CTO of the year 2019はLegalForce時武氏に決定

11月22日、東京・目黒の「AWS Loft Tokyo」で開催されたTechCrunch Tokyo 2019の関連イベント「TechCrunch Tokyo CTO Night 2019」は、パネルディスカッションと気鋭のスタートアップのCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテストで構成される、CTOの祭典だ。

2014年から開催されてきたCTO NightとCTO of the yearを振り返るパネルディスカッションの後、ピッチコンテストでは、6名の審査員により、技術によるビジネスの貢献度について、独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象として審査が行われた。今年のコンテストには8社のCTOが登壇し、CTO of the yearにはLegalForce CTOの時武佑太氏が選ばれた。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー取締役上級執行役員/CTO)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
竹内 真氏(ビズリーチ取締役/CTO/CPO)
藤倉成太氏(Sansan執行役員/CTO)
名村卓氏(メルカリ執行役員/CTO)
塚田 朗氏(AWSシニア ソリューションアーキテクト)

■モデレータ
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

時武氏は、LegalForceの提供する契約書レビュー支援サービス開発にあたって、エンジニアと弁護士とのギャップを、共通言語の定義や法務メンバーを開発に取り込む組織改革、AIシステム開発で弁護士向けDSLの導入で乗り越えたことをプレゼンし、見事に受賞。受賞の感想を「うれしいです。これから解決すべき課題はいっぱいあるので、これからの糧にしたい」と述べていた。

審査委員長の藤本氏は「毎年テクノロジーのスタックが広がっているのは面白い」と述べ、「受賞者はもちろん、どの会社もテクノロジーを地に足を付けてビジネスとして使われている」と評価。「また今後5年後振り返って、どの会社もすごくなっていればすごく面白い。そういう未来に向けてがんばっていってほしい」と総評した。

登壇8社CTOのプロフィール(登壇順)

RevComm CTO・平村健勝氏

2011年に東京工業大学大学院修了後、アクセンチュア入社。マネージャーとして通信業界を中心にCRM導入やデータサイエンス部門の立ち上げに従事。2018年6月よりRevCommに創業メンバーとして参画し、AI搭載型IP電話「MiiTel」のR&D及び製品開発を指揮。クラウドサービスの設計、システムアーキテクチャの設計から、音声認識エンジン、自然言語処理、ウェブアプリケーション開発まで幅広く手がける。AWS Summit Tokyo 2019で開催されたStartup Architecture Of The Year 2019にて、『ソリューションアーキテクト賞』を受賞。またTechCrunch Tokyo 2019 Startup Battleでは最優秀賞を受賞している。

関連記事:B Dash Camp 2019 SpringのPitch Arena優勝はAI搭載型クラウドIP電話サービスのRevcomm

ウミトロンCTO:岡本拓磨氏

新卒でグリーに入社。ソーシャルゲームプラットフォームのバックエンドの開発に従事。その後、メタップスにてモバイルアプリマーケティングサービスのバックエンドとネイティブアプリSDKの開発や、新規事業としてウェブサービスやネイティブアプリの立ち上げを行う。2016年にウミトロンを共同創業。

関連記事:海上で魚の食欲を即時判定して給餌を完全自動化、ウミトロンが魚群食欲解析システムを開発

タイミーCTO・阿部勇一郎氏

2017年に神奈川工科大学情報学部を卒業。翌年に同大学院工学研究科にてAI×IoT×ロジスティクスに関する研究を行う。2018年3月にタイミー代表の小川氏との出会いをきっかけにタイミーの立ち上げに携わることを決意する。その後、同年3月に大学院を中退し、CTOとしてジョイン。主にiOSアプリの開発とプロダクトマネジメントを行う。現在では、組織マネジメントや採用活動を行いつつ、引き続きアプリ開発やメンバーの支援を行っている。

関連記事:スキマ時間シェアのタイミーが20億円調達、22歳学生起業家が1年2カ月で

YPER CTO:島添彰氏

大阪府立大学修了後、サントリーシステムテクノロジーに入社。自動販売機の配送管理、販売管理システムの開発・運用・導入を広く担当。同社にて自動販売機の新しいカタチのビジネスモデル提案。2017年8月にYper(イーパー)を創業。同社CTOに就任。日本の宅配の再配達問題を解決するプロダクトOKIPPAの立ち上げを実施。現在もプロダクトのグロースを担当。東洋経済社のすごいベンチャー100、Forbes 30 Under 30 Asia 2019に選出。

関連記事:置き配は再配達率を減らす救世主になるか、置き配バッグ「OKIPPA」が3.5億円調達

NearMe CTO・細田謙二氏

東京大学大学院工学系研究科・工学博士。大学では脳の視覚情報処理を研究。卒業後、エスキュービズムに入社。チーフエンジニアとして解析エンジン、ウェブサービス、タブレットアプリなどさまざまなプロダクトを開発。技術本の執筆や特許取得なども行う。エスキュービズム・テクノロジーCTOを経て、NearMeに参画。

関連記事:都内と成田を結ぶNearMeの定額4000円シャトルが品川や目黒、池袋でも利用可能に

GINKAN CTO・三田大志氏

ウースター工科大学工学部電子工学科卒業、大学時代は災害救助ロボットを企画・開発。大学卒業後はスマートフォン向けアプリの開発会社に就職。2014年に起業し、フリーランスとしてさまざまなプロジェクトに携わる。2015年にGINKAN(ギンカン)を共同創業し、CTOに就任。Android、iOSアプリ開発50本以上の開発経験を持ち、最近ではブロックチェーン、スマートコントラクトの開発、R&Dも精力的に取り組んでいる。

関連記事:トークンエコノミー×グルメSNS「シンクロライフ」、トークンへの転換権を付与したスキームで資金調達

オクト取締役CTO・金近望氏

1983年生まれ。神奈川県出身。東京工業大学理学部情報科学科を卒業。2009年よりベンチャー企業にて事業立ち上げに参加し、2012年CEOである稲田氏とともにオクトを設立。創業当初はANDPADの前身となるサービスである「みんなのリフォーム」や「ReformPad」をローンチ、2014年に施工管理アプリ「&ANDPAD」をリリース開発・運営。

関連記事:建設プロジェクト管理アプリ「ANDPAD」開発のオクトが14億円を調達

LegalForce CTO・時武佑太氏

東京大学大学院 情報理工学系研究科創造情報学(修士)修了。ソフトウェア工学に関する研究を行う傍らウェブサービス開発に携わる。2016年4月にディー・エヌ・エー入社。ヘルスケア事業でアプリエンジニアとして従事。 Android, iOSアプリ開発からサーバーサイド開発やデータベースのパフォーマンス調整まで幅広く担当。2017年9月、LegalForceに参画し現職。

関連記事:AIが瞬時に契約書の内容をレビューする「LegalForce」が正式ローンチ

【11月22日開催】TechCrunch Tokyo CTO Nightの参加者を募集中

TechCrunch Japanでは、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2019」の関連イベントとして「TechCrunch Tokyo CTO Night 2019」を11月22日に開催する。場所は昨年と同様で、東京・目黒駅前にあるAWSのコワーキングスペース「AWS Loft Tokyo」だ。

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CTO Nightは、パネルディスカッションと新進気鋭のスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテストで構成されるイベント。ピッチコンテストは、以下の審査員が技術によるビジネスの貢献度について、独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象として審査し、最も輝いた人物を「CTO of the year」(最優秀CTO)として表彰する。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー取締役上級執行役員/CTO)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
竹内 真氏(ビズリーチ取締役/CTO/CPO)
藤倉成太氏(Sansan執行役員/CTO)
名村卓氏(メルカリ執行役員/CTO)
塚田 朗氏(AWSシニア ソリューションアーキテクト)

■モデレータ
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

TechCrunch Tokyo CTO Night 2019の概要は以下のとおり。なお、このイベントに参加できるのは、CTOもしくは、VPoEやVPoPなどCTOに準じるポジションの開発者だ。申し込みは抽選となるので、まずはイベントページで仮登録を済ませてほしい。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2019
【日時】11月22日(金)17:30〜20:30(17:00開場)
【会場】AWS Loft Tokyo(東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア内)
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】TechCrunch Tokyo CTO Night 2019実行委員会による
【参加資格】CTOもしくは、CTOに準じるポジション
【参加費用】無料
【主催】TechCrunch Japan
【企画・運営協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【問い合わせ先】TechCrunch Tokyo CTO Night 2019実行委員会(tips@techcrunch.jp)

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2019年に最も輝いたCTOを選出、TechCrunch Japan CTO Nightが11月22日に開催決定

スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」の関連イベントとして「TechCrunch Japan CTO Night 2019」の開催が決定した。11月14日、15日に行われるTechCrunch Tokyo 2019とは今年も分離し、11月22日にアマゾン ウェブ サービス ジャパンが東京・目黒駅前に構えるコワーキングスペース「AWS Loft Tokyo」が決戦の舞台となる。

2018年のCTO of the yearはatama plusの川原尊徳CTOが受賞

CTO Nightとは、新進気鋭のスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテスト。技術によるビジネスの貢献度について、独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象としてCTO of the year(最優秀CTO)を選出する。今年は以下の6名が審査員を務める。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー取締役上級執行役員/CTO)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
竹内 真氏(ビズリーチ取締役/CTO/CPO)
藤倉成太氏(Sansan執行役員/CTO)
名村卓氏(メルカリ執行役員/CTO)
塚田 朗氏(AWSシニア ソリューションアーキテクト)

■モデレータ
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

TechCrunch Japan CTO Night 2019の概要は以下のとおり。ピッチコンテストへの応募方法や観覧チケット(無料)の入手方法などは追って紹介するので、まずは11月22日夜の予定を空けておいてほしい。

CTO of the year 2018
【日時】11月22日(水)17:30〜20:30(17:00開場)
【会場】AWS Loft Tokyo(東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア内)
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】TechCrunch Japan CTO Night 2019実行委員会による
【主催】TechCrunch Japan
【運営パートナー】イベントレジスト
【企画、運営協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン

CTO of the year 2018にはatama plus川原氏を選出

11月21日、東京・目黒にあるAWS Loft Tokyoにて、2018年に最も輝いたスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)を決める「CTO of the year 2018」が開催された。CTO of the year 2018は例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に「CTO Night」として開催されてきたイベントだが、今年は場所日程を変えての開催となった。

AWS Loft Tokyoは10月1日にオープンしたばかりのAWS運営のコワーキングスペース。AWSを利用している企業であれば10:00〜18:00の間、誰でも自由に利用できる。AWSの専門スタッフが常住しており、その場でサポートが受けられるのも特徴だ。

CTO of the year 2018は歴代優勝者を含む以下のメンバーで審査され、最終的にatama plusの川原尊徳氏を選出した。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー 取締役上級執行役員/最高技術責任者)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト)
吉田博英(TechCrunch Japan編集統括)

■特別審査員
竹内秀行氏(2014年CTO of the year、ユーザベース チーフテクノロジスト、UB Venturesテクノロジーパートナー)
安川健太氏(2015年CTO of the year、ソラコムCTO/Co-founder)
橋立友宏氏(2016年CTO of the year、Repro CTO)
大竹雅登氏(2017年CTO of the year、dely CTO/執行役員)

■atama plus/川原尊徳氏

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Lean AI開発により、3ヶ月でプロダクトマーケットフィット
1年で大手塾の2割に導入するまで至った話

atama plusは2017年4月創業。創業9カ月目で5億円の調達に成功している。事業内容は、AIを活用して中高生の学びを個別にカスタマイズしたタブレットアプリを提供している。このシステムは全国の学習塾や予備校に導入されているとのこと。川原氏は新卒でマイクロソフトに入社して11年勤務したあと、atama plusを共同創業したCTOだ。

学習塾や予備校は、夏期講習でどれだけ人を集められるかが非常に重要で、4月創業の同社は、その年の夏期講習が始まる7月までにアルゴリズムを完成させる必要があったとのこと。そのため、Lean UX/Lean AI開発という手法を採用したそうだ。

そのうえで、アーキテクチャーの開発には、ブラックボックスの少ない「多数の小さなアルゴリズム」を利用することに決定。規模が小さいのでアルゴリズムへの修正が容易なのが特徴だ。アルゴリズムに問題データや正誤情報、所要時間などのデータを入力することで、習熟度の推定や単元間の関連性、学習優先度などを判断して、生徒それぞれが学習すべき教材を判断する。

また「ルールベースアルゴリズムとの共存」も開発の秘訣だったという。多次元のデータを扱えるモデルベースを重視するとルールベースアルゴリズムは排除されがちだが、ルールベースアルゴリズムは変更が容易という利点がある。これら2つのアルゴリズムをいいとこどりにより、ある単元を学習するためにどの単元を次元に理解しているべきかの依存度がわかる「依存関係グラフ」が完成したという。

同社は創業4カ月目から収益化を果たし、10カ月目で2週間講習受講者のセンター試験の得点が50%アップ。そして創業1年を迎えたころには、大手塾の2割にatama plusのシステムが導入されているそうだ。

■FACTBASE/前田 翼氏

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組織の外側にHRアーキテクチャを築く

FACTBASEは仮想通貨投資家向けのサービスを展開している会社。プレゼンでは、社内外のHRアーキテクチャを構築した話が中心となった。

前田氏はFACTBASEのCTOとして「2018年12月31日までに日本一仮説検証の早い開発チームを作る」というミッションをCEOと握って、アプリ開発をスタート。とはいえ、2018年前半は技術スタックのない状態だったという。その後、副業として携わったエンジニアの尽力で5月中旬にクローズド版のリリースに漕ぎ着ける。しかし、この副業エンジニアが二人とも卒業したことで問題が発生。この2人が中心となって開発していたことで、社内にノウハウがたまっていなかったそうだ。

とはいえ、フルタイムの人材を採用するコストや人材を教育する社内リソースがなかったとのこと。そこで考えたのが、社内開発とは直接関係な分野で同じ目標を達成する仲間を集め、勉強会の開催や書籍の出版などを実施。具体的にはReact Native OSSのコミュニティーを立ち上げ、ベアプロについては累計30回を以上を実施したという(React Nativeは、Facebookが開発したJavaScriptのフレームワーク)。

この結果、14人のエンジニアとの関係が深まり、14人の技術メンターがいる状況になった。その後、インターン1名とフルコミットメントするエンジニアが1名参加して開発が急激に加速したそうだ。社内リソースと予算が限られている中、社外のエンジニアとの深い関係構築によって開発の質とスピードがアップしたとのことだった。

■GVA TECH/本田勝寛氏DSC07799

リーガルテックへ凸って見えた楽しい踊り方
GVA TECHは2017年1月に創業、本田氏はGVA TECHにはCEOを除く1人目の社員として2017年9月に参加。同社はクラウドとAIを活用した契約リスク判定サービス「AI-CONレビュー」を提供している。

本田氏は入社後まず、内製化によってプロダクト化を進めたとのこと。入社前、AI-CONレビューなどはオフショア開発、つまり外注で開発していたそうだ。しかし、数多くの人が開発に参加していたこともあり、ファイルの差分やバグも多くコントロールも難しかったことから関係を断ち切って完全内製化の道を選んだという。

内製化にあたって、セキュリティ、スピード、イノベーション、面を取りに行く選択、という4つの柱で開発を進めたそうだ。ちなみにセキュリティについては、AWS Well-Architectedフレームワークを活用。開発スピードについては、さまざまな手法やツールを積極的に取り入れたという。

そのほか、コミュニティへの情報提供も積極的に進めたそうだ。そのうえで本田氏はチームビルディングに徹し、別にCPOに権限を移譲して開発スピードをアップさせたとのこと。本田氏はCTOとして、「TeamUp」ツールを利用して1 on 1時の内容をログ化して成長の促進を図ったり、「wevox」で開発組織力のモニタリングを実施したりしたという。

■カケハシ/海老原智氏

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2mmぐらい強くて? ニューゲームのCTOとしての取り組み

カケハシは2016年3月に設立、海老原氏はその2カ月後に入社したそうだ。同社は全国に6万店以上ある調剤薬局のSaaSを開発している会社。

調剤薬局が処理する処方箋枚数は年間8億枚あり、調剤薬局は患者と累計8億回も薬の受け渡しをしていることになる。同社は、この受け渡しのタイミングで「患者が健康になっていくための手助けができるのではないか」という想いで創業。現在、患者に対して実施した服薬指導の内容(薬歴)の記録を電子化する「Musubi」を開発・提供している。

海老原自身は同社で取締役CTOを務めているが、実際にはCPO/VPoE的な役割を担っているとのこと。CTOを二度経験していることを生かし、働き方の改善、組織や社内文化への理解度を深めるために尽力しているそうだ。具体的には、アジャイル/アーキテクチャ/DevOps/設置・採用/採用・組織化、という5つのフェースで自分の役割を変えていったそうだ。アジャイルのフェーズでは、開発手法だけでなく組織運営についても議論を重ねて意識を共有したとのこと。設置・採用フェーズでは、一時的にCTOの役割を返上して、調剤薬局へWi-Fi構築を含むPCへの設置などの業務も担当したという。現在は採用・組織化フェーズだが、今後拡大する業務内容を踏まえ、どこかのタイミングで再度アーキテクチャフェーズに戻ることを予定しているとのことだ。

■scouty/伊藤勝悟氏

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スケーラブルな開発組織を目指して~推測より計測~

scoutyに3人目のメンバー、1人目の開発者として入社。2018年7月から取締役CTOに就任。scoutyはエンジニアをヘッドハンティングするサービスで、SNSから公開されている情報をクロールして人材のデータベースを構築。このデータベースを企業の人事部が参照することで、自社に必要な人材にスカウトメールを送れるという仕組みだ。

ちなみにこれまでのデータ分析の結果、転職を希望するエンジニアはその直前にプロフィール写真を変える傾向が強いとのこと。伊藤氏は入社後、クロールの手法などに改良を加えたことで、データベースの登録者数を6万人から約13倍の80万人に増やしたそうだ。

伊藤氏がCTOとして取り組んだのは、開発人員と開発速度が比例する組織。一般的に人が増えると、コミュニケーションや調整タスクが増えるため開発スピードは鈍化するが、同社では7人までに増えた8カ月後の開発スピードは当初の2.1倍、残業時間は一人当たり7.4時間となったそうだ。

この開発チームを実現するために、それぞれの役割分担を明確化し、目的や責務などを明文化。そのうえで、妥協しない採用ポリシーによってチームを強化。具体的には、既存メンバーの平均よりも高い能力、既存メンバーが持っていない知識/経験、カルチャーマッチを重要視、という3つのポリシーを貫いたそうだ。この採用ポリシーを徹底するために、評価ポイントの設定、採点基準の明確化、それを基にした社内エンジニアの平均点の算出などを実施したとのこと。さらにカルチャーマッチをテストするため、採用候補者を社員全員が取り囲んで質問し、あらかじめ用意されたチェック項目を埋めていくという作業も行っているそうだ。

正直、このような仕組みを使うのは「めちゃくちゃ大変」だそうだが、スケーラブルな開発チームを運営していくために今後もやり続けていきたいと話を締めくくった。

■空/田仲紘典氏

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プロダクトから顧客や様々な職種へ

田仲氏は空で、CPO(Cheif Production Officer)として、ビジネス要件と技術要件の両軸を考える、顧客価値を作る仕事を担当している。

ホテル業界の課題として、料金設定の「手間」と「精度」があるとのこと。料金設定に関わるデータを得るには、1日あたり2~3時間の時間が必要で、合計すると月に60時間以上の時間を費やしているという。またノウハウが属人化しており、担当が変わるとやり方が変わるという問題もある。同社は、前者を「ホテル番付」、後者を「Magic Price」というサービスで効率化している。この2つのサービスを顧客が横断的に使うことを考えて、サービス基盤は共通化しているとのこと。

シンプルなUI/UX、統計学を利用したデータ分析手法、問題解決に取り組む体制によって顧客満足度90%を実現しているという。新しいバージョンは週1でリリースしているそうだ。

具体的には、AWSサービスを駆使することで、フロントエンド、バックエンド、インフラを構築。今後はホテルだけでなく、航空券やが外食など他業種にサービスをスケールさせるために、サービスの共通基盤とマイクロサービス化を進めて行くという。

■Voicy/窪田雄司氏

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サービスを最速で伸ばす先回りの技術

Voicyは、手軽に音声を生活のあらゆる場所に届けるサービス。今後は出力先を増やして事業を拡大したいとのこと。窪田氏はCTOの仕事を「未来を予測して事前に準備しよう」というスタンスでの臨んでいるとのこと。

具体的には、CEOは5~10年後の未来を見据えたうえで、経営・事業計画の直近の1年をどうするかという計画を立てる。一方CTOは、CEOを考える1年後よりも少し先の未来を見据えて行動するのが大事とのこと。このタイミングに何が起こって、何が必要なのかを事前に準備、把握しておくべきだとしている。

例えば、突然のアクセス増加に対してもリリース前から高負荷に堪えうるインフラ構成を用意。スマートスピーカーへのスキル提供やAPI連携についても事前に準備するなど、想定される出来事に対処していったという。

窪田氏は、事前準備した内容の90%は使われないため、エクストリーム・プログラミングにおける原則としてはYAGNI(機能は実際に必要となるまでは追加しないのがいい)を思い浮かべる人も多いと思うが、少し根性論かもしれないが「CTOならその予測を当てにいけ」という持論で進めたそうだ。そのためには予測の精度を上げる努力が必要とのこと。

さらにCEOとのコミュニケーションで、優先順位をすり合わせやお互いの仕事内容を共有することも重要と窪田氏。そのうえで、1年後や5年後、どうありたいか語り合うことも必要とのこと。「未来を予測し、技術の力で攻めの準備とリスクの回避を行い、サービスを最速で伸ばす」という言葉でプレゼンを締めくくった。

CTO of the year 2018の審査委員長を務めた、グリー取締役/上級執行役員/CTOの藤本真樹氏は「審査に関わるのは今年で5年目だが、間違いなく毎年レベルが上がっている。この賞に参加すること自体登壇者のレベルが上がっていることは、業界としても非常にいいこと」というコメント。

TechCrunchも審査員として参加したが、最後まで票が分かれ、最終的には協議のうえでの1位選出となった。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルと同様、年々レベルがアップしているCTO of the year。来年はどういった企業が出場するのか、これから楽しみだ。

CTO of the year 2018の登壇者が決定!TC Tokyo Startup Battle卒業生も参加

例年、TechCrunch Tokyoの初日の夜に開催してきた「CTO of the year」。今年は11月21日(水)の単独開催となり、アマゾン ウェブ サービス ジャパンがJR目黒駅前に10月1日にオープンさせたばかりのコワーキングスペース「AWS Loft Tokyo 」に場所を移すことになった。

CTO of the yearは、スタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテストを開催して、技術によるビジネスの貢献度を審査するイベントだ。独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象として今年1年最も輝いたCTOが選出される。今年もTechCrunch Japanが審査員として参加する。

前回の記事では審査員を公開したが、今回は登壇が決定した各社のCTOを紹介したい。 昨年のTechCrunch Tokyo 2017のStartup Battleで優勝した空や、会場投票でファイナルステージに進みバンダイナムコ賞を獲得したVoicy、日本マイクロソフト賞、IBM BlueHub全力サポート賞、Jooto AWARD BY PR TIMESなどを獲得したscouty、そしてTechCrunch Tokyo 2018のStartup BattleのファイナリストであるGVA TECHなど、TechCrunch読者にもなじみのある企業が多数参加する。

CTO of the year 2018の概要は記事の最後に記載しているが、CTOもしくは、それに準じるポジションの人であれば参加はいつもどおり無料だ。オープンしたてのAWS Loft Tokyoの視察がてら立ち寄ってほしい。

■登壇者一覧
海老原 智氏(カケハシ取締役/CTO)
慶應義塾大学大学院政策メディア・研究科修了後、凸版印刷でバーチャルリアリティ用3DCGビューア/SDKの開発、3DCGコンテンツ制作会社でテクニカルディレクションに従事。グリーにてSNS/プラットフォーム系開発に携わった後、サイカの取締役CTOを経て、創業直後のカケハシに参画。

 

窪田雄司氏(Voicy CTO)
2016年2月にVoicyを共同創業しCTOに就任。 当初はすべて一人で開発を行い、現在はチームビルディングやサービスの企画・品質管理のほか、プロダクトの開発も引き続き手がける。 創業以前は金融、流通、EC、広告などさまざまな業種においてシステムの開発・マネジメントやPMO業務にもに携わってきた。

 

川原尊徳氏(atama plus CTO)
2006年に東京大学大学院情報理工学系研究科を卒業し、マイクロソフトに入社。Hotmail開発、日本語IME開発、データサイエンティスト等を経て、2017年に大学時代の仲間とともにatama plusを設立し、CTOになる。現在は主に組織づくりとレコメンドエンジンのコアロジックを担当。

 

田仲紘典氏(空CPO)
立命館大学大学院卒業後Yahoo! JAPANに就職。主にインフラエンジニアとして活動し、ヤフーアカデミアでリーダーシップについても学ぶ。また在職中にAPProgにて、技術サポートとして副業も経験。その後、現職である空に、MagicPriceの立ち上げ期からエンジニアとして携る。

 

本田勝寛氏(GVA TECH取締役/CTO)
フリーランス、インフラ・ネットワークエンジニア、プログラマーを経験。プログラマーでは、主にスタートアップにてソーシャルゲーム、アドテク、シェアリングエコノミー領域に携わる。2017年9月にGVA TECHにCTOとして参画、プロダクト開発・エンジニア組織の内製化を進め、現在に至る。

 

伊藤 勝梧氏(scouty取締役/CTO)
2015年に京都大学工学部情報学科を卒業。大学1年でRailsの魅力に引かれ、在学中に受託開発を行う。クックパッド, ビービット(beBit)のインターンを経て、2015年よりウェブの受託開発企業を経験後、scoutyにジョイン。現在CTOとしてホラクラシーな開発組織づくりやプロダクトオーナーを担当。

 

前田 翼氏(FACTBASE CTO)
React Native OSSというReact Native周りのOSSにペアプログラミングで貢献するコミュニティのオーガナイザー。 近日発売の著書に「実践Expo ~React NativeとFirebaseでSNSアプリを最速ストアリリース~」(11/18ごろにAmazonなどで予約受付開始)。

 

CTO of the year 2018
【日時】11月21日(水)17時〜19時30分
【会場】東京・AWS Loft Tokyo(東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア内)
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTO of the year 2018実行委員会による
【主催】CTO of the year実行委員会
【メディアパートナー】TechCrunch Japan
【運営パートナー】イベントレジスト
【企画、運営協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【チケット】無料(参加登録は必須)
【事務局連絡先】cto-of-the-year2018@amazon.com(CTO of the year運営事務局)

11月21日に開催決定!最も輝くCTOを選出する「CTO of the year 2018」

例年、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」の初日の夜に開催されてきた「CTO Night/CTO of the year」。もちろん今年も開催が決定した。

今年はTechCrunch Tokyoとは分離し、アマゾン ウェブ サービス ジャパンがJR目黒駅前に10月1日にオープンさせたばかりのコワーキングスペース「AWS Loft Tokyo 」に場所を移しての開催となる。開催日はTechCrunch Tokyoから約1週間後の11月21日(水)だ。

CTO of the yearとは、新進気鋭のスタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)によるピッチコンテストを開催し、技術によるビジネスの貢献度を審査するイベント。独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営などを評価対象として今年1年最も輝いたCTOが選出される。TechCrunch Japanも審査員として参加する。

■審査委員長
藤本真樹氏(グリー 取締役上級執行役員/最高技術責任者)

■審査員
白井 英氏(Craft Egg、ジークレスト、サムザップ各社におけるCTO)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクト)
吉田博英(TechCrunch Japan副編集長)

■特別審査員
竹内秀行氏(2014年CTO of the year、ユーザベース チーフテクノロジスト、UB Ventures テクノロジーパートナー)
安川健太氏(2015年CTO of the year、ソラコム CTO/Co-founder)
橋立友宏氏(2016年CTO of the year、Repro CTO)
大竹雅登氏(2017年CTO of the year、dely CTO/執行役員)

CTO of the year 2018の概要は以下のとおり。CTOもしくは、それに準じるポジションの人であれば参加はいつもどおり無料だ。ぜひ目黒のAWS Loft Tokyoに立ち寄ってほしい。

CTO of the year 2018
【日時】11月21日(水)17時〜19時30分
【会場】東京・AWS Loft Tokyo(東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア内)
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTO of the year 2018実行委員会による
【主催】CTO of the year実行委員会
【メディアパートナー】TechCrunch Japan
【運営パートナー】イベントレジスト
【企画、運営協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【チケット】無料(参加登録は必須)
【事務局連絡先】cto-of-the-year2018@amazon.com(CTO of the year運営事務局)

CTOオブ・ザ・イヤー2017は1人開発体制からクラシルを立ち上げた大竹雅登氏に

テック系のスタートアップにとって、技術の立場から経営に参加するCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)は重要な役職だ。そのCTOにスポットライトをあてる企画が、TechCrunch Tokyo 2017の初日である2017年11月16日に開催された「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」。LT(ライトニングトーク)を審査し、CTOオブ・ザ・イヤーを選出する。4回目となる今年は8社のCTOが登壇した。

結果からお伝えすると、今年の優勝者は料理動画「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyの大竹雅登氏。まだ24歳の若さである。エンジニアが全員退職した後に1人開発体制を続けた大竹氏のチャレンジについては、ぜひ記事の続きに目を通していただきたい。

CTOオブ・ザ・イヤー2017に選ばれたdelyの大竹雅登氏

今年の審査員は、グリーCTOの藤本真樹氏、アマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクトの松尾康博氏、サイバーエージェントSGE統括室CTOの白井英氏、竹内秀行氏(ユーザーベース、インキュベーション担当 専門役員)の4名である。竹内氏は第1回CTOオブ・ザ・イヤーに選出されている。

空港設置のSIM自販機を3カ月で立ち上げる

最初のLTは「WAmazing」のCTOである舘野祐一氏。舘野氏の前職はクックパッドCTOで、「CTO Night」で審査員を務めた経験を持つ。現職は「CTO2周目」にあたる。

WAmazingは外国人旅行者をターゲットとする観光プラットフォームだ。サービスを知ってもらう手段としてSIMを無償提供する。そこで空港に「SIM受取機」を設置する形としている。

舘野氏がフルタイムでWAmazingにジョインしたのは2016年11月頭。着任と同時に「3カ月で空港設置のSIM受け取り機を立ち上げる」という高難易度のタスクを抱えることになった。ハードウェア開発はやったことがない。そこでハードは協力会社に頼り、できるかぎりの処理はサーバーサイドで実現した。それでも完成したのは期限の「2日前」。まだまだ万全といえる状態ではなかった。

ソフトウェア開発では開発サイクルを素早く回転させることが大事だ。この考え方を適用できる環境を用意した。社員が持ち回りでSIM受け取り機を設置する空港に常駐し、その場で問題対応できるようにする。必ずしも技術的な問題ばかりではなかったが、エンジニアでなければ切り分けられない種類の問題も多かったとのことだ。問題が発生するたびに原因調査とフィードバックを繰り返すことで「2〜3週間後には完全になった」。SIM受取機を最初に設置した成田空港での経験を元に、その後は日本各地の空港へのSIM受取機の設置を進めている。

質疑応答では、審査員の竹内氏が「僕も自動販売機のサービスをやったことがあり、大変でした」と意外な経験を披露しつつ、舘野氏から「改善の余力を残しつつ早めに改修していった」との方針を聞き出していた。不完全なサービスの完成度を上げていくやり方に、舘野のソフトウェアエンジニアとしての経験、そしてCTOとしての経験が活かされた形だ。

1人体制で開発開始、リリース直後にデータ分析基盤を整備

2番目のLTは、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれることになるdelyの大竹雅登氏である。料理動画(レシピ動画)サービス「kurashiru(クラシル)」は、dely社にとって3個目のプロダクトだ。1回目は配達サービス、2回目はメディア。「最初のプロダクトでは開発メンバーをけっこう集めたが全員辞め、しばらく1人で開発する体制が続いた」。「狭いオフィスで、手を伸ばせば届くところで料理人がスイーツを作っている」厳しい環境からkurashiruが生みだされた。

kurashiruではアプリのリリースの初期の段階から「Logpose」と名づけた独自のデータ分析基盤を構築した。「サービスを伸ばす、ユーザーを深く知る、PDCAを速く回す」ためにはデータ分析が欠かせないと考えたからだ。データ分析では「人の言葉で説明する」方針をとる。言葉で説明できなければ施策の納得感が得られないし、相関関係と因果関係を取り違える危険もある。分析結果を言葉で説明できるなら「大筋間違った方向にいかない」と話す。

「楽しければ嬉々として開発するはず」と環境整備

女性向け動画サービスC Channelの西村昭彦氏は、「コンテンツ×運営×開発」の重要性について語った。同社の今の規模は社員が約130名、月間動画再生数6億件以上。技術面でも新たな課題が出てきていた。

開発速度を上げる上で「楽しければ嬉々として開発するはず」と考え、開発言語とフレームワークを、それまでのPHPとZF1から、PythonとFalconに変更した。生産性、保守性が向上したほか、募集文面に「Python」と付けたことで「濃いエンジニアに来てもらえた」。また言語と開発フレームワークを切り替えた結果「コードをどう書くか」といった「宗教論争から卒業できた」。

開発インフラはAWS(Amazon Web Services)に移管した。従来のインフラでは「眠れない日々」が続いたが、AWS移管の後は工数削減と睡眠時間確保が可能となった。分析系ではGoogle BigQueryを活用している。

質疑では、女性向けメディアの特性を男性エンジニアが理解することの難しさへの質問も出た。女性向けメディアはコンテンツの消費速度や属性の違いが顕著とのことだ。「趣味や世界観が違うと見てくれない」。西村氏のスタンスは「男性エンジニアには理解できないと開き直って、とにかく作る」というものだ。

建築現場を支援するサービスを作る

CONCORE’S(コンコアーズ)の藤田雄太氏は、建築業向けの写真共有アプリ「Photoruction」への取り組みについて語った。同社は建築業向けの「建設IT」に詳しいエンジニアで起業した。今は写真共有サービスだが、「建築現場のすべての課題に対応するサービスを目指す」としている。今取り組んでいるのが図面の共有である。

建築図面の分野では、「1ページ、ベクターデータなのに400MバイトもあるPDFファイル」を取り扱う必要がある。従来の建築現場がどうしていたかというと、パソコンでPDFを開くのに時間がかかるので、その間にコーヒーで一服して時間を過ごしていた。そこで表示の高速化を図った。基本的な方針は、地図アプリのように、タイル状に分割して画面表示に必要な部分だけを描画するというものだ。LTで見せたデモでは、情報量が多い図面をなめらかに表示、スクロールできる様子を見せた。

証券会社にとってクラウド移行は「火星行き片道切符」

オンライン証券FOLIOの椎野孝弘氏は3社の起業経験を持つ。企業買収を経てヤフー ジャパンに在籍した時期もある。一方、FOLIOは創業2年弱で「第2創業期」にあたる時期だ。そこで椎野氏は、自分のミッションを「第2創業期をうまく離陸させること。そのためにエンジニア、デザイナーが実力を出せるよう環境を整備すること」と位置づける。

環境整備で大きかったのは、クラウドへの移行だ。「証券会社にとってクラウド移行は火星行きに等しい高いハードルだ」と表現する。これを「火星行きの片道切符を買った」との意識で乗り切った。

同社のシステムは、マイクロサービスの種類が30近くと複雑だ。マイクロサービスの弱点は、サービスをまたいで発生する障害の検出が難しいこと。そこでメトリクスを監視ツールPrometheusに集約した。利用言語は、フロントエンドではSwift、Kotlin、Node.js、バックエンドはScalaを中心にPythonとRuby on Railsに集約した。

椎野氏は「第2創業期の離陸はできた」と振り返る。今後の取り組みとして、FOLIOを起点とした新しいエコシステムを目指してAPI公開を目指していく。

排泄予知デバイスの未来を考え生データを保管

排泄予知デバイス「DFree」を開発するトリプル・ダブリュー・ジャパンの九頭龍雄一郎氏は、「100年続くTECH COMPANYへ」と題してLTに臨んだ。

DFreeは、介護施設で排尿時期を予知するデバイスとして利用できることを目指している。現状はビジネスの世界展開へ向け取り組んでいるところだ。技術面での難しさは、ハードウェアもサービスも両方とも新たに創り出さなければならなかったことだ。サーバー側ではAWSのS3、Dynamoなどクラウドサービス群を活用する。DFreeは超音波により腹部を調べるが、測定結果の時系列データはすべてS3上に格納している。「解析後のデータなら何十分の一かのデータ量になるが、あえて生データを入れている」。これは、将来は排尿時期の予知だけでなく、より多様な人体データの活用を視野に入れているからだ。

「FinTechは攻めと守りのバランスが大事」

個人間決済サービスAnyPayの中村智浩氏は、ゴールドマン・サックス、エレクトロニック・アーツなどを経て同社に参加した。スマートフォンによる決済サービスを提供する。個人向けサービスのpaymoと事業者向けサービスのPaymo bizを今年(2017年)ローンチした。

「FinTechは攻めと守りのバランスが大事。一発で信用を失ってしまう」と中村氏は語る。守りとPDCAを回すスピードの両方が大事だ。例えば、クレジットカードの情報をアプリケーションのほとんどの部分が持たない仕組みとした。「比較的安心してPDCAをRails上で回せる」。

同社の社員は投資銀行、広告代理店、コンサルティングファームなどからの転職組も多い。そこで開発に携わる気持ちを会社全体に浸透させることを狙い、GitHubアカウントをみんなに持ってもらった。ビジネス側もGitHub上の議論に参加してもらい、また「ちょっとしたランディングページの変更ぐらいはマーケティングの人がプルリクエストを出す」形とした。ほか、SQLの社内勉強会をして「ちょっとしたデータ分析はエンジニアに頼まなくてもできる」ことを目指す。

質疑では、外部の会社とのやりとりにもGitHubを活用しているという興味深い話が出た。FinTechサービスでは規制への対応が重要となるが、「資格を取得するための業者とのやりとりをGitHub Issueにした。けっこう効率的になった。相見積もりをしてGitHubに対応できる事業者を選んだ」。

技術力で「事業について考える時間」を作り出す

Tunnelの平山知宏氏は、住生活の実例写真の投稿・閲覧サービス「RoomClip」に取り組んでいる。自分の部屋をどう改善すればいいのか、それを考える上で他人の部屋を見る回数が普通の人は少ない。そこを埋めるサービスがRoomClipだ。

平山氏は、エンジニアを忙しくさせる要素を排除することで、エンジニアがユーザーの課題について悩む時間を作り出すことを狙った。「品質が高い開発環境を支える技術力は、考える時間を与えてくれる」。その時間を使い、エンジニア各人もビジネス側の会議に出席して「KPIを追い、一緒にPL(損益)を作り、CMJ(カスタマージャーニーマップ)を作る」ようにした。「エンジニアにとっても事業に責任を持てるポジションが開かれている」。

以上、8社のCTOのLTを紹介した。審査員を代表して、グリー 藤本真樹CTOは「今年特徴的だったのは、2周目、3周目の方々がいたこと。いいことなので、がんばっていきましょう」と締めくくった。

 

TechCrunch Tokyo CTO Nightの登壇者はこの8社8人! 参加者は引き続き募集中

11月16日、17日と開催まで3週間に迫ったTechCrunch Tokyo 2017で、イベント内イベントとして「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催する。今年の登壇企業と登壇CTO8人、そして審査員が決まったのでお知らせしたい。

開催趣旨はすでに初回アナウンス時に書いたとおりで、ネットやテクノロジーを最大限に利用して急成長を目指すスタートアップという企てにおいて、重要な役割を果たすCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に焦点をあてたピッチイベントだ。スタートアップが成功するためには技術シードとビジネスの両方が必要だとはよく言われること。専門性の高さから、この2つは組織としても人材としてもベクトルが大きく異なることがある。CTOは、ここをバランスさせ、経営や成長にコミットした技術のトップだ。

既存事業会社が「IT」を使って新しい取り組みを行うというのとは違って、ゼロイチでビジネスを作り出すときに最初からデジタルネイティブな人や世代が、アプリやシステムを事業と一緒に作って成長させる。そんなスタートアップのCTOの中でも今年もっとも輝いていた人物を「CTO・オブ・ザ・イヤー」の称号で讃えようというのが、このCTO Nightの狙いだ。2014年以来、これまで3人のCTOが選ばれた。このうち初代のCTO・オブ・ザ・イヤー2014のユーザーベースCTO竹内秀行氏には、今年は審査員として参加していただけることにもなった。

CTOかそれに準じるポジションの技術者であれば、イベント参加は無料だ。ぜひ他のCTOとの交流という意味も含めて気軽に参加してほしい。もうかなり申し込みを頂いているが、とても広い会場なので、まだ席には余裕がある。なお、TechCrunch Tokyoの本編参加チケット(超早割チケットなど含む)をお持ちの方であれば、CTO Nightへの参加もそのまま可能だ。

以下が今年登壇する8社のスタートアップのCTOたちと、今年の審査員だ。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2017

【登壇者】
C Channel(女性向け動画)、西村昭彦氏
Dely(料理動画)、大竹雅登氏
FOLIO(ロボアドバイザー)、椎野孝弘氏
WAmazing(インバウンドSIMサービス)、舘野祐一氏
AnyPay(個人間決済)、中村智浩氏
トリプル・ダブリュー・ジャパン(排泄予知デバイス「DFree」)、九頭龍雄一郎氏
Tunnel(住生活の実例写真の投稿・閲覧サービス「RoomClip」)、平山知宏氏
CONCORE’S(建築業向けの写真共有アプリ「Photoruction」)、藤田雄太氏

【審査員】
藤本真樹氏(グリー、取締役 執行役員常務 最高技術責任者)
松尾康博氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン、ソリューションアーキテクト)
白井英氏(サイバーエージェント、SEG統括室CTO)
竹内秀行氏(ユーザーベース、インキュベーション担当 専門役員)

【日時】TechCrunch Tokyo 2017初日の11月16日木曜日の夕方(19時20分〜21時)
【会場】東京・渋谷ヒカリエ9階Bホール
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / Oath Japan
【チケット】無料(参加登録は必須)
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

TechCrunch Tokyo CTO Nightへの参加登録はこちらから。

多様化するスタートアップ企業の技術チャレンジ、CTO Night登壇10社のピッチをご紹介

スタートアップといえばWebサービス、という時代はもう過去のものになりつつあるかもしれない。ハードウェアを開発したり、金融のようなお固い業界で新しいサービスを作り出したりと、その幅は大きく広がっている。

2016年11月17日に「TechCrunch Tokyo 2016」の中で行われたイベント「CTO Night powered by AWS」では、スタートアップ企業のCTO、10名が登壇し、それぞれのビジョン実現に向け、テクノロジーの観点から成長にどのように寄与してきたのかを語った。限られた時間でのプレゼンテーションながら、技術面からの掘り下げあり、チームマネジメントや組織作りの工夫ありといった具合に、多様なチャレンジが紹介された。

以下ピッチ内容と審査の結果選出されたCTO・オブ・ザ・イヤーを紹介するが、イベント全編の様子は、こちらの動画でもご覧いただける。

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人やチームを動かすのは「ユニークな仕事と生きるのに必要なお金」ーープレイド 柴山CTO

すでに1300社以上に導入されているというWeb接客プラットフォーム「KARTE」は、自社のサイトにどんなユーザーが来ているか把握できるよう支援するサービスだ。年間の解析流通金額は3000億円に達しているというが、これを数兆規模にまで伸ばしていくことが目的という。

その実現に向けて奮闘している柴山直樹氏は、元々は「人」というものを研究するため工学部に進学し、神経科学やロボティクス、機械学習などを研究してきた経歴の持ち主だ。「人を作りたい」と考えてきた同氏が見るところ、「結局のところ人間やチームをドライブするのは、ユニークな仕事と生きていくために必要なお金に尽きると思っているし、CTOの仕事もそれに尽きると思っている」という。

KARTEでは「今来ているユーザーはどんなユーザーか」を知ることができるインターネット横断型のミドルウェアを作り、すべてのインターネットサービスに入れていくこと」をミッションにしている。柴山氏のCTOとしての役割は、この目的、つまり「やりたいこと」とやれること、稼げることの中間地点をビジョンとして設定していくことだ。「CTOの仕事の80%はビジョンを作ること。面白いビジョンやプロダクトと、力強い事業を作りお金にしていくことにフォーカスすることが、熱狂的な組織を作る」と同氏は述べた。

逆に「組織やフロー、文化についてはなあなあで進めていくほうが、他を縛ったりしないのでいいのではないかというポリシーでやっている」そうだ。「いろんな考え方の人がいるので、一番良いものを探すのが難しい。課題があったら毎回その場で考えるのがいいかなと考えている」という。

3人体制のころからスクラムを導入し、進捗を共有ーークフ 佐藤大資CTO

クラウド労務アプリケーション「SmartHR」を提供しているクフは、ちょうどCTO Nightの翌日、11月18日に1周年を迎えるという。年末調整機能をはじめ次々に機能追加、強化を行っているが、それを支えるのはデザイナーも含め7名体制のチームだ。同社CTOの佐藤大資氏は、この少人数で次々開発を可能にした秘訣を紹介した。

最初はカンバン方式で、Trelloを用いてタスクを管理していたが、「おのおのが黙々と開発を行っていて、互いの進捗が分からない」という課題に直面した。「機能ごとにタスク管理を行っているが、工期が伸びてしまうことがあったし、ディレクターはヒアリングのため外回りが多く、進捗が分かりにくかった。営業にも機能追加の時期を伝えにくくなっていた」。そこで見積り精度を高め、進捗状況を共有するために採用したのが「スクラム開発」だった。

スクラム開発を導入した当初、開発チームはわずか3名。その規模でもはじめはスケジュール調整やタスク粒度調整に手間取り、3回目くらいからようやくスクラムが回り始めたという。結果として「綿密な工数出しで工期が正確になり、朝会でタスクごとの進捗や問題点が共有できるようになった。機能追加時期の精度も高くなった。何より最大のメリットとして、経営も週一単位のスプリントで見直しと改善ができるようになった」と述べた。

もう1つ課題となったのは、いかに価値観を共有するかだ。メンバーが増えるにつれて「やるべきこと」と「やらないこと」の区別や機能の優先度がバラバラになってしまう問題が生じた。そこで、30秒程度の短い時間でサービスの全体像を明確に言語化する「エレベーターピッチ」と、機能を段階的に整理する「ホールプロダクト」を取り入れることで優先順位のずれをなくし、会議でも率直な意見が出せる環境にしていった。

「一番大切なことは、サービスについてチームでよく話し合い、サービスの価値観をしっかり共有すること。そしてその場を会社が提供すること。そうすることで、エンジニアも含めすべての職種がサービスに向き合い、自律して行動できるようになる」(佐藤氏)

コミュニティの力を借り、公開できる成果は公開するーーRepro 橋立CTO

フリーランスのエンジニアとして活動した後Reproにジョインし、2016年7月にCTOに就任したばかりという橋立友宏氏は「何をやっていたらCTOになってしまったのか」というタイトルでプレゼンテーションを行った。

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Reproはモバイルアプリケーションに特化したアナリティクス/オートメーションツールを提供している。サービスは急速に成長しており、「入社当初は1日の生ログが100MBくらいだったのが、今は1日15GB程度へと、150倍になっている。単純に同じようなやりかたをしていては、とっくに破綻しているだろう。ビジネスの成長に合わせて技術者とアーキテクチャも一緒に成長していくことが求められる」(橋立氏)

破綻を避けるため、CTOやエンジニアには「ビジネスが重大な課題に直面しても、継続して環境を維持し、成長を妨げないこと。そのために技術者は常に適切なアーキテクチャを選定し、それを実際に形にしていく能力が必要だ。コトが起こってからでは遅いので、先を読んで調査し、それを実際に形にしていく開発力を持っていなければならない」という。実際に同氏は、「fluentd」を活用したスケーラブルなバッチ基盤の構築と高速化、「Embulk」を用いたデータ処理効率化、アプリケーションのコンテナ化といった取り組みを進めてきた。

しかし橋立氏は自らを「僕自身は凡百のプログラマーだと思っている」という。「なぜこのような活動ができたかというと、オープンソースソフトウェアのコミュニティをはじめとするエコシステムの力を借りることに慣れていたから」と述べ、限られたリソースの中でスピード感を持ってサービスを形にしていくには「先達の知識」を借りる必要があると語った。

Rubyコミュニティなどで「Joker1007」として知られる同氏は、ただ先人の力を借りただけではない。バッチ処理改善の過程で、fluentdのプラグイン「BigQuery」のメンテナーになるなど、公開できるものは公開し、コミュニティに還元できるものは還元してきた。

「オープンにできるもの、公開できるものは積極的に公開してコミュニティに還元する。それがエンジニアの世界をよくすることにつながる。そしてエンジニアの世界がよくなれば、世の中全体をよくしていく力になるはず」(同氏)。言うはやすし、行うは難しのこの言葉を、仕事の中で当たり前に実行し、続くエンジニアに背中で見せるのが「僕のCTOの仕事として大事なこと」だという。

ユーザー参加型のテストを採用し、激しい変化に対応ーーOne Tap BUY 山田氏

「投資をもっと身近に」というビジョンのもと、スマホ証券サービスを提供しているOne Tap BUY。さまざまな規制への遵守が求められる金融システムと連携したサービスである以上、いわゆる「Webサービス」とは異なる苦労があったという。

同社システム部 執行役員 システム部長の山田晋爾氏は、「スマホアプリの開発以外に、証券システムも開発する必要があるが、証券業務を回すために必要な注文処理、約定処理、入出金処理、出庫処理、法定帳簿や権利処理など、いろいろと作らなければならないシステムがあった」と振り返った。

スマホアプリのデザインについても試行錯誤してブラッシュアップしていったが、「スマホ側のデザインが変われば、証券システムのサーバ側の処理も変えなければいけない。お客様が入力する情報が変われば、証券業務をどう回していけばいいかも変わっていく」(同氏)。しかし、激しく変更が加わるスマホアプリに応じて対応に当たる開発担当者は当時2名しかいなかった。

「いろいろ悩んだ挙げ句、ユーザー参加型のテストを採用して開発を進めた。通常ならば、システム部でテストを行って保証したものをユーザー側に渡すが、今回はトライアルアンドエラーで、ユーザー部門にデバッグ、テストまでやってもらう形を取った」(山田氏)。全社を取り込んだテストを行うことで品質もかなりの程度高めることができ、おかげでシステムリリース以降、顧客に迷惑をかけるようなクリティカルな障害は出ていないという。

成功体験にとらわれず、「逆説」で課題を乗り越えるーーフロムスクラッチ 井戸端氏

フロムスクラッチのCTOである井戸端洋彰氏は、あらゆるデータソースから企業のマーケティングに必要なデータを取得し、メールやCMS、アナリティクス、MAといったあらゆるマーケティング施策に活用できるプラットフォーム「B→Dash」のアーキテクチャ設計や開発に携わってきた。その中で直面した課題には、常識とされている事柄への「逆説」で解決してきたという。

1つ目の逆説は「多機能開発」。たいていはキャパシティやリソースが限られている中で「選択と集中」を考えるところだが、「自分たちは必要な機能、お客様の要望は全部やります、というスタイルでやってきた」(井戸端氏)。TDDやマイクロサービスを採用し、インターフェイスにもこだわりつつ、「ペルソナを作りながら、どういうユーザーがどういうふうに使っていくか、開発メンバーも社内もしっかり認識を合わせながら開発に取り組んできた結果、順調に伸びている」という。

2つ目は、ウォーターフォールベースで開発しながら、短いときは2週間でリリースするというスタイルだ。「Web系はアジャイルでやっているところが多く、『ウォーターフォールって時代遅れじゃないの』と言われるけれど、逆に業務システムにはアジャイルを適用するのはまだ難しい部分がある。そこでわれわれは適材適所で、ところどころアジャイルの手法を取り込みながら開発をガンガン進めてきた」(井戸端氏)。しっかり要件定義を行いながら、実現時期もコミットし、タイムリーに機能を届ける体制を実現したという。

「マーケティングプラットフォーム市場にはグローバルなビッグ企業が競合として存在し、かなりレッドオーシャンな市場。後発かつベンチャー、フルスクラッチで開発する会社が戦っていくためには、こうせざるを得なかったと思う」(井戸端氏)

最後の逆説は、外部の業務委託エンジニアの比率が高く、一時期は8割を占める体制で開発を行ったことだ。外部エンジニアが増えすぎると、コントロールや効率、モチベーションの面で困難が生じると言われがちだ。しかし「テクノロジーやビジネスが急激に変化している中で、開発組織が柔軟な体制を維持しなければ、圧倒的な開発効率は得られなかった。リスク志向でできない理由を並べるのは簡単だが、たくさんのエンジニアの方とお会いして、会社として実現したい世界観を腹を割って惜しまず話すことで、プロパー、外部エンジニア関係なく仲間としてやる雰囲気作りにこだわってきた」(同氏)という。

「エンジニア、人は、どうしても過去の成功体験にとらわれてしまい、非常識と言われていることに対して『無理だよね』と考えがち。でも、われわれには実現したいものが明確にある。不可能や非常識を常識に変えながら、世界を変えるプロダクトを日本発信で作っていきたい」(井戸端氏)

時にはシビアな意思決定も下しつつ、企業文化を育てるーーカラフル・ボード 武部CTO

カラフル・ボードでは、当初ターゲットにしていたファッションをはじめ、映画や音楽などさまざまな領域で個々人の好みを理解したパーソナルAI「SENSY」を作り、プラットフォーム化して提供している。2016年10月には単月黒字化に成功し、イベントと相前後してチャット型パーソナルAIの「SENSY Bot」や、クローゼットアプリケーション「SENSY Closet」をリリースした他、AI技術をAPI化して「SENSY AI API」としてクローズド公開した。

しかし「戦犯としてのCTO」と題してプレゼンテーションを行った取締役CTO、武部雄一氏によると、道のりは平坦ではなかった。特に武部氏の場合は「カラフル・ボードに参画早々、大きな意思決定を求められる場面があった。当時、コンセプトアプリの域を出ていなかったSENSYにもう一度大きなリバイズをかけるか、それとも別の選択肢を選ぶのか。しかもこの時点で赤字経営となっており、体力の限界が見える中、どこで事業収益を上げ、経営基盤を安定させるという課題もあった」という。

結局武部氏は、「将来性のある新しいサービスに着手する」という判断を下した。新しいサービスで収益を上げ、経営基盤を安定させた上で、パーソナルAIとプラットフォーム化というビジョンに最短経路で結びつける狙いがあった。「入社してすぐ、せっかくみんなががんばって作ってきたアプリに、これから先はそんなに注力しないと宣言した。タイトルに『戦犯』という言葉を使ったとおり、恨まれても仕方がないけれど、そういうシビアな判断をした」。

その実現に向け、マイクロサービス化や開発プロセス、ツールの見直しなど、さまざまな工夫を凝らしたという。「ただ、発明はしてない。当たり前のことを当たり前にやってきた」と同氏は振り返る。チームビルディングについても同様だ。「企業文化やチーム文化を育てて守ることを何より大事にしようと決めた。そのためチームが大切にしたいことを言語化し、『クレド』として明文化した」(武部氏)

最後に武部氏は、次世代のCTOに向けて「リスクテイクしてほしい。それまでのキャリアを捨てて新しいスタートアップに飛び込んでみたり、事業戦略ならば思い切って全然違う方向を選択してみたり、技術ならばこれまでの既存技術の延長線上にないものを選択してみる。そうでなければ大きな成果は望めない」と述べた。さらに「自分は、生き甲斐と仕事がマージできているか、いつも振り返っている。ここが乖離してdiffがある状態だと、あとでconflictしてつらいこともある。コードと違って、自分の人生のpull request権限は自分にしかない」とも述べている。

多様なバックグランドを持つ専門家をまとめるのは「共感」ーーBONX 楢崎CTO/COO

今回のCTO Nightで目立ったのは、ソフトウェア以外領域で成長しているスタートアップだ。その1つ、ウェアラブルトランシーバー「BONX」の開発を行っているBONXの共同創業者でCTO/COOの楢崎雄太氏は、「よく『ハードウェアスタートアップって大変?』と尋ねられるので、今日はその現実を伝えられれば」と、自らの経験を紹介した。

ハードウェアの開発には、ソフトウェアとは桁違いの時間がかかる。BONXの表面仕上げを決めるだけで、デザイン作成と構造設計、素材の選定、仮金型に基づく確認、本金型の作成と調整……、という具合で、約4カ月の時間を要したという。

「ハードウェアの開発って、全然終わらないんです。ものの開発が終われば部材を調達し、倉庫を手配し、どんな物流網で届けるかなど、とにかくやることがいっぱい出てくる。経験がないと分からない分野も多く、専門性が高い。これら全てをやらなくてはならないのが、ハードウェアスタートアップの現実」(楢崎氏)。もちろん、並行してサービスやアプリの開発も必要だ。

これらを形にするために同社では「物語を全ての起点とした製品開発とモノ作りを意識している。『物語』とは、プロダクトビジョンやユーザー体験、カスタマージャーニーといった事柄とおそらく同じことで、要は、モノを通じてどんな価値観を伝えるかが一番大切だと考えている」(同氏)。目指すべき姿が明確になり、一致すれば、エンジニアのモチベーションが沸き、自律的に「次はあれを作るべき」「これはいらないよね」と動くようになり、技術的なチャレンジにも取り組んでくれるという。

photo03もう1つ、組織作りの上では「共感」が大事だと感じているそうだ。「ハードウェアスタートアップは、多様なバックグラウンドのある専門的な人が集まらないとなかなか実現できない。共感してもらうことによって、どんどんいろんな人がきてくれる」(同氏)。

事実BONXには、アプリやサーバだけでなく、音声処理やハードウェア、構造設計や工場管理など、さまざまな専門性を持った人材が集まっている。ただ「その人たちが集まれば自動的にBONXができるかと言うとそうではなく、CEO、CTOのようなゼネラリストの立場の人間が横串をしっかり通し、ストーリーを伝えていくことによってはじめてものができる」(楢崎氏)。ちなみに同氏が、専門性の高いメンバーと話すときに心がけているのは「100%理解しにいかないこと。でも70%は絶対に理解すること。自分はコードは書けないし、CADも書けないけれど、誰とでも同じレベルで議論できていうる自負はある」そうだ。

全てが分かるCTOがいないなら、皆で役割分担すればいいーーチカク 桑田氏

続けて、同じくハードウェアスタートアップであるチカクの共同創業者でまごチャンネル事業部の桑田健太氏がステージに立った。チカクは、スマホとテレビを遠隔で連携させ、孫の写真を遠くにいる祖父・祖母が簡単に見られるようにするコミュニケーションIoT「まごチャンネル」を開発している。

やはりハードウェアスタートアップには独自の苦労があるようだ。「ソフトウェアスタートアップならば結構ノウハウがたまってきており、システム構成や開発プロセスがぱっと思い浮かぶと思うが、ハードウェアスタートアップとなるとなかなかそうはいかない。しかもハードウェアは一度出荷すると、後からの機能アップデートはハードウェア的には行えないため、スペック決めやスケジュールなど、考えることがたくさんある」と同氏。ソフトウェア開発に求められる技術の選択だけでなく、ハードウェアの開発、製造、出荷管理、法律関連の知識に組み込みソフトウェアなど、求められる事柄は倍以上になるという。

「そんなことができる完璧超人は、世の中にはそんなにいない。でもいないからといってハードウェアスタートアップをあきらめるわけにはいかない。そこで、いいことを思いついた。一人でできないなら、皆で役割分担すればいいじゃないかと」(桑田氏)

チカクでは現在、ハードウェアや製造の担当とソフトウェア担当、サーバサイドと出荷管理という分担で3人で技術選択を担う「Chikaku Triad Development」体制を取っている。「一人で全てについてレベルの高い専門知識を持つのは難しいんですが、3人寄ると、それぞれ詳細に突っ込めるので、深めな技術的視点からの指摘ができる。3人いると人的冗長性もできるし、話し合うことで専門分野以外のことにも詳しくなれる」(同氏)。

チカクでは、ビジネスが成長する中で長期的にこの体制を続けるわけではないとしながらも、「CTOがいないからといってやめるのではなく、何とか手持ちのコマで頑張って、みんなでCTO的機能を実現していくのもありじゃないかな」という。

品質とスピードのバランスを重視ーーフューチャースタンダード 鈴木CTO

photo02フューチャースタンダードでは、「気楽にカメラ映像を活用したい」という声に応えるべく、映像解析IoTサービス「SCORER」を提供している。カメラによる映像の取り込みから映像解析、BIツールへのつなぎこみまで、映像解析に必要なものを、クラウドサービスも含めて提供するものだ。

同社のCTO、鈴木秀明氏は「光学系センサーは使うのにいろいろノウハウが必要だが、SCORERの特徴の1つはさまざまなカメラを活用し、多様なシチュエーションに対応できること。また、映像解析アルゴリズムの開発は、自分でやろうとすると莫大な費用がかかるが、弊社が代理で一括して利用権を取得することで、高度なアルゴリズムをリーズナブルに、簡単に利用できる」と説明した。

「IoTの目になる」というビジョンを掲げる同社。かつてNECで15年ほど製品開発・保守を行ってきた経験を持つ鈴木氏が、CTOとして重視してきたのが「品質とスピードのバランス」だったという。「品質というものは、結局は使い方で決まる。そのため、プロトタイプと製品とをしっかり分けることで、どちらも満足させる方法をとってきた」(同氏)。特に製品バージョンの設計は、将来のスピードを殺さないと言う意味で重要だととらえ、時間をかけて検討したそうだ。その経験から「技術的負債の返済は、多少時間をかけてもあとで必ずもとが取れる」という。

金融機関なのに、半数以上がエンジニアーーウェルスナビ 井上CTO

資産運用を自動化する「ロボアドバイザー」によって資産管理を支援するサービス「WealthNavi」を提供しているウェルスナビ。同社は「次世代の金融インフラを構築し、働く人が豊かさを実感できる社会を作る」ことをミッションに掲げてサービスを開発しているが、やはり、証券会社ならではの課題に直面したという。取締役CTOでプロダクト開発ディレクターも務める井上正樹氏は「スタートアップが証券会社って作れるの? と思うかもしれませんが、大変です」と率直に述べた。

例えば、画面上の項目を1つ減らしたいだけなのに、金融証券取引法、日証協、税法などさまざまな法令や取り決めを確認したり、時には弁護士と相談したりで簡単にはいかず、あっというまに1週間やそこらの時間がかかってしまう。オペレーションにしても、障害管理にしても数百ページにわたる安全基準が定められており、遵守が求められる。万一、顧客に影響があるような障害が発生すれば大ごとで、金融庁に報告にいかなくてはならない、という具合だ。

さらにコスト削減を図りつつ、証券や銀行、勘定系といった「固い」システムとの連携が求められたりと、さまざまな難しさがある中で、「既存の金融サービスをいかにネットのサービスにしていくかが私たちのミッション」だと井上氏は述べ、そんな中でもほぼ毎月新機能をリリースするという、普通の金融機関ではあまり考えられないペースで開発サイクルを回しているという。

中でもこだわっているのは、社員の半数以上がエンジニアという金融機関として、システムを内製していることだ。「フィンテックの最終形が何かが分からないうちに、システム作りの外注は難しいと思っている。そこで、フィンテックをちゃんと作れる開発チームを作ろうということをテーマにしている」(同氏)。それも、誰かが作った仕様通りに実装のではなく、現場のエンジニアも企画に入り、効果があるのかどうかを考えながら作れる組織にしようとしているそうだ。

既存のプレイヤーに正面から喧嘩を売るつもりもなく、「きちんと金融機関とコミュニケーションし、既存のものを生かしつつ、次世代のフィンテックインフラを一緒に作っていきたい。そこにもエンジニアが活躍できる場があると思う」(同氏)。

エンジニアが開発プロセスの中で自然となじんでいる論理設計やモジュール化といった考え方は、情報整理や組織設計といったプロジェクトマネジメントにも大いに発揮できるだろうと井上氏。その意味からも「これからのCTOは、テクノロジーを駆使するのはもちろんですが、プロダクトを作って、かつ事業まで入ることが大事」と呼び掛けた。

CTO of the year 2016はReproの橋立氏に

こうして、時に時間的負債を蓄積しつつ行われた10人のCTOのプレゼンテーション。審査委員による審査の結果、今回の「CTO of the year」にはReproの橋立氏が輝いた。

審査員を代表してコメントした藤本真樹氏(グリー 取締役 執行役員常務 CTO)は、「事業もそうだし、CTOとしてのタイプもそうだが、今年は幅が広がっていると感じた。スタートアップやCTOの世界が成熟していることは間違いないと思う」と述べ、互いに交流を深め、学び、より早く成長して競争し、業界が盛り上がれば、と期待を述べた。

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「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」登壇者決定、参加者チケット登録も開始しました!

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今年11月もまたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」におけるイベント内イベントとして、「TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS」を開催するというのはお伝えした通り。登壇者も参加者も、キホンみんなCTOというイベントだ。

CTOばかりが集まって技術的観点からビジネスや経営にいかにコミットしてきたかというピッチを披露して讃え合う。今年も経験豊富なCTO審査員によって、今年最高に輝いていたCTOに対して「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」の称号を贈りたいと考えている。

今年の登壇企業は以下のとおりだ。

プレイド(ウェブ接客プラットフォーム「KARTE」) 関連記事
クフ(クラウド労務管理「SmartHR」) 関連記事
Repro(アプリ解析・マーケティング「Repro」) 関連記事
・One Tap BUY(モバイル証券「One Tap BUY」) 関連記事
フロムスクラッチ(次世代マーケティングプラットフォーム「B→Dash」) 関連記事
カラフル・ボード(ファッション人工知能アプリ「SENSY」) 関連記事
BONX(ウェアラブルトランシーバー「BONX」) 関連記事
チカク(スマホ・テレビ遠隔連携コミュニケーションIoT「まごチャンネル」) 関連記事
フューチャースタンダード(遠隔カメラ画像処理プラットフォーム「SCORER」) 関連記事
ウェルスナビ(個人向け資産運用管理サービス「WealthNavi」) 関連記事

イベントは11月17日木曜日に渋谷ヒカリエで19時半からスタートする。1社あたり7分の発表時間と3分の質疑で合計10分。約100分ほど技術や組織、ビジネスの話をする、とっても濃いイベントだ。

参加登録はCTOもしくはそれに準じるエンジニア職の人に限らせていただいているが、イベント参加自体は無料。イベント終了後には、TechCrunch Tokyo 2016本編の懇親会とも合流するので、ほかのスタートアップコミュニティーの人たちとの交流を楽しんでいただければと思う。また、参加登録時にはJublia(説明はこちら)の登録も促している。積極的にほかの人たちと交流したいという人は是非お使いいただければと思う。

なお、超早割チケットも含めてTechCrunch Tokyo 2016の入場チケットをお買い上げいただいた参加者の皆さんは、CTO Nightにももちろん参加できる。会場は最大1000人近く入れるほど広いので、ぜひCTOたちのアツいバトルを見に来てほしい。

CTO Night参加登録は、こちらから

【イベント名称】TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS
【日時】TechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日木曜日の夜19時30分スタート(90〜100分)
【コンテスト】登壇CTOによる1人7分の発表+3分のQAセッションを10社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2016」を選出する
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
【審査員】順次発表予定
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
【チケット】無料(参加登録ページ
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

今年も決めるぞ「CTO・オブ・ザ・イヤー2016」―TechCrunch Tokyo CTO Nightを11月に開催

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毎年11月に開催しているスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo」ではイベント内イベントとして、2013年から「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催してきた。駆け出したばかりのスタートアップにも、痛みを感じるほどのスピードで組織が成長するスタートアップにも、それぞれ異なる技術的課題があるだろう。そうした技術的課題や、エンジニアチームの組織上の課題に、経営にコミットした立場から向き合う「CTO」(Chief Technology Officer)という職がある。

このCTOという職種は担っている役割の重要さの割に十分に光があたってこなかった。TechCrunch Japanでは、そう考えている。そこで2014年から「CTO・オブ・ザ・イヤー」という表彰イベントを続けている。自薦・他薦によって選ばれたCTOたち約10人にステージに登壇していただいて、ピッチ・コンテスト形式で日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場だ。同業者だからこそ分かる苦労話もあるだろうし、同じプロとして惜しみない賞賛を送りたくなるような仕事もあるだろう。

昨年の例でいえば、「CTO・オブ・ザ・イヤー2015」に選ばれたソラコムの安川健太氏は「ソラコムの裏側」として開発チームのワークスタイルを披露して賞賛を浴びた。ソラコム開発チームは1日1回30分の全体進行のシェアをする以外はSlackで連携し、非同期で動くチームとなっているという。クラウド側システムも一枚岩のシステムではなく、いわゆる「疎結合」のサービス群として実装されていて、モジュールの開発や運用が非同期で進む。こうすることで開発速度を上げているという話だった。組織図は製品の内部構造に似るというが、分散型のアーキテクチャーと、非同期分散型の組織運営は不可分の話なのだろう。その後のソラコムの開発、ビジネス展開速度に眼を見張るものがあるのはTechCrunch Japan読者ならご存知の通りだ。

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2015年、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムCTOの安川健太氏

これまでのCTO・オブ・ザ・イヤー登壇企業は以下の通り。

【CTO・オブ・ザ・イヤー2014】
株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO

【CTO Night登壇企業(2014)】
Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
freee株式会社(freee) 横路隆CTO
Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

【CTO・オブ・ザ・イヤー2015】
株式会社ソラコム (SORACOM Air) 安川健太CTO

【CTO Night登壇企業(2015)】
BASE株式会社 (PAY.JP) 藤川真一CTO
Increments株式会社 (Qiita) 高橋侑久CTO
株式会社トランスリミット (Brain Dots) 松下雅和CTO
株式会社トレタ (トレタ) 増井雄一郎CTO
株式会社VASILY (iQON) 今村雅幸CTO
株式会社フォトシンス (AKERUN) 本間和弘CTO
株式会社エアークローゼット (airCloset) 辻亮佑CTO

さて、3年目の開催となるCTO・オブ・ザ・イヤー2016は、11月17日夜に東京の渋谷・ヒカリエで開催予定だ。イベント本編であるTechCrunch Tokyo 2016は有料だが、CTO Night単体への参加であれば無償。CTOの皆さんには是非仕事帰りに遊びに来てほしいと思っている(参加登録開始は近日!)。ぶっちゃけエンジニアとしてのキャリアやジョブ・セキュリティーを考える上で、まだ数自体多くない同業者たちの取り組みを知り、横につながっておくことは重要なんじゃないかと思う。

自薦・他薦による登壇スタートアップ企業の応募も開始しているので、われこそはというCTOは是非 tips@techcrunch.jp までお知らせしていただければと思う。

【イベント名称】TechCrunch Tokyo CTO Night 2016 powered by AWS
【日時】TechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日木曜日の夜19時30分スタート(90〜100分)
【コンテスト】登壇CTOによる1人8分の発表+3分のQAセッションを8社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2016」を選出する
【審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
【審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
【審査員】順次発表予定
【企画・協力】アマゾン ウェブ サービス ジャパン
【運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
【チケット】無料(近日登録開始予定)
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

CTO・オブ・ザ・イヤー2015は「疎結合で非同期なチーム」を率いるソラコム安川健太CTOに

TechCrunch Tokyo 2015の1日目である2015年11月17日、今年で2回目となる「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS―技術によるビジネスへの貢献:CTO・オブ・ザ・イヤー選出LT」が催された。スタートアップのビジネスに技術で貢献するCTO(最高技術責任者)を称えようという趣旨の場である。

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まず結果をお伝えする。今年の優勝者はIoT向けモバイル通信サービスをクラウド上に構築して提供するスタートアップであるソラコムの安川健太CTOである。司会からは「非常に接戦でした」のコメントがあった。ソラコムは抜群の事業アイデアと鮮やかな事業立ち上げが強い印象を残した。とはいうものの「接戦」との表現は、他社のCTOも高水準のトークを繰り広げたことを示している。以下、その内容を紹介していこう。

このCTO Nightの審査員は次の面々だ。グリー 藤本真樹CTO、DeNA 川崎修平取締役、クックパッド 舘野祐一CTO、はてな 田中慎司CTO、サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO、アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)。以下、LT(ライトニングトーク)の登壇順に内容を紹介する。

「書いたことがなかった」Pythonベースの決済サービスを立ち上げ―BASEの藤川真一CTO

オンラインショップ開設サービスのBASEの藤川真一CTOは「Pythonを書いたことないCTOがPythonベースの決済サービスを始めるまで」と題して発表した。

同社はオンライン決済サービスPAY.JPをこの2015年9月に立ち上げた。PAY.JPは、RESTful Web APIでカード決済をしてくれる。「米国の決済サービスStripeやWebPayと互換性があるのでスイッチングコストがほぼゼロで移行できる」。スタートアップに対して手軽な決済サービスとして提供するだけでなく、将来的には「日本のエスタブリッシュ金融パートナーとの連携」も視野に入れる。単に同社のオンラインショップで活用するだけでなく、いわゆるFinTechの文脈で野心的な展開を考えているのだ。「新しいインターネットの経済を創りたい」。

同社は2014年12月にオンライン決済サービスのピュレカを買収し、そのチームとソフトウェア資産を継承してPAY.JPを立ち上げた。CTOの藤川氏によれば「CEOからメッセージが来てピュレカを知り、7分で買収の決定をした」そうだ。

この買収により直面した課題は、プログラミング言語と開発者文化が異なるチームとソフトウェア資産の評価とマネジメントだ。BASEの構築には言語としてPHP、フレームワークとしてCakePHPを使っていたのに対して、ピュレカの決済サービスはPythonで構築されていた。「CTOとして、それまで知らなかった技術、プロダクトをどうするか」という課題を乗り越えるためのチャレンジについて藤川氏は語った。

異なる開発者文化で作られたピュレカのソフトウェア資産を評価するため、「ピュレカ創業者と仲良くなったり、(Pythonに詳しい)柴田淳さん、寺田学さんにコードレビューをお願いしたり」と藤川氏は言う。日本のソフトウェア開発者コミュニティの人脈を活用して技術のデューデリジェンスを行った格好だ。

次に藤川氏は、「Pythonという技術を好きになる」ための行動を始めた。日本国内のPythonコミュニティで最大のカンファレンスであるPyCon JP 2014にBASEとして出展した。ただし、この時点では自社のPython活用プロダクトはまだできていなかったため、「脆弱性診断ということで、CakePHPのプロダクトを好きにクラックしていいよ」という出展内容とした。ここでPythonコミュニティと「仲良くなった」ことで、藤川氏は翌年のPyCon JP 2015ではある企画のモデレータ役を担当している。

このLTで、藤川氏は「買収する技術への包容力」として次の3点を挙げる。(1) チームメンバーを信頼する。(2) 開発技術を好きになる。(3) 最後はケツを持つ覚悟。企業をプロダクトごと買収するということは、相手のチームと、そのバックグラウンドにある技術文化を受け入れることだ。文化が異なる企業を買収し、無事サービス開始までこぎつけた藤川氏のトークは「やり遂げた」自信を感じさせる内容だった。

「Qiitaを良くする」ことに注力―Incrementsの高橋侑久CTO

エンジニア向け情報共有サービスのQiitaのIncrementsは、2013年4月に高橋CTOが参加した時点で、エンジニアはCEOとCTOの2名だけという会社だった。「1人CTO」から始めた高橋氏は、少人数組織でのCTOの役割は「まずプロダクトを作ること。次にチームを作ること」と語る。また「同じことをずっとやっているのはつらいので、何かを自動化することを意識的にやっていた」とも語る。チーム作りは「大事にしたい価値観を共有できて、それを求める能力を持っている人を、なんとかして連れてくる」ことを続けた。そのために「どういう人と一緒に働きたいか」をリストにした。自律的に行動でき、オープンソースに積極的、といった基準だ。そして求める能力は、「学習能力と意欲があって既存のメンバーにない能力を持っている人だと考えた」。

最近、元Googleの及川卓也氏がIncrementsにジョインしたことが話題になった。「やったな! という感じです」。このようにプロダクトへの思い、チームへの思いをストレートに語り、最後に「俺達のチームビルディングは始まったばかりだ!」と高橋氏は締めくくった。審査員からの「(チームが大きくなって)CTOの仕事を他のメンバーに委譲していくとして、最後に残るものは?」との質問に対しては「Qiitaを良くしたいという気持ちです」と返した。

Webの力でものづくりを加速―フォトシンス (Akerun) 本間和弘CTO

スマートフォンでドアを解錠でき、デジタルな「合鍵」を共有できるサービスAkerunを提供するフォトシンスの本間和弘CTOは、「プレゼンボタン」と呼ぶガジェットを手にして登壇した。ボタンを叩くと、その情報がBLE Notificationによりスマートデバイスに飛び、MQTT経由でAWS IoTが中継してパソコンに渡りWebSocket経由でプッシュ、プレゼンスライドのページ送りを実行する──この一連の動作説明で審査員の笑いを取ることに成功した。いかにもテックな人たち向けの掴みだ。

本間氏は、同社のスタイルについて「ハードウェアの開発期間を、通常2年かかるところを半年に短縮したかった」と表現する。その解決方法として、次の各種を説明した。1番目は、後から変更可能なファームウェアを採用したことだ。スマートデバイスと同様に、アップデートによりファームウェアを進化できるようにした。これにより、製品出荷前に仕様や評価工数が膨らむことを抑制した。「その機能は今は必要ないよね、と言えるようにした」。また機能の一部、例えば電池の電圧をパーセント表示に変換する機能をデバイスではなくクラウドに置き、ファームウェアの仕様を増やさないようにした。

2番目は、ハードウェアの耐久試験を自動化してスピードアップしたことだ。10万回のテストを実施している。iOSでテストスクリプトを書き、Akerunの情報をBLEで取得してWeb APIでサーバーに送りグラフ化、リアルタイムで各種情報を可視化・確認できるようにした。

3番目は、ハードウェアの製造工程を「Web化」したことだ。例えば、ファームウェア書き込みの工程ではChromeブラウザで動くアプリ「ファーム書き込みくん」を活用する。エラーが発生すればSlackへ通知する。こうした工夫により、2014年9月に創業した同社は、翌年の2015年3月に記者会見で量産品のデモを見せ、同4月には出荷開始に至っている。「Webのちからをものづくり自体に組み込む」ことによりハードウェア製品の製造をスピードアップすることが同社のやり方だ。

2人CTO体制のメリットを説明したトランスリミット 松下雅和CTO

トランスリミットの松下雅和CTOは「2人CTO」についてプレゼンテーションを行った。同社はエンジニアが8割を占め、主要事業は、2本のゲームアプリ──対戦型脳トレのBrain Warsと物理演算パズルのBrain Dotsだ。累計ダウンロード数は3000万ダウンロードの実績を持つ。松下氏は2人目のCTOだ。もう一人の工藤琢磨CTOと、それにエンジニア出身の高場大樹代表取締役社長の3人による技術経営の体制を取っている。

同社は、最重要課題として「技術力を向上したい」と考え、2人CTO体制を導入した。工藤氏はクライアント側、新規事業の創出を担当する。「工藤は0から1を作るタイプ。Brain Warsをほとんど1人で作り上げたスーパーエンジニア」と紹介する。一方の松下氏は、「1をスケールするタイプ」でサーバー側と開発体制の強化を担当する。「攻めの工藤、守りの松下です」。ダブルCTO体制のメリットとして、得意分野を分担して注力できること、多様な視点で技術選択ができること、技術軸と事業軸で経営判断できることを挙げる。「分業ではなく、分担です」と、いわゆる縦割りとは違うことを強調した。

松下氏が個人として大事にしていることは、「自走できるチーム、スケールできるチーム」と説明。そのための「会社で一番の球拾い」を自認している。審査員からは「2人CTOでケンカはしないんですか?」と質問が飛んだが、「一緒にテニスをしたり仲良くやっています」とのことだった。

技術的チャレンジが会社の強み―Vasily (iQON) 今村雅幸CTO

「女の子のためのファッションアプリ」iQONを展開するVasilyの今村雅幸CTOは、同社にとって「技術的チャレンジが、ビジネスの源泉、会社の強みになっている」と語る。

今村氏は、同社の事業を支える3本柱と、それぞれの技術的チャレンジについて説明した。(1) iOS/Androidアプリはすべて内製し、特にUIにはこだわった。iOSアプリはApp Store BEST OF 2012を、Android版はGoogle Playストア2014ベストアプリに選出された。(2) ECサイトクローラーも内製し、AWS上で動かしている。カテゴリ分けの自動化も徹底し、精度97%を実現。700万アイテムと「日本一のファッションデータベースを構築できた」。OEM販売で数千万円の売上げに結びつけている。(3) ネイティブアド配信では、開発期間3週間でiOS/AndroidのSDK、配信ツール、入稿ツールなどをすべてAWS上で内製した。「iQONが持つビッグデータと統合することで効率的に売上げを上げることができた」。このように、技術的チャレンジが同社の活力の元になっているというわけだ。

今村氏は技術を活性化するため、「技術でユーザーの課題を解決する」「技術的チャレンジをし続ける」ほか全5項目の「VASILYエンジニアリングマニフェスト」を作った。「毎日マニフェストを口にする。目が合ったら言う」。「CTOの仕事は技術的チャレンジが生み出されやすい環境を生み出すこと」と表現する。

チームもアーキテクチャも疎結合で非同期―ソラコム安川健太CTO

IoTプラットフォームを提供するソラコムの安川健太CTOは、以前は大手通信機器メーカーの研究機関であるEricsson ResearchでIoT関連の研究開発に従事していた。「クラウドのことをもっと知りたい」とAmazonにジョイン、AWSのソリューションアーキテクトとして活動、その後米シアトルのAWS開発現場も目にした。その過程で「テレコムのコアネットワークをクラウド上で実現できるはずだ」と思った。ある晩、ある人(ソラコムCEOの玉川憲氏のこと)と飲みながら思いをつぶやいたことがきっかけとなり(関連記事)、「世界中の人とモノをつなげよう」という思いを持つに至った。こうして立ち上げたのがソラコムである。

2015年9月30日に、2サービスをローンチした。SORACOM Airは、「一言でいうとプログラマブルなセルラー通信サービス」だ。特徴として、コアネットワークをソフトウェアで独自に構築、AWS上で運用している。帯域制御や回線の開け閉めもAPIでコントロールする。APIは公開しているので、自動化も容易だ。「例えば監視カメラで静止画を低速で送っているが、アラートが上がったときに通信帯域を広げて動画を送るシステム」も作ることができる。

DSC00015SORACOM BeamはIoTデバイス向けのデータ転送支援サービスだが、インターネットを経由する通信を、デバイスではなくクラウドのリソースを使い暗号化する。APIによる操作も可能なので、データの送り先を、APIで切り替えることもデバイスの設定を変えることなく実現可能だ。

クラウドサービスとしてプログラマブルなこと、すなわちAPIにより操作可能なことが同社サービスの大きな特徴だ。そこで開発者支援は同社にとって重要となる。先日開催されたデベロッパーカンファレンスも大盛況のうちに終了した。プラットフォームなのでエコシステム形成も重要だ。そこでSORACOMパートナースペース(SPS)と呼ぶプログラムを立ち上げ、すでに100社近くの企業が参加している。

安川氏は「ソラコムの裏側」として同社のチームを紹介した。同じチームが開発し、運用し、サポートも手掛ける。「これはAWSの開発チームと同じ運用で、フィードバックを生かした素早い改善ができる」。チームは1日1回30分の全体進行のシェアをするが、それ以外はSlackで連携しつつ非同期で動くチームとなっている。サービスローンチ後も、次々と新しい機能の追加、改善を続けている。システムはマイクロサービス群として作られており、独立して開発、運用できる。「チームもアーキテクチャもふだんは疎結合で非同期、でもインテグレートすると大きな力を発揮する」と締めくくった。

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2015年、CTOオブ・ザ・イヤーに選ばれたソラコムCTOの安川健太氏

「技術的に大変だったところは?」との質問には「ユーザーのネットワーク通信をソフトウェアでターミネートしている。これは世の中には出回っていない、技術者が多くない技術。本来はアプライアンスでやることが多い。そこを一から設計してクラウドネイティブにしたところが、我々の一番の成果」と説明した。

「ゴール駆動開発」を提唱―airClosetの 辻亮佑CTO

女性向けファッションレンタルのairClosetの辻亮佑CTOは、「DevOpsとゴール駆動開発」について語った。

「ゴール駆動開発は私が作った言葉。DevOpsという言葉にはよく分からない部分がある。本質は、開発者と運用者による自動化および効率化。それを実現する手段がゴール駆動開発だ」と辻氏は話す。

同社のサービスは「服を扱う」という固有の事情からヒューマンエラーが必ず発生する。そこでエラーの発生を監視するシステムを作った。またデータベース分析のためのツールを導入、非エンジニアでも分析できるようにした。アパレル業界では「シーズン」の概念があり、服に対して「どのシーズンで着るのか」という情報が必ずある。ここで1つの服に複数のシーズンを設定できるようにし、服のライフサイクルの長期化、検索の最適化を実現できた。

辻氏によれば、同社では「エンジニアがハブになってビジネスを動かしている」。「エンジニアは効率化が得意。最適な解を見つける上でゴール駆動開発はわかりやすい」。

紙という強敵と戦う―トレタ増井雄一郎CTO

レストランの予約管理、顧客管理サービスを提供するトレタの増井雄一郎CTOは、同社のサービスについて「競合は、紙です」と表現する。飲食店の受付、予約管理は「紙」を使う場合が多い。「紙は直感的で誰でも使えて応答速度が速く安価。でも処理ができないので、入力内容をコピー&ペーストもできなければ、バックアップを取ることも難しい」。コンピュータ操作に慣れていない人も多い飲食店の分野でいかに使ってもらうかが同社にとって最大の課題だ。「紙という強敵と戦っています」。

同社のサービスはリリースして2年で約4000店舗に導入されている。初めて使う人でも紙と同様に使えることを目指した。端末はiPadだ。紙がライバルなので課題の解決も独特のために方法を採る場合がある。例えばレストランにはたいていファクスが置いてある。そこで、iPadにトラブルが発生したときのバックアップや、印刷が必要な時に備えてファクスに情報を出力できるようにした。バックアップの一環としてマルチクラウド対応も予定している。

「顧客目線を持ったエンジニアであること」が同社のチームのスタイルだ。ユーザーニーズをエンジニア主導で吸い上げて開発を進めている。「エンジニアはお客さんのことを知りたいと考えている。エンジニア自らが現場に行って使い方を見る。こうした主導性を持っていることがチームの特徴」。例えばiPadアプリがクラッシュしたときには、実際に店舗に行ってどのような状況でクラッシュしたかをヒアリングすることもする。ちなみに、同社は24時間サポートを実施しており、夜間のエスカレーションは増井氏のところに電話がかかってくる。これからのトレタについて「(レストラン向け情報サービス)ハブとして使われるようになりたい」と話す。

以上、8人のCTOによる熱いトークを紹介した。審査員らのコメントを見ても、新しいスタートアップ企業のCTO、エンジニアのチームがそれぞれの工夫を追求している姿は刺激になっていたようだ。「僕らがあの規模の会社だったときより、ずっと凄い」とグリー 藤本真樹CTOはコメントした。

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審査員を代表して総評したグリーの藤本真樹CTO

TechCrunch Tokyo CTO Nightの登壇CTO 8人が決定! 参加者は引き続き募集中


すでに告知させて頂いたとおり、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015の中で「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催する。初日17日の夕方4時スタートで、参加は申し込みが必要だがチケットは無料なので、どしどし申し込みをして来場してほしい。

今年も昨年に引き続き、表彰制度の「CTO・オブ・ザ・イヤー」を開催する。以下の8社のスタートアップ企業のCTOに登壇いただいて、5分の発表と3分の質疑によるピッチ・コンテストを行う。審査するのは技術によるビジネスへの貢献度で、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」について評価対象とする。

今年の登壇企業の8人のCTOは以下の通りだ。

2015年のCTO Night登壇者

  • BASE株式会社 (PAY.JP) 藤川真一CTO
  • Increments株式会社 (Qiita) 高橋侑久CTO
  • 株式会社トランスリミット (Brain Dots) 松下雅和CTO
  • 株式会社トレタ (トレタ) 増井雄一郎CTO
  • 株式会社VASILY (iQON) 今村雅幸CTO
  • 株式会社フォトシンス (AKERUN) 本間和弘CTO
  • 株式会社ソラコム (SORACOM Air) 安川健太CTO
  • 株式会社エアークローゼット (airCloset) 辻亮佑CTO

すでに発表済みだが、今年の審査員は以下の方々にお願いしている。

2015年のCTO Night審査員

  • グリー 藤本真樹CTO
  • DeNA 川崎修平取締役
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
  • アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博(ソリューションアーキテクト)

昨年のCTO Nightは発表テーマも方向性も多様で、コンテストというよりも「CTOライトニングトーク祭り」といった感じで盛り上がったのだった。今年もまた和気あいあいとやれればと思う。CTO Night終了後は、そのままTechCrunch Tokyo 2015の交流会と合流するかたちとなっているので、ほかのスタートアップ企業のCTOが何を考えていて、何を悩んでいるのかなんかを話す場所、エンジニアを一本釣りするリクルーティングする場として活用していただければと思っている。

TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWSお申し込みはこちらから→

2015年もやりますCTO Night! スタートアップを技術で支えるCTOたちを讃える

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11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015だが、今年もまたイベント内イベントという形で「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催するのでお知らせしたい。開催は2日間の会期のうち初日の夕方4時スタートで予定している。参加には申し込みが必要だけど、チケットは無料だ。

CTO Night自体は今年でもう3回目だが、昨年始めた表彰制度の「CTO・オブ・ザ・イヤー」の第2回を開催したい。CTO Nightは、CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればという趣旨で開催している。イベント形式は、8〜10社程度のスタートアップ企業のCTOに登壇いただいて、5分の発表と3分の質疑によるピッチ・コンテストとなっている。審査するのは技術によるビジネスへの貢献度で、もう少し具体的に言うと、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」について評価対象とする。

2014年11月の昨年は以下の9社が登壇。発表内容は組織論から技術的な発表までさまざまだったが、NewsPicksで知られるユーザーベースの竹内秀行CTOが、初代の「CTO・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのだった。

2014年のCTO Night登壇者

  • 株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO
  • Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
  • freee株式会社(freee) 横路隆CTO
  • Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
  • ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
  • 株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
  • 株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
  • 株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
  • 株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

今年もまた、昨年同様に経験豊富なCTOの方々に審査員をお願いしてあって、ギークとビジネスの間に立つ人たちにジャッジをお願いしようと思っている。審査員の方々のついては、昨年の記事も参考にしてほしいが、今年は2015年4月にソラコムを創業した玉川憲氏(昨年はAWSエバンジェリストだった)が抜けて、代わりにAWSのソリューションアーキテクトで、スタートアップ企業でのCTO経験もある松尾康博氏が審査員として加わる。ビズリーチの竹内真氏も、昨年はCTOだったが、いまは求人検索エンジン「スタンバイ」の事業部長という立場に変わられ、再び新規事業立ち上げに挑戦されている。また、新たにディー・エヌ・エーの川崎修平CTOが加わるほか、サイバーエージェントグループの子会社群で組織しているゲーム部門の技術責任者である白井英氏にも参加していただくこととなっている。とっても豪華な顔ぶれだ。

2015年のCTO Night審査員

  • グリー 藤本真樹CTO
  • DeNA 川崎修平CTO
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
  • アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博(ソリューションアーキテクト)

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コンテストはイベント初日の11月17日月曜日の夕方4時にスタートし、90分ほどでピッチ大会と表彰を行う。その後は、そのままTechCrunch Tokyo 2015の懇親会と合流する形となっている。今回はCTO Nightに関してはイベント参加費は無料となっている。CTOの皆さまには、ちょっと(だいぶ)早めに仕事を切り上げたりして参加を検討していただければと思う。これまで同様、イベント参加は、CTOや、それに準じるエンジニア組織をリードする立場にある人に限らせていただければと考えている。

ところで、今の日本では、かつてなかったほどCTOが必要されていると思う。ITや技術がスゴいと言っても、実社会への接点で価値が出せなければ意味がない。かつて企業や社会とITの接点といえば、「CIO」「情シス」「SIer」といった“IT業界”だけの話だった。しかし、いまやテクノロジーネイティブな人たちが、それぞれの領域で自分たちでビジネスやプロダクトを作るという動きが強まっている。社会にインパクトを与える価値をソフトウェア・エンジニアリングによって生み出すとき、そのカギとなるポジションの1つはCTOだと思うのだ。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2015初日の11月17日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを9社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2015」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
審査員
・グリー 藤本真樹CTO
・DeNA 川崎修平CTO
・クックパッド 舘野祐一CTO
・はてな 田中慎司CTO
・サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
・アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
問い合わせ先】event@tc-tokyo.jp
チケット】無料(参加申し込みは必要です)