LINE元社長・森川氏の次なる挑戦は動画メディア——5億円を調達し、女性向けの「C Channel」で世界を視野に

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4月1日にLINEの代表取締役社長CEOの座を退いたばかりの森川亮氏。LINEを取締役COOだった出澤剛氏に託し、自身はスタートアップの起業家として新たにサービスを立ち上げる。

新会社の名称は「C Channel」。設立にあわせてアイスタイル、アソビシステムホールディングス、グリー、GMO VenturePartners、ネクシィーズ、B Dash Ventures、MAKコーポレーション、楽天などから約5億円を調達する。今後は社名と同名の動画配信プラットフォーム(同社では「動画ファッション雑誌」とうたっている)「C Channel」のベータ版を展開する。現時点ではウェブのみでのサービス提供となるが、今夏にもスマートフォンアプリも提供する予定。

C Channelでは、「クリッパー」と呼ぶ約100人のモデルやタレントが、独自の動画を配信する。動画では、「カワイイ」「クール」といった切り口で、日本のファッションやフード、トラベル情報など紹介する。動画の長さは1本1分で、1つの店舗やスポットのみを紹介。位置情報とも連携する。お気に入りのクリッパーをフォローするといった機能も備える。ターゲットにするのは10代〜30代の女性。動画は日本語のほか、英語でも提供していく。

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Pinterestライクなクリッパーページ ※クリックで拡大

動画はクリッパーの自撮り、もしくはプロのカメラマンが撮影。そのあとプロが編集している。デモ動画を見せてもらったが、1分でも情報量はそれなりにあるし、クオリティは非常に高い。

もちろんネットにもともとあるようなストリーミングの垂れ流し動画だってライブ感があって面白いのだけれども、それとはちょっと方向性が違う。テレビ番組に近いクオリティだ。

このあたりの理由を森川氏に聞いたのだけれども、C Channelには現在タレントやカメラマン、動画編集者やエンジニアなど約10人のスタッフがおり、SPA(製造から小売りまでを統合・内製)モデルでコンテンツを制作しているため、安価かつ速いスピードで高品質の動画を提供できるのだそうだ。テレビや映画など、映像制作の“職人”的な経験者も多いという。

動画はベータ版のスタート時点で100本程度を用意。今後は毎日アップデートしていく予定だ。「映像のプロとITのプロが集まっている。ちょっとやそっとじゃマネできないと思う」(森川氏)

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動画のイメージ

 

10年かけてタイム・ワーナーのような会社に

「グローバルなメディアを作りたい。マスメディアはまだまだ変わっていないので、その変化の中で大きな流れを作ることに挑戦したい。日本のメディアが海外に成功した事例はないので、10年かけてタイムワーナーのような会社を作りたい」——森川氏はC Cannelについてこう語る。

では森川氏はどうしてLINEの代表退任後のチャレンジとして動画の事業を選んだのか? 森川氏は「起業するのであれば、『自分がやるべき領域』でやろうと思った」と説明する。

新卒で日本テレビ放送網に入社し、その後ソニーを経てLINEの代表となった森川氏は、放送とネット両方のメディアを経験してきた人物。若いスタートアップがメディア事業を立ち上げることについては、「しんどいと思う。資金も人も必要になるので、バイラル的、ワイドショー的なものになりがち」と分析する。だが世界を見てみるとメディアは変革の時期。「(テレビなどマスメディアの)最前線の人は、メディアの中でも問題意識を持っている」と語り、メディアビジネスへの注目度を説く。

また動画メディア事業について、「映像と技術が分からないとできない難易度の高い事業。映像だけだと職人の世界になるし、技術だけだとPVなどを意識しすぎる」と語る。

ではその両方を経験してきた森川氏のサービスがすぐに成功するのかというとそこは慎重で、「ビジネス的には相当厳しい。C Channelは、最初の1年程度は売上ゼロでもユーザー拡大に注力する」のだそう。

ECと広告でマネタイズ、海外展開も積極的に

C Channelでは今後、ECと広告でのマネタイズを進める。ECについては、C Channelブランドの商品を販売する予定。所属タレントによるプロモーションを行うほか、リアルイベントでの販売なども予定する。4月16日には東京・原宿にスタジオ兼オフィスをオープンする予定で、週末などはそこでクリッパーなどを呼んだイベントを積極的に展開していく。また出資するアソビシステムを通じて、所属するアーティストなどとも連携したイベントを検討しており「今後はきゃりーぱみゅぱみゅなどが参加するイベントもやっていきたい」(森川氏)とのことだった。

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スタジオを兼ねた原宿のオフィス

 

直近にはブランド広告を中心に展開する予定。「今まではナショナルスポンサーがつくようなブランド価値の高いような動画メディアがなかった。C ChannelのCはコミュニケーション、キュレーション。質の高いブランドを作りたい。そのためには『選ばれている感』や『憧れ』をどう出していくかが重要」(森川氏)。

また将来的には「アドテクの会社にしたい」(森川氏)とのこと。ユーザーの属性にあわせてリアルタイムに動画広告を編集・生成するシステムを開発中だそうだ。「YouTubeなどに乗らずに自分たちで(インフラまで)抱え込めばいろいろとできることがある。将来的にはそのエンジンを外部に提供することも検討する」(森川氏)。そのほか海外展開もすでに予定中。年内にはニューヨークにスタジオを作り、試験的に動画の制作を開始していく。

48歳での挑戦、「ビジネスはタイミングが大事」

ところで森川氏は今年48歳。この年齢での新しい挑戦を「遅い」と感じなかったのだろうか。

「ビジネスはタイミングが大事。早すぎても遅すぎてもダメ。IoTもITとハードウェアの組み合わせだが、ITと動画という違うモノを組み合わすようなビジネスは難易度が高い。『スケールさせること』と『いいものを作ること』の両方考えないといけない」(森川氏)

森川氏いわく、タイミングの重要性はLINEの時にもさんざん経験した話なんだとか。

「例えば検索(NAVER検索。2013年12月にサービス終了)もそう。どれだけすごい人が最高のものを作っても、タイミングが合わないとダメ。LINEも原型をたどればただのメッセンジャー。(先進性という意味では)大したものじゃない。そう考えていく中で、今のタイミングであれば『動画』だと思った。本当は教育なんかもやりたいが、まだ早い。技術があるか? 市場が熟したタイミングか? そしてビジネスモデルが見えるか? の3点が重要」(森川氏)

新しい産業を生み出す

前述の通り、映像と技術の組み合わせは難易度が高いという話があったので、森川氏に「若手のメディア系スタートアップを蹴散らしていくような感覚を受けた」と話したのだけれど、森川氏は笑いながらそれを否定して、「どちらかというと海外のメディアと戦っていきたい」と語る。

また森川氏は「やるなら正直ゲームのほうが儲かるし、(動画メディアは)あまり若いスタートアップがやらない領域だと思っている。だからこそ選んだ」とも説明。また、「秋元さん(秋元康氏)にも相談したら『応援する』と言ってもらった。メディアも変わるべきところにきている意識がある」とマスメディア側の見方も語ってくれた。

ちなみにLINE退任についても少し話を聞いたのだけれども、一昨年くらいから社内では話をしていたのだそう。

「LINEの次に何をやるか——この年齢になるといつ死ぬか分からないから、社会的に何かを残したいと思った。そこで考えた日本の課題は高齢化に伴う衰退。ではそこで大事なのは何かというと、新しい産業を生み出すこと。それが今は動画だった。そこを考えつつ、また別の軸で教育や投資などもできることをやっていきたい」(森川氏)。実はエンジェルとしても「結構多い数投資している」とのことだった。

研究結果:殆どの人はネットいじめを止めに入らない


1964年、キティー・ジェノベーゼという女性がクイーンズのキューガーデン地区で刺されて死亡した。彼女は助けを求めて30分以上叫び続けたが、通行人や近くのアパート住人たちは彼女の願いを無視した。襲撃時に犯人は変装していた。彼女はその傷が原因で死亡し、当時専門家は傍観者たちの不作為を「ジェノベーゼ症候群」と呼んだ。

オンライン世界はジェノベーゼの悲劇ほど切迫した状態ではないが、最近OSUの最新研究によると、彼女の名前が残された傍観者効果が、未だに強く生き続けていることは明らかだ。調査はチャットルームで対話をする学生221名を対象に行われた。そこではいじめが生まれ、グループ内の他のメンバーをひどくなじった。「虐待に気付いた学生のうち、直接介入したのはわずか10%で、ネット上でいじめに立ち向ったり被害者を助けたりした。

もちろん、このいじめや被害者は研究の一部(サクラ)であり、目的はチャットルームの他の人々の反応を得ることだった。

「結果に驚くことはなかった」と、筆頭著者でオハイオ州立大学大学院生のKelly Dillonは言った。「他の多くの研究結果も、いじめを見た傍観者が介入に消極的であることを示している。この結果に私は人間として失望しているが、科学者としては驚いていない」

リリース文によると、いじめはオンライン調査開始3分後に始まった。

「われわれはサクラに例えばこんなことを言わせた、『アンケートにも答えられなくてよく大学入れたね?』」とDillonは言った。「その後さらに攻撃的になって、被害者にこう言った『自分で考えろ』」。

3分が過ぎ被害者が別の質問をすると、再び台本通りのいじめが始まった。台本では被害者は無礼に対して一切を反応しない。

後に、被験者の約68%がチャットウィンドウでいじめが起きていることに気付いたと答えた。そのうち10人に1人が直接介入し、半数以上(58%)はいじめを非難した。例えば「少しは助けてあげたらどう?」などと言っていた。反応した人の1/4はいじめっ子を罵り「君は敗者の匂いがする」などと言った。

明るい話はあるのか? ある。実験終了後、被験者の70%が匿名レビューの場でいじめを報告あるいは非難した。これは、参加者たちがいじめに立ち向かいはしなかったが、再び起きないよう努力を試みたことを意味している。

これはネットいじめの被害者にとっては、慰めにならない慰めだが、希望があることも確かだ。ネットいじめはますます多くなり、現実的な、しばしば悲劇的な影響を与えている。調査の後、Dillonは被験者に感想を聞いた。

「多くの学生が、いじめに対応したかったが、何をすれば良いかわからなかったと答えた」とDillonは言った。「誰もが時折そうする。誰もがある時点で傍観者になる」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook