地図と連携したモバイルCRMで“訪問営業”を最適化、セールステックのUPWARDが5.5億円調達

フィールドセールス領域に特化したモバイルCRM「UPWARD」を開発するUPWARDは3月13日、DBJキャピタル、三菱UFJキャピタル、DNX Ventures、日本ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額で5.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

UPWARDにとっては2018年5月にDNX Ventures(当時はDraper Nexus Venture Partners)や日本ベンチャーキャピタルなどから3億円を調達して以来の、シリーズEラウンドでの資金調達となる。今後はプロダクトの改良やマーケティングへの投資に加えて、新サービスとなるパーソナルアシスタント機能の開発にも力を入れていく計画だ。

マップを見るだけで顧客情報や営業状況がわかるモバイルCRM

UPWARDはフィールドセールス担当者の訪問営業活動を支援するCRMだ。特徴は地図とCRMが組み合わさっていること。Salesforce連携することで同サービスに登録している顧客情報とUPWARD上から入力した営業情報を合わせてマップ上に可視化する。

訪問状況や重要度に応じて顧客を色分けして表示する機能(たとえば担当者と会えたら赤色、商談が発生したら黄色に変えるなど)を使えば、地図を見るだけで営業状況を把握することが可能。一定期間訪問していない顧客を自動でアラート表示する仕組みもあり、これらの機能によって過去の営業活動を踏まえた上で「今優先してフォローすべき顧客」を簡単に割り出せる。

結果的に営業の質の向上を見込めるほか、最適な訪問ルートを自動作成する機能を用いることで1日の訪問量を最大化したり、そもそも訪問計画の作成にかかっていた時間を削減したりする効果もある。

”データドリブンな訪問営業”を実現するためには、そもそも日々の営業活動をしっかりと記録していくことが不可欠だが、UPWARD代表取締役社長CEOの金木竜介氏によると多くの企業にとってそれが1つのネックになってきたという。

「企業としては顧客データベース自体はあるものの、現場の担当者によるラストワンマイルの訪問情報が会社に入ってきていないことを課題に感じている。つまり日々の顧客接点情報が会社の資産になっておらず、属人的な営業活動になってしまっている」(金木氏)

UPWARDの場合は各営業パーソンが簡単に記録を残せるような仕組みを構築。位置情報を基にスマホからワンタップでチェックインする機能や音声入力など、移動時間やちょっとした空き時間を使ってスマホだけでデータエントリーできるようにした。

リアルタイムに各メンバーの訪問履歴が収集されていくことで、全体の訪問計画を最適化することにも繋がる。金木氏の話では従来でもトップセールスと言われるような一部のセールスパーソンは個人的にデータを記録して営業活動をしていたようだが、それをチーム全員で実行できている企業はまだまだ多くはない。

特に大企業などフィールドセールスを担当するメンバーが多いような企業ではオペレーションで苦しんでいるところも多かったそう。現在UPWARDは約300社に導入されているが、メインは製造業などをはじめとしたエンタープライズの顧客だ。

たとえば訪問内容の共有によってナレッジの浸透や営業効率がアップしたことで導入1年で売上実績が5.5倍になったダイハツ工業の事例をはじめ、実際に売上増加や業務効率化に大きく貢献できた事例も積み上がってきているとのこと。最近ではPayPayの加盟店開拓における訪問営業でもUPWARDが使われたという。

新サービスとして「パーソナルセールスアシスタント」機能を予定

今回の資金調達はUPWARDをさらに使いやすくするための機能拡張に向けた人材採用とマーケティングへの投資が主な目的。機能改善や連携CRMの拡充(現在はSalesforceのみ)なども随時行っていくほか、4月にベータ版ローンチを予定している新サービス「AGENT」の開発にも力を入れていく。

UPWARDではAGENTを「パーソナルセールスアシスタント」と表現しているが、このサービスでは大きく2つの観点から各セールス担当者を今まで以上に支援する。

1つはデータエントリーの自動化。モバイルGPSを軸にセンサー情報なども用いて、担当者がスマホを持ってさえいればCRM上に顧客訪問日時やこれまでの訪問回数などが自動で入力される仕組みを作る。

そしてもう1つがデータを基にした営業アプローチ方法の提案(インサイトの提供)だ。すでに接点のある顧客への営業についてはCRMの情報を参照して「最適な訪問タイミング」や「次の訪問先」をレコメンドしたり、自動で訪問計画に組み込むことで営業活動における漏れをなくす。新規顧客の開拓においては過去の営業データを基に「上手くいく可能性の高い見込み顧客」を発掘し、提案するような機能も計画しているようだ。

「フィールドセールスにおけるラストワンマイルのパーソナライズを加速させていく。ここ数年、顧客からは個別最適化したCRMが求められてると感じている。『CRM3.0』という言葉を使われることもあるが、プラットフォームに蓄積してきたデータをどのようにフロントエンドで、現場で使いこなせるような形で提供していくか。CRMの活用部分がより重視されるようになってきた。自分たちはフィールドセールスという領域において、そこを追求していきたい」(金木氏)

「サポートチームのためのOS」提供を目指すAssembledが3.2億万円調達

顧客管理などに使われるCRM(Customer Relationship Management)ソフトウェアは、企業のIT支出全体の4分の1を占めている。しかし皮肉なことに、外部からの問い合わせや外向けのマーケティング活動の管理に対して、SalesforceやSAPのようなプラットフォームに多くの費用が支払われている一方で、そうしたソフトウェアを利用するチームがよりよい仕事をするためには、どうすればよいかという点に多くの注意が払われては来なかった。

通話のピーク時間はいつなのか?最も一般的な質問は何なのか?どのスタッフがどのような質問に最も精通しているのか?そして、ある時点で実際に働いているのは誰か?こうしたことは課題の一部に過ぎないが、多くの場合、こうした課題の支援に使われるツールはほとんど存在していない。各組織はこうした場合、単にGoogleスプレッドシートやカレンダーアプリのようなプラットフォームを無理やり使うか、何もしないままになりがちだ。

米国時間3月11日、Assembledという名のスタートアップがこうしたギャップを埋めるためにステルスモードから姿を表した。その提供するプラットフォームは、カスタマーサポートチームが遭遇し(そして良い回答を行えた)質問や課題に特にアプローチするように構築され、チームがよりよく働けるようにするものだ。

Assembledはまず、設立チームがこれまで勤務していたStripeが主導するシードファンディングから310万ドル(約3億2000万円)の資金を得たことを公表した。この調達にはほかに、Basis Set Ventures、Signalfire、および複数のエンジェル投資家(主にStripeの元従業員たち)も参加している。Assembledの長期的な目標は、共同創業者のRyan Wang(ライアン・ワング)氏が「カスタマーサポートのためのロジスティクス」と表現するツールを構築することだ。

「サポートチームのためのオペレーティングシステムになりたいのです」と彼は言う。同社の直近の焦点は、カスターサポート担当者のパフォーマンスに当てられることになる。「チームは、トップパフォーマーとその時間の使い方について学び、その意思決定力を強化するためのデータを共有したいと考えているのです」と続ける。

現在350億ドル(約3兆6000億円)と評価されている、支払いならびに関連サービスプロバイダーのStripeは、その関心領域に隣接するスタートアップやその他の小規模ビジネスとの間に関係を築く中で、スタートアップに資金提供を行う大規模な事業を展開してきてきた。その意味で、StripeはAssembledにとっての戦略的投資家の1つと考えることができる。Grammarly、Gofundme、Hopper、そしてHarry’sと並んで、StripeはAssembledの有力顧客の1つなのだ。

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兄弟であるJohn Wang(ジョン・ワング)氏と、AssembledのCEOになったBrian Sze(ブライアン・ジー)氏(どちらも元Stripe)らと、共同創業を行った元Stripeのエンジニアであるライアン・ワング氏は、とあるインタビューの中で、今回のスタートアップのアイデアは、Stripeの初期メンバーであった彼らの経験から直接得られたものだと語っている。

Stripeの初期段階でのアプローチは、極めて草の根的なものだった。従業員たちはオフィスの外で集まり、サポートチケットのレビューを行って、傾向を見定め、何を修正すればよいかを見出し、将来的に課題をどのように扱って行けばよいかなどを話し合っていた。

このやりかたはおそらく、顧客が必要としているものをチームが理解するために最適な方法だったのだ。だが、最終的にはこのアプローチには問題があった。こうしたやりかたをどのようにスケーリングすれば良いのだろうか?技術者にとっては、目指す解決方法は明らかだ。それを行うために役立つプラットフォームを開発するということである。

「CRMという世界の中で、カスタマーサポートをサポートするというビジネスに、技術が実際は適用されていなかったことに気が付きました」とワング氏は言う。「それが私たちがStripeを去った理由です。私たちはそれが、適用範囲の広い問題であることを理解していたのです」。

カスタマーサポートチームの従業員管理を改善するためのツールを作成することは、既に独自の自家製ソリューションを通じてこれらの問題に対処しようとしている企業にとっては、難しいことではない。ワング氏は、現在の顧客の1つがそうしたデータの膨大なマップをGoogleスプレッドシート上に構築して、カスタマーサポート従業員の管理にアプローチしようとしていたと明かす。しかし結局「彼らはそのGoogleスプレッドシートを壊してしまったんですよ。とにかく大きすぎたんです」と語った。

実際、Stripeの運営責任者であるBob van Winden(ボブ・バン・ウィンデン)氏は次のように述べている。「数え切れない数のビジネスが、常時Stripeに依存しています。それらをサポートするために、無料の24時間年中無休の電話およびチャットサポートを含む、高速で信頼性の高いカスタマーサービスを提供するための、細部にこだわっています。このことが私たちをAssembledへと向かわせました。これを使うことによって、私たちのグローバルサポートチームは、Stripeユーザーの成長を支援するための体制を整え、集中することができているのです」。

企業がこうした問題を一度も意識したことがなかったり、またはそれらを知ってはいるものの、解決は難しすぎると思っているために努力をしていなかったりする場合は、ユースケースはそれほど明白ではない。(ここでの古典的な問題は、Assembledが「あまりにも賢すぎる」、あるいは「時代よりも先行しすぎている」ことだ)。それは、Assembledにとっては、オープンな市場であると同時に、未踏領域への挑戦でもあるのだ。

顧客に対するアプローチの1つは、より確立されたCRMパッケージと統合することだ。現在Assembledは、Salesforce、Kustomer、Zendeskと統合されていて、これらのデータを吸い出し、より多くの洞察をユーザーに提供することができる。

また別のアプローチは、企業運営を改善するために使うことのできる、分析およびデータベースからの知見の、幅広い傾向を知ることができる一連のツールを提供することだ。実際、インバウンドリクエストの狭い範囲に焦点を合わせていたCRMの常識を、Kustomerが覆したように、カスタマーサポート担当者が何をいつ行うべきかを把握するためのデータを解析する方法を、Assembledは再検討している。

スタートアップのプラットフォームは、インバウンドサポートの問い合わせ量を予測し、それをチャット、メール、電話、ソーシャルメディアなどの複数のチャネルでカバーする人員配置計画にマッピングする手段を提供する。その人員配置計画はまた、グループや個々人のカレンダーを設定するために用いられる。

一方、チームのアクティビティは、チーム全体が確認し作業をより良く調整するために使用できる一連の計測指標によって追跡される。

この先、Assembledが複数の異なる方向に展開していくことが想像できるだろう。1つは、カスタマーサポートに限ることなく、より多くのチームに従業員管理手段を提供することかもしれない、だがインバウンドリクエストを管理し、より効率的な作業計画に変換する方法も生み出していかなければならない。また別の方向は、「顧客」が実際に誰であるかに応じて、顧客サポートが異なることを意味する現実に対応するために、顧客サポートチームの機能を補完するツールの種類を拡大し続けることだ。

「私たちは『カスタマーサポート』という用語が進化していると考えています」とワング氏は語る。「大きな悩みは、その代わりとなる包括的用語がどうあるべきかということです。一般的に言うなら、私たちの望みは、カスタマーサポートの意味を変え、より向上させたいというものです。それはコールセンターだけに限られたことではなく、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための、製品に関するあらゆる要素を含むものです」。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:sako)

「本気で世界シェア1位を取りにいく」Reproが4年ぶりの増資で約30億円を調達

Repro代表取締役の平田祐介氏(前列中央)と投資家陣

「前々期まで2期連続で黒字が続いていて、きちんと売上が立っていた反面、攻めの投資ができなかった部分もある。当初は赤字を掘って投資をすることに恐れもあったが、この1〜2年で自分の視座を2段階ぐらいあげることができ、前期は赤字になりながらも先行投資を進めてきた。今回の調達は自分にとって決意表明のような意味もある。世界シェア1位を本気で目指していきたい」

Repro代表取締役の平田祐介氏は自社の現状と展望についてそのように話す。同社は2月13日、YJキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資とデットファイナンスを合わせて総額で約30億円を調達したことを明らかにした。

  • YJキャピタル
  • SBIインベストメント
  • NTTドコモ・ベンチャーズ
  • KDDI(グローバル・ブレインが運営するKDDI Open Innovation Fund 3号 )
  • DGベンチャーズ(既存投資家)
  • DG Daiwa Ventures (DG Lab Fund / 既存投資家)
  • ジャフコ(既存投資家)
  • みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫(デットファイナンス)

Reproにとって外部からの資金調達は約4年ぶり。前回の調達は2016年3月まで遡る。2014年の設立後、翌年にアプリ分析ツール「Repro」をローンチ。最初こそ「全然売れなかった」ものの、マーケティング機能を搭載しアプリマーケティングツールへと進化したことで急成長を遂げてきた。

現在Reproのプロダクトは66ヶ国、7300を超えるサービスに導入されている。

2018年に平田氏に取材をした際にもT2D3(SaaSの重要指標で、サービス開始から3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と年々売上が成長する状態のこと)の軌道に乗り、事業が年々成長していることは聞いていたので、個人的には「次はエグジットのニュースかも」なんて考えもあった。

事実、もともとReproは2年で数億円規模のM&Aを目指すべく設立された会社であり、前回の調達後にM&Aの交渉を進めていた時期もあったという。

ただ、結果的にReproが選んだのは別の道だった。IPO路線へとシフトし、さらなる成長、ひいては世界シェア1位に向けて、人材採用や研究開発などへ積極的に投資を実行。今回の調達はその流れをさらに加速させるためのものだ。

マーケティングツールからCEプラットフォームへ

Reproは2016年にマーケティング機能を取り入れたことを機に、アプリマーケティングツールとして事業を拡大してきた。

特徴はデータの取得から加工、マーケティング施策へのアウトプットまでを一気通貫でサポートしていること。Reproを使えば、取得したアプリユーザーの行動・属性データをリテンション分析やファネル分析など様々な仕組みを用いて徹底分析し、その結果を基にプッシュ通知やアプリ内メッセージといったマーケティングアクションを実行するところまでをワンストップで完結できる。

この仕組みをベースに、近年力を入れてきたのが「チャネルの拡張」だ。2018年にスタートしたWeb版によって、アプリ・Web横断で施策を実施することが可能に。昨年からはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)系の事業者と繋ぎこみを行い、オフラインデータへの対応も始めた。

オフラインもカバーすることで、OMO文脈の複合的な施策もReproでできるようになる。たとえばアパレルブランドの渋谷店でジャケットを購入したとしよう。その情報はPOSデータに入り、CDPを経由してほぼリアルタイムにRepro上にもあがってくる。

Repro上にはそのジャケットと相性が良いネクタイの情報があったので、ジャケットを購入した消費者に対して「先ほどは渋谷店でのお買い上げありがとうございました。店頭には置いてなかったのですがジャケットに合うネクタイがあるので、良かったらいかがですか」というメッセージをアプリに通知する。そんなことが可能になるのだという(この取り組みはまだ正式な商用化はしてないそう)。

チャネルの拡大により顧客層も広がってきた。当初はアプリを作っているIT系企業がほとんどを占めていたが、小売を始め、全国チェーン展開している企業、数十万人以上の従業員を抱えるエンタープライズへの導入も進んでいる。今後は金融や小売、外食などへ積極的に展開していく計画だ。

アプリのデータのみを扱うアプリマーケティングプラットフォームから、Webやオフライン、IoTなどのデータも取り込んだ上で、消費者1人ごとに最適なコミュニケーションを行えるプロダクトに進化したRepro。これを機にプロダクトの打ち出し方も「CE(カスタマーエンゲージメント)プラットフォーム」へとリブランディングしたことも明かしている。

AIの研究開発を加速、子会社設立で本格的なグローバル進出も

チャネルの拡大と並行して強化してきたのが「AIによる自動化」と「グローバル展開」だ。

Reproでは2018年7月に研究開発チーム「Repro AI Labs」を設立し、ユーザーとの適切なコミュニケーションに不可欠な“シナリオ設計”をAIが手助けする仕組みを開発。話題を集めた「少年ジャンプ+」との実証実験では、AIがアプリから離脱しそうな傾向にあるユーザーを予測し、プッシュ通知を通じてユーザーの離脱を防ぐ取り組みを行った。

このチャーン予測機能はすでに商用化済み。蓄積してきたデータとAIを活用して、プッシュ通知のタイミングをパーソナライズする機能や、優良顧客を予測する(たくさん課金してくれそうなユーザーを予測する)機能などを次々と手がけている。

「マーケティングオートメーション(MA)ツールという単語から多くの人が連想するのは、そのツールを買えばマーケティングが自動化されることのはず。でも実際にはめちゃくちゃ人間の手が必要なのが現状で、だからこそ市場が爆発的には伸びなかった。近年は本当に人間が介在せずにマーケティングを自動化することが技術的にも可能になりつつあるので、Reproでもそこを突き詰めていく」(平田氏)

パワーアップしたReproを引っさげ、2019年8月にはシンガポール子会社を設立。まずは東南アジアを軸にCEプラットフォーム領域でシェアを拡大するべく、本格的な海外進出を進めているところだ。

「2年で数億円規模のM&Aを目指す」からのスタート

今回の資金調達は上述した取り組みをさらに前進させることが目的だが、その意思決定に到るまでには様々なドラマがあったようだ。

冒頭で触れた通り、もともとReproは2年で数億円規模のM&Aを目指すことを目標に数人のメンバーが集まって立ち上げた。当初は苦戦し「いつ潰れてもおかしくない状況」に直面しながらも、PMFを達成。事業を成長軌道に乗せられた時には創業から3年が経過していたという。

「ある日創業メンバー全員から呼び出されて『平田、俺たち2年で数億円のエグジットを約束して集まったよね。でも現時点ですでに3年が立っている』という話になった。自分で会社をやっていたり、別のことを抱えながら2年間という約束で協力してくれたメンバーもいたので、そろそろM&Aに向けて動き出してくれということで、投資家とも相談しながら話を進めた」(平田氏)

当時のReproは売上が前年比で300%成長し、勢いに乗り始めていた時期。実際に数社から買収のオファーが届き、そのうちの1社に絞って数十億円単位の具体的な交渉も進めていたという。

「最終的に希望する金額と先方から提示された金額に少し開きがあった。死ぬ気でここまで会社を作ってきて、まだまだ伸ばせる自信があるし良いメンバーと一緒にやれてもいる。安売りするのは自分たちがやってきたことを否定している気もして、徹底的に話し合った結果、IPO路線に切り替えこのチームでさらなる成長を目指すことに決めた」(平田氏)

とはいえ、当初は頭で納得していても精神が追いつかない時期もあった。もともと2年間という前提で「毎日18時間くらい働いて目的達成してやるという気持ちだった」が、IPO路線に変えるということは当面の間CEOとして経営を担い続けることが基本となる。当初の想定より責任も重い。

悩みを抱えていた結果、事業は黒字を継続しているものの思い切った投資ができず、後から振り返れば機会損失や競合の参入を許すことにも繋がった。

「改めてIPOを目指す意義は何か、1年ほど前まで悩んでいた。その中で見えてきたのが、日本がこのままだと暗い国になってしまうのではないかということ。才能ある若い人材が夢や目標を語れなかったり、社会に出ることを危ないことだと考えていたり。これから人口も減りGDPも減少する中で、数少ない成長産業であるIT領域から外貨をしっかり稼げるサービスを出せないと、未来はもっと暗くなってしまう」(平田氏)

Reproは以前から複数の国にユーザーを抱えていて、国外でもニーズがあることはわかっていた。だからこそ「腹をくくって世界シェア1位を目指す」道を選んだ。「日本人は事例ができると強い。自分たちが良い事例を作れれば、もっと大きい産業でも海外で勝負をする起業家が増えるはず。だったら自分の余生をかけてやりきる意義もある」という思いもあった。

直近1年ほどは戦略的に赤字を掘りながら、人材採用を強化中。いよいよ自分たちの資金だけでは足りなくなってきたため4年ぶりの増資を決めた。

増資のテーマは「国内の盤石な体制を築いた上で、海外を攻めること」。今回のラウンドで3大キャリア(関連するVCも含めて)を仲間に招き、金融業界でDXを推進するSBIも株主に加わった。海外子会社にも積極的に投資を実行し、IPO時には少なくとも子会社単体でARR3億円以上を目指すという。

ちなみにメンバーは毎月10人前後増えているそうで、現在は約200名体制。エンジニア(Rubyのコミッターが7人いるそう)やReproのキモとも言えるCS部隊を中心に組織も強くなってきた。

今後は海外に開発拠点を設けグローバル規模で開発体制を強化するほか、シンガポール法人に続く新たな拠点の開設も計画しているという。

プロダクトとCS体制で東南アジアのシェア獲得目指す

Reproが勝負を挑むCEプラットフォームはグローバルの競争が激しい領域だ。平田氏が過去の取材でも名前をあげている「Braze(旧Appboy)」を筆頭に複数のプレイヤーが存在し、東南アジアにおいてもReproはかなりの後発になる。

その状況下においてどう戦っていくのか。1つのポイントは地域ごとのマーケターの成熟度とニーズの違いだ。

平田氏の話では米国はマーケターが成熟していて多くの担当者は自走できる。そのため自分がやりたいことが機能として実装されているのか、スペックが同じならどちらが低価格なのかといったような「プロダクトの機能面」で比較されることがほとんどだという。

一方で日本の場合、米国ほど個々の担当者にマーケティングの知識が浸透していないことが多い。だから機能面以上に「目標達成に向けて密にサポートしてくれるか」が重要なカギとなる。

過去に日本展開していた米国産のツールと比較しても「当時は機能面で2.5倍くらい先行されていた印象」(平田氏)だったが、周りからは“コンサルの域”とも言われるようなCSチームによる手厚い伴走支援によって、Reproは国内市場の競争に勝ってきた。

では東南アジアの場合はどうかというと「米国と日本のミックス」なのだそう。ツールの評価方法は米国に近く機能面がシビアに比較されるが、マーケターが成熟しているわけではないので伴走支援も欠かせない。それがネックになって先行して市場に乗り込んだ米国企業も現時点では苦戦している状況で、後発でも十分に付け入る隙があるというのが平田氏の見解だ。

「(CEプラットフォームも含めて)CRMの領域は日本人に向いている。市場の啓蒙から必要で、アドテクなどと比較して成長に時間がかかる一方、頑張ってやり続ければ確実に伸びる。リングに立ち続けて、死ななければ勝てる領域だということが少しずつ見えてきた」

「海外の競合も複数いるが、10年20年かけて本気でやり続ける起業家がどれだけいるかというと、ほとんどいないという感覚。だからこそ覚悟を持って耐え続ければ世界戦でも勝てる手応えはある」(平田氏)

もちろんCEプラットフォームとしてグローバルで覇権を握るにはプロダクトの改良も不可欠。これについてはAIによる自動化の推進などに加えて新たな試みも進めている。現時点で詳細は明かせないとのことだが「B2C企業向けの次世代CRM」の確立に向けて、現在のReproには足りていない要素を開発していく計画だという。

世界でトップシェアを誇るプロダクトを目指し、4年ぶりの増資を経て次のステージへと動き出したRepro。同社のこれからの動向に注目だ。

企業成績に貢献するカスタマーサポートのためにFreshworksが問い合わせを処理するロードバランサーをローンチ

この前の資金調達ラウンドで15億ドルと評価されたカスタマーエンゲージメントサービスFreshworksが今日(米国時間2/21)、カスタマーサービスエージェント〔CS担当者たち〕のための同社のツールの中で、最新の製品となるOmnirouteをローンチした。

Omnirouteは、その名前‘全ルート’が示すように、マルチチャネルのカスタマーインクワイアリ(顧客の問い合わせ)をルーティングするロードバランサーだ。Freshworksによると、初期のカスタマーサポートソリューションは、インクワイアリのタイプによってエージェントを切り替えるなど、ルートのトラフィックを効率的に管理することが困難だった。

FreshworksのCEOで協同ファウンダーのGirish Mathruboothamの説明によると、“現代の消費者は複数のチャネルやデバイスからブランドにリーチできるから、極言すると、カスタマーサービスのチームは毎日、四方八方から砲弾を浴びているようなものだ”。

そこでOmnirouteの約束は、クエリーを、それを扱えるほどの十分な帯域がまだある適正なエージェントへ自動的にルートする。そのとき、帯域の余力だけでなくエージェントのスキルとインクワイアリの性質の照合も行なう。そこでたとえば、注文番号をタイプして電話を切ろうとしたときにエージェントが注文番号を尋ねてくる、といった帯域ミスマッチがあるときには、Omnirouteが登場して、この情報をそのエージェントのスクリーンに表示し、ミスマッチの発生を未然に防ぐ。

オムニチャネル(omnichannel)は、このところマーケティングの世界で大きなバズワードだが、でも確かなのは、顧客はいろんなチャネルから企業やお店にアクセスしたい、ということだ。オンラインのチャット、電話、テキストメッセージ、TwitterのDM、そしてもちろん、実店舗の店員さんや営業の人、等々。企業は、どんなチャネルからも顧客に良い体験を提供したいと思っているが、そのための適切なツールがなかなかない。

そんな中で、最近ZendeskがBaseを買収したことは注目に値する。この、営業のためのCRMソリューションは、Freshworkの営業ツールともろに競合する。そして当然ながら、Freshworkのチームは平静を装う。FreshworkのCMO David Thompsonはこう言う: “ZendeskがCRMのBaseを買ったことは、中途半端でしかも遅すぎる。顧客が満足するためには、営業のCRMとサポートのCRMが統合された、完成度の高いツールが必要なのだ。そこらのサービスを買って、それをボルトで取り付けても、マーケティングと営業とサポートとの間のシームレスなデータのフローは実現しない”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ZendeskがBaseを取得してCRMに拡大

これまでZendeskは、ほとんど顧客サービスのシナリオだけに専念してきたが、どうやら最早それだけでは十分ではないようだ。インタラクションの背後にいる顧客を本当に知りたいのならば、顧客サービスコンポーネントと一緒に働く顧客記録システムを必要とする。その必要性を満たすためにZendeskBaseの買収を発表した。Baseは既に5000万ドル以上を調達してきたスタートアップである。

両社は購入価格を公表しなかったが、Zendeskはこの買収は収益に大きな影響を与えない筈だと公表している。

CRMの世界でBaseは、Salesforce、Microsoft、またはOracleのようには知られた存在ではないだろう。同社は、独自の人工知能基盤を備えた、洗練された営業自動化プラトッフォームを構築した。CEOのUzi Shmiloviciは、営業パーソンに対して成功に向けての意味のある助言を行うためのAIを2016年にリリースした際に、同社のAIはより余裕のある競合相手たちに十分対抗できると主張した。

Zendesk CEOのMikkel Svane(冒頭の写真)は、もちろん彼のプラットフォームにBaseのような会社を追加することに価値を見出している。「Zendeskが既に顧客サービスのために行ってきたことを、営業活動のために提供したいと思っています。つまり営業パーソンと彼らが相手にしている人たちのために作られたツールを提供するということです」と彼は発表声明の中で述べている。

顧客データの中核に、顧客サービス、CRM、マーケティングが含まれているのなら、BaseはZendeskに欠けているそうしたコンポーネントの1つを提供する、と語るのはこの市場を注視しているCRM Essentialsのオーナー、Brent Learyである。

「Zendeskは顧客サービスで大きな地位を占めていますが、今や統合プラットフォームを探している中堅/企業顧客に対する立場を強化しました。Baseは強力な営業活動自動化のピースをパズルに提供します」と、LearyはTechCrunchに語った。

彼が指摘しているように、私たちはHubSpotがHubSpot Appsを使って似たような動きをしている事を見ているが、その一方SugarCRM(最近Accel-KKRに買収された)も、新しいオーナーの潤沢な資金を用いた買収を仕掛けるかもしれない。「これはほとんど、CRMエンタープライズソフトウェアによるHunger Games(小説/映画の名前。登場人物たちが最後の1人になるまで殺し合う)と同じです」と彼は冗談を言った。彼は、これらの企業はより完全なソリューションを提供するためにプラットフォームの欠けている部分を獲得しようとしているので、さらに多くの統合が起こることが予想できることを示した。

Zendeskの製品ポートフォリオのシニアバイスプレジデントだったMatt Priceが、Baseチームを前進させる。

Baseは2009年に設立され、5000以上の顧客を誇っている。Baseは既に、Zendeskのアプリマーケットプレイスで売られていたことを指摘して置くことには意味があるだろう。よってここには多少のオーバーラップが存在する。もちろんZendeskは既存の顧客をBeseに移行させようとするだろう。

Zendeskは、Baseのすべての顧客を引き続きサポートすることを表明している。さらにBaseの125人の従業員全員が、Zendeskに入社するように招待されているので、ここで流血の心配はない。

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(翻訳:sako)

ArmがIoT事業というパズルの最後のピースとしてデータ管理のTreasure Dataを買収

あなたがたぶん今でもARMという名前で覚えておられる思う半導体企業Armが今日(米国時間8/2)、大企業向けのデータ管理プラットホームTreasure Dataを買収したことを発表した。買収価額等は公表されていないが、今朝のBloombergの記事は6億ドルと言っている。

この買収は、Armの新事業であるIoTのサポートが目的だ。Treasure Dataの得意技は、IoTなどのシステムが吐き出す大量のデータストリームの管理である。IoTのほかにも、CRMやeコマースなどのサービスがやはり、Treasure Dataが扱うような大量のデータストリームをコンスタントに作りだす。

これよりも前にArmは、IoTの接続性管理のためにStream Technologiesを買収している。そこで同社は曰く、Treasure Dataの買収は、IoTの実現というパズルの“最後のピースだ”、と。その完成したパズルはArm Pelion IoT Platformと呼ばれ、StreamとTreasure DataとArmの既存のMbed Cloudを一つのソリューションにまとめ、IoTのデバイスとそれらが作りだすデータを接続し管理する。

Treasure Dataは以前と変わらず操業を続け、新しいクライアントと既存のユーザーの両方に奉仕する。そしてArmによると、“IoTの重要な部分として新しい複雑なエッジとデバイスのデータにも対応していく。そして顧客の総合的なプロフィールの中で彼らのプロダクトを個人化し、それらの体験を改良する”、のだそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

SquareがそのReaderへのアクセスをデベロッパーに一般公開、独自の店頭決済ソリューションを作れる

あなたが毎日通うコーヒーショップのレジでおなじみのSquareが、そのReaderハードウェアをデベロッパーに公開する。デベロッパーはSquareのReader SDKを使って、独自の決済やPOS体験を構築できる。セルフサービスのキオスクや、ウェイターが使うモバイルアプリなど、いろんな決済ポイントを実装できるだろう。

Squareでデベロッパープラットホームを指揮しているCarl Perryが、こう説明している: “私たちは今市場にあるものの中では最良のPOS(販売時点)ソフトウェアを作ったと自負しているが、しかし業界によっては独特のニーズもあり、私たちの既存のプロダクトでは対応できない独自の店頭決済体験を実装したいと願っている企業も少なくない。そこで今回私たちは、そのプラットホームをオープンにし、今回初めてデベロッパーに、Squareのハードウェアへのダイレクトアクセスを提供しようとしている”。

ここでSquareが言いたいのはたぶん、すでにSquareがよく使われているリテールやレストランなどの業界と、ほとんど使われていないニッチの業界の両方に、既存のSquareのソフトウェアでは間に合わない業態がある、ということだろう。そこでSDKを広く公開すれば、iOSやAndroidのデベロッパーがそれらの業態…交通運送業、ヘルスケアなど…に合ったSquareの決済ソリューションを作ってくれるだろう、というわけだ。またSDKの公開によってデベロッパーは、自分のソフトウェアに決済システムを容易に組み込めるようになる。たとえばCRMソフトを作っている人や、もっと複雑なERPシステムを手がけているデベロッパーが、即時決済という実装部品を得ることになる。

すでにこのSDKを使用した企業の中には、Shake Shackがいる。同社はニューヨークなど数都市で展開している“Shack of the Future”で、このSDKを使用するセルフサービスのキオスクをテストしている。またInfinite Peripheralsは、デジタルのタクシーメーターを作り、それはすでにワシントンDCで使われている。ほかに、Instagramのアカウントを持つジュースチェーンJoe and the Juiceや、使い捨て医療用品自販機のQuiqMedsなども、このSDKでPOSを実装している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マーケティングの天才たちはネット広告よりも古典的な〒郵便〒の感情的効果に着目

ロサンゼルスのPostieが抱(いだ)くビジョンによると、広告とマーケティングの未来はダイレクトメールにある。

10億ドルで買収されたDollar Shave Clubの大ヒットしたコマーシャルなど、数々のマーケティングを成功させたファウンダーたちが考えたのは、テクノロジーがそろそろ、未知の領域を開拓すべきだ、ということ。未知の領域とは、良質なターゲティング技術に支えられたダイレクトメールキャンペーンだ。

Postieは、オンラインのデータ収集と、オンデマンドの印刷と、郵便の技術、以上三つを結びつけて、最短24時間でオーダーを獲得する。同社によるとこの方法は、オンラインのターゲティング広告と同じ効果があるという。

このサービスを利用すると顧客(売り手)は、3億2000万以上の人びとの層別データや、関心事、行動などのデータにアクセスでき、それらによりダイレクトメールキャンペーンをターゲティングして、既存のCRM(customer relationship management)ツールとの統合もできる。

ファウンダーのDave FinkとJonathan Neddenriepは、昔インキュベーターScienceにいて、そのときFinkはDollar Shave Club, DogVacay, SpringRole, Wishbone, Hello Societyなどのマーケティングを6年間担当した。NeddenriepはScienceのCTOで、PositeでもCTOだ。

つまり昔のFinkは、オンライン広告(ネット広告)という大きなノイズの中で、ヴァイラルなメッセージが、できるだけ多くのオーディエンスに届くよう、苦労していた。それに比べると今回のダイレクトメールというメッセージは小さいが、しかしねらう市場は依然として大きい。

Finkはこう主張する: “高度にターゲティングされた郵便物という物理的な実体は、ネットでは不可能な感情的反応を喚び起こす。デジタルの場合と同じデータに基づくインサイトと定量的アプローチが、まったく新しいスケーラブルなメディアチャネルを切り開く”。

事実、21世紀になってもDMは死んでいない。Direct Marketing Associationの調査によると、2014年には、広告主や企業がダイレクトメールキャンペーンに460億ドルを支出した。そしてFinkと彼の仲間たちは、その数字がさらに伸びることを期待している。

しかも彼らは、一人旅ではない。すでにロサンゼルスのBonfire VenturesとCrosscut Venturesが、Postieに350万ドルを投資した。同社の事業の拡大にも、ダイレクトメールを利用できるだろうか?

画像クレジット: dvs / Flickr, Creative Commons 2.0のライセンスによる.

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

フィールドセールス向けCRMを提供するUPWARDが約3億円調達

クラウドCRMサービスを提供するUPWARDは5月15日、Draper Nexus Venture PartnersSalesforce Ventures日本ベンチャーキャピタルアーキタイプベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、総額約3億円を調達したと発表した。

UPWARDは、CRMと位置情報を連携したフィールドセールス向けのクラウドサービスだ。従来のフィールドセールスでは、CRMにある情報をもとに準備をし、そこに書かれた住所に訪問するというのが一般的。一方、CRMと位置情報を組み合わせたUPWARDでは、例えば自社製品の資料請求を行った企業のオフィスがたまたま営業員の近くにあれば、ツールが自動的に「訪問すべき」というリコメンドを行う。

UPWARDはスマホアプリなので、急な案件でも出先からCRM情報を確認することもできる。営業計画の立案や効果的な訪問ルートの計算などもツール上で行うことが可能だ。活動報告や、実際の活動履歴をもとに自動でレポートを作成する機能もあるので、フィールドセールスに関わる作業を一括して行うことができる。

UPWARDの設立は2002年で、サービスは2011年からリリース。現在の導入社数は約200社だ。導入企業で多いのは、クルマや機械など単価が高い製品を扱う企業で、かつルート営業を行う企業なのだという。同社は今回調達した資金を利用して、フィールドセールスで必要となる入力作業をAIで自動化する機能などを開発する予定だ。

GoogleとSalesforceの提携、第一弾登場――顧客データの統合ツール各種発表

昨年秋のDreamforceカンファレンスでSalesforceとGoogleは提携を発表した。今日(米国時間1/17)、両社はこの提携の第一弾を公開した。手始めとして、Google Analytics 360のユーザーはSalesforceのCRM〔顧客関係管理〕ツールからリード、売り込みチャンスなどのデータをインポートできるようになる。

これにより企業のマーケティング部門は有望顧客の発見、コンタクトからセールスの実現までの顧客関係をAnalytics 360で簡単に展望し、管理できる。これは顧客関係における成功を助けるために大きな効果があるだろう。もちろんSalesforce自身はMarketing CloudにSalesforce WaveやEinstein Analyticsなど独自の分析ツールをを持っている。

しかし今回の提携で、Googleのアナリティクス・ツールを利用しているユーザーはSalesforceのアナリティクスのデータを統合して処理できる。多くのユーザーは複数のアナリティクス・ツールを併用しており、これがそもそも両社の提携をもたらした背景だった。つまり複数のアナリティクスを比較することでさらに広い視野から顧客関係を見渡すことができる。

両社は提携の効果をアップするために、SalesforceのデータをGoogleののデータ・ウェアハウス・サービス、BigQueryで利用するためのコネクター・ツールを提供する。ユーザーは顧客関係データをBigQueryにアップして他のエンタープライズ・データと比較することが可能になる。

最後にSalesforceとGoogleの広告システムを結びつけ、適切な広告を適時に表示してセールスの完結を助けるツールも発表された。Googleの公式ブログではこれをAdvertising Linkと呼んで紹介している。【略】

今回発表されたいくつかのサービスはGoogleとSalseforceの広汎な提携の第一弾であり、今年は両社のシステムをさらに密接に深いレベルで統合するプロダクトが各種続くものとみられる。これにはユーザーが販売する特定のプロダクト別のデータの統合、リードが実際の販売に結びつく可能性やトータルでの顧客価値を算定するツールが含まれるはずだ。

画像;Andy Ryan/Getty Images

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GoogleのG Suiteに貼りつくことで使いやすいCRMを実現するProsperWorksがシリーズCで$53Mを調達

G Suiteとの統合化など、Google製品を軸とするCRMツール集合ProsperWorksが、Norwest Venture Partners率いるシリーズCのラウンドにより、5300万ドルを調達した。このラウンドには、GV(元Google Ventures)も参加した。これで同社の総調達額は8700万ドルになり、ProsperWorks自身の言葉によると、ここ10年間のCRM企業の中では資金調達額が最大だそうだ。

ちょうど1年前にProsperWorksは2400万ドルのシリーズBを発表しているから、確かに投資家たちに人気のある企業だ。CEOのJon Leeによると、彼はProsperWorksをSalesforceにとって最強の挑戦者にしたい、という。彼はこう言っている: “われわれは、グローバルな生産性向上のために重大な意味のある大きな問題を解決している。CRMは1兆ドルあまりの売上実現に貢献し、アメリカのGDPの5.5%に寄与しており、CRM自身の市場は400億ドルに達する。しかしながら、Forresterによると、それを使おうとしない人が多いために、CRMの47%は業績が低迷している”。

ProsperWorksは長年、CRMのシステムを使いやすくして、そのサービスの採用企業が十分な価値を得られるようにすることを、ミッションとしている。GoogleのG Suiteとの深い統合によりGoogleのプロダクトみたいなルック&フィールにしてしまうのも、‘使いやすくする’の一環だ。またそうすることによってユーザーは、自分のさまざまなプロダクティビティアプリケーションとCRMとのあいだで、しょっちゅうコンテキストを切り替える面倒な手間からも解放される。

今度の新たな資金の充当先は、チームの人員を倍増して製品開発を加速し、またいくつかの特定業種向けの新たなソリューションでサービスを充実強化することだ。そのほかに、国際展開も考えている。

現在のユーザーに対していちばん重要と考えているのは、デザインの刷新だ。Leeは今日の発表声明でこう述べている: “Appleがモバイルに対してやったことを、われわれはCRMに対してやりたい。ユーザーインタフェイスを完全に新しくして直感性を高め、その意味や価値が即座にわかるようにしたい”。またCRMの標準的なワークフローのさらに多くを自動化し、そこから集めたユーザーデータを機械学習のアルゴリズムにフィードして、より使いやすいツールにしていきたい、ということだ。

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Salesforceの第二四半期決算報告を見ると年商100億ドルがいよいよ現実的に

今年早くからSalesforceは、同社の年商が100億ドルに達すると予想された。そしてどうやら、今後とくに問題なければ、実際に100億に達するようである。

Salesforceが今日(米国時間8/22)発表した第二四半期の決算報告によると、売上は25億6000万ドルで、EPSは33セントとなった。どちらも予想を上回ったが、株価は時間外取引でやや下げた。今年は一貫して、驚異的な上げ潮続きだったから、すこし引いたという感じだ。今年の1月以降これまでの上げ幅は36%近かったが、今日の決算報告後では約3%下がった。

Salesforceはこのまま行けば年商100億に乗りそうだが、人びとが注目しているのは年後半のDreamforceカンファレンスだ。そこでSalesforceはいくつかの新製品を発表するだろうし、同社のAIシステム“Einstein”に関する詳しい報告もあるだろう。Salesforceは、ネットを利用するCRMツールの元祖だが、最近ではもっと若くて小さい競合企業の成長が著しい。

そこで同社は、製品を現代化して今後も先頭を走り続けようとしている。その現代化には、企業がワークロードを機械学習を利用してダイエットしていくためのツールなどが含まれる。機械学習は今、エンタープライズソフトウェアの分野にも入り込みつつある。その方面ではSalesforceがとくに積極的で、これからはカスタマーサービスのツールを半日で作れる、とまで豪語している。SalesforceはCRMサービスのAI化を、今後も強力に推進していくつもりのようだ。

同社はデベロッパーが自分のアプリケーション開発のために利用するAIのAPI(EinsteinのAPI)を、すでに提供している。そこで今年の後半に関しては、ウォール街ですら、同社がそのサービスをAI利用でますます自動化していくこと、そしてそのための一連の新製品がカンファレンスで発表されることを、期待しているのだ。

そのウォール街の予想では、Salesforceの第二四半期のEPSは32セント、売上は25億1000ドルだった。

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現場主義SFA「Senses」運営のマツリカが総額1.3億円を資金調達、中規模企業向け新プランも提供開始へ

クラウド型営業支援ツール「Senses」を提供するマツリカは8月21日、第三者割当増資による総額約1億3000万円の資金調達実施を発表した。引受先はDraper Nexus Venturesアーキタイプベンチャーズニッセイ・キャピタルの3社。

Draper Nexus Venturesとアーキタイプベンチャーズは、2016年4月のシードラウンドでも約5000万円をマツリカに出資済み。今回の出資に伴い、Draper Nexus VenturesのManaging Directorで、セールスフォースベンチャーズの元日本投資責任者を務めていた倉林陽氏が社外取締役に就任する。倉林氏はテラスカイSansanなどへの投資実績も持つ人物だ。

現場営業の目線にこだわって作ったSFA「Senses」

マツリカは2015年4月の設立。共同代表を務める黒佐英司氏は「NewsPicks」でおなじみのユーザベースで、経済情報検索サービス「SPEEDA」の販促・保守、営業・マーケティング戦略の立案・執行を担当していた。もう1人の共同代表である飯作供史氏も、ユーザベースで技術統括執行役員としてプロダクト運営、製品開発に携わっていた。

黒佐氏は、マツリカで営業支援ツールを手がけることにしたきっかけについて、こう話す。「ユーザベースにいた当時、上場準備に伴って営業やマーケティングの人員が増える中、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)ツールを入れたいということで導入を検討したが、既存のツールではしっくり来なかった。何がかというと、現場にメリットがない点だ。管理者にとってはメリットがあるのだが、現場の営業担当にとっては『入力させられる』ツールになっている。BtoBツールとはいえ、実際に使うユーザーに価値が届いていないのは、もったいないなと感じていた」(黒佐氏)

そうして開発されたのが、クラウド型SFA/CRMツール、Sensesだ。案件や顧客の管理、レポーティング機能など、既存のSFA/CRMツールが持つ基本的な機能に加えて、「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」と黒佐氏は言う。「これまでのツールとの違いはまず、入力しやすく使いやすい、という点。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanとの連携機能があって、メールやカレンダーなどの情報を自動で取り込めるので、入力の手間を省き、簡単に情報をためることができる。UI/UXについても、3〜4クリックを費やしていたところを1〜2クリックで操作できるようにするなど、画面にとことんこだわった」(黒佐氏)

また「たまった情報を記録するだけでなく、活用できるようにした」点も、現場目線を重視した結果だと黒佐氏は続ける。「AIを使った情報解析で、担当者に次の行動を提案する機能を搭載した。過去の案件から似たような例で成功した行動をサジェストしてくれる」(黒佐氏)

Sensesは、2016年4月にサービスを公開し、2017年初からはより本格的にサービスを展開。現在、有料の基本プランとして「スタータープラン」を1ユーザーあたり月額5000円で提供し、利用企業数は100社に届く勢いだという。そしてマツリカでは今回の資金調達と同時に、中規模以上の企業を対象にしたアップグレードプランとして、「Growthプラン」の提供を発表している。

Growthプランでは、AIでのデータ解析機能を強化。現場担当者の次の行動をアシストするスタータープランの機能に加え、部門全体での売上や成約数などの目標達成に対するアラートを通知するなど、経営管理サイドのニーズにも応える機能を準備しているそうだ。また、営業担当が一定数以上となる中規模企業を想定し、営業組織の階層化にも対応する予定だという。

Growthプランは、まずは2017年内にベータ版として提供を開始。2018年には本格展開を行う予定だ。黒佐氏は「今後、スタータープランに代わる主力サービスに育てていきたい」と述べている。

「SMB向けのSFAとして競合と戦っていく」

今回の資金調達の目的について、黒佐氏は「まずは開発に投資する。現在開発中のGrowthプランを仕上げていくことと、既存ユーザーが増える中、新規機能だけでなく、サービスの安定運用に向けてもリソースを割いていく」と話している。また、営業、マーケティングの強化も図る考えだ。「2017年初のサービスの本格展開から半年以上を経て、販売のサイクルが整ってきた。どの程度マーケティングに(費用)投下すれば、どのぐらい成果が上がる、というのが見えてきたので、いよいよ拡販体制に入り、成長速度を上げていく」(黒佐氏)

なお、中規模企業向けとしてGrowthプランの提供を予定してはいるものの、黒佐氏は「今後の競合サービスとの戦い方としては『SMB(中小企業)向けのSFAならSenses』とまず思い浮かぶようなサービスにしたい」とも語っている。「今までならSFAといえばSalesforceしか選択肢がなく、小規模の企業では導入をためらっていたかもしれない。そこでSensesを第一の選択肢として考えてもらえるようにしたい」(黒佐氏)

また、中期的には「グローバル展開も考えている」と黒佐氏は言う。「SFAは国によって違うというところがあまりなく、ローカライズもそれほど要らないので、英語化して販売することも検討している」(黒佐氏)。さらに、営業支援ツールとしてのSensesを、人事や広報部門向けにチューニングすることで、新サービスラインアップとして提供する構想もあるという。社員や採用候補者、あるいはパブリックリレーションを図るメディアなどを、社内外の“顧客”と見立ててアプローチすることを考えれば、当然の発想かもしれない。「実際、Sensesの顧客の中に、既に人事・広報部門で利用しているケースがある。意図しない使い方を、ユーザーが見つけてくれている形だ。実はマツリカでも、新規営業開拓と既存顧客管理のほかに、採用や広報でSensesを使っている。自分たちでもナレッジをためたところで、プロダクトとして出したいと考えている」(黒佐氏)

Growbotsは機械学習でセールスを助ける――急成長して250万ドルを調達

Growbotsは機械学習を利用してリード情報を提供し企業のセールス部隊を助けるサービスだ。 このプロダクトはセールス・パーソンの作業を月に数日分節減できるという。今日(米国時間6/21)、GrwobotsはBuran VC、Lighter Capitalおよび何人かのエンジェル投資家から250万ドルの資金を 調達したことを発表した。これにより同社の資金調達総額は420万ドルとなった。

GrowbotsのCEO、共同ファウンダーのGreg Pietruszynskiはわれわれのインタビューに答えて「Growbotのサービスは企業のCRM〔顧客関係管理〕データを見て顧客情報を抽出し、セールス・ターゲットのリストを自動的に更新する。「GrowbotsのAIアルゴリズムはセールス・パーソン向けにカスタム連絡先リストを数分で作成する。また潜在顧客向けの各種キャンペーンを実施し、セールス・チームおよび個々のメンバーの活動を評価、管理する。セールス・メンバーはデータ処理作業をGrowbotsに任せて見込み顧客との対話に努力を集中できる」と述べた。

このサービスを提供するために同社では多数のソースから2億件に上る潜在顧客のデータを収集している。Growbotsの機械学習システムは毎日数百万のウェブサイトを巡回して企業や社員のデータを抽出する。Pietruszynskiによれば同社は見込み顧客のデータを購入することはしていないという。「われわれは情報源の選択にこの上なく注意を払っている。サードパーティーから既成の名簿を購入することはしていない。信頼性が低く、またデータが非常に古いからだ」と語った。

各社ごとに情報が整備された後もGrowbotsは引き続きアルゴリズムのアップデートを続ける。Growbotsを利用したセールス・キャンペーンの成果を分析し、そのデータをベースに次のキャンペーンを最適化する。Growbotsを1ヶ月利用すると、ポジティブな反応が平均40%増える。またCRMデータからキャンペーンの対象リストを作成するのに数日かかるのが普通だが、Growbotsを利用すればさらに質の高いリストを作るのにものの数分ですむという。

セールス・キャンペーンの自動化について、Growbotsはそれぞれの相手に合わせてカスタマイズしたセールスメールを自動的に作成するという(セールスパーソンはメールの文面を自分で作ることもできる)。Growbotsはセールスメールに対するフォローのメールも自動的に送信できるし、相手から反応があった場合、メッセージを出先に転送してくれる。

Growbotsは現在、前月比10%のペースで成長を続けている。Pietruszynskiによれば、プロダクトをリリースしてから16カ月で年間換算で400万ドルの売上を得たという。利用顧客は500社で大部分はアメリカ国内の企業だが、サービス自体は世界的に利用可能だという。現在の顧客にはBetterment、Relatable、Highfiveなどの企業が含まれる

Growbotsのオフィスはサンフランシスコとクリーブランドにあり、アメリカにおける社員は20人で、さらに26人の人員を募集中だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

2016年のSalesforceを振り返る

Marc Benioff, chairman and chief executive officer of Salesforce.com Inc., speaks during the DreamForce Conference in San Francisco, California, U.S., on Wednesday, Oct. 5, 2016. Salesforce isn't wasting any time putting its new acquisitions to use in a bid to strengthen its business software against larger rivals such as Microsoft Corp. New products unveiled Tuesday will blend the company's services with Quip, the document company Salesforce purchased in August for about $600 million. Photographer: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

Salesforceは、自分たちはマーケットの刺激剤であると考えることを好む。現状を打破し、既存のプレイヤーに冷や汗をかかせる存在だ。しかし、ビジネスのクラウド化が主流の動きとなり、Salesforce自身も100億ドルの収益目標の達成に動き出した今、創業から17年となるSalesforceの時代がいよいよ到来したのではないかと感じざるを得ない。

今年、Salesforceによる買収案件の数は過去最大級だった。捕らえた獲物もあれば、逃した獲物もあった ― 時には、Wall Street Journalによって買収ウィッシュリストがリークしてしまうこともあった。加えて、Salesforceは人工知能を同社のプロダクトに取り入れることで、テクノロジーの最先端にとどまり続けている。

今年はSalesforceにとって躍進の年であったが、彼らは今でも地域社会への奉仕活動を続けている。2015年にインディアナ州の反LGBTQ法案をくつがえした同社は、2016年にはジョージア州とノースカロライナ州で同様の活動を行う。加えて、「責任ある資本主義」を熱心に主張するCEOのMarc Benioffは今年、

Salesforceは、自分たちはマーケットの刺激剤であると考えることを好む。現状を打破し、既存のプレイヤーに冷や汗をかかせる存在だ。しかし、ビジネスのクラウド化が主流の動きとなり、Salesforce自身も100億ドルの収益目標の達成に動き出した今、創業から17年となるSalesforceの時代がいよいよ到来したのではないかと感じてしまう。

今年、Salesforceによる買収案件の数は過去最大級だった。捕らえた獲物もあれば、逃した獲物もあった ― 時には、Wall Street Journalによって買収ウィッシュリストがリークしてしまうこともあった。加えて、Salesforceは人工知能を同社のプロダクトに取り入れることで、テクノロジーの最先端にとどまり続けている。

今年はSalesforceにとって躍進の年であったが、彼らは今でも地域社会への奉仕活動を続けている。2015年にインディアナ州の反LGBTQ法案をくつがえした同社は、2016年にはジョージア州とノースカロライナ州で同様の活動を行う。加えて、「責任ある資本主義」を熱心に主張するCEOのMarc Benioffは今年、Tony Prophetを同社初の「Chief Equality Officer」に任命した。

すべてが上手くいったという訳ではないが、概していえば、今年はSalesforceにとって悪くない一年だったと言えるだろう。Salesforceの2016年を振り返ってみよう。

数字を見せろ

事業の集中化を目指すSalesforceであるが、その目標を達成できていないのではと考える人もいるだろう。同社の2017年Q2の業績はあまり良いものとは言えなかった。しかし、今年11月に発表された2017年Q3の業績は同社の力強い成長を表し、売上高も伸び続けている。CEOのMarc Benioffは、2018年には同社の売上高が100億ドルに達するだろうと話すだけでなく、「エンタープライズ向けのソフトウェアを開発する企業のなかでは、誰よりも早く」その数字を200億ドルまで伸ばすことができるだろうと語っている(だが、その具体的なタイムラインは示されていない)。

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2014年度の収益をもとにソフトウェア開発企業をランク付けしたPwC Global 100 Software Report(PDF)によれば、Salesforceの収益は世界第9位の規模だった。彼らが掲げる高遠な目標からも分かるように、同社はその成長スピードを落とすつもりはない。つまり私が言いたいのは、SaaSベンダーであるSalesforceが収益を伸ばし続けているという事実自体が、SaaSベンダーでも成功することが可能だということの証明になっている、ということなのだ。

買収ラッシュ

今年のSalesforceは財布の紐をゆるめた。買収価格が公開されている案件を合計すると、同社は少なくとも50億ドルの資金を費やして合計10件の企業買収を完了している。その1年前の2015年にSalesforceが買収した企業は5社で、2014年はたった1社だった。2015年に買収した5社のうち、2社の買収が12月に行なわれているという点には注目で、これが2016年の買収ラッシュを予見していたと言えるだろう。

企業は他社を買収することで優秀なエンジニアを確保できるだけでなく、プロダクトの機能の拡充、収益のさらなる拡大を狙うことができる(買収による収益の拡大はあらゆる企業が目指す目標であることは明らかだが、それはSalesforceにとって特に重要な意味をもつ)。Salesforceのプレジデント、そして副会長兼COOでもあるKeith Blockは今年9月、同社が企業を買収するときに重視する項目について話している

「買収する企業がもつ文化を見ます。その企業文化と当社の企業文化はマッチするか?当社のプロダクトを上手く補完できるか?優秀な人材を抱えているか?財政的なメリットはあるか?その企業を吸収することによって当社が抱えるリスクとはなにか?」とBlockは説明する。

今年4月、Salesforceは人工知能のMetaMindを3280万ドルで買収している。同社の買収案件としては比較的規模の小さなものだったが、彼らはこの買収によりMeta Mind CEOのRichard Socherを同社に引き入れることに成功した。彼はその後Salesforceのチーフサイエンティストに就任し、ディープラーニングと自然言語処理に関する豊富な知識を同社にもたらした。TechCrunchも後になって知ったのだが、Salesforceはその頃すでに人工知能プラットフォームの開発に着手しており、今年9月にそのプラットフォームの詳細を発表している(これについては後ほど詳しく紹介する)。

Salesforceにとって最大の買収案件となったのは、今年6月に28億ドルを費やして買収したDemandwareだ。SalesforceはDemandwareのテクノロジーを元に開発したCommerce Cloudを9月末に発表し、同社のプラットフォームに存在していた大きな穴を埋めることに成功した。

2016年にSalesforceが買収した企業のなかでも特に変わった存在といえば、同社が7月に7億5000万ドルを費やして手に入れた文章処理のQuipだろう。この買収は、バーティカル・マーケットに力を入れるというSalesforceの理念に反したものだとも考えられる。しかし、今年9月に行ったKeith Blockへのインタビューによれば、同社はQuipがもつポテンシャルを見出していた。「Quipは非常に魅力的な企業です。これを変わった買収だと考える人もいるかもしれませんが、これはユーザーのプロダクティビティを向上するというコンテキストのもとで実行されたものなのです」と彼は話している。

善良な市民

Salesforceは創業当初からコーポレートシチズンシップを追求してきた。同社はコミュニティへの奉仕を企業定款に書き記している ― コミュニティに資金やソフトウェアを寄付したり、従業員がコミュニティに対して金銭的、または時間的な奉仕をすることを奨励している。

Marc Benioff, chairman and chief executive officer of Salesforce.com Inc., left, speaks with Tony Prophet, vice president of Windows marketing at Microsoft Corp., during the DreamForce Conference in San Francisco, California, U.S., on Monday, Oct. 13, 2014. Salesforce.com Inc. is entering a new business, data analytics and business intelligence, seeking to maintain growth and persuade customers to pour more of their information into its data centers. Photographer: Noah Berger/Bloomberg via Getty Images

Salesforce会長兼CEOのMarc Benioff(左)と、Chief Equality OfficerのTony Prophet(右)

今年9月に開催され、10万人以上が参加したDreamforceカンファレンスでBenioffは、環境問題や不平等、そして教育問題などについて世界はいま歴史的な転換点にあり、企業の有力者がもつ能力によって社会的問題を解決することは、彼らが果たすべき義務であると語った。

「自分の能力は仕事のためだけに使うのだと主張してみずからを孤立させることも、人種的差別をしない人生を送るのだと主張することもできます。私は自分の世界観をもとに、みずからの能力を利用してより良い世界を創っていきます」

Benioffの言葉は空約束ではない。彼は社会的問題を解決を目指すという約束を実行している。2016年、BenioffはSalesforceがもつ経済的な影響力を利用してジョージア州とノースカロライナ州の反LGBTQ法案を否決させようと試みた。そのような差別的な法案を通すことがあれば、Salesforceはそれらの州におけるビジネスから撤退すると脅したのだ。

さらに今年、彼はTony ProphetをSalesforceのChief Equality Officerに任命している。これは、これまで多様性の欠如をたびたび指摘されてきたテック業界にとって前例のないレベルの進歩だといえる。この人事を発表するプレスリリースでSalesforceは、Prophetを「基本的人権と社会正義の擁護者」だと評している。

アインシュタインがSalesforceに加わる

Salesforceは、常に最先端のテクノロジーをプラットフォームに取り込む企業であると自負している。同社による今年最大の発表は人工知能に関するものだった。今年9月にSalesforceが発表した同社初の人工知能イニシアティブは、「Einstein」と名付けられている。Einsteinは1つのプロダクトではなく、Salesforceのプラットフォームに人工知能を導入するためのアプローチのようなものである。

長らくの間、CRMツールは営業員が顧客情報を記録するためのツールだった。AIとCRMの融合によってSalesforceが目指しているのは、営業員に情報を与えることで彼らを積極的にサポートするようなツールだ。つまり、CRM(を含むSalesforceプラットフォーム)自体が営業員に指示や提案を与えることで彼らをアシストするのである。どの企業へ営業をかけるべきか、そして、その前にどのニュースに目を通しておくべきかなどを教えてくれるのだ。

その試みはまだ始まったばかりだが、前述したようにSalesforceはMetaMindの買収によって優秀な人材を獲得し、すでに人工知能を活用したツールの構築を始めている。今後、人工知能こそがSalesforceのツールによって提供される価値の大部分を占める可能性もあるだろう(もちろん、AIに力を入れているのは他社も同様だということは述べておく必要がある)。

失敗

2016年におけるSalesforceの挑戦がすべて成功に終わった訳ではない。ソーシャル企業を買収するという彼らの試みは失敗しているのだ。その1つが、6月にMicrosoftが260億ドルという巨額資金を費やして買収したLinkedInだ。このソーシャル企業がもつデータには非常に大きなポテンシャルがあり、Salesforceのような企業にとってLinkedInはとても魅力的な買収案件だった。それに気がついたMicrosoftは、LinkedInをグループに迎え入れるために巨額の資金を喜んで支払った。そのデータをMicrosoftに供給し、Salesforceがそのデータにアクセスすることを防ぐことが目的だ。

260億ドルという巨額な資金はSalesforceが支払える許容範囲をゆうに超えた金額だった可能性が高いが、Benioffによれば、同社にはLinkedInに買収金額を提示するチャンスすらもなかったという。この市場の流れに乗り遅れるのを防ぐため、Salesforceは9月に他の企業の買収を試みる。LinkedInと同じくデータを豊富にもつソーシャル企業、Twitterだ。Twitte買収の噂が即座に広がる一方で、Salesforceのシェアホルダーたちは困惑していた。彼らは、TwitterのデータにSalesforceが感じていた程の価値を見出だせなかったのだ。

株価は下落し、取締役はその買収に難色を示しはじめた。Benioffは引き下がるしかなかった。彼はのちに、この買収が広範囲に報じられるきかっけとなった情報のリークには困惑させられたと語り、そのようなリークは過去に経験したことがないと話している。

しかしその後、Twitter買収の噂以上に大きなリークが発生することになる。10月19日、Wall Street JournalはSalesforceの取締役であるColin PowellのEメールから1つのプレゼンテーション資料を発見する。そのプレゼンテーションにはSalesforceが買収を狙う大小さまざまなSaaS企業の名前が書かれていたが、そこにはTwitterの名前は無かったのだ。おそらく、BenioffはTwitterを買収できる可能性は低いと見ていて、良いチャンスがあれば買収しようというくらいに考えていたのだろう。それも結局は上手くいかなかったのだが。

どんな企業でも、まったく失敗をせずに1年を終えることなど不可能だ。企業であれ人間であれ、成功する時もあれば失敗する時もある。達成できる目標もあれば、達成できずに終わる目標もある。しかし、そのような失敗と成功を平均してみれば、Salesforceにとっての2016年は良い1年だったと言えるだろう。彼らにとっての挑戦とは、2017年もその好調さを維持することなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

人工知能が企業のセールス業務に利用される例が増えている

Asian woman over microchip circuits

2016年は人工知能(AI)が非常に注目された年だった。人工知能の開発は何十年も前からはじまっていたが、パワフルなコンピューターを安価で利用できるようになったことと、アクセスできるデータの量が飛躍的に伸びたことで、今年になってやっと人工知能の時代が訪れたようだ。

AIによるビジネスの効率化が最初に始まったのは企業のセールス業務だった。毎日のように繰り返される営業ワークフローをAIによって効率化させようという試みだ。考えてみれば、企業の収入を直接的に左右するこの分野でAIの応用がはじまったのは、当然の成り行きだったと言えるだろう。AIがビジネスに与える影響を調査する、Constellation ResearchアナリストのAlan Lepofskyは、ベンダーたちがこの動向に注目しているのは確かだと話す。

彼によれば、人間は情報オーバーロードに苦しめられているという。私たちがより多くのデータを集めるにつれて、そのデータがもつ意味を理解するために私たちはコンピューターの処理能力に頼らざるを得なくなる。「AIが情報をフィルタリングしたり、タスクを自動化することで、その負担を軽減してくれることが期待されます」とLepofskyは話す。

AIはスタートアップ・コミュニティにも多大な影響を与えている。TechCrunchでも今週、AIによる営業アシスタントを開発するConversicaが3400万ドルを調達したことを報じたばかりだ。このAIアシスタントには自然言語処理(NLP)、推論エンジン、自然言語生成などの技術が使われている ― なかなか洗練されたテクノロジーだ。このAIが見込み客との初期コンタクトを自動化し、その後に人間の営業員に引き継ぐという仕組みだ。

一方、CRM業界のベテランが創業したTactは、営業員のスケジューリング管理などにAIを活用するスタートアップだ。同社もまた、今月初めに1500万ドルを調達したことを発表している。営業員が「CRMの奴隷」になってしまうことを防ぎ、AIを活用して彼らにロジカルで効率的な営業法を提供するというアイデアだ。

これらのスタートアップは、営業という分野のなかにある様々な側面をAIによって効率化させようとしている一方で、SalesforceOracleBaseなどといったCRM業界の巨人たちは単に顧客情報を記録するためのツールではなく、それに内蔵された「知性」によって営業活動を強化するというCRMツールを開発している。

従来型のCRMは顧客と営業員とのやり取りを記録するためのツールだったが、AIによってそれ以上のことが可能になったと話すのは、Bluewolfでカスタマー・エクスペリエンス部門のSVPを務めるVenessa Thompsonだ(BluewolfはSalesforceと提携するコンサルティング企業である)。

「AIはカスタマー・インタラクションがもつ力を引き出し、新たなデータが追加されるたびにツールはより賢くなります」と彼女は語る。

プラットフォームがもつ力を有効活用することで、営業員は顧客と接する時間を増やし、契約を獲得することだけに集中することができる。「営業員がどこに時間を費やすべきか、そして次に何をすべきかを予測するためには ― 彼らに適切なデータを、適切なときに与える必要があります。営業員はあらゆるソースからデータを取得する必要があり、彼らがそのデータを利用して意思決定をするためにはコグニティブなプラットフォームが必要なのです」と彼女は説明する。

AIをカスタマーサービスの分野に適用する企業も増えている。ボットを利用した初期コンタクトの自動化などがその例である。シンプルなタスクはボットにまかせ、より複雑なタスクは人間のオペレーターが対応するというアイデアだ。今週、SalesforceはLiveMessageをリリースした。これは、同社のService Cloudプラットフォームにメッセージング・アプリを組み込み、人間のオペレーターとボットの力を組み合わせるためのツールだ。

AIを営業やカスタマーサービス分野に適用する動きは、AIによるビジネス効率化の初期事例にすぎないだろう。コンピューターによって従業員の能力を拡張することが主流になりつつある今、今後数年間のうちにAIがさまざまなビジネス分野に適用される事例が増えていくことだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

POSソリューションのWyndが3170万ドルを調達

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フランスのスタートアップWyndが、シリーズBラウンド(3000万ユーロ)で3170万ドルを調達した。ラウンドはSodexo VenturesOrange Digital Venturesの主導で行われ、Bpifranceも参加した。Orange Digital Venturesは既にシリーズAラウンドでも、Alven Capitalと共に投資している。Wyndはレストランや店舗で使われている既存のPOSサービスを、彼らのSaaSソリューションで置き換えることを狙っている。

Wyndが狙っているのは個々のレストランではない。その代わりに、このスタートアップは大きなレストランチェーンに注力し、彼らの全てのPOSをWyndのものへ置き換えようとしている。現在の大きなユーザーとしては、カルフール、Galeries Lafayette、Quick、Sodexo、Eiffage、Total、Monceau Fleursなどが挙げられる。

ソリューションは、僅かな調整で動かせることを想定している。Wyndは通常のPOSが必要とするタスクの一部またはすべてを管理することのできる、モジュラーサービスだ。とても基本的なものから始めることが可能で、組み合わせることで必要な情報を得ることができる。

例えば、店舗とウェブサイトの両方にWyndをセットアップすることができる。こうすれば、Wyndは両方のプラットフォームの在庫を統一し、全てのチャネルからの注文を受け付けることができる。サービスはまた、顧客のために電子財布を設定することができる。クーポンを提供し、キャッシュバックを行い、残金を管理するチェーンストアの様子を想像することができるだろう。

Wyndのサービスは、CRMサービスとも統合される。例えば、顧客が支払いを行う際に顧客のプロファイルを見ることができるので、定期的にやって来る顧客かどうかを知ることができる。Wyndに対して既存のCRMサービスから更にデータを追加して入力したり、Wynd自身をメインのCRMとして設定することも可能だ。

同社によれば、多くのクライアントが、つま先を浸すように軽いセットアップから始めるそうだ。その後、彼らはより多くのモジュールを追加して行く。セットアップに応じて、POS1台当たり月額30ユーロから300ユーロが請求される。

Wyndは支払いを直接扱わない。同社は、既に多くの支払いサービスプロバイダが存在することを受けて、POSのみに集中することを選択した。

そして、あなたはPOSを携帯電話、タブレット、その他の多くのデバイスから管理できる。これらの機能はすべて当たり前のように聞こえるかもしれないが、しばらく前は多くの企業が、OracleやSAPによってデザインされたソリューションに依存していたのだ。全体として、Wyndは5000のPOSを管理している。

今日の資金調達ラウンドでは、会社は雇用と国際的な拡大を計画している。まず同社はオフィス英国とドバイに開く。既にそれらの国で何件かのクライアントを持っているからだ。この先更なる国際的な展開もあるだろう。

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(翻訳:Sako)

自動車修理店自身が、ユニークで使いやすいショップ運営ソフトを作り上げた


ハイブリッドカーへの注力で知られるサンフランシスコのLuscious Garageは、その真の特徴を隠している、それは人びとへの注力だ。創業者のCarolyn Coquilletteは2007年にサンフランシスコにオートショップを開店した、そして上のビデオからも分かるように、室内装飾からそれが占める空間に至るまでが、メカニックの現場に期待されるものとは大きく異なっている。そしてそれは店舗を運営するソフトウェアにも及んでいて、Coquilletteが訪問中に紹介してくれた。

Coquilletteにとって、オートショップの空間配置や対人関係といった部分を変えるだけでは十分ではなかった;サービスを追跡し、在庫を管理し、顧客とコミュニケーションする部分も大規模なオーバーホールを必要としていたのだ。典型的なショップバックエンドソフトウェアは、本質的に石器時代の遺物である、特に顧客がスマートフォンの上に持っている平均的なソフトウェアに比べればその差は大きい。

Coquilletteは改善の必要性を、Luscious Garageにとってだけの機会と捉えず、仕事を管理し、在庫を扱い、顧客が容易に理解できる方法で伝達を行うことのできる優れたソリューションを探している、他のオートショップにとっての機会でもあると捉えたのだ。当初構築したカスタムショップ管理プラットフォーム「Hyspace」を手本に、Coquilletteはそのシステムを、更に成熟した、それ自身独立して似たようなバックエンドの近代化に挑んでいる他の店舗でも使えるようなものへの転換を図った。

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リード開発者Tyler Olmsteadを擁するチームと共に、Hyspaceは2013年に全く新しいコードベースを使って書き換えが始まり2014年にはMVP(minimum viable product:必要最小限の機能を持った製品)が発表された;Shop-Wareは2015年1月にフル機能搭載のショップ管理プラットフォームとして正式デビューを果たした。

そのウェブベースのインターフェイスは、さまざまなプラットフォーム上で使用するためのナビゲートしやすく、視覚的に魅力的で、動的なもので、スタッフに向けた在庫やワークフロー管理と同様に、顧客向けの作業承認と作業履歴のコミュニケーション、そして統合された帳簿管理のためにQuickBooksとの統合も果たしている。Coquilletteは私に、車に必要なサービスが何か、それが何故必要なのかを顧客に対して明らかにする過程で、システムがコミュニケーションという観点から正確に何ができるのかを示した ‐ Shop-Wareは、そのわかりやすい報告機能のお陰で、間違いなく消費者とサービス提供者の間のより強い長期に渡る信頼関係を構築する手助けをしてくれるものだ。

顧客にとって、カーショップに対する指示は困難に思える仕事である、特に顧客が技術的な専門知識を持っていない場合には。Shop-Wareによって、Coquilletteはその過程をはるかに簡単なものにした。一方スタッフメンバー同士のコミュニケーションや、一般的な作業もはるかに容易になっている。Slak同様に、このShop-Wareは、自身のビジネスの追求のためににテクノロジーツールを構築する際に「自らの手で作り上げる」アプローチが、最後には他の多くの人も使うようになる何かを生み出すことを示す、良い例である。

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(翻訳:Sako)

Twitterを利用した顧客対応の有用性調査

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商品利用者などの顧客が不満をツイートした際、それに対応することで事態を沈静化することができると、以前からよく言われている。果たしてそれは本当に効果があり、コスト的に見合うものなのかどうか。

Twitter自らが、その効果について調査を行った。Applied Marketing Scienceとの協力で行ったものだ。この調査によれば、顧客がクレームをツイートした場合に企業からレスポンスがあると、当該企業からの購入額が平均して3%ないし20%向上するのだとのこと。さらに44%が自らの体験をツイートして、30%が他の人にもプロダクトをすすめるようになるそうだ。

また、返信ははやいほど有効でもあるらしい。こうした対話を行う意図がある場合、ネガティブなツイートも悪いことばかりではないようだと結論されている。不満をツイートしながらも企業側から返信を受け取ったひとの60%は、企業に対して良い印象を持つようになったのだそうだ。

TwitterのブログにてWayne Huangが次のように記している。

カスタマーサービスの質を向上させることで、ブランドロイヤルティを向上させることができることは誰もが知るところです。今回行った調査は、対話から生まれるさまざまなメリットを明らかにするものです。さらに、対話を通じたカスタマーサービスは、他の手段にくらべて安価に行うことができます。McKinsey & Companyによればコールセンター設置の6分の1のコストで顧客サービスが行えるようになるとしています。顧客対応がさらなる購買につながり、好感度や満足度もあがり、他の人に推奨してくれるようにもなるのです。Twitter上でのコミュニケーション重視策は、まさに企業の利益に直結するものであると言えるでしょう。

こうした調査はさまざまな業種について行われており、昨年は航空業界についてレポートを発表している。今回の調査は、企業との対話にTwitterを用いた人と、他の既存チャネルを用いた人、そして何のコミュニケーションも行わなかった人の合計で3,139名を対象に行ったものだ。

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(翻訳:Maeda, H