ドイツでは精細なCTスキャンで古楽器の秘密が探られている

読者がどれほどバロック音楽に傾倒しているのかは分からないが、ドイツ人たちは確かにそうだと言うことができる。よって、ドイツのR&D組織であるフラウンホーファーが、バッハやヘンデルたちが作曲に使った楽器を、隅々まで調べ上げ、完全に保存するために、相当のリソースを使ってきたことは驚くようなことではない。具体的には、それらを巨大なX線装置の中に置いて精査しているのだ

木管楽器からピアノまで数千もの楽器があるものの、それらの多くは分解するには貴重すぎ、展示するには脆すぎるものだ。

音楽の歴史がこれほどまでに豊かな国にとって、バロックのような重要な時期の工芸品たちが、死蔵されたままになることはとても残念なことだ。それは、収蔵品を展示するための限られたスペースしか持たない他の博物館たちと同様の悩みである。ならば、それらをデジタル化して見せればいいのではないだろうか?

こうした歴史的楽器を研究したり、おそらくは複製するために、研究者たちは「楽器向けコンピューター断層撮影検査標準」(MUSICES)を策定した。

始まって2年になるこのプロジェクトは、フラウンホーファーX線技術開発センター(EZRT:Fraunhofer’s Development Center for X-ray Technology)の中で、これまでに100以上の楽器をスキャンしている。彼らはこれまでにその大型装置を使ってあらゆる興味深いものをスキャンしてきたが、この楽器プロジェクトはとりわけ文化的な関連性が高いものだ。

XXL X線環境(と彼らが呼んでいる)は「8メートルの高さの鉄製の足場2つと、直径3メートルのターンテーブルで構成され、400平方メートルのエリアを占め、14メートルの高さを持つ」。うむ。確かにそれはXXLだ。

内部の空間は、グランドピアノを安全にスキャンできるくらい十分な大きさのものだ(右図。なおトップの画像はボックスバルブトランペットだ)。

しかし、これは物品の目録を作ることだけが目的ではない。研究者たちは作業の過程で多くを学んでいる。どの素材には、どの設定が最適なのか?どれ位の解像度があれば複製には十分なのか?配布されるモデルと画像はどのようなフォーマットにすべきか?どれ位の時間がかかるのだろうか?(最後の質問への答:かなり長い。50ミクロンの解像度でバイオリンをスキャンするためには20時間かかる)。

「理想的には、博物館の歴史的楽器の全コレクションをデジタル化して、3D画像をオンラインに置くことができるようにしたいと考えています。私たちの撮影検査標準は、このタスクを行うための最適な手法を定義したものです」。と説明するのはフラウンホーファーのプロジェクトリーダーTheobald Fuchsだ(デジタル化というのは彼の言葉である)。「CTデジタル化プロジェクトは、インターネットにアクセスできる人なら誰でも利用できるバーチャルミュージアムの中に、これらの楽器をデジタルで複製することを可能にします」。

チームは研究結果の少なくとも一部を、来年の初めには発表する予定だ。そうすることで、彼らが説明する推奨手法やパラメータが、大型X線装置を持つ第3者たちから利用できるようになるだろう。

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(翻訳:Sako)

大学と博物館が協力して「脊椎動物全スキャン」プロジェクトを開始

科学的探求の世界でも、フィーチャークリープ(製品などにどんどん機能を付け加えて複雑化すること)の罠にはまることは避けられないようだ、あるいは全ての魚をスキャンするという試みが、全ての脊椎動物に拡大されるこのケースは、クリーチャークリープとでも呼ぶべきだろうか。数十の教育学習機関が、2万匹以上の動物から詳細な3Dスキャンを作成するために、リソースを確保している。

この事業の始まりは、ワシントン大学の生物学者Adam Summersが、海のすべての魚をスキャンする探求を始めた20年前に遡ると言えるだろう。その当時は常軌を逸していると考えられたプロジェクトは、今では本質を付いているとしか言いようがない。科学データをデジタル化して共有する新しい手法はどこにでも芽吹いているし、Summersの先駆的研究は他の専門家たちに同様の試みを促して来た。

フロリダ自然史博物館のDavid Blackburnは、Summersのコレクションを補完するために、彼の専門分野であるカエルを全てスキャンする、という試みを決意した。しかし、他の人びとも同様のやり方で寄与したいと考えていることが明らかになったため、 彼らはきちんと資金を得て全てをスキャンすることを決意した 。ともあれすべての脊椎動物が対象だ — もしあらゆる節足動物や、刺胞動物などまでスキャンしようと思ったら作業量は1桁(あるいは2桁)多いものになるだろう。

カエルをスキャンするBlackburn(左)と共同主任研究員のEd Stanley

結果として立ち上がったプロジェクトはopenVertebrate(略してoVert)という名前だ。国立科学財団(NSF)から250万ドルの補助金を受けている。最新のスキャニング、配信、再現技術を利用して、その情報を最大限、包括的かつアクセス可能なものにしようとしている。蛇の肋骨の微小骨折の証拠を調べたい爬虫両生類学者が居る?ここを見に来れば良い。恐竜のサイズでトカゲの頭蓋骨を3Dプリントしたい10歳児も居る?よし頑張れ。

プロジェクトのゴールは、脊椎動物のほんの一部にすぎない2万体のスキャンを達成することだが、それらは慎重に選ばれ、すべての属の80%がカバーされる。ということで複数のロビン(ツグミ属に所属)が入ることはないが、複数の鳴き鳥(スズメ目に所属。属は目の下位分類)は入ることになる。

チーム、いや、むしろサイエンスアライアンス(この用語は今作ったもの)は、様々なアーカイブに保存された標本をスキャンするために、さまざまなツールを使用している。その中でも中心的に用いられているのは、X線を使用して詳細な内部イメージを生成するCTマシンだ。これはSummersがずっと利用してきたものだが、異なるマシンには異なる適用対象がある。

テキサスA&M大のものは、最大6フィートまでスキャンすることができるほどに大きなものであるのに対し、Summersの使うマイクロCTスキャナーは小さな標本の詳細部分を捉えることができる。たとえば、以下の画像では、人間の親指大のカエルが、アリを1匹食べていることがわかる。

さらに以下の凄い写真を見て欲しい、例えばこの大食らいのブタハナヘビはどうだろう。サンショウウオ(消化中)とカエル(嚥下中)を食べたところだ。

いくつかの選ばれた種では、柔組織のコントラストを見るために、臓器の構造、血管並びに他のシステムを見えるようにする。その結果は以下に示した通りだ。

このカエルのスキャンは、その骨格、筋肉構造、更にはそこに潜む寄生虫さえも明らかにしている。

提供されるのは静止画だけではない。操作、ダウンロード、そして(蛇がどのような種類のカエルを食べたかを把握したい場合などに)分離が可能な詳細な3Dモデルなのだ。

現存の全てのカエルの各科のCTスキャンデータを、オンラインで公開しました。

それらは、デューク大学が提供する3DデータのリポジトリであるMorphoSourceにアップロードされる。アカウント登録の必要があるが、モデルは自由にアクセスできる。ここではカエルの巨大なコレクションを見ることができる (もしこのポストが少々両生類推しのように見たらなら、抗議はBlackburnの方へお願いしたい)。

データは、一度適切にタグ付けされクリーンアップされてしまえば、教師や生徒たちにとって、あるいはホッキョククジラの内側を見たいと思っていたのにチャンスがなかった好奇心のある人にとって、非常に貴重なものとなる。

「これは、博物館にとって、コレクションにアクセスする見学者たちに大きくリーチできるという意味で、ユニークな機会です。私たちは、oVertは脊椎動物学に関連する研究と教育のための変革的なプロジェクトであると信じています」 とBlackburnはワシントン大学に対して語っている

プロジェクトが完了する時期については特に述べられていない。ただ9月1日に正式に始まるということが決まっているだけだ。しかし、NSFの資金援助を受けているからには、誰もが自分の仕事が連邦レベルでサポートされていることを意識しながら働いているはずだ。そしてプロジェクトが進めばさらに多額の資金が出てくることになるだろう。

最後に。より詳しい情報を知りたい人たちのために、パートナーの完全なリストを示しておこう:

フロリダ大学、ドレクセル大学自然科学アカデミー、カリフォルニア科学アカデミー、コーネル大学、自然史博物館、ハーバード大学、ルイジアナ州立大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリプス海洋学研究所、テキサスA&M大学、カリフォルニア大学バークレー校、カンザス大学、ミシガン大学、テキサス大学オースチン校、ワシントン大学、バージニア海洋科学研究所、そしてイェール大学。

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(翻訳:Sako)