Liliumの電動ジェット機のバッテリーは同じくドイツのCustomcellsが供給

電動エアタクシーのLiliumは、ドイツのメーカーCustomcellsと提携、同社フラグシップ機Lilium Jetのバッテリーを提供してもらうことになった。

Liliumによると、そのバッテリーのIPは複数の企業などが保有するが、製造そのものはCustomcells一社の仕事になる。両社の協定の一部であるバッテリーシステムの数をLiliumは明かさなかったが、Customcellsは2026年までに保証容量を生産する契約だ。

Customcellsは、航空機や自動車、海運業などのために高性能のリチウムイオンバッテリーを開発している。同社は最近、高級スポーツカーのPorsche AGとCellforce Groupという合弁事業を興し、レーシングカーやパフォーマンスカー用バッテリーの少量生産を行なうことになった。

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Liliumはこのところ、部品と機体のテストに向けて準備を進めているが、その中にはいくつかのパートナーシップもあり、Customcellsはその1つにすぎない。ミュンヘンのeVTOL企業であるLiliumは、パートナーシップの国際的なネットワークを築いており、その中には炭素繊維複合素材で日本の東レ、ジェット機の機体ではスペインの航空宇宙サプライヤーAciturri、ソフトウェアサービスでは同社の投資家でもあるPalantir Technologiesなどがいる。2021年6月にLiliumは、ジェット機の航行制御とアビオニクスのために、航空宇宙の大メーカーであるHoneywellをその名簿に加えた。

主要部品を既成のメーカーにアウトソースするLiliumの決定は、エンジニアリングと生産の大部分を内製することを選んでいるJoby Aviationといったその他の多くの主要eVTOL開発企業のやり方との訣別となる。Liliumのやり方には利点もある。何よりもまず、生産とテストのための設備機器に対して長期間、費用を使う必要がない。しかしLiliumの役員たちがほのめかすもっと重要な利点は、公的認可の過程かもしれない。

他のeVTOLメーカーと同じくLilium Jetも、商用運行のためには、EUの航空安全局と米国の連邦航空管理局からの認可が必要だ。Liliumも、その主要競合他社も、商用運用の開始を強気に2024年としている。既成の航空宇宙サプライヤーは、その最小限の性能規格に関して規制当局の認可をすでに得ている部品を使えるかもしれない。それによって、認可までの時間を節約できるだろう。

LiliumのチーフプログラムオフィサーであるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏は、2021年初めにTechCrunchに対して次のように語っている。「エキスパートや航空宇宙のパートナーたちとのコラボレーションは、私たちの意図的な選択です。市場化までの時間を短縮できるだけでなく安全です」。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ポルシェがスポーツカー用高性能バッテリーを製造へ、Customcellsとの合弁で

ラグジュアリーなスポーツカーメーカーのPorsche AG(ポルシェAG)がバッテリー事業に参入する。同社は現地時間6月21日、リチウムイオンバッテリーメーカーのCustomcells(カスタムセルズ)との合弁事業を通じて高性能の電池を製造する工場を開所する計画だと明らかにした。

ポルシェはCellforce Group GmbHという新しい合弁企業に「(1億に近い)数千万ユーロ」規模を投資した、と取締役のMichael Steiner(マイケル・ステイナー)氏が発表に先立つ記者会見で述べた。工場はまた、ドイツ政府と、工場が立地するバーデン・ヴェルテンベルク州から6000万ユーロ(約79億円)の投資を受ける。陰極材料の供給会社として化学会社BASF SEを選んだ。

製造するバッテリーでは陽極材料としてシリコンを使う。これはエネルギー密度と高温に耐える能力を飛躍的に高めるとポルシェは話す。この2つの要素はいずれもレーシングカーにとって重要な変数だ。バッテリーはすばやく充電されなければならず、しかし製造となると難しい(バッテリーは高温になるのを好まない傾向にある)。

そうした理由から、他の自動車メーカーのものに比べると工場は小規模だ。例えば米国ネバダ州スパークスにあるTeslaとパナソニックの合弁工場は35ギガワットアワーの「ギガファクトリー」キャパシティがあり、ポルシェの親会社VWは2030年までに240ギガワットアワーの生産能力を欧州にもってくる計画だ。ポルシェとCustomcellsの目標は、車両1000台分を十分まかなうことができる年間キャパシティ100メガワットアワーを2024年から生産することだ。工場の従業員はまず13人から始め、2025年までに最大80人に増やす計画だ。

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ステイナー氏は、ポルシェがこのテクノロジーの使用を主流の車両ラインナップに拡大する計画はない、としたが、将来生産コストを下げられる可能性を見出した場合、大量生産する可能性はあると指摘した。「このマーケットで当社は、ハイエンドな車両とモータースポーツ向けの特殊目的セルを探しています。これは今日のマーケットには見当たりません」と同氏は述べた。

このテクノロジーを乗用車に拡大するのは難しいようだ。シリコンの陽極ベースのセル化学はかなり寒い環境で機能したり、充電サイクルを重ねても安定性を維持することが示されていない、とポルシェは声明文で述べた。しかしポルシェの車両がレース向けに開発されたテクノロジーの恩恵を受けるというのはこれが初めてではない。同社の旗艦電動モデルTaycanは、ポルシェ 919ハイブリッドレーシングカーからテクニカル面で多くを拝借している。

これらのバッテリーを使う初の車両はポルシェ製になるだろうが、テクノロジーはLamborghiniやBugattiなどVolkswagen Group傘下の他のブランドにも提供される、とステイナー氏は話した。

「バッテリーセルは未来の燃焼室です」とポルシェのCEOであるOliver Blume (オリバー・ブルーム)氏は声明で述べた。「合弁会社により当社は最もパワフルなバッテリーセル製造のグローバル競争で先頭をいくことになり、まぎれもない当社の運転エクスペリエンスと持続可能性を結びつけることができます。当社はこうやってスポーツカーの未来を形成します」。

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画像クレジット:Porsche

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi