Crew Dragon搭載のコンピュータによる自動制御で終始行われた。SpaceXのコンピュータシステムは、打ち上げ当初から地球帰還まですべてのプロセスをコントロールする。なおCrew Dragonは、ISSに新たに設置されたドッキングアダプタを利用できるよう設計されていた。旧システムはカナダ製のためにCanadarm-2と呼ばれるロボットアームをISS側で操作して宇宙船を捕獲して引き寄せる必要があったが、 新しいアダプターでは宇宙船が自動操縦でドッキングできる。

両宇宙飛行士を載せたCrew Dragonは、5月30日に米東部夏時間午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)に米国フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられた。当初の予定は27日だったが悪天候のために延期されていたものだ。「Demo-2」と呼ばれるミッションはNASAとSpaceXによる商用有人飛行の可能性を実証するためのCrew Dragpmの打ち上げとして2回目だったが、実際に宇宙飛行士が搭乗したのはこれが最初だった。

今回のISSとのドッキング成功で、ミッションの前半は成功したといえる。 SpaceXは有人宇宙船を予定どおり軌道に乗せ、宇宙ステーションにドッキングさせる能力があることを示すことができた。また宇宙船のマニュアル操縦のテストにも成功している。

ISSのドッキングアダプターのハッチは米東部夏時間5月31日午後0:37(日本時間6月1日午前1時22分)に開かれ、Crew Dragon側のハッチも直後の午後1:02(日本時間6月1日午前1時47分)に開かれた。ベンケンとハーリーの両飛行士はISSに移乗して米国人2人、ロシア人1人のISS側クルーの歓迎を受けた。今後数週間にわたって両飛行士は、実験・研究など通常のクルー業務に従事する。その後はCrew Dragonに戻ってISSから離脱、地球へ帰還してDemo-2ミッションを完了させることになっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

宇宙空間でのCrew Dragonの手動操縦に初成功、同じ操縦をシミュレータで誰でも試せる

NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)宇宙飛行士はSpaceXの宇宙船であるCrew Dragon(クルードラゴン)を手動操縦することに成功した。この宇宙船は5月30日にケープカナベラルから発射された後、全自動でISS(国際宇宙ステーション)に向かった。Crew DragonのミッションはISSへのドッキングから軌道離脱、地表帰還まですべてコンピュータ制御によってコントロールされる。しかし自動システムになんらかの不具合が発生したときには宇宙飛行士は機体を自ら操縦しなければならない。

今回のテストは史上初の宇宙で機体を手動操縦する試みだった。Crew Dragonが定期的に運行される有人宇宙船として認証されるうえで手動操縦機能はカギとなる重要部分だった。

Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とハーリーの両宇宙飛行士はSpaceXの新しい宇宙服を脱いでからテストに取りかかったが、これも当初からの計画どおりの行動だった。Crew Dragonのキャビンは与圧されており、ドッキングの過程に入るまで宇宙服を着用している必要がない。キャビンには動きまわるスペースが十分にあるし、宇宙服を着けていないほうが操縦も容易だという。

マニュアル操縦ではハーリー飛行士がタッチスクリーンを通じてカプセルに LVLH(機内からの垂直水平操作)を行うことも含まれていた。この場合の高度は地表からの距離だという。つまりCrew Dragonの操縦は現在の航空機の操縦に極めて近いものとなっている。微小重量環境ではあっても地球が「下」に位置するわけだ。

ハーリー飛行士が手動操縦操作を行う間、自動システムが操作をオーバーライドすることがないようコンピュータに指令が送られた。ただしドッキングを含めミッション全体をコントロールするコンピュータシステムを無効化して実際にCrew Dragonを動かす指令は送られなかった。

ハーリー飛行士は今回のミッション中に2種類のテストを実施する。1つは「遠距離操作」でISSから十分に離れた空間での操縦だ。 もう1つはこれと反対に宇宙ステーションの近傍での「近距離操作」だ。

両宇宙飛行士と同じシステムを読者も使ってみることができる。宇宙船を持っていなくてもOKだ。ブラウザからSpaceXが作成したISSドッキン・シミュレータを開くだけでいい。やはりそう簡単な操作ではないが、予想したほどには難しくない。これはインターフェースのデザインが非常に優れているからだと思う。

【Japan編集部追記】シミュレータはほとんどのブラウザに対応している。高精細度のISSの画像の中央部にひし形のオーバーレイでドッキングステーションが示される。画面左下に進行方向、右下に姿勢のコントロールがあり、タッチないしマウスクリックで入力する。反応は小さくかなり遅れて出現する。

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(翻訳:滑川海彦Facebook

SpaceXが初の有人宇宙飛行に成功、歴史にその名を刻む

米国時間5月31日、SpaceXはNASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベーンケン)の二人の宇宙飛行士を、Falcon 9(ファルコン9)ロケットを使用してCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船に乗せて宇宙へ運び、人類史上の新たな歴史を作った。Demo-2と呼ばれる今回の打ち上げは、Crew DragonとFalcon 9の人間評価プロセスにおける最後のデモンストレーションミッションだ。このミッションを完遂すれば、通常の人の輸送に使用できることが証明される。なお当初は先週水曜日の5月27日に打ち上げが計画されていたが悪天候のために中止され、今回に仕切り直しとなった。

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(翻訳:Hiro Yoshida@pylori1971

Crew Dragonの最新型宇宙服は通信装置と温度調節の機能を内蔵、タッチパネル対応グローブも装備

米国時間5月27日、スペースシャトルの引退以来、初めて人間を軌道に打ち上げる米国製宇宙船に乗るのはもちろん人間だ(悪天候のため5月31日に延期)。この人たちが着る最新型宇宙服も、また歴史的なデビューを果たすことになる。本日の打ち上げ(ライブ配信)に先立ち、NASAとSpaceX(スペースエックス)はその新型宇宙服の新鮮な姿を公開した。もうすぐ、たくさん見ることになるだろうが。

この宇宙服は、NASAと、今回宇宙船に乗り込む宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏との協力のもとでSpaceXが開発した。彼らは、現代の素材と技術を使い、Crew Dragon(クルー・ドラゴン)と一体化できる着心地のいい形状を目指した。

ただし、こちらもNASAでデザイン変更が進められているのだが、何十年間も使われてきたおなじみのEVAスーツ(船外活動用宇宙服)に置き換わるものでないことは知っておくべきだろう。今回、ベンケン氏とハーレー氏が着るのは、戦闘機のパイロットが着るものと同様の与圧服だ。短時間の真空状態や高熱といった打ち上げの際に想定される危険から身を守るために飛行士の体に合わせて作られるもので、外宇宙には出られない。

 

NASA:店では売ってません。LaunchAmerica宇宙服は特注品です

このSpaceX製の宇宙服は、耐火性と耐衝撃性を備え、通信装置と温度調節の機能を内蔵する。ヘルメットには、当然ながら無線とマイクが組み込まれていて、空気と電源は、宇宙船内の各飛行士の座席に接続する1本のヘソの緒のようなケーブルで供給される。

「このスーツの開発で重視したことに、簡単に使えるという点がありました。飛行士が着座したとき、文字どおりただプラグインするだけで、後は宇宙服が勝手にやってくれるという感じです」とSpaceXのChris Tripp(クリス・トリップ)氏は、スーツを紹介したNASAの動画で話している。「これはまさに宇宙船の一部なのです。そのため私たちはこれを、スーツとシートの一体型システムと考えています」。

この10年間のエレクトロニクスとソフトウェアの進歩を考えると、宇宙飛行士にもミッションコントロールにも、進化し簡便化されたコミュニケーションが期待されてしかるべきだ。ノイズリダクションや音声検知など、私たちがビデオ通話に求めるような機能は宇宙でも大いに活躍する。

もう1つ、面白い変化があったのはグローブだ。頑丈であると同時に柔軟でなければならない。さらに導電性も必要だ。Crew Dragonの操作はタッチパネル方式だからだ。操作のたびにグローブを外さなければならないのでは煩わしい。

関連記事:タッチで操縦する宇宙船Crew Dragon、僕らはまた一歩SF映画に近づいた

「彼らとともに操作の癖を特定してゆきました。明確な操作ができるために、タッチのミスをなくすために、間違った入力を防ぐために、その人のタッチの仕方を画面に登録しておくのです」と、先日のNASAの記者会見でベンケン氏が話していた。

宇宙船に積み込まれるその他の物と同じく、宇宙服も今回初めての実地テストとなる。とは言えもちろん、あらゆる評価が事前に社内で済まされている。

「見栄えが良く、それでいて高性能なスーツを完成させるのに、3年から4年近くかかりました」とSpaceXの創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は先日のインタビューで話していた。「いつか自分もあれを着たいと、子どもたちに夢を与えたいのです。宇宙飛行士になりたい、進化した宇宙船で宇宙航空エンジニアとして働きたい、と熱い思いを抱かせたいのです。今こそ、宇宙への夢に再び火を点けるときです」

関連記事:SpaceX初の有人宇宙飛行は天候不順で延期、打ち上げは日本時間5月31日早朝に

画像クレジット:NASA

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceX初の有人宇宙船「Crew Dragon」の内部、タッチスクリーンのコンパネやカスタム成形された座席を配備

SpaceX(スペースX)は歴史的な初の宇宙飛行士打ち上げに向けて準備を進めており、NASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏とBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏を国際宇宙ステーション(ISS)に送り、その有人宇宙飛行能力を実証するミッションを行う。この打ち上げは米国東部夏時間4時33分(太平洋夏時間1時33分)に予定されているが、同社はその間にCrew Dragonとその設計の詳細を公開した(編集部注:打ち上げは延期され、東部夏時間5月30日午後3時22分、日本時間5月31日午前4時22分に変更された)。

Crew Dragonは、SpaceXの貨物カプセルであるDragonの設計に基づいており、現在これはISSへの補給サービスを提供している。同社のデザインチームはタッチスクリーンによる制御システムからカスタム成形された座席まで、21世紀における現代的な乗り物のように感じられ、優れたユーザビリティとエクスペリエンスを保証することに重点を置き、快適に過ごせるようにDragonの改造に集中した。

記事執筆時点では宇宙飛行士とクルーが打ち上げ準備をすすめている最中で、打ち上げのライブストリームはこちらから視聴できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXによる初の宇宙飛行士打ち上げをライブ中継、打ち上げは5月31日延期へ

SpaceX(スペースX)は米国時間5月27日の遅くに、フロリダのケープ・カナベラルから初の有人宇宙飛行ミッションを実施し、自社の歴史の中で大きな節目を迎えようとしている。このミッションは、NASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベーンケン)を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ、Crew Dragon宇宙船開発プログラムの集大成となる、「Commercial Crew Demo-2」である。

打ち上げは現在、ケネディ宇宙センターから東部夏時間5月27日午後4時33分(日本時間5月28日午前5時33分)に設定されているが、気象条件にも左右される。ここ数日の天候はあまり良くなかったが、SpaceXとNASAは打ち上げを遅らせるかどうかについて、打ち上げ予定時刻の約45分前に電話で協議する。もし今日の打ち上げが実施されなかった場合、5月30日と5月31日にも予備のウィンドウがある(編集部注:新たな打ち上げ日程は、東部夏時間5月30日午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)。

これはSpaceXにとって初の有人宇宙飛行となり、2011年のスペースシャトル計画の終了後、アメリカからの初の有人ロケットの打ち上げとして、歴史に名を残すことになる。NASAは2010年にCommercial Crewプログラムを開始し、宇宙飛行士の打ち上げ能力を復活させるために官民のパートナーシップを模索し、最終的にはSpaceXとBoeing(ボーイング)の2社が有人飛行に適した宇宙船の設計・開発を行うことになった。SpaceXはこのプログラムで初めて、クルーを搭乗させた打ち上げを試みる。

Demo-2ミッションは、基本的にはCrew Dragonの最終テスト段階であり、その後は同宇宙船とそれを軌道に運ぶロケットのFalcon9が、定期的な宇宙飛行士輸送のための認証をNASAによって受けることになる。つまり、ISSへの宇宙飛行士の定期的な輸送サービスの提供を開始し、その移動手段としてロシアのSoyuzにくわわることを意味する。

