米フィンテック企業Currentが実効年利率4.00%の高利回り預金商品を導入

デジタルバンク同士の競争が激化する中、米国のフィンテック企業であるCurrent(カレント)が、同社のバンキングサービスをより魅力的なものにする新商品を導入する。米国時間1月13日朝に発表された「Interest(インタレスト)」と呼ばれる高利回りの新商品は、Currentの口座保有者なら誰でも、4.00%の実効年利率(APY)を得ることができるという。これは全米平均の60倍に相当する。

このInterestは、有料のPremium(プレミアム)ユーザーと無料のBasic(ベーシック)プランを含むCurrentの全ユーザーに提供される(実際、Currentの拡張サービスを利用するために月額4.99ドル[約570円]を支払っているプレミアムの加入者は、同社がAPYを引き上げるためにも貢献しているのだろう)。

ネオバンクが伝統的な銀行よりも高いAPYを提供するのは普通のことだが、多くのバンキングサービスでは、ユーザーが高いレートを得るためには面倒な手順を踏まなければならない。例えば、One Finance(ワン・ファイナンス)の「Save(セーブ)」という商品は、5000ドル(約57万円)までの預金に対して1.00%のAPYを提供しているが、より高い3.00%の金利を得るためには、自動貯蓄機能を設定する必要がある。Aspiration(アスピレーション)とVaro(ヴァロ)も3.00%のAPYを提供しているが、支出、残高、ダイレクト・デポジットの合計額など、それぞれ満たさなければならない独自の条件がある

しかし、Currentの新商品は、年間合計6000ドル(約69万円)までの預金に対して利息が支払われる。また、最低残高は必要なく、ダイレクトデポジットや支出の最低額などの条件も要求されないという。しかし、この商品が他の商品と違うのは、すべての会員が日割りで預金に利息をつけることができる点だ(一般的に、銀行は利息を月ごとに支払う)。

ただし、このCurrentの商品には、総額6000ドルまでの預金をSavings Pod(貯金ポッド)に分散して貯めなければならないという難点がある。APYは1つのポッドにつき2000ドル(約23万円)までしか得られない。そのため、大きな残高を貯めたい人よりも、貯金を始めたばかりで、お金をいろいろなグループに分けたいと考えている顧客にとって、より有効な選択肢となる。なお、この貯金ポッドは、無料ユーザーは1つしか作成できないが、有料ユーザーは3つ作成できる。

画像クレジット:Current

CurrentがTechCrunch語った話によると、この高利回り商品は高い利率で導入して後から時間をかけて下げていくことを目指しているものではないという。

「私たちはこれを宣伝用の利率として扱っているわけではありません」と、Currentの商品担当VPであるJosh Stephens(ジョシュ・スティーブンス)氏は説明する。「私たちはこれを予測可能な将来にわたって、すべての人が利用できるものとして考えています。【略】確かに、他の会社のプロモーション・レートには、余計なものがたくさん付いているものがありますね。しかし、当社のこの商品は誰でも利用でき、最低残高も手数料も必要ありません」と、同氏は語った。

同社はこの利率設定を、激しい競争の中で自社のバンキングサービスをより良く売り込むための手段としても捉えている。Currentは、10代向けのバンキングサービスとしてスタートしたが、事業を年々拡大し、今では大人(子どものいない大人も含め)向けに、より競争力のある商品を提供している。多くのデジタルバンキングサービスと同様、Currentは手数料無料の当座貸越、キャッシュバック、手数料無料のATM、迅速な口座振替、自動積立、資金管理ツールなどの会員特典を提供しているが、Interestの発売により、より良い貯蓄商品を求める顧客の要望にも応えることができるようになった。

「ここ数カ月、インフレ率は過去40年間で最も高い水準で上昇しています。(消費者物価指数は)80年代初頭以来、最も速いペースで上昇しています」と、スティーブンス氏は語る。「私たちの会員、そして多くの米国人にとって、これは必要なだけのお金が行き渡らないことを意味します。つまり、同じ商品やサービスに対して、より多くのお金を支払うことになっており、お金を貯めることが難しくなっているのです」。

その一方でCurrentは、市場にある既存の選択肢では、銀行の顧客がお金を有意義に増やすことは難しいと確信している。

今回の新商品導入によって、他の銀行で普通預金をしている顧客が、その代替としてCurrentのサービスに移行する可能性がある。さらに時が経てば、そのような顧客がCurrentのプレミアムな商品やサービスにアップグレードしていく可能性もあることも考えると、事業の観点から高いAPYは価値がある。

現在、Currentの会員数は、無料・有料合わせて300万人を超えている。会員の平均年齢は27歳と、多くの競合他社よりも若い。

長期的には、これらの顧客がさらに資金を増やせるようなサービスを展開していくことも計画している。また、2021年発表したAcala(アカラ)との提携を通じて、従来の銀行業務と分散型金融の利点を組み合わせた「ハイブリッド金融」という新しいカテゴリーを生み出すことで、暗号資産の領域への参入も計画中だ。消費者金融も同社のロードマップに含まれている。

Currentの新製品であるInterestは、米国時間1月13日よりiOSとAndroidで展開されている。

TechCrunchは、NerdWallet(ナードウォレット)のバンキング・スペシャリストであるChanelle Bessette(シャネル・べセット)氏に、この新商品についての意見を求めた。

「Currentは、平均よりはるかに高い金利を提供する方針を採っていますが、それには条件が付いています。消費者は、3つの異なるSavings Podと呼ばれるサブアカウントで、最大2000ドルに対して4%の金利を得ることができます。つまり、すべて残高の上限を満たした場合、年間で最大240ドル(約2万7500円)の利子を得ることができるのです」と、べセット氏は述べている。「ただし、Savings Podを追加するためのPremium Account(プレミアム・アカウント)には、月額4.99ドルの会費を支払わなければならないことに注意する必要があります。この会費は年間で60ドル(約6900円)近くになるので、会費と利息の収支をプラスにするためには、支払う会費よりも多くの利息を得ることが必要です。私たちは通常、月々の会費がかかる口座をお勧めしたくありませんが、Currentの場合、消費者は口座の残高を高く維持していれば、会費を相殺以上の現金を得ることができるようです」と、彼女は続けた。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

会員数200万人超え、チャレンジャーバンクCurrentが約137億円調達

6カ月足らずで会員ベースを倍増させた米国のチャレンジャーバンクCurrent(カレント)は米国時間11月24日、Tiger Global ManagementがリードするシリーズCラウンドで1億3100万ドル(約137億円)を調達したと発表した(Currentリリース)。本ラウンドによりCurrentの累計調達額は1億8000万ドル(約188億円)となり、バリュエーションは7億5000万ドル(約784億円)を超えた。

シリーズCラウンドには新規投資家のSapphire VenturesとAvenirも参加した。そしてFoundation Capital、Wellington Management Company、QEDなどの既存投資家も戻ってきた。

Currentは親が管理するティーンエイジャーのためのデビットカードとして始まった(未訳記事)。しかし2019年、同じバンキングテクノロジーを使って個人当座預金口座の提供も始めた。このサービスは現在、多くのモバイルバンキングアプリと競合する。これらのアプリは無料の借越、最低預金残高不要、迅速な振り込み、即時の支出通知、バンキング分析、スマホカメラを使った小切手入金、その他チャレンジャーバンクにとっていまやスタンダードとなっている基本的な機能を提供している。

2020年8月にCurrentは競合他社との差異化を図るためにポイントプログラムを導入した。2020年11月、競合相手にGoogle Payも加わった。

Currentが昨秋シリーズBラウンドを調達したとき、同社には50万超の口座があった。今日では会員数は200万人超だという。売上高も成長していて、前年比で500%増だと同社は11月24日明らかにした。

「Currentが提供するのに比類なく適している最高クラスのモバイルソリューションで安価なバンキングにアクセスしたいという明らかな需要を目にしてきました」とCurrentの創業者でCEOのStuart Sopp(スチュアート・ソップ)氏は資金調達に関する声明文で述べた。「当社は、毎月の給料を使い切るような生活をしている何百万という勤勉な米国人、そして従来の銀行で満足にサービスを受けられていない人の財政状況を改善するプロダクトの開発に取り組んでいます。新たに調達した資金で当社は引き続き、会員がより迅速にお金を確保したり、賢く消費したり、経済の不平等を縮めたりするためのミッションや成長、イノベーションを広げることができます」と付け加えた。

調達した資金はCurrentのモバイルバンキング商品のさらなる開発と拡大に使われると同社は話している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Current資金調達

画像クレジット:Current

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(翻訳:Mizoguchi