一方、SpaceXはすでにCrew Dragonを民間人や科学者など、他の商業目的の乗客にも提供する計画を開始している。そもそもCommercial Crewプログラムの背景にあるのは、NASAが宇宙飛行士の輸送コストを下げるために、他の有料顧客に座席を提供して打ち上げや飛行にかかる費用を相殺することにある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAとSpaceXによる初の商業有人宇宙飛行の準備完了

NASA(米航空宇宙局)とSpaceX(スペースエックス)は、2010年の商業乗員輸送プログラム開始以来、両社が準備を続けてきた瞬間に限りなく迫っている。SpaceXのFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットおよび宇宙船Crew Dragon(クルードラゴン)は、NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーレー)、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)両宇宙飛行士を乗せて国際宇宙ステーションへの旅に飛び立つ準備を完了し、米国時間5月25日にNASAとSpaceXは、最終飛行準備完了確認審査を終えたことを発表した。これは、打ち上げに向けてすべての準備が整ったことを意味している。

NASAの商業乗員輸送プログラムのマネージャーであるKathy Leuders(キャシー・ロイダーズ)氏は25日の記者会見で、現時点までの打ち上げ前確認作業は、Falcon9の地上燃焼テスト、ハーレー、ベンケン両宇宙飛行士がロケットに固定される打ち上げ前最終リハーサルを含め、すべて滞りなく終了したと語った。

SpaceXとNASAにとって唯一残る大きな課題は天候であり、東部標準時間5月27日16時33分に予定されている打ち上げの実施可能性は現在約40%にすぎないが、25日の会見で当局者は,現在の気候は上向きだと話している。

SpaceXとNASAは現在から27日までの天候に細心の注意を払うことになる。そしてこれは人間宇宙飛行士が搭乗する極めて神経を使うミッションであることから、もし天候がよくなければ安全方向に舵を切って打ち上げを延期する可能性が高い。延期に備えて5月30日が予備日として用意されており、さらに5月31日も準備されている。

SpaceXの機能保証担当副社長であるHans Koenigsmann(ハンス・ケーニヒスマン)氏は、22日の地上燃焼テストには「何の障害もなかった」ことを伝え、ドレスリハーサルで本物の飛行士がCrew Dragonに乗り込むところを見たことは、この瞬間の大切さと影響力を強調するものだったと語った。これはSpaceXにとって初めての有人宇宙飛行であり、米国の地から宇宙飛行士が飛び立つのは2011年のスペースシャトルプログラム終了以来の出来事だ。

ケーニヒスマン氏から打ち上げ当日のスケジュール説明があり、ハーレー氏とベンケン氏は4時間前に服装などの準備を整え、Tesla Model Xの宇宙飛行士輸送特別仕様車で約3時間前に到着、カプセルには発射時刻の2時間半前に乗り込む。そこから後はこれまでのFalcon 9打ちあげとほぼ同じで、同氏によると唯一違うのは発射45分前に脱出システムが装着され、10分後に取り外される点で、その後は他のFalcon 9と同じように自動打ち上げシステムが制御を引き継ぐ。

打ち上げられた後、ハーレー氏とベンケン氏は軌道上で19時間過ごし、ドッキングの30分前に、軌道上昇噴射と手動飛行テスト(Crew Dragonはそれ以外完全自動制御下にある)を行う。その後ドッキングして約2時間後にハッチを開く。

ハーレー氏とベンケン氏がISS出発して帰還するスケジュールは流動的で、打ち上げ後6~16週間の間にNASAから発表される。両宇宙飛行士は再びCrew Dragonに乗り込み、宇宙服を装着してステーションを離れてから約2時間後に大西洋に着水して回収される。

これは長年の努力の結晶であり、商業乗員輸送プログラム初の有人飛行となる。成功すればSpaceXは、飛行士を宇宙ステーションと往復させる通常任務としての有人飛行を、早ければ2020年中に開始できる可能性がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXがCrew Dragonの宇宙ステーションとのドッキングを体験できるシミュレーターを公開

SpaceX(スペースエックス)はブラウザーペースの新しいシミュレーターを公開した。同社初の有人宇宙船であるCrew Dragon(クルードラゴン)のドッキング過程を手動で操作するのがどんなものかを体験できる。実際には、Crew Dragonは全自動で国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングするが、宇宙飛行士は必要になったときに代って手動で操作する。このシミュレーターは「その際に宇宙飛行士が使用する「実際のインターフェース」を再現している」とSpaceXは説明している。

ドッキングのユーザーインターフェースは、宇宙飛行士がCrew Dragon搭乗時に使う実際のUIとしては、驚くほどシンプルだ。まるでiPhoneやiPadのスペースシミュレーターでバーチャルコックピットに出てきそうだが、Crew Dragonに搭載されている制御装置や情報ディスプレイのほとんどがタッチスクリーンなので、それも当然かもしれない。

方向指示ボタンが両側にあり、カプセルの方向および垂直、水平位置を調整できる。いずれも動きの大小を切り替えられる。中央の照準器がそれぞれの制御の動きをフィードバックするので、特にガイドがなくても自分で制御方法を理解するのは比較的簡単だ。簡単なヘルプ機能が、メインのゴールは照準器に出てくる数字を全部グリーンにすることだと教えてくれるが、それ以外でドッキングを成功するためにいちばん必要なのは忍耐だ。

気分転換の楽しい方法であることが主目的だが、宇宙船制御におけるSpaceXの人間中心のインターフェースデザインのアプローチを直に体験できる稀有な機会でもある。これは、NASAのアボロ計画やスペースシャトル計画のアーカイブ映像に見られるインターフェースとは大きく異なり、タッチスクリーンデバイスがどこにでもある現代の影響を明らかに受けている。

有効性の証明は、システムがどの程度パイロットがドッキングに成功するところを正確に描写しているかによるが、せっかくなので、うまくドッキングできるかどうか自分で試してみてはいかがだろうか?NASAのJames Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官は一度目の挑戦で成功したと言っているが、彼は元空軍パイロットなのでゼロから初めたとは言い難い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

タッチで操縦する宇宙船Crew Dragon、僕らはまた一歩SF映画に近づいた

革新的に進めるか、それともこれまでに実証された方法に留まるかの判断ができずしてまったく新しい宇宙船を製造することはできない。Crew Dragonの製造にあたり、SpaceX(スペースX)はボタンやダイヤルを廃止し、全面的にタッチスクリーンを採用することにした。今月後半に飛行する宇宙飛行士も長年の訓練と筋肉の記憶を取り払う必要があるが、それほど悪くないと彼らは言う。

まもなくDragonカプセル乗り込んで国際宇宙ステーションに向かう2人の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグラス・ハーリー)氏は、同宇宙船を実際に操縦する最初の2人となる。

「新品の宇宙船で飛行することができるなんて、おそらくテストパイロット学校中の生徒の夢でしょう。良い友人と共にこのような機会を得ることができて私はとても幸運です」と、NASAが放送した記者会見でベンケン氏は言う。

もちろん、彼らは万全の準備を整えて飛行に臨んでいる。シミュレーターでは無数の時間を費やし、初期の段階からSpaceXと協働で取り組んできた。

「SpaceXに出向き、さまざまな制御メカニズムを評価したのは少なくとも5〜6年前のことです」とハーリー氏。「彼らは機体をどのように操縦するべきかを検討しており、最終的にタッチスクリーンインターフェイスが選ばれました」。

「もちろん、パイロットとしての私の全キャリアの中で身につけてきた機体のコントロール方法とは確かに異なりますが、我々はとてもオープンマインドな心持ちで取り組んだと思います。機体を正確に飛ばし、誤って触れたり間違った入力をしたりしないようにするため、彼らと協力して調和方法、つまり自分のタッチを実際にディスプレイと結び付ける方法を定義しました」。

同記事のトップの写真と以下の写真を比較してほしい。以下は宇宙飛行士がロシアのSoyuzカプセルの操縦を学ぶための物理シミュレーターの写真だ。

従来の操縦室

どちらも正直、足まわりのスペースがゆったりしているとは言えない

もちろん最新の航空機であってもいまだ非常に多くの物理的な制御装置が装備されている。パイロットは慣れているだろうが、設計は間違いなく古いと言える。

ベンケン氏によると、これらの宇宙船は、ISSに行きドッキングするという特定の目的を念頭に置いて作られている。この機体で火星に行くわけではないため、その事実が設計と操縦方法に影響しているのだ。

「この飛行タスクは非常にユニークなものです。宇宙ステーションに近づき、近接して飛行し、その後ゆっくりと接触。これはおそらくスペースシャトルや航空機の飛行で通常見られるものとは少し異なります」とベンケン氏は控えめな表現を用いて言う(実際は夜と昼ほどの明確な違いがある)。「タッチスクリーンインターフェイスを審査した際、我々は実際に目下のタスクに焦点を当て、この特定のタスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮できるよう努めました」。

プロトタイプのCrew DragonはすでにISSに打ち上げられ帰還している。自律的かつ遠隔的に操縦されたものだ。

「我々にとっても彼らにとっても、当初はこういったさまざまな設計上の問題に取り組むことには困難がつきまといましたが、タッチスクリーンを用いた手動飛行の観点からすると、機体は非常にうまく飛ぶようになりました」とハーリー氏。

「違いとしては、スティックを使用する場合と比較して入力を行う際は非常に慎重に行う必要があるということです。たとえば飛行機を操縦している場合、スティックを前に押すと機体は下に下がります。タッチスクリーンで実際にそれを行うためには、スクリーンと私が調和しなければなりません」。

「タッチスクリーンへの切り替えが必ずしもすべての飛行タスクに適しているとは、私は思っていません」とベンケン氏。「しかし今回のタスクでISS近くまで安全に飛行するためには、タッチスクリーンが十分な機能を果たしてくれると思っています」。

ハーリー氏によると、操縦のための機構と読み出された情報がすべて同じ場所にあることは大きな利点だと言う。「たとえば、機体を飛ばすために見ているのと同じ場所に、ドッキングターゲットが表示されています。なのでこれまでとは少し異なる方法ですが、このデザインは全体的に非常にうまく機能しています」。

しかし、シミュレーターで学べることは限られている。この最初の有人飛行はまだテスト段階であり、カプセルの次のバージョンを完成させるには今回からのフィードバックが必要だ。結局のところ、数十年前に遡るシステム上で20もの異なるノブのポットを再配線するよりも、ソフトウェアの更新をプッシュする方が簡単なのだ。

「我々はこのテスト飛行の一部を担う者として、飛行前の段階や宇宙ステーション付近でも機体の実際の手動飛行能力をテストできるように設計しました」とハーリー氏は説明する。「期待どおりに作動するか、シミュレーターで見せた飛行通りかを確認するためです。将来の飛行士が手動で宇宙船を飛ばす必要が生じた場合に備え、飛行テストでは他の事項同様に用意周到でなければなりません。つまり、Crew Dragonのさまざまな機能をすべてテストするために、我々がやれることをすべてやっているわけです」。

すべてが計画どおりに進んだ場合、今月後半に飛行予定のCrew Dragonの同バージョンについて、今後さらなるニュースを耳にできることだろう。差し当たって、著者はSpaceXとNASAの両方に、制御方式とその開発に関する詳細情報を求めておいた。

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Category:宇宙

Tags:Crew Dragon SpaceX 宇宙船

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(翻訳:Dragonfly)

トム・クルーズが宇宙での映画撮影についてSpaceXと交渉中か

長年に渡って活躍中のアクションスター、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏は、ますます壮大で激しいスタントやアクションシーンを求め続けている。そして、そうしたものすべてを盛り込んだ最高のアクションムービーの集大成として、宇宙で映画を撮影することを目指しているのだろう。Deadlineによると、クルーズ氏がElon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXと、宇宙で長編映画を撮影する可能性について話し合いを始めており、そこにはNASAも参加しているという。

これはまだ予定に組み込まれたプロジェクトではなく、話を始めたばかりだが、真剣な話し合いが行われているとのこと。この話はクルーズ氏の命知らずの性格からもうなずけるものだ。というのも同氏は、スタントシーンを自ら演じることが多い。「ミッション:インポッシブル」シリーズの、鳥肌の立つような見せ場のシーンのいくつかも、その例外ではない。

そのレポートによると、その映画は「ミッション:インポッシブル」の続編ではないようだが、本当に宇宙空間で撮影されるとすれば、人気シリーズでなくても、十分に聴衆を惹き付けるものになるはずだ。

実際にどうやって撮影するつもりなのか、ということについては何も明らかにされていない。しかしSpaceXは、まさに有人宇宙船を実用化しようとしているところだ。NASAの宇宙飛行士を乗せたCrew Dragonが、この5月27日に初めて打ち上げられようとしている。これは国際宇宙ステーションに対して、宇宙飛行士を輸送する宇宙船が、通常業務として運行可能になったことを示す最終準備段階のデモンストレーションとなるミッションだ。

SpaceXとNASAは、まさにCrew Dragonを開発するために官民のパートナーシップを締結した。計画では、契約によって他の民間のパートナーも利用できることになっている。NASAが民間業者と官民パートナーシップを結ぼうとしているのは、市場を開放することによって長期的にコストを賄うことができると考えているからだ。SpaceXは既に別のパートナーとの話し合いのもと、Crew Dragonに搭乗するプライベートな打ち上げの予約を募っている。

マスク氏が率いるSpaceXは、現在、完全に再利用可能な宇宙船であるStarshipの実現にも取り組んでいる。それが実際に飛行できれば、船内に撮影スタッフが乗り込むスペースもできるはずだ。実際に人間が搭乗できるようになるのはまだ数年先かもしれないが、将来の有人月面着陸ミッションの契約プロバイダーの1つとして、NASAに選ばれている。すべてがNASAの計画通りに進めば、このミッションは2024年に始まる予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAはトム・クルーズの映画に協力、ISS宇宙ステーションで撮影する

噂は事実だった。TechCrunchはNASAはトム・クルーズの宇宙を舞台にした映画製作に協力していると報じたが、今朝、ジム・ブライデンスタインNASA長官がツイートでこれを確認した

NASAはクルーズに協力してISS(国際宇宙ステーション)で撮影を行う。このニュースはDeadlineが最初に報じ、SpaceXもパートナーとなる可能性があると書いていた。以前からNASAはISSの商業的利用への開放をさらに進めようと努力していた。大作映画のロケにISSを提供することはよい方法の一つだというのは間違いない。

ブライデンスタイン長官は、広く人気があるチャンネルを通じてISSのような科学的事業を紹介することは、「エンジニアや科学者の若い世代にインスピレーションを与え、NASAの意欲的な目標の達成に役立つ」と述べている。SpaceXのイーロン・マスクも「これは楽しそうだ」とツイートしている。

トム・クルーズがISSに乗り込むならSpaceXのCrew Dragonシステムを使うことになるはずだ(ハリウッドスターがISSに行くというのは突飛な仮定に聞こえるかもしれないが、クルーズが宇宙に飛び出せるチャンスを逃すとは私には想像しにくい)。SpaceXのCrew Dragonは、有人宇宙飛行能力を実証する最終的なデモの段階に来ており、NASA宇宙飛行士の2人を乗せてISSにむかうDemo-2ミッションが今月末に予定されている。

NASAとSpaceXでは、Crew Dragonの有人飛行能力を民間ビジネスが利用できるようにしようと計画している。Crew Dragonの定員は最大7人だが、NASAはこのうち4人分だけを自身のために予約している。つまり民間ビジネスによる予約によってNASAが負担する打上コストを節約しようという考えだ。

トム・クルーズ(プラス主演女優?)と撮影クルーにISSへの飛行のチケットを買ってもらえば、NASAの出費はだいぶ助かる。 もちろんこれは計画の初期段階であり、いつ、どのように実行されるのかについてはまだ何も発表されていない。SpaceXはCrew Dragonを一般ツーリストに開放する計画を発表しており、それによれば来年後半か2022年にはこの宇宙ツアーが開始される予定だ。

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滑川海彦@Facebook

SpaceXとNASAの有人宇宙飛行「Demo-2」の詳細が明らかに、5月27日にライブ配信決定

NASAとSpaceXにとって宇宙開発の歴史を作る決定的な瞬間が今月末に迫ってきた。5月27日に実施されるDemo-2ミッションではSpaceXが初めて有人宇宙飛行に挑む。乗員はNASAの宇宙飛行士2名で、米国による有人飛行としては2011年に退役したスペースシャトル以来となる。

先週、SpaceXとNASAの代表がDemo-2の詳細を説明した。NASAの宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の2名はSpaceXのCrew Dragonに搭乗しFalcon 9でISS(国際宇宙ステーション)を目指す。

Demo-2というミッション名でも明らかなようにこのミッションはまだテストの一部だ。それでもSpaceXとNASAにとっては2名の宇宙飛行士を無事に帰還させることが至上命題であり、責任は重い。ちなみにDemo-1も今回同様Crew Dragon宇宙船をISSへ往復させるミッションだったが、飛行は無人で実施された

【略】

Demo-2は当初の計画されていたよりもかなり長くなる。NASAの発表によれば。ミッションは30日以上、最長で119日継続される。その期間内でで必要に応じて実際のスケジュールが決定される。NASAにとって現在最も重要な目標は、商業有人飛行ミッションであるCrew-1の実施だ。このミッションではNASA、JAXAなどからの4名を宇宙に運ぶ予定だ。

【略】

発表されたタイムラインによれば、Falcon 9の1段目のブースターが点火されて打ち上げプロセスが開始される。上昇後、ブースターが分離されCrew Dragonを搭載した2段目ロケットが作動する。ブースターは前後を入れ替えるフリップ動作を行い、ブーストバックと呼ばれる噴射により、着陸に向けた軌道に入る。ブースターは大西洋を航行するSpaceXの回収艀に着陸する予定だ。

一方、Dragonカプセルは2段目ロケットから分離してISSに向かう。到着までの時間は打上時のISSの位置により、最短で2時間、最長48時間かかる。

打ち上げ予定日前後のフロリダの天候は予測しにくい。またDemo-2が有人飛行であるためDemo-1のときよりも天候条件はシビアなものとなるだろう。直前でスケジュールに変更が加えられる可能性はあるが、打上に適した「窓」はその後も多数ある。

Crew Dragonは2段目から離脱して飛行を開始した後、ISSに近づくために何回かロケットエンジンを作動させる。ドッキングそのものは自動操縦となる。Crew Dragonは完全に自動化されたドッキング機能を備えている。従来はカナダ企業が開発したためCanadarmと呼ばれるロボットアームを使ってISS側のオペレーターがカプセルを捕獲する必要性があった。

ドッキングが完了すると、Crew Dragonは与圧され、宇宙飛行士がISSに移乗できる。 ISSでは、ベンケンとハーリーは実験やメンテナンスなどの業務を行う。その後2名はCrew Dragon戻り、ドッキングを解除、貨物コンパートメントを投棄して軌道離脱のためにロケットを作動させる。大気圏再突入後、十分に減速した段階でパラシュートを展開して大西洋に着水するという予定だ。ISS離脱からから着水までには約24時間かかる。

地上支援チームは5月16日からクルーの厳重な隔離を開始する。これは打上まで続く。打上施設のスタッフは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスのルールに従い、互いに常に2mの距離を取る。飛行司令ステーションもこのため改装されスタッフの配置も変更される。

ミッションは各段階ごとにみればさほど複雑には見えない。 しかしすべての段階が完璧な信頼性をもって実施されねばならず、これはSpaceXとNASAの長年のハードワークの集大成となる。2011年のスペースシャトル退役以後、米国は国産ロケットでISSにクルーを送ることができなかった。米国が有人宇宙飛行の舞台に復帰する瞬間が近づいている。5月27日の米国東部夏時間正午(日本時間5月28日午前1時)にジョン・F・ケネディ宇宙センターで行われる打ち上げは、ぜひともライブ配信で楽しもう。

画像:NASA

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXは最初の有人飛行の打ち上げ中脱出テストのビデオを公開

SpaceXは、人間を乗せる最初の宇宙船、Commercial Crew Demo-2ミッション(DM-2)を打ち上げる準備を整えている。5月27日にフロリダから発射する予定のフライトの前には、まだ仕上げなければならないことがいくつか残っている。その中には、米国時間4月30日に行われた最終的なパラシュートシステムのテストもあった。同社は、直近の無人のCrew Dragonの打ち上げの様子を要約したビデオを公開した。今年の1月19日の打ち上げで、飛行中の脱出の予行演習を撮影したもの。

このビデオは、今回のテストの進行状況を映し出している。実際に搭乗することになる宇宙飛行士のボブ・ベンケン(Bob Behnken)氏とダグ・ハーリー(Doug Hurley)氏が、管制センターで飛行の様子を見守る姿も捉えている。Crew Dragonは、SpaceXのFalcon 9ロケットに取り付けて打ち上げられた。打ち上げの初期段階で緊急切り離しが発生し、爆発が起こってロケットは火だるまとなる。もちろん意図的なものだ。その後カプセル自体はパラシュートで安全に海まで降下し、SpaceXの船に回収される。

これは、安全装備として設計された重要なシステムのデモンストレーションだ。打ち上げ時にロケットが重大な不具合を起こしながら、すでに離陸してしまったという、万が一の場合にのみ発動される。このシステムは、宇宙飛行士が乗っているCrew Capsule(クルーカプセル)を、ブースターと第2ステージからすばやく自動的に遠ざけ、爆発が発生した際にも乗員は安全な距離を確保できることを保証する。

離陸前に、カプセルと打ち上げエリアから素早く退去できるようにする地上脱出システムなど、宇宙飛行士が搭乗し、米国内で打ち上げる有人宇宙飛行に対して、NASAは多くの安全装備を必須のものと定めている。これまでのところSpaceXは、NASAを満足させる程度には、そうしたシステムの準備ができたことを実証してきた。そして今、残された飛行前のチェックとリハーサルの数は、わずかとなった。あとは、歴史的なものとなるはずの5月27日のミッションを待つ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAのレトロなワームロゴが初の有人ミッション用Falcon 9に入る

NASAとSpaceX(スペースX)は、宇宙飛行士を米国の民間ロケットで初めて宇宙へ運ぶため、Crew Dragon宇宙船によるDemo-2の打ち上げにむけ注力している。そしてCrew Dragonを宇宙へと打ち上げるFalcon 9ロケットには、1992年から退役していたNASAのロゴが入った。

1970年代に誕生した「ワーム」ロゴは20年以上もの間、NASAの記念品でしか確認することができなかった。キャップやトレーナー、ステッカー、その他のグッズで見たことがあるかもしれないが、NASAの宇宙船が退役してからは、打ち上げミッションには使用されていない。NASAが現在使用している「ミートボール」ロゴは、実はワームよりも前の1950年代後半にデザインされたものだが、ワームのほうがレトロな感じがする。

このワームロゴは、現在5月上旬から中旬に打ち上げが予定されている、NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーレー)飛行士とBob Behnken(ボブ・ベンケン)飛行士を宇宙空間の国際宇宙ステーション(ISS)へと運ぶSpaceXのDemo-2ミッションで、再び大々的に使用される。これは、宇宙飛行士の輸送ミッションでCrew Dragonを定期的に運航するための認定の最後のステップだ。

NASAはフロリダでミッションを準備中しているFalcon 9ロケットの側面に描かれた、赤いワームロゴの画像を共有し、さらに公式ミッションでロゴが使用されるのはこれが最後にはならないだろうと述べている。ただし、ミートボールロゴのファンも心配する必要はない。NASAによると、たとえワームロゴが復活したとしても、ミートボールロゴはまだその主要なシンボルだとしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXの有人運用1号機にJAXAの野口聡一宇宙飛行士が搭乗

SpaceXは宇宙飛行士が搭乗する最初のフライトDemo-2の準備に取り組んでいる。厳密にいうと、これはCrew Dragonカプセルが正規ミッションとして飛行開始することが正式に認可される前に必要とされる最後のデモミッションとなる。

画像クレジット:SpaceX

Demo-2ミッションの範囲は多少調整され、宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンキン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏が、国際宇宙ステーションで実際にシフト任務を行うことになった。それでもCrew-1が、SpaceXの有人型宇宙船の公式な最初の運用ミッションであることに違いはない。今回、そこに誰が搭乗することになるのか、さらに詳しい情報を得ることができた。

日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)は、JAXA所属の宇宙飛行士、野口聡一氏がCrew Dragonミッションが正式に運用を開始し次第、その1号機に搭乗すると発表した。またJAXAは3月31日に、野口氏がISSに向かうためのトレーニングを開始したことも明らかにしている。同氏はこれまでに2回、別のミッションでISSに滞在した経験を持つ。最近ではロシアのソユーズで宇宙に向かい、2009年から2010年にかけて滞在した。それ以前にも2005年にはスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗し、宇宙ステーションの組み立てに携わっている。

SpaceXとNASAは現在、Demo-1を準備している。すでに報じられているようにDemo-1には、2人のNASAの宇宙飛行士が搭乗する。現在の計画からスケジュールに変更がなければ、5月中旬から下旬には発射される予定だ。それが成功すれば、乗組員4人を運ぶことができるCrew-1のミッションが、2020年の後半には開始される予定となっている。

Crew-1には野口さんのほか、NASAの宇宙飛行士としてMike Hopkins(マイク・ホプキンス)、Victor Glover(ビクター・グローバー)の両氏、そしてNASAが米国時間3月31日にチームの新メンバーとして発表したShannon Walker(シャノン・ウォーカー)氏が搭乗することになる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAも新型コロナウイルスを考慮して宇宙飛行士の健康管理対策を強化

NASAは標準的なプロトコルとプロセスを補強して、最初の民間乗員宇宙飛行プログラムに参加する宇宙飛行士の健康管理を徹底しようとしている。COVID-19の可能性から保護するように設計された追加の対策を実施すると、Business Insiderが報じた。NASAの標準的な慣行では、すべての宇宙飛行士に対して、地上でのあらゆる病原体に感染する可能性を下げるよう、飛行に先立って対策が施されることになっている。そして現在、特に新型コロナウイルスのリスクに対処するため、特別な措置が講じられている。

Business Insiderのレポートによれば、民間の乗務ミッションに先立つ標準的な2週間の検疫に加えて、追加の対策が実施される。今のところ4月、5月、6月のいずれかに予定されているSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船への乗船に際して行われることになっている。そこには、表面洗浄と消毒、社会からの隔離、手洗いなどの方策について、さらなる強化が盛り込まれている。これらはすべて、CDC(米疾病予防管理センター)が推奨する一般向けの予防策に沿ったものとなっている。

またNASAは、宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーレー)氏やBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏がフライトに先立って訓練を受けている施設の見学ツアー開催を止めている。さらに、潜在的なウイルスへの曝露を制限するため、NASAのスタッフに対しても、何らかの病気の可能性に気づいたら、自宅待機するよう指導している。

宇宙に旅立ったり、そこで仕事をする人の健康は間違いなく最も重要だ。NASAの手順には、実際のフライトに至るまでの広範な検査と監視が含まれており、ウイルスなどの招かれざる客を宇宙空間に連れて行かないようにするという点において優れた実績を誇っている。新型コロナウイルスは、こうしたNASAの予防策に対して新たな課題となる可能性もある。とはいえ、COVID-19はミッションに参加する宇宙飛行士がこれまでどおり回避しようとしている一般的なウイルス性の疾患に対する健康管理と、機能的に大きく異なるものにはならないだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

スペースXがDragon貨物船を使った最後のISSへの打ち上げをライブ配信

SpaceX(スペースX)は米国時間3月6日の夜、国際宇宙ステーション(ISS)への20回目の補給ミッションを打ち上げる。今回のミッションは、これまでのNASA向けミッションのすべてで使われてきたDragon貨物船を使用する最後のミッションとなる。2020年夏からは、その後継機が登場する。

今夜のミッションでは、これまでどおりISSにさまざまな物資や実験機器、新しいコンポーネントを輸送する。打ち上げは太平洋時間の午後8:50に予定されており、上の動画でその様子を確認できる。

Dragon貨物船とFalcon 9の第1ステージは、どちらも以前のミッションで使用されたもので、Dragon貨物船は今回が3回目の打ち上げで、今回が最後となる。

Dragon貨物船はCrew DragonとCargo Dragon(名称に2がつくこともある)という2機種の後継機を生み出し、当然ながら前者は最大の注目を集めている。しかし、改良されたドラゴン貨物船はより多くの利用を見込んでいる。

新旧のDragon貨物船の正確な違いは完全には明らかになっていないが、アビオニクス、電力システム、搭載ソフトウェアそして全体的な形状に大きな変更があることが判明している。当然のことながら、貨物船には生命維持装置や脱出システムは搭載されておらず、人員の輸送は意図されていない。

新しく改良されたCargo Dragonでは、最初の商用ミッションが2020年8月に予定されており、姉妹機のCrew Dragonもすべてが計画どおりに進めば、その前に打ち上げられるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXとSpace Adventuresが提携し2021年にも宇宙旅行を提供

SpaceX(スペースエックス)は宇宙船Dragonで提供する宇宙旅行で新たなパートナーを得た。Anousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏やGuy Laliberté(ギー・ラリベルテ)氏、Mark Shuttleworth(マーク・シャトルワース)氏といったすでに民間人を宇宙に送り出した宇宙旅行会社のSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)だ。

Space Adventuresは有料の商業宇宙ミッションとして、国際宇宙ステーション(ISS)への8つのミッションで7人の顧客にサービスを提供。顧客を目的地に連れて行くのにロシアのソユーズロケットの有料座席を使用した。これは実際に商業宇宙旅行を提供するのに特異な形態だ。つまり、SpaceXは宇宙船Dragonでの人の輸送やフライト計画ができるようになったらすぐに客を乗せて飛ぶことが予想される。

これは特段驚くことではない。SpaceXはNASAとのコマーシャル・クルー・プログラムを通じて有人飛行に向けたDragonの認証に取り組んできた。このプログラムには宇宙飛行士を輸送する有人飛行に対応したバージョンの宇宙船Crew Dragonのテストや開発が含まれる。ISSへのデモミッションで実際にNASAの宇宙飛行士を初めて乗せるまであと数カ月しかない。

SpaceXとNASAは、同社の有人宇宙旅行サービスにおいて、NASAが複数いる顧客の1つにすぎないということをどう位置付けるかについて協議してきた。というのもプログラムの目的は、NASAが収入を生む商業飛行サービスの多くいるクライアントの1社になることで、宇宙飛行士の輸送のコストを下げることにあるからだ。

SpaceXのCEOで創業者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は以前、1回につき最大4人搭乗することが可能なCrew Dragonに宇宙旅行客を乗せて飛ぶことについて議論した。彼はCrew Dragonが実用化されたときに適用できるかもしれないモデルとして、ソユーズ以前の例を持ち出した。マスク氏とSpaceXはすでに、今後完成する宇宙船Starshipに日本の億万長者である前澤友作氏を乗せて2023年に月を周回する旅行を計画している。

Space AdventuresのCrew Dragonを使った民間人を対象にした宇宙旅行は2021年後半か2022年に開始される見込みで(すべて順調にいけばSpaceXがNASAの宇宙飛行士向けのサービスを開始するのと同じ時期か、それより少し後になると思われる)、フロリダのケープ・カナベラルにあるSpaceX打ち上げサイトから宇宙に向かう。Space Adventuresが以前飛ばしたソユーズのミッションのように、実際にはISSには行かない。しかし宇宙旅行の間、これまでに行われた民間人向けのどの宇宙旅行よりも遠くを飛び、すばらしい地球の眺めを目にすることができる。価格についての言及はないが、高額になることが予想される。高度がずいぶん低いVirgin Galactic社の旅行チケットよりもかなり高くなりそうだ。

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(翻訳:Mizoguchi

SpaceXの最初の有人宇宙飛行は早ければ5月にも実施へ

SpaceXのCrew Dragonは有人宇宙飛行の実現にごく近いところまで来ている。先月にIFAと呼ばれる飛行中に乗員を脱出させるテストに成功し、主要なテストをすべてクリアした。SpaceXと発注者のNASA.はDemo-2と呼ばれる有人飛行のテストに進む予定だ。

我々が得た情報では、SpaceXは今年の5月7日にこの有人宇宙飛行テストを予定しているという。この日時は仮のものだが、ニュースを最初に報じたArs TechnicaのEric Berger(エリック・バーガー)氏によれば、スケジュールは遅くなることも早まることもあり得るという。

これ以前にもSpaceXの宇宙船が実際の飛行に極めて近づいていることをわれわれはつかんでいた。先週のGAO(米国会計検査院)のレポートは商用有人宇宙飛行プログラムの進捗状況について詳しく説明しており、Crew Dragonカプセルの有人飛行テスト、Demo-2ミッションは「当初予定されたいたより3ヶ月早く完了するだろう」と述べていた。

Demo-2はその名のとおりCrew Dragonにとって昨年3月に行われたDemo-1に続く2回目の実証ミッションだ。昨年のミッションでは、Crew DragonカプセルはFalcon 9で打ち上げられ、ISS(国際宇宙ステーション)にドッキングして物資を補給した後、大西洋上に安全に着水した。ただしこのミッションではカプセルは無人で地上から遠隔操縦された。

Demo-2ではNASA の宇宙飛行士、Doug Hurley(ダグ・ハーリー)氏とBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏の2人が乗り込むことになっている。2人にとってはこれが3回目の宇宙飛行となる。Demo-2の飛行内容はCrew DragonでISSを往復することで、Demo-1とほぼ同内容だが、今回は有人飛行であることが大きな違いだ。NASAのJim Bridenstine(ジム・ブラデンスタイン)長官は最近、「宇宙滞在の期間を当初計画していた2週間よりも延長するかもしれない」と発表している。これは現在ロシアのソユーズを利用して行なっているISS乗員のローテーションをCrew Dragonで実施しようとするものだ。

宇宙計画では計画の変更は付き物だが、予想外の事態が起きないかぎり上に述べたようなスケジュールでDemo-2は実施されるものと思われる。

画像:SpaceX

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXは有人Crew Dragonカプセルの船上ダイレクトキャッチを目指す

 

SpaceX(スペースX)はCrew Dragon宇宙船の空中脱出システムのテストに成功したところだ。宇宙飛行カプセルは無事、大西洋上に着水した。しかし記者会見でSpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は有人宇宙飛行カプセルの地球帰還は将来まったく異なる方式となるはずだと述べた。

マスク氏によれば、SpaceXの今後の目標は洋上を航行する専用船によってCrew Dragonを「キャッチする」ことだという。 これにより、現在のように洋上に着水してから引き上げるというステップが不要となる。SpaceXでは同様のシステムでFalcon 9、Falcon Heavyのカーゴベイをカバーする大型フェアリングを回収船に張ったネットでキャッチすることに成功している。

「実現させるにはNASAと協議を続ける必要があるが、SpaceXが(フェアリング回収のために開発した)船上キャッチが使えるので非常にクールなアイデアだと考えている。船上回収システムが本格的に稼働すれば、有人Dragonが軌道上からの降下にあたって着水方式による各種の不便さを取り除くことができる」とマスク氏は述べた。

SpaceXがカプセルを着水させず、船上でキャッチできれば運用コスト、再利用の両面でも大きな前進となるはずだ。SpaceXではNASA以外商用クライアントにもCrew Dragonによる有人宇宙飛行サービスを提供していく考えだ。もちろん船上キャッチは将来の目標であり、 Crew Dragonの打ち上げサービスは当面通常どおり着水によるとマスク氏は強調した。有人カプセルの船上キャッチプロジェクトにはNASAの承認と参加が必要であり、まずは現在テスト中のフェアリングのダイレクトキャッチの信頼性を高めて認定を得る必要がある。SpaceXは2枚1組のフェアリングの片側を一度だけキャッチすることに成功しているものの、ほかの数回の実験は失敗している。

マスク氏は「当然だが、まずはフェアリングのキャッチが確実にできるようになる必要がある。Dragonのキャッチを考えるのはその後だ。しかしこれが実現すれば海に落とすのに比べて大きな進歩になる」と語った。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook