委託販売マッチングのスペースエンジンがD2Cブランド事業者向けの卸・仕入れサービス「orosy」のα版を提供開始

スペースエンジンは6月10日、事業者専用の卸・仕入れサイト「orosy」のα版をリリースした。これに伴い、2019年5月末にリリースした委託販売のマッチングサービス「SpaceEngine」のサービスは停止し、orosyに一本化される。同社は、TechCrunch Japanが2019年に開催したスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2019」のピッチイベント「スタートアップバトル」で、100社超の企業から選ばれたファイナリスト20社のうちの1社だ。

SpaceEngineは、各種製品のサプライヤー(製造元や保有元)と、委託販売する店舗をマッチングするサービス。リリースから8カ月で4000サプライヤー、7万超の商品、全国800店舗の登録があったという。orosyはこのSpaceEngineをベースとして機能を拡充したサービスとなる。

具体的には、従来はサプライヤーからの申し込みのみに限られていた仕入れが、店舗側からも可能になるほか、委託のみだった販売方法についても買取が新たに加わった。仕入時、orosyが1店舗あたり最大300万円の掛金を付与するので、両者とも与信のリスクがなくや口座管理も不要だ。orosyのα版は50社を超えるD2Cブランドが利用しているとのこと。

なお、開発初期段階のα版は審査制で運用しており、審査不要の正式版は今夏に予定されている。またαではサプライヤーから店舗への売込・申込み機能は未実装とのこと。

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竹製の寝具とパジャマのD2Cスタートアップettitudeが約1.7億7円を調達

米国ロサンゼルスを拠点とするD2Cスタートアップで、竹の繊維を使ったサステナブルな寝具とパジャマを製造しているettitudeは、景気後退の中にもかかわらず会社を運営していくのに十分な資金を調達した。

ettitudeは、オーストラリア・メルボルン出身のPhobe Yu(フィービ・ユー)氏と連続起業家のKat Dey(カット・ディ)氏が共同で創業した企業だ。同社が販売する高級竹製寝具は、ユー氏がかつて中国内で織物を調達するチェーンストアを、輸出業者として手伝っていた際に初めて知った手法を使って作られている。

ユー氏によれば、上海の近くにある中国浙江省の工場から調達される竹織物は、無害な溶剤と工程に水を再利用する循環システムを使用して作られているという。同氏は、当初メルボルンでettitudeの名の下に、cleanBambooブランドの寝具を販売していた。だが米国からの注文が増え始めたのを見て、彼女は会社ごと移転を決意した。

米国にやってきたユー氏は、米国の大規模な市場の案内役として、ブランディングの経験豊かな共同創業者を必要としていた。そこでユー氏はAngelListの中を探してディ氏と出会ったのだ。ディ氏は小売業界での経歴を持つ連続起業家で、その最初の会社であるTryTheWorldは2017年にEarthBoxに買収されている。ディ氏は次のプロジェクトを探していたところだった。

「フィービは私にサンプルを送ってくれました、その夜私は人生最高の睡眠を体験できました」とディ氏は言う。そして2人の共同創業者は、彼らのビジネスの長くて辛いマーケティングを開始した。彼女らによれば売上高は伸びており、Drumbeat Venturesとヨーロッパの女性が設立した技術革新に焦点を当てたファンドであるTA Venturesからの資本注入によって、同社のチャンスは確実に向上しているという。

調達された160万ドル(約1億7000万円)は、寝具以外にも拡大しようとしている同社のセールスとマーケティングに使われる予定だ。現在寝具であるクイーンサイズのシーツセットの平均価格は178ドル(約1万9000円)だが、それに加えて寝間着やその他の商品にも広げていく予定である。

「フィービ、カット、そして彼らのブランドettitudeの組み合わせは、私がこの20年間に市場で見てきたものの中でも、情熱、目的、そして素晴らしい製品の、とりわけ本物の組み合わせなのです」と声明で語るのは、Drumbeat Venturesの創業者であるAdam Burgoon(アダム・バーガン)氏だ。「彼らはサステナビリティと快適さという使命を、より多くの人に届けられる完璧な位置にいるのです」。

画像クレジット: Ettitude

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(翻訳:sako)

食事と楽しめるノンアル飲料のD2CブランドYOILABOが2500万円を調達

「世界からお酒の不公平をなくす」をミッションに掲げ、食中酒ならぬノンアルコールの“食中ドリンク”を開発する、福岡発・D2CブランドのYOILABO(ヨイラボ)。ファーストプロダクトとして飲食店向けに展開する「Pairing Tea(ペアリングティー)」は、食事とのペアリングを楽しんで飲めるように開発されたクラフトドリンクだ。

YOILABOは5月14日、福岡拠点のVC、ドーガン・ベータをリード投資家に、ほかエンジェル投資家3名を引受先とした、総額約2500万円の資金調達実施を発表した。投資には下戸のためのコミュニティ「ゲコノミスト」を発足した藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス代表取締役社長)も加わっている。

YOILABO代表取締役CEOの播磨直希氏は、前職では釣り情報サイトやコミュニティアプリを提供するスタートアップのウミーベ(2018年8月にクックパッドが完全子会社化)に在籍。「起業を目指して全力で取り組める事業を探していた」という。

自身は「お酒が好きでめちゃくちゃ飲む」という播磨氏は、いろいろな事業領域を検討した結果、「人生をかけて取り組める」テーマとしてお酒の世界を選択し、2019年4月にYOILABOを立ち上げた。しかし、そこでストレートに酒類に関わるのではなく、なぜノンアルコールのブランドに取り組むことにしたのだろうか。

「この領域で一番課題を抱えているのは、お酒を飲めない人だ。お酒の不公平があることで、飲める人も飲めない人も、お互いに気を遣わなければならなくなっているのが今の状況。日本人の半分ぐらいはお酒が飲めなかったり、アルコールに弱かったり、お酒の味が好きでなかったりするのに、今あるノンアルコール事業のアプローチはビールや日本酒のイミテートばかり。これらは基本的にはクルマの運転などで飲めない状況にある『飲める人』向けのものでしかない」(播磨氏)

ソフトドリンクもあるとはいえ、ウーロン茶、コーラ、スパークリングウオーターなど、そのラインアップは限られる。「高級レストランの食事とでも合うような、飲まない人もおいしく楽しめる食中ドリンクとして、Pairing Teaを開発した」と播磨氏はいう。

「今回の投資にも加わっている藤野氏やゲコノミストコミュニティ周辺の人に聞くと、『飲めそうなのに』と言われて傷ついたり、アルコールを飲む人と同じ金額を割り勘で払わされて怒っていたりする人がたくさんいる。レストランの店員に『単価の低い客』と見られることも多いが、そもそも払う気があったって、食事にふさわしくて単価の高いドリンクが存在しないので、払えないのが現状なのに」(播磨氏)

Pairing Teaは、ワインや日本酒などでよく用いられる食事とのペアリングの概念を、ノンアルコールドリンクへと落とし込んだクラフトドリンクだ。ワインと同様にマリアージュを考慮し、科学的根拠に基づいて開発されている。茶葉をベースに複数種のスパイス、ハーブ、果汁などをブレンドし、タンニンの度合いや香りなどを食べ物に合わせて選んだ。

最初のラインアップでは、3種類のPairing Teaを用意。オードブルとのペアリングを想定した「FOR ANY DISH」、白身魚料理とのペアリングを想定した「FOR WHITE FISH」、赤身肉料理とのペアリングを想定した「FOR RED MEAT」の3種は、ラインで使うことでフレンチのコースに合うように作られているが、フレンチ以外のメニューでも食事に合わせて楽しむことができるという。

FOR RED MEATを例に取ると、赤ワインのような渋みを持つダージリンからタンニンとマスカットのような香気を引き出し、ハイビスカスの華やかで上品な酸味をプラス。ジンの原料にも使われるジュニパーベリー、カカオを香り付けに加えている。適度なタンニンと程よい酸味が脂をさっぱりさせ、ジューシーな肉料理を堪能できる一杯に仕上がっているそうだ。

価格は飲食店向けの卸売り価格となるため非公開だが、店での販売価格をワインと同じ程度に設定できるようにしているとのことだ。ソフトドリンクと比較すると高価に思えるが「茶葉やスパイス、果汁の配合などにこだわり、かなり手間をかけている」と播磨氏。「D2Cブランドとして、OEMで工場に製造を依頼しているが、本来、小ロットでは受け付けてもらえない量を生産してもらっている」とのことだった。

新型コロナウイルス感染拡大による営業自粛などもあって、飲食店の向けに開発したPairing Teaの出荷も遅れていたが、6月からの本格展開に向けて、現在、YOILABOでは特別価格での予約販売を開始している。また、今後はコロナ禍の影響も鑑みて、料飲店だけでなく一般向けにも商品を開発中だという。

播磨氏は「飲めない人がこの事業を手がけても良かったのかもしれないが、飲める側だから、飲める側としてできることがあると考えた」と話している。形態としては、サービスや場の提供など、いろいろ検討したそうだが、最も早くアプローチできそうなのが、プロダクトとしてのノンアルコールドリンクだったので、そこから着手したという。播磨氏はYOILABOをテクノロジースタートアップと位置付けており、「直販でデータ収集も行い、ナレッジを蓄積することで、新しい商品やサービスの開発に役立てる」と語る。

「ファーストプロダクトはPairing Teaと名付けたが、お茶だけにこだわっているわけではない。アルコール飲料市場はシュリンクする一方で、ノンアルコールドリンク市場は拡大している。ただし、今あるイミテートだけでは、飲み会など知らない世代が増える中で、拡大する市場をカバーしきれなくなる。飲まない人が食事と楽しめるドリンクとして、真っ先に浮かぶブランドになれるように、調達資金をもとに事業を強化していく。またドリンクだけでなく、サービスや場など、いろいろなアプローチで取り組んでいきたい」(播磨氏)

国産・無添加ペットフードD2Cのオネストフードが6000万円調達

ペットフードのD2Cブランドを展開するオネストフードは5月11日、XTech Venturesとbasepartnersを引受先とする第三者割当増資により総額6000万円を調達したことを明らかにした。

オネストフードは国産・無添加のグレインフリーペットフード「レガリエ」を展開するスタートアップだ。2019年2月にキャットフード、同年7月にドッグフードの提供をスタートし、これまでに累計で40万食以上を販売している。

代表取締役CEOの佐藤淳氏はオイシックス(現オイシックス・ラ・大地)でEC事業本部の販売推進室責任者などを担っていた人物。自身が保護猫を飼う際に「疑いのある添加物がない」「怪しい食材を使っていない」「猫にとって適切な栄養バランス」という条件を満たすフードを探したものの、買いたいと思える商品が見つからなかったことをきっかけにペットフード領域で事業を立ち上げた。

「アメリカやヨーロッパに比べると日本はペットフード後進国で品質の高い商品が少ないのが現状だ。一方で海外の高品質な商品は輸送費などによって現地の倍程度の価格になるものもあり、価格面で購入のハードルが高い上に、鮮度の課題も出てくる。国内で消費するのであれば国産ブランドを立ち上げて良いものを作るのが1番で、それならば自分の猫のために購入したいと思えるような商品を自らの手で開発しようと考えた」(佐藤氏)

オネストフードが手がけるヒューマングレードのペットフードは無添加であることに加え、穀類を一切使わない穀類を一切使わないグレインフリーレシピや食材本来の味わいや栄養素を残す製法が特徴だ。

佐藤氏によるとグレインフリーレシピのフードには特殊な設備とノウハウが必要なため、国内で作れる工場がかなり限定されるのだそう。その設備を持つ工場とタッグを組むことで国産のグレインフリーペットフードを安定的に生産し、消費者に直接届けられる体制を整えている点が同社の強みにもなっている。

主なターゲットはフードへのこだわりが高いユーザー。ホームセンターなどで販売されているものを購入しているが保存料や穀物アレルギーの面が気になる、もしくは海外産のグレインフリーフードを購入しているけれどもう少し手頃な価格のものがあれば嬉しいといったニーズに対して「国産かつ高品質なフード」を提案する。

ビジネスモデルはD2C×サブスクリプション型が軸で、キャットフードの場合は1.5kgの定期便が4280円だ(初回は160g / 500円のお試し便で2回目以降の価格)。

今後は組織体制を強化するとともに商品ラインナップの拡充と海外展開に向けた準備も進める。商品については年齢別に特化したフードやウェットタイプのフードも開発する計画。パーツを組み合わせるような感覚で「複数の選択肢の中から、愛犬・愛猫の年齢や性別、体系、食の好みなどを踏まえて最適なフードを提案できる仕組みを目指していく」(佐藤氏)という。

またグローバルで見ると東アジアは日本と同様にペットフード市場の変革が進んでいない状態であり、アップデートできるチャンスがあるとのこと。今回の調達資金は東アジアへの事業展開に向けた体制整備にも用いる方針だ。

海外ではThe Farmer’s DogやNomNomNow、ollieなどペットフード×D2C領域で1000万ドル以上の資金調達を実施しているプレイヤーがすでに複数社存在する。日本でも過去に紹介したバイオフィリアシロップを始め関連するスタートアップが登場してきているので、オネストフードやこれらの企業が国内外のペットフード市場をどのように変えていくのかに注目だ。

オネストフードは2018年5月の創業。過去には2019年8月にシンクロ(オイシックス・ラ・大地 執行役員の西井敏恭氏が代表)、Engagement Commerce Lab.(オイシックス・ラ・大地 執行役員の奥谷孝司氏が代表)、松本浩平氏(オイシックス・ラ・大地取締役)をはじめとした複数の個人投資家から2520万円の資金調達を実施している。

写真右上がオネストフード代表取締役CEOの佐藤淳氏

コスメD2CのDINETTEが丸井グループなどから約3億円を調達

コスメのD2Cブランドと美容メディアを展開するDINETTEは5月7日、セレス、ポーラ・オルビスホールディングス、D2C&Co(丸井グループ)、MTG Ventures、サティス製薬を引受先とした第三者割当増資により総額で約3億円を調達したことを明らかにした。

同社ではコスメD2Cブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」のさらなる拡大に向けてマーケティングや人材採用を強化する計画。本日発売した第3弾プロダクトとなる「毛穴美容液」を始め、新商品開発にも引き続き力を入れる。

DINETTEは2017年3月創業のスタートアップだ。同年4月からInstagramを軸にメイクや美容に関するハウツー動画や新作コスメの紹介動画などを配信しながら事業を拡大。18年2月には自社メディアも開設し、コアなユーザーとの接点を広げてきた。

2019年2月にスタートしたD2Cブランドはメディアで培った経験や構築してきたユーザー基盤も活かされたものだ。DINETTE代表取締役の尾崎美紀氏によるとDINETTEブランドのSNSやオウンドメディアにはトータルで約40万人のユーザーがついていて、新たな商品を作る際にはユーザーが抱えている悩みや化粧品への要望などをアンケートのような形で収集しながら進める。各メディアは新商品をユーザーに知ってもらうための場所としての役割も果たし、今のところは良いサイクルが回っているそうだ。

第1弾プロダクトの「まつげ美容液」はSNS上で拡散されたことをきっかけに発売翌月に初回在庫分が完売。人気アパレルブランドとのコラボレーションに加え、全国のバラエティショップ約200店舗での卸販売にも取り組んでいる。

直近では新型コロナウイルス(COVID-19)の影響による外出自粛をうけ「おうち美容」ニーズが高まっていることに伴い、まつげ美容液の売り上げも増加して3月、4月と過去最高売上を記録しているとのこと。昨年11月に第2弾プロダクトの「フェイスマスク」を発売したことも合わさって、単月の売上は昨年7月の資金調達時と比べて約8.8倍に増加しているという(19年7月と20年4月の比較)。

今回の資金調達はこの流れを加速させることが大きな目的だ。既存投資家であるセレスとポーラ・オルビスホールディングスに加えて、新たに事業会社3社とタッグを組む。

丸井グループが今年2月に設立したD2C&Coとは資本業務提携を締結した。年間2億人が来店するマルイ店舗や700万人を超えるエポスカード会員など丸井グループのリソースを活用しながら、DINETTEの成長を目指していく方針。コロナウイルスの関係で具体的な時期などは未定だが、ポップアップを含むリアル店舗への出店を通じてリテール関連の施策も今後共同で進めていきたいとのことだった。

またMTGグループとはD2Cプロダクトの商品開発や海外展開において、サティス製薬とは商品開発においてそれぞれ連携をとる計画だという。

消費者向けテクノロジーの新時代

世間はパンデミック一色だが、TechCrunchはスタートアップ世界の明るい話題を探し回っている。特にいろいろな状況にも関わらず実際に資金が流れている事柄に着目している。

D2Cの将来

先週の初めに、私たちはトップD2C投資家へのサーベイを行った。苦労しているセクターリーダーはいるものの、彼らは極めて楽観的であるように見えた。例えば、以下のものはLightspeed Venture PartnersのNicole Quinn(ニコール・クイン)氏が、投資家の活動と現在の投資状況を比較して述べたものだ。

私が主張しているのは、投資家たちが最近のいくつかのIPOのユニットエコノミクスを見て、それが全てのD2Cにも当てはまると考えるのは弱気過ぎるということです。実際には、美容のように製品マージンが90%を超える企業が多い分野や、Rothy’s(ロシーズ)のように口コミ効果の高い真のブランドがある分野があり、そうした分野では平均よりもはるかに優れたユニットエコノミクスが、不公平なほどの優位性を企業に与えています。

サーベイへのその他の回答者としては、Lerer HippeauのBen Lerer(ベン・ラーラー)氏とCaitlin Strandberg(ケイトリン・ストランドバーグ)氏、NorthzoneのGareth Jefferies(ガレス・ジェフリーズ)氏、Betaworks VenturesのMatthew Hartman(マシュー・ハルトマン)氏、Initialized CapitalのAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、AccelのLuca Bocchio(ルカ・ボッキオ)氏などが含まれる。

またサーベイとは別に、TechCrunchのConnie Loizos(コニー・ロイゾス)はAlexsis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏への個別インタビューを行っている。

不動産テックは(さらに)リモートになる

TechCrunchのArman Tabatabai(アルマン・タバタバイ)は、数カ月前に不動産ならびに不動産テック分野の投資家サーベイを実施したが、物理空間の将来が現在直面している問題を考慮すると、今回のウイルス問題を取り込んだ更新版が必要とされている。Dreamit VenturesのAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏による明快な説明は次のとおりだ。

住宅の家主や不動産管理者をターゲットにしたスタートアップが、大いなる勝ち組になる可能性があります。テナントをより快適な場所にする住宅用のテナントアメニティプラットフォーム(例:Amenify)や、メンテナンス依頼の自動化(例:TravtusAptly)、メンテナンス自体の簡素化(例:NestEgg)、あるいは荷物の受け取りなどのオペレーションを楽にしてくれるビジネス(例:LUXER ONE)などが、突如上位に意識されるようになりました。

VCの投資家たちは「私に考えさせるな」とよく口にしますが、現在私たちは新型コロナウィルス(COVID-19)が私たちのポートフォリオにとって何を意味しているかを真剣に考えている最中です。なのでもし私たちが通常よりも投資の決断をすることが遅くなっても仕方がないと思って下さい。とはいえ、私たちの最高のリターンの中には、困難な時期に行われた投資からもたらされたものもあるという事実は強く認識しています。幸い、私たちはどんどん考えを進めています。

消費者向けテクノロジーの新時代

大勢の人間が自宅に留まっていることに、SaaS企業が新たな成長の機会をみているのは当然のことだ。しかし、仕事以外には何が行われているのだろうか?TechCrunch記者のJosh Constine(ジョシュ・コンスティン)は、自宅パーティーの復活、人気のソーシャルネットワークへのZoomの統合、およびその他のトレンドをまとめて、全体像をエレガントに説明している。ソーシャルツールがこれまで皆が期待していたようなやり方で本当に使われているのだ!

自慢することが何もないときのソーシャルメディアとは何だろう?私たちの多くが、それがはるかに楽しいことに気が付きつつある。私たちは、ソーシャルメディアを競争の場にしてしまっていたが、プレーの喜びを全身で受けとるのではなく、ずっとスコアボードを見つめていたのだ。しかし、ありがたいことに、Zoomには「いいね!」の数はない。永続的なものは残されない。これにより、私たち意思決定を頻繁に支配する、外部からの批評から解放されるのだ。どのように見られるかを気にするものではなく、どのように感じられるものかになり始めたのだ。それは私を安らかな気持ちにさせるだろうか、笑わせるだろうか、あるいは私の孤独を和らげてくれるのだろうか?やってみればよい。読書したり、入浴したり、あるいはボードゲームをプレイしたりするために家にいても見逃すものはないので、もうFOMO(fear of missing out、なにかを見逃すのではないかという脅迫観念から繰り返しSNSなどをチェックしてしまうこと)に怯える必要はない。自分の好きなことをしよう。

詳細な内容はTechCrunchのこの記事で確認してほしい。そして次に、これが向かっている場所、つまり仮想世界!?に関して私たちがまとめている記事を読んでほしい。TechCrunchのコラムニストであるEric Peckham(エリック・ペッカム)は先月の8部構成のシリーズでこの広大なトピックを分析し、先週にはTechCrunchの社内インタビューに応じて、今回のパンデミックが現在のトレンド与える影響をどのように見ているのかを説明した。

1年間で20億人以上の人々がビデオゲームをプレイしている。その意味で、市場への浸透度には驚くべきものがある。しかし、少なくとも私が米国のデータを見る限りでは、特定の日にゲームをプレイする人口の割合は、特定の日にソーシャルメディアを使用する人口の割合よりもはるかに低いままだ。

ゲームがソーシャル化し、ゲームプレイの目的を超えて人がたむろするための仮想世界になればなるほど、携帯電話で何かをできる5分の空き時間を、ソーシャルおよびエンターテインメントへの接点としての仮想世界に目を向ける人間は増えるだろう。ソーシャルメディアが、こうした人生のちょっとした空き時間を埋めてくれるのだ。MMOゲームは今のところそのような存在ではない。現在のゲームはゲームプレイに集中するようにデザインされているため、時間がかかるし、途切れずに集中する必要があるからだ。友達とたむろしながら探検を行うことができるRobloxのような仮想世界は、ユーザーの時間をInstagramと直接奪い合うことになる。

パンデミックにより一部のSEM価格が下落

TechCrunch記者のDanny Crichton(ダニー・クライトン)は、データサイエンティストとして、テクノロジーセクター全体で100を超えるユニコーンを分析し、パンデミック/景気後退によってそのキーワードの広告価格がどのように変化したかを調べた。

驚くべきことではないが、ほとんどすべての広告の価格が落ち込んでいる(いくつかの非常に興味深い例外を除く)。しかし、オンライン広告のパフォーマンスにおけるスタートアップ企業間のばらつきは、フードデリバリーやエンタープライズソフトウェア業界、そしてGoogle、Facebook、その他のデジタル広告ネットワークの長期的な収益パフォーマンスについて多くを語っている。

クラウドアイスクリームコーン画像

大規模テック企業は、スタートアップを支援するためにもっと多くのことをすべき

私が言いたいのは、強力な開発者向けプラットフォームを提供することに加えて、ということだ。TechCrunchのJosh Constine記者は、圧倒的優位な企業の課すホスティングとそれに関連する費用は、社会貢献として、あるいは自分自身のエコシステムを潰してしまわないように、徴収を見送られるか支払いを猶予されるべきだと訴えた

Google、AmazonそしてMicrosoftたちは家主なのだ。コロナウィルスによる経済危機の中で、スタートアップは家賃の支払いを猶予される必要がある。彼らは現金不足に陥っている。収益の流入が止まり、ベンチャー融資のような資本市場にはためらいがあるために、スタートアップや中小企業は、膨大な数の従業員を解雇したり、事業停止を行うリスクに直面している。一方、ハイテク大手は十分な現金を所有している。この10年間の成功が意味しているのは、嵐を数か月は乗り切ることができるということだ。だが彼らの顧客にはそれはできない。

その一方で、スタートアップ世界に対して友好に振る舞わない既存勢力から、マーケットシェアを奪おうと狙う中規模のスタートアップにとっては、今こそ良いチャンスなのだ。

その他もろもろ

  1. さまざまな人気SF小説を書き、たまにTechCrunchへの寄稿も行うEliot Peperは、「Uncommon Stock:Version 1.0」というタイトルの新刊を出版した。これは偶然麻薬カルテルと遭遇してしまったちいさなスタートアップの話だ。このニュースレターの現在の購読者は、上のリンクをクリックすると無料でダウンロードすることができる(米国時間の日曜日に終了する)。
  2. 私はSXSWでリモートワークについてのパネルをモデレートすることを計画していたが、他のイベントによってそれはとって代わられた。そのパネルは、Hiredのマーケティング担当副社長であるKatrina Wong(カトリーナ・ウォン)氏、Gitlabのリモート責任者のDarren Murph(ダレン・マーフ)氏、そしてBuildstackの創業者であるNate McGuire(ネイト・マクグワイヤ)氏らが参加したパネルとして、Zoomで行われた。そのビデオは現在ここから視聴することができる。リモートファーストになるためのコツを専門家たちの口から学んでほしい。

#EquityPod ポッドキャストより

Alexから、

NatashaDanny、そしてAlexの3人は、スタートアップに焦点を当てたトピックのために集まった。もちろん世界はCOVID-19のニュースで溢れている。実際関連のニュースもいくつか取り上げた。だがEquityはその原点に戻り、スタートアップとアクセラレータについて話そうと思う。今週は以下のような話題を取り上げた。

  • 500 Startupsからのビッグニュース、および アクセラレータの最新デモデーのお気に入りの企業について。Y Combinatorだけが唯一のアクセラレーターではないので、TechCrunchは500とその最新参加企業にも目配りを行っている。私たちは、インフルエンサー市場、ゴミ処理、eスポーツ問題に取り組む、目立ったスタートアップをいくつか取材した。
  • Plastiqは7500万ドル(約81億円)を調達して、人びとや企業がどこでも自分のクレジットカードを使えるように支援しようとしていた。だが、パンデミックのためにそれはクローズできなかった。
  • Stripeが主導するFastの最新の2000万ドル(約22億円)のラウンドについても話題にした。誰もが覚えているように、Stripeは最近では、SequoiaがFinixへ投資した資金を(Stripeと直接競合するという理由で)諦めたことで話題になった。1。しかし、それは過ぎた話だ。Fastが開発しているのは、高速で独立していると考えられているインターネット用の新しいログインならびにチェックアウトサービスである。
  • こうしたStripeの話題は、それに対抗できるスタートアップの1つであるBrexを思い出させる。これまでに知られているだけで3億ドル(約324億円)を超えるベンチャーキャピタル資金を集めているこのスタートアップは、最近3社を買収した
  • 私たちは、D2Cベンチャー調査のハイライトから、特定のチャネルでの顧客獲得コストの上昇、総利益率の重要性、および寝具通販のCasperが、業界の真の先駆者ではなかった理由に焦点を当てて話し合った。

ポッドキャストはここから聞くことができる

原文へ

(翻訳:sako)

2000万円調達するもリリース直前にピボット、50以上の事業案から選んだ「漬物D2C」への道

2017年に起業し事業開始前にも関わらず2000万円を調達したSEAMの石根友理恵氏。しかし、1年弱かけて進めていた子ども向け知育動画事業を本リリース直前にピボットしてしまう。「次は絶対に失敗できない」と50個以上の事業案を考えた結果、たどり着いたのが漬物のD2Cブランド「和もん」だった。

なぜ動画事業から漬物D2Cに?起業からサービスリリースに至るまでの背景を聞いた。

プロフィール
石根友理恵:株式会社SEAM CEO。神戸大学卒業後に新卒でサイバーエージェントへ入社株式会社ワンオブゼムに転職しスタートアップ業界に入り、その後、フリーランスとして複数の企業でマーケティングや広報を担当し、起業。2017年5月に子ども出産。会社経営しながら子育て中。
Twitter:@yurieru1115

生と死の間で「世の中に家族と事業を残したい」と思うように

石根氏が起業したのは2017年。フリーランスとして順風満帆に働いていた彼女が経営者を志したのは、「父親の突然の死」と「自身の妊娠」がきっかけだった。

「数年前に父親が突然亡くなったんです。あまりにも急な出来事だったので『人は明日にでも死んでしまうものなんだ』ということを改めて実感しました。その一方で2016年、27歳のときに自分の妊娠が発覚しました。生と死を見つめる中で、『生きた証として自分が死んでもずっと残るものを残したい』と強く思うようになりました」。

「そしてたどり着いたのが『家族』と『事業』でした。家庭を持ちながら後世に残る企業をつくる。そういう人生を生きようと決めて起業しました」。

妊娠中に起業をすると決心。まずは出産までできるだけ働いて貯金をしたそうだ。

「起業後に数年無収入でも生計が立てられるよう、なるべく貯金することを意識しました。実際に今は給料はほとんど入っていませんが、そのときの貯金で生活をしています。また、フリーランス時代の実績で事業開始前に2000万円の資金調達をすることができました」。

YouTubeで子ども向け知育動画事業を始めるも1年弱でピボット

最初に始めたのは子ども向けの動画事業。今やYouTubeをはじめとした動画コンテンツは子育てに欠かせない存在となっている。だが、数多くある動画の中には子どもに悪影響なものが少なくない。そこでYouTubeでの知育動画事業をはじめることに。しかし、構想から1年弱でピボットすることになる。

「動画カメラマンやディレクターなどのスタッフを集めてテストマーケもし、『いざコンテンツを量産し舵を切ろう!』としていた、まさにそのとき自分の中でこの事業に対する不安が募ってしまいました。

その理由は2つあります。1つ目はYouTube市場のエンタメ領域の参入が激化し、テーマであったIPを使用しない知育動画では伸びにくくなっていること。多くのタレントや高コストで高クオリティ動画、オリジナリティを持ったキャラクターIP動画が次々と出てきて、競合に勝てるイメージを持てませんでした。2つ目はこの事業で自分が人生をかけられる自信がなかったこと。やらない言い訳を並べていただけで、もっとも大きな要因は後者です」。

だが、メンバーに事業を考え直したい気持ちを言い出せないまま3カ月が過ぎてしまう。意を決して打ち明けると、意外にも「石根さんがそう思うならきっとそうだと思います。気持ちを尊重します」と前向きな返答が返ってきた。

「めちゃくちゃ裏切り行為だと思ったし腹切りする覚悟だったのですが、予想外の反応で驚きました。そのときに初めて、まだ事業が始まってもないスタートアップ企業にも関わらずみんなが仲間になってくれたのは、『私の考えていることに共感してくれたから』だと気づいたんです。だからピボットしたいという意見にも納得してくれたんだと思います。今考えればメンバーのことを信じて、もっと早く伝えられたらよかったと反省しています」。

漬物マーケットは新たな変化が起きていないからこそD2Cの可能性を感じた

動画事業のために集めたチームは解散することに。

「新しい事業はもう失敗できないので、次は清水寺の舞台に飛び降りるつもりで臨みました。3カ月かけて事業案を50個ほど考えた結果、たどり着いたのが『漬物D2C』です」。

漬物のマーケット規模は2019年で約3200億円。2000年から約10年で1000億円ほど下がっているが、それからは横ばいが続いている。販売チャネルの多くが量販店やスーパーで、シェアの6割は大手数社が占有。

一方で、市場の半数以上は中小企業や家族経営だ。作り手が高齢化したり機械の老朽化したりして閉店する店舗も多い。新たなイノベーションが起きていない市場だからこそ、D2Cの可能性を感じたそうだ。

「人生を賭けて漬物D2C事業を始めよう」。その気持ちの背中を押したのは、やはり父親と子どもの存在だった。

「父親は亡くなる数年前から食が細くなり体重が落ちていたようです。食欲がな苦なり栄養が不足し、精神的にも肉体的にも弱ってしまう悪循環に陥っていました。さらに私自身も先ほど話したとおり妊娠中にたくさん働いていたら貯金は増えたけれど、体に問題が起きる事態に。お腹の中の赤ちゃんに栄養がいき渡らず胎児発育不全という病気にかかってしまいました」。

「これらの経験を経て、『食と栄養』について真剣に向き合ったビジネスをしたいと思い、栄養価の高い健康的な食べ物である漬物を選びました。自分自身が大好きだったのも大きな理由の1つです」。

パートナー探しはネットやタウンワークより、Facebookの投稿が一番効果的だった

事業内容が決まり最初に動いたのは、製造先のパートナー探し。

「まずはインターネットで『漬物』『製造』などと検索して出てきた会社へ順番に電話をしました。30社ほどテレアポしましたが成果はゼロ。次にタウンページを取り寄せて200社ほどの業者に電話をかけたけれど、これも全然うまくいかず。『今どき漬物は売れないからやめたほうがいいよ』なんて言われる始末でした」。

「最終手段としてFacebookに『漬物屋さんか漬物屋さんのお知り合いの方はいませんか?』と投稿しました。ダメ元だったんですけど、意外と一番リアクションがありました(笑)」。

そして、Facebookの投稿を見た友人の紹介で漬物の製造業社を紹介してもらえることに。紹介していただいた地方の製造会社を飛び回るうち、そのうち1社が閉鎖的な漬物業界を一緒に変えたいと快諾してくれた。

「実際に動いていてわかったのは、日本のものづくりは人のつながりが大事だということ。何者かわからない一見さんより、紹介のほうが仕事につながりやすいんです。だから商品の監修も知り合い経由の管理栄養士さんと老舗の寿司屋さんの料理人にお願いすることにしました」。

D2Cはビジネスの総合格闘技、「参入障壁が低い」なんて嘘!

製造元がわかったあとも、前途多難な日々は続く。

「まずD2Cの知識がまったくありませんでした。なのでしばらくは商品自体や入れ物、パッケージの平均価格や原価をリサーチする日々。インターネットに載っている相場を鵜呑みにしてしまうとどんどん値段が高くなってしまうので、展示会に足を運んだり、タウンワークで直接仕入れ先に連絡するなどでして、なんとか予算内で作ることができました」

「ビジネスの総合格闘技」と言われるD2C。しかしECやグロース、在庫管理など物流のすべてを行う必要があり「よく『D2Cは参入障壁が低い』と言われているけど、嘘でしょ?とつっこみたくなる日々です(笑)」と語る。

2019年7月より本格始動した漬物D2Cブランド「和もん」は4月15日からmakuakeで事前登録を開始し、5月15日にサービスサイトをオープンする。

「リリースしたあとも地道なマーケティング、商品改善が続くと思います。一気にブレイクすることはまずないので、着実に積み上げて商品のブランドを作っていく予定です。そして、和菓子や干物など横展開して日本のものづくり産業に変革を起こしたいです」。

肌診断を軸にしたカスタマイズサプリD2Cの「FUJIMI」が新商品としてフェイスマスクを発売へ

肌診断を軸にカスタマイズ処方を提案するD2Cブランド「FUJIMI」を展開するトリコは2月27日、新プロダクトとしてカスタマイズフェイスマスク「FUJIMI BEAUTY FACE MASK」の予約販売をスタートした。

FUJIMIの特徴はオンライン上で実施する約20問の肌診断の結果をもとに、ユーザーごとにカスタマイズした商品を届けていること。睡眠時間や食生活などに関する質問を通じて今の肌の状態をチャートやスコアでわかりやすく可視化し、なりたい肌の方向性を見極めた上で個々にあった処方を提案する。

今回FUJIMIが開発したカスタマイズフェイスマスクは2層式となっていて、肌診断の結果に合わせて処方された2種類の美容液を使用直前に自身で混ぜ合わせて使用する。

パッケージ上部の第一美容液に含まれるのは、今の肌の課題に対して効果的にアプローチする「トラブル修復特化型」の美容液成分。たとえば保湿成分の”ヒアルロン酸”や肌荒れ防止効果などを持つ”パンテノール”などが該当する。

もう一方のパッケージ下部の第二美容液には「なりたい肌を叶えるため」に必要な美容液を配合しており、保湿力の高い”シロキクラゲ多糖体”、肌を正常な状態に戻す鎮静効果の高い”ボタンエキス”などが含まれるという。

香りについてもフレッシュマンダリンやフローズンフローラルなど3種類の中から好みや気分に合わせてカスタマイズできる。肌の状態に応じて肌診断を再度実施することはもちろん、同じ診断内容で香りだけ変更して楽しむことも可能だ。

料金は1箱6枚入りで6400円(税、送料別)、定期購入の場合は4980円(税別、送料は無料)。本日から予約販売をスタートし、3月16日より一般販売を始める予定だ。

FUJIMIが第一弾プロダクトとして昨年4月に提供を開始したカスタマイズサプリメントでは、2020年1月末までに約40万人が肌診断を実施済み。昨年10月に1.5億円を調達した時と比べても、ユーザーの翌月継続率は引き続き90%以上を保っているほか、新規顧客も純増しサプリメント単体で月間売上は約3倍に伸びているという。

第二弾となるフェイスマスクではその40万人の診断結果をベースとしてユーザーが必要としている成分を厳選。サプリメントが体の内側からアプローチする商品だったのに対し、今回は外側からケアできるアイテムとして開発した。

トリコによるとフェイスマスクを選んだ理由としては、サプリと同様に既存のスキンケアにプラスケアとして使用できるのも大きいそう。加えて他ブランドへのスイッチングコストが低い商品のため、このプロダクトをきっかけに新規ユーザーの獲得も見込んでいる。

もちろんFUJIMIにおいても乗り換えのリスクはあるが「肌診断で処方を提案するので、その時の悩みに合わせた処方に組み直すことが可能になり、その分LTVをあげることができると考えている」とのことだった。

「調達のタイミングから仕込んでいたFUJIMIの第二プロダクトであるフェイスマスクは、価格的にもサプリより幅広い年齢層の方にアプローチできると考えています。またFUJIMIの共通の肌診断を通して、サプリだけでなく複数プロダクトを提供できることによるCPA改善・クロスセルを狙います。今後も、カスタマイズスキンケアの領域で新プロダクト開発を進め、FUJIMIのブランド認知拡大を目指します」(トリコ代表取締役社長の藤井香那氏)

OLがたったひとりで下着D2Cブランドを起業、2つのマーケティング戦略

商品入荷後、1日で完売したD2Cランジェリーブランドがある。IT企業でエンジニアとして働いていたOLの「仕事中のブラジャーの締め付けがストレスだった」という悩みをきっかけに作ったノンワイヤーブラ専門のランジェリーブランド「BELLE MACARON(ベルマカロン)」だ。

ノンワイヤーブラとは、ワイヤーによる締めつけがなく、着心地よく着られるブラジャーのこと。BELLE MACARONは着け心地だけでなく見た目もこだわり、レースを基調とした女性らしいデザインなのも特徴だ。

経営もアパレル業界も未経験だったOLがどのように人気ブランドを作り上げたのだろうか。BELLE MACARONを販売するashlynの代表、小島未紅(こじまみく)氏に話を聞いた。

給湯室で商社や工場に電話をかける日々がはじまる

小島未紅氏:1991年生まれ。立教大学法学部卒業後に新卒で大手IT企業に入社。入社3年目に自身のブラジャーの悩みと市場のブラジャーに疑問を感じて2016年にashlynを創業する。ブラジャーの開発に奔走し、2017年にランジェリーブランドBELLE MACARONをローンチした。

小島さんが「起業しよう」と思い行動に出たのは2016年2月。まだOLとしてIT企業で働いているときだった。

「まずは仕事終わりや休みの日に、インターネットで下着の製造や企業に関する情報を集めました。調べていくうちにブラジャーを製造する工場を見つけることが必要だとわかったので、お昼休みに給湯室でひたすらテレアポをしていました」

並行して資金調達にも動き出す。資金調達先は銀行やVCではなく、クラウドファンディングだった。

「CAMPFIREで製作費30万円を集めるクラウドファンディングをしました。クラウドファンディングは資金集めだけでなく商品についても知ってもらえる機会になるから、toCサービスとの相性がいいと思ったんです」(小島氏)

とはいえ、クラウドファンディング自体も初めてだったという小島さん。まずは成功しているプロジェクトを独学で分析し、自分のプロジェクトに落とし込んだという。また、CAMPFIREではプロジェクトを成功させるため、一つのプロジェクトに対し一人の担当者がアサインされる。それをフル活用し、担当者とはプロジェクトのタイトルやサムネ画像、ページ全体のラフ案など細かな調整まで密に相談した。これがクラウドファンディングを成功させた大きな理由の一つだと語る。

「クラウドファンディングを成功させた実績により、500万円の創業融資を受けることができたのも事業を進める追い風になりました」(小島氏)

クオリティを底上げしたのはテレアポで出会ったランジェリーデザイナー

事業構想から半年後、資金調達で経営の目処が立ったため、働いていた会社を正式に退社。しかし、予算とクオリティの見合う工場探しに苦戦する。

「価格を抑えるためにアジア圏にあるいくつかの工場に試作を依頼したのですが、自分が着たいと思える物にはならずで……。最終的に国内の工場で職人さんに作ってもらうことにしました。トライアンドエラーを繰り返したため時間はかかりましたが、『国内産の高品質』という売り出し方をすることができたので、結果的にはよかったと思います」(小島氏)

事業を進めていくうちに、「アパレルを製造するには商社と取引する必要がある」ということを知った。

「アパレルを流通させるには商社と取引することが必要だ、というのけっこうあとから知りました(笑)。商品の製造と並行して片っ端からテレアポを開始。ガチャ切りをされることはザラだったのですが、ある企業から『ランジェリーを作りたいなら会わせたい人がいる』と、ランジェリーデザイナーの方を紹介していただきました」(小島氏)

紹介されたランジェリーデザイナーは、なんと日本を代表するアパレルブランドの元デザイナーだった。小島さんのビジョンに共感し、破格の価格でアドバイザーに就任することに。デザイン面だけでなく流通や品質管理のアドバイスを担当してくれたため、納得のいく商品を完成させることができた。

マーケティング戦略(1)Twitterでターゲットに合う情報を発信

2018年11月、ついにノンワイヤーのランジェリーブランドBELLE MACARONの商品が発売される。その際に立ちはだかったのが販促・マーケティングの壁だった。

「すでにクラウドファンディングで注目をされており、かつ日本初のノンワイヤーブラ専門のブランドということもあいまって、最初の売り上げは好調でした。ですが、ブランドとしては継続的な売り上げを立てなくてはなりません。ネットショップのモールに出店したり、ウェブ広告を出したりしたのですが、商品の魅力を届けられず、ほかの商品に埋もれてしまうことが課題になりました」(小島氏)

そこで力を入れたのがSNSマーケティング。最初はInstagramを主戦場にしていた。しかし、商品が1種類しかないため写真のバリエーションを見せることができず、コーディネート数がコンテンツになるInstagramではリーチに時間がかかってしまう。そこで次に試したのがTwitterだ。

「BELLE MACARONは、着心地・デザイン・品質が特徴のブランド。それらをデザインとテキストで紹介するようにしました。また、女性が下着で悩んでいることを取り上げ、その解決策を提案する投稿もしました。つまり、自分自身がメディアとなり、消費者に刺さるコンテンツを発信するようにしたんですその結果、新色を発売したり再入荷するたびに完売するブランドに成長しました」(小島氏)

マーケティング戦略(2)リピート率を上げた手書きのクリスマスカード

カスタマーサクセスを強化し、リピート率アップさせたのも、売り上げを伸ばした要因のひとつ。通常、ランジェリーブランドのリピート率は10〜15%と言われているが、BELLE MACARONのリピート率は25%以上だ。

「SNSで商品を発信してくれた人にはDMでお礼を送ったり、コーポレートサイトの問い合わせに連絡をくれた人には100%返信したりするなど、細かなサポートは私がすべて対応しています。自信のある商品を売り、自分が消費者目線だったら嬉しいと思うことをするようにしたら、リピート率だけでなく、購入単価も上がってきました」(小島氏)

また、マーケティング施策において効果が高いメルマガにも「消費者目線」を取り入れた。

「メルマガは顧客に自社ブランドを定期的に思い出してもらうために必要な施策です。しかし、メルマガを好きではない人も多いですよね。私も自分が求めていない情報を一方的に送られてきたら、いやだなと思ってしまいます。そこで考えたのが『手書きのクリスマスカード』です」(小島氏)

リピーター100人に手書きでお礼を書いたクリスマスカードを送付。すると、SNS上で「手紙が届いてうれしい」と口コミをしてくれたり、「自分のクリスマスプレゼント用に購入した」という声が届いたりするなどのリアクションが届き、手応えを感じたという。

2016年の着想から4年経ち2度目のクラウドファンディングも成功させ、新色も発売するなど順調に成長しているBELLE MACARON。最後に、今後の展開を聞いた。

「今は勢いがあるのは、SNSでのバズが後押ししているからだと考えます。今後はサイズやデザインのバリエーションを増やして、よりニーズに合う商品を作り、短期的ではなく長く愛されるものを作りたいです。また、ここにくるまで色々な方に協力していただきましたが、基本的はずっとひとりでやってきました。これからは組織を作り、メンバーも増やしていきたいと思います」(小島氏)

ペットテックのシロップが2億円調達、データを軸に飼い主とペットに最適な情報提供へ

保護犬猫のマッチングサイト「OMUSUBI」やペットライフメディア「ペトこと」を展開するシロップは1月29日、複数の投資家を引受先より総額2億円を調達したことを明らかにした。今回の投資家にはジェネシアベン チャーズ、セレス、コロプラネクスト、三浦崇宏氏(GO代表取締役)のほか、社名非公開の上場企業や匿名の個人投資家も含まれる。

シロップは2015年設立のペットテックスタートアップ。今回調達した資金を活用して人材採用を強化するとともに、蓄積したデータなども活用して既存事業のサービス拡充を進める計画だ。

なお同社では昨年4月に既存投資家やチュートリアル・徳井義実氏ら複数の個人より8000万円を調達。それ以前にも複数回に渡って数千万円規模の調達を実施済み。今回も含めると累計調達額は約3.5億円となった。

ペット版Pairs「OMUSUBI」は会員1万人突破

現在シロップの事業の軸となっているのは冒頭で触れた2つのサービスだ。

保護犬猫と飼い主をつなぐOMUSUBIは「ペット版のPairs」と言えばわかりやすいだろう。仕組み自体は非常にシンプルなマッチングサービスではあるが、保護団体の完全審査制を取り入れ、密なカスタマーサポート体制を構築することで譲渡トラブル回避や譲渡率向上を目指してきた。

審査済みの登録保護団体数は昨年4月から約2倍に増え、100団体を突破。会員数も1万人を突破している。

大きなアップデートとしては昨年8月にデータレコメンド機能「相性度診断」を追加。ユーザーからライフスタイルや好きなタイプなどの嗜好データを収集し、犬や猫のプロフィールデータと照合して相性度を可視化する仕組みを導入したところ、月間応募件数が2倍以上になったという。

「犬や猫は100種類以上いて種別の特徴や性質はそれぞれ異なる。それを度外視してしまうことがミスマッチにも繋がるが、事前に全てを把握することは難しいのでデータを活用してマッチングをサポートしている。たとえば最初は何となく猫を希望していたが、嗜好データなどを踏まえると実は犬の方が相性が良く、実際にマッチングに至ったケースもある」(シロップ代表取締役の大久保泰介氏)

現在は保護犬猫を対象にしているが、ゆくゆくはそれ以外の犬猫と飼い主のマッチングにも広げていくことを検討しているそうだ。

このOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変えるサービスであるのに対し、ペトことはメディアを通じてペットの“育て方”を変える。獣医師などペットの専門家150名以上が執筆・監修している点が1つの特徴で、オススメのお出かけスポットやグッズから、獣医療や栄養知識まで幅広いコンテンツを提供。最大時のMAUは160万人だ。

ビジネスの観点ではタイアップ広告やOMUSUBIと連動したソーシャルグッド・SDGs文脈のプロモーションのほか、記事経由での宿泊施設の予約やAmazonでのグッズ購入によるアフィリエイトも一定の規模に達しているというのは前回も紹介した通り。現在は正式展開に向けて準備中ではあるものの、昨年にはフード領域の新サービスとしてドッグフードのD2C「PETOKOTO FOODS」を開発した。

昨年9月にベータ版をスタートしたものの、事前予約申し込みが600名を超えるなど継続的な安定供給が難しくなったため販売体制の構築に向けて中断。まずは限定的に販売を再開し、春頃を目処に規模を拡大していく計画だという。

データ活用で飼い主とペットに最適化した情報を提供へ

大久保氏が今後の注力ポイントにあげていたのが、前回に引き続きデータの活用だ。特にペトことにおいては春頃からデータを用いたパーソナライズ機能を実装する予定。「蓄積されてきた飼い主やペットのデータを活用するフェーズ」(大久保氏)に差し掛かり、ユーザーごとにマッチした情報を配信していく。

まずは情報(記事コンテンツ)とフードが中心。ペトことで得られたデータから最適なカロリー量を提案し、フードを定期配送することでペットの健康をサポートできる仕組みを作りたいという。

今回調達した資金もペトことの情報コンテンツの拡充や開発強化、D2Cフードの体制強化に向けた人材採用に投資をしていく計画。また少し先の話にはなるが、OMO文脈の取り組みとしてリアルなドッグカフェを開設するような構想も大久保氏の中にはあるようだ(まずはポップアップ型で)。

「ペトことを使えば自分とペットに最適化された情報が出てくるという体験を作っていく。いずれは自分たちに合ったキャンプ場がレコメンドされ、その予約まで一気通貫でできるようにしたいと考えている。ペットライフにおいて点となる機能をどんどん増やしながら、それらをデータを軸につなぎ合わせて線にしていきたい」

「社内のメンバーは全員が犬や猫の飼い主で思いは強い。『人が動物と共に生きる社会をつくる』というミッションを掲げているが、犬・猫自身や飼い主を含む動物を好きな人だけでなく、苦手な人も支え合える社会を作るのが目標。信念を持って取り組んでいきたい」(大久保氏)

月商は2億円規模、会員数8万人のパーソナライズシャンプー「MEDULLA」が丸井などから6億円調達

Spartyのメンバー。前列中央が代表取締役CEOの深山陽介氏

パーソナライズシャンプーのD2Cブランド「MEDULLA」を手がけるSpartyは1月23日、丸井グループ、XTech Ventures、アカツキ、ジンズホールディングスを引受先とする第三者割当増資により総額で約6億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達を機に体験型店舗の運営やサロンとの提携など、オフライン展開を加速させていく計画。現在期間限定で有楽町マルイ1階にオープン中の店舗を3月1日より常設店舗として再オープンするほか、新たな店舗も開設していく予定だ。

なお今回の調達先は丸井グループを除いて全て既存投資家。SpartyではこれまでXTech、アカツキ、ジンズの3社に加え、サティス製薬やアイスタイル、赤坂優氏から資金調達を実施している。

「パーソナライズ×スマホUX」で急成長、会員は8万人突破

Spartyは2017年7月に博報堂出身の深山陽介氏(代表取締役CEO)らが立ち上げたスタートアップ。2018年5月よりユーザーの髪質や香りの好みなどを踏まえたパーソナライズシャンプー・MEDULLAの提供を開始している。

情報通の人は知っているかもしれないけれど、2018年にはOEM先のトラブルにより商品回収を行うなど一時は売り上げがほとんどない危機にも陥った。そこからサティス製薬と資本業務提携を結び、同社と協業する形で2019年4月に全面リニューアルを実施。同年11月からはヘアオイルの販売も始めた。

深山氏によると特に昨年の秋口以降、事業が一気に伸びたそう。現在会員数は8万人を超えるまでに成長し、2020年1月の月商は2億円近くを見込んでいるという。

プロダクトの特徴は「パーソナライズ×スマホUX」だ。MEDULLAはオンライン上で9つの質問に回答するだけでカルテを発行し、約3万通りの中から各ユーザーにカスタマイズしたレシピでシャンプーとリペアを製造する。

ユーザーはスマホをタップしていくだけで自分に合った納得感のある製品を手にすることが可能。フィードバックを送ればより自分に適した形へ処方を改善していくこともできる。

MEDULLAでは自分の髪質やなりたい髪など、9つの質問に対してスマホ上の画面をポチポチタップしながら回答していくだけで、自分に合った処方箋が作成される

質問回答後の画面

日本には1万種類以上のシャンプーが存在すると言われ、店頭やWeb上に様々な商品が並んでいる状況において自分に合ったものを見つけるのは大変だ。深山氏は「思考停止時代のUX」という表現もしていたけれど、実際に「いろんな商品を試したけど、どれがいいのかわからない。自分に本当に合ったものが手軽に手に入るならお金を払いたい」と考えるユーザーは多いという。

「美容はそうとう曖昧なものだと思っている。データだけでその人が本当に喜ぶものを提供できるかというと、その時の環境や気分、体験によっても大きく左右され難しい。だからこそデータで最適なものを提供することをベースにしつつも、ユーザーにデジタル起点でしっかりと寄り添い、曖昧な悩みを一緒に形にする。そしてずっと同じものではなく商品をどんどん変え、『サービス』にしていくことを大事にしている」(深山氏)

プロダクトを多くの顧客に届けるという観点では、Spartyは初期からサロンとの提携にも力を入れてきた。現在150店舗を超える提携サロンでは美容師が無料で髪質や頭皮の状況を診断し、MEDULLAを体験してもらった上で興味を持ったユーザーに販売する「体験型販売」を実施している。

ユーザーは美容師の診断を受けた上で実物を試してから購入できるのがメリット。通常通りユーザーのスマホを使ってオンラインで購入手続きをするため、サロン側は在庫を抱える必要がなく始めやすい。販売できると定期的にマージンが得られるので収益アップにも繋がる。デジタルを起点にサロンのビジネス構造をアップデートする取り組みと捉えることもできるだろう。

MEDULLAにとっても顧客とのタッチポイントが増えるだけでなく、“認知されてはいるものの購入には至っていなかった顧客”の背中を押すスイッチにもなりうる。

美容品ということもあり「実際に香りを試したい、対面で話を聞いて確認してから購入したいというニーズも一定数ある」(深山氏)ため、サロンはそのための場所として効果的。サロン経由で購入した顧客は翌月以降の継続率が高く、良質な顧客との接点になっているようだ。

サロン連携と並行して取り組んできたオフラインの自社店舗についても狙いは近しい。有楽町マルイ内の期間限定店舗では専任スタッフが無料でヘアカウンセリングや頭皮診断を行うほか、ヘアオイルを無料で使用できるブースを用意。ギフト用単品販売など店頭限定商品なども扱い、オンラインとオフラインを融合させたデジタルネイティブな体験型店舗として運営している。

丸井グループとの協業などでオンライン展開加速へ

今回の資金調達は上述してきた取り組みを加速させ、事業をさらに成長させていくことが大きな目的となる。直近では特に「店舗」「サロン」「人を起点としたブランド」の3つが注力ポイントだ。

店舗に関しては「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略を掲げる丸井グループとの協業を軸に、体験型店舗を広げていく計画。3月1日スタートの有楽町マルイの常設店のほか、渋谷ヒカリエ ShinQsや阪急うめだ本店などでも期間限定の店舗を開設する予定だ。

同時に提携サロンの拡大にも引き続き力を入れ、2020年に1000店まで増やすことを目指すという。

もう1つの人を起点としたブランドの構築は若干ベクトルが異なるが、深山氏いわく「消費財版のBASE」のような世界観を実現したいとのこと。MEDULLAと同様のフローで3万通りの中から処方を選び、デザインを変更した上で“自分のブランドとして”商品を簡単に製造販売できる仕組みを作る。

すでに先日より第一弾としてアーティストの伊藤千晃氏とタイアップしたシャンプートリートメントセットの販売を開始。このような事例を今後も増やしていく方針だ。

MEDULLAを最初にローンチしてから1年半以上が経過し、同サービスはもちろんマーケット環境にも様々な変化があった。近年はパーソナライズヘアケア商品も盛り上がってきていて、参入障壁自体はそこまで高くないこともあり、ボタニストやユニリーバなども昨年からこのビジネスに参入している。

そのような環境において深山氏が今後ビジネスを一層スケールさせていくためのポイントにあげていたのが、店舗やサロン、人起点のブランドを含めた「強固なチャネルを構築すること」だ。

「化粧品メーカーの歴史を紐解くと、それはチャネルを作ってきた歴史でもある。もちろんブランドも大事だが、チャネルを構築してそこにブランドを流せる土壌を作ってきた企業がビジネスを拡大してきた。今は様々なチャネルをデジタル起点で変革できるタイミングが訪れていて、自分たちもまさにそこに取り組んでいる」

「要はこれまで店舗にしてもサロンにしてもオフラインからオンラインが主流だったところを、『オンライン起点でいかにオフラインを最適化していくか』考えて体験を設計していくということ。パーソナライズ×スマホUXを軸として、チャネルに投資をして土台を作る。製造も含めたバリューチェーンを磨いていくに力を入れる」(深山氏)

まずは化粧品領域から「パーソナライズ×スマホUX」のモデルを広げていく方針で、今年の春頃を目処にスキンケア商品も販売する予定。ゆくゆくは化粧品以外も含めて、いくつかのブランドを保有するD2Cホールディングスを目指していきたいという。

フードメディアのChefclubが月間10億オーガニックビューを達成した背景

Chefclub(シェフクラブ)は調達額がわずか350万ドル(約3億8300万円)だったことから、これまであまり注目を集めてこなかった。しかしソーシャルメディアプラットフォームで徐々にメジャーなブランドとなり、今やTastemadeやTastyの直接の競合となっている。

これまでのレシピサイトやレシピブランドと異なり、Chefclubは食とエンターテインメントの交差点にひたすら力を入れている。Chefclubのビデオをいくつか見たら、おそらく「なんだ、これは」というような感想を持つだろう。

チーズがやたらと溶けているし、何でもかんでも揚げたりしている。筆者の周囲では、テレビの料理番組にまったく興味を示さなかった人たちでさえChefclubのビデオに取り憑かれている。

Chefclubの共同創業者であるThomas Lang(トーマス・ラング)氏は筆者に「我々は普通の人で、テレビや本で見るような料理のスキルは持ち合わせていない。キッチンのキャビネットを開け、普段の食材を使った。ずっと変わらずにそうしてきた」と語った。

この方針はとてもうまくいっているようだ。Chefclubには、複数のソーシャルメディアプラットフォーム全体で7500万人のフォロワーがいる。ビデオは1カ月に10億回再生され、2億人にリーチしている。同社は有料メディアには1セントも支払わずに、ユーザーベースを増やしている。

Chefclubはリーンな社風で従業員はたったの50人だ。チーム全員がパリにいて、そのうち3分の1はフランス人ではない。フランスのDNAが色濃いが、必ずしもすべてのコンテンツを世界のあちこちの地域に適応させなくてもいいことにChefclubは気づいた。ビデオの70%は世界中で楽しまれている。

ChefclubはFacebookを最優先にコンテンツを最適化している。多くのパブリッシャーから聞いているが、Facebookのアルゴリズムに対応して多くの人に届けるのはますます難しくなっている。しかしChefclubはFacebookのアルゴリズムの変更に常に対応してきた。この不断の努力が同社の成長の鍵だ。多くのメディアブランドはFacebookをあっさり諦めた。

Facebookに比べるとほかのソーシャルネットワークには対処しやすいようだ。Chefclubは現在、YouTube、Snapchat(フランスとドイツでは「ディスカバー」で提携)、Instagram、TikTokを積極的に使っている。Chefclubはヨーロッパとラテンアメリカではトップに立っているという。米国ではまだ成長段階で、2019年に米国で10億ビューに届こうとしている。

ではメディアの成長戦略をビジネスにどう生かせるだろうか。ChefclubはD2Cに力を入れている。同社はまずレシピ本を出した。本に載っているQRコードをスマートフォンでスキャンすると、ビデオを再生できる。レシピ本は同社のウェブサイトから50万部売れた。

最近は子供のための料理キット「Kiddoz」を発売した。この本には20種類のレシピが掲載され、使いやすい計量カップとアプリも付属している。

次に、Chefclubは小売業者と提携してブランドをライセンス化し、ブランドを冠した製品を販売しようとしている。近い将来、Chefclubブランドの調理器具やおもちゃを購入することになるかもしれない。

「我々には『ケーキの上のサクランボ』と呼んでいる、もうひとつのラッキーな収入源がある」とラング氏は言う。YouTubeなどのソーシャルプラットフォームから広告の分配金が入ってくるのだ。これが主眼ではないが、Chefclubは特段の労力をかけることなく、月に20万ドル(約2200万円)の広告収入を得ている。

さらにChefclubは、コミュニティのメンバーもコンテンツを制作してもらおうとしている。コンテンツをスケールするために、Chefclubはユーザーが制作したコンテンツをほかのメンバーに公開するプラットフォームを目指している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

D2Cは喜びとシンプルさを届ける

D2Cは複雑な製品カテゴリに向いている

画像クレジット: adamkaz (opens in a new window)/ Getty Images

ホリデーシーズンが近づくと、空気が張り詰めてくるのを感じる。どうすれば素敵なギフトを選び出すことができるだろう?ありがたいことに、バスソルトから植物、さらには有機肥料に至るまで、D2C(直接販売)に属する、多くの楽しいカテゴリーが存在している。

かつてニューヨーク市に本拠を置くVC会社が私たちに尋ねた。「消費者への直販ルートで発売される製品が非常に増えていますね。それらを追跡なさっているのは結構なことです。ところで、どのセグメントがD2Cにつながりやすいかを教えていただくことは可能でしょうか?」と。まあ言い換えれば、彼らは私たちに超能力者になれと要求しているようなものだ。

私たちは超能力者ではないが、その質問を見過ごすわけにはいかない。ブランドをD2Cに移行できる理由はたくさんある。Amazonのすべてのカテゴリをアンバンドルして、それぞれをD2Cに移行させることは可能だろう。それをただ行っているブランドは複数あるが、だからといってAmazonはすべての答を探せる場所ではない。

植物と肥料の例を見てみよう。私はこのホリデーシーズンに植物を贈りたいのだが、2つの問題がある。まずは友人の好みがわからないので、どの植物を選ぶべきか分からないのだ。そして2つ目は、適切な植物を選べたとしても、相手がそれをちゃんと育て続けられるかどうかがわからないのだ。

普通、人が植物の購入を考えるのは、素敵なシダやイチジクに心を奪われながら目覚めたときではない、むしろ朝の珈琲をすすりながら空っぽのバルコニーを眺めたときに、ちょっとした緑があるといいなと思ったときだ。人びとが買うのは植物ではない。良い眺めを買っているのだ。そして鉢植えのヤシの木は、見るひとに好ましい感情をよび起こす媒体なのだ。

しかし、もし彼が植物の世話をすることができない場合はどうなるだろう?その代わりに本当に素晴らしいローソクとかを買うべきだろうか?オンラインの植物ストアであるRootedは、必要な光の量や植物に水をやる必要がある頻度などの基準をつかって、商品を分類している。そのおかげで、私は「実質的に、ほぼすべての条件に適応できる」Tim(サンセベリア、英語ではsnake plantとも)を発見することができた。

製品の中には複雑なものがある。どの2つの植物もみな違っていて、どの2つの植物バイヤーもまた同じではない。それは複雑なのだ。苗床に足を踏み入れて、植物を自分で選び、添えられた指示を読むことはできるが、それでもそれをきちんと育てる責任はあなた側にあるのだ。

RootedやBloomscapeといった企業は、あなたが「気分」を買っていることを知っているので、彼らは購入後の不協和音を回避する手助けをしてくれる。彼らは、適切な植物を選択することから始まる顧客重視の製品体験を提供し、ユーザーを教育するための入門キットを提供する。これらはすべて、慎重にデザインされたフレンドリーな教育コンテンツを通じて提供される継続的なポジティブフィードバックループの中に含まれているのだ。

ブランドはD2Cに移行することで、購買体験をパーソナライズすることができ、顧客の喜びと使い勝手を最適化でき、正しいやり方で教育し、そして最終的に、顧客が求めていた気分を手にすることができるように導けるのだ。

このアプローチは、複雑であると考えられているあらゆるカテゴリで機能する。それが、コーヒー、ワイン、栄養補助食品、あるいは植物のいずれであっても、そうした製品は顧客に合わせて調整する必要がある複雑な体験であり、教育プロセスが非常に大切なものなのだ。それを正しく行うことができるブランドは、D2Cに移行することで、顧客に適切な体験を得てもらうことができるのだ。

普通人々は、変化に抵抗するものだが、彼らは自分たちをバージョンアップしてくれるブランドは愛してくれるのだ。未知に対する恐れと、間違った決定は、購入後の不協和音を招く。悪いブランドが不協和音を呼び込むのに対して、良いブランドはこの恐れを弱める。それがいいものになるか悪いものになるかは、入門体験、直感的なデザイン、コンテンツ、オンラインサポート、顧客レビュー、そしてアフターサービス体験よって決まる。

電力を蓄えるバッテリーのように、ブランドは感情的な状態、プラスとマイナスを蓄える。Comcast(米国のケーブルTV会社)との間で消費者が行う相互作用は、Apple Storeへの訪問とは異なる感情を引き起こす。

例えば、快適な履物を製作するには複雑なエンジニアリングが必要だ。ウォーキング、サイクリング、ランニング向けのユニークなタイプがあるが、どれがあなたに合っているかをどのように判断すればいいだろうか?今年リリースされたアプリであるNike Fitは、AIを使用して、顧客が自分の足に最適にフィットするものを見つける手助けする。

「5人のうち3人は、間違ったサイズの靴を履いている可能性が高いのです」と同社は声明で述べている。「長さと幅は、靴を快適にフィットさせるために十分なデータを提供していません。私たちが知っているようなサイズ決めは、複雑な問題を大幅に単純化しているのです」。AIは、右足が左足よりも大きいときにはそれを告げ、最高のスニーカーを推奨してくれる。なんて気持ちが良いんだ!NikeがD2Cチャンネルに倍賭けを行うことにしたのも不思議ではない。

最終的に結果を出せているのは、顧客の問題を認識して解決しているブランドである。 eコマースとD2Cは、まさにそれを行うための媒体なのだ。優れたブランドは、複雑な製品にシンプルさをもたらし、魔法のようになじみのあるものにしてくれる、優れた体験デザインを提供するのだ。

【編集部注】著者のAshwin Ramasamy(アシュウィン・ラマサミー)はPipeCandyの共同創業者である。PipeCandyは、eコマースおよびD2C企業に関する洞察と予測を、アルゴリズムによって生成して提供している。彼の会社は、投資家、銀行、ハイテク企業、政府などが、世界のeコマースの状況を理解することを助けている。@Ashwinizer

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(翻訳:sako)

肌診断を軸にカスタマイズした美容サプリをサブスク型で提供、「FUJIMI」運営が1.5億円を調達

肌診断を軸にしたカスタマイズサプリ「FUJIMI」を展開するトリコは10月23日、ポーラ・オルビスホールディングスとXTech Venturesを引受先とした第三者割当増資により1.5億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してFUJIMIのさらなる販売促進と認知拡大を目指していく計画。ポップアップストアやリアル店舗などオフラインチャネルの開設に加えて、新商品の開発やメディア事業にも力を入れていくという。

トリコは2018年4月の創業。今回の資金調達はプレシリーズAラウンドに当たるもので、今年4月にはXTech Venturesとバルクオム代表取締役の野口卓也氏から3000万円を調達している。

約20問の肌診断で、肌に合ったサプリをカスタマイズ処方

冒頭でも触れた通り、FUJIMIは肌診断の結果を基にユーザー1人1人の肌に合わせた美容サプリをカスタマイズ処方し、サブスクリプション形式で提供する。

使い方は簡単で、ユーザーはオンライン上で「ほおに触れた時の肌の感触は?」「化粧のノリは?」など約20問の質問に答えていくだけだ。FUJIMIではビタミンACE、ビタミンB、コラーゲン、プラセンタなど11種類のサプリを用意していて、肌診断の結果からユーザーごとに5種類をピックアップ。それを1袋5粒入りのパック(1日分)にして、30日分を1箱にまとめて届ける。

料金は1ヵ月分が6400円の定額モデル(単発で購入することも可能)。現時点でユーザー自身がサプリの内容を選ぶことはできないけれど、肌診断をやり直すことでその時々の肌の状態に合わせたサプリを購入することができる。

トリコ代表取締役社長の藤井香那氏によると「くすみや乾燥、ニキビ、シワ、シミなど人ごとに様々な肌の悩みを抱える中で、適切なアプローチができるようにサプリの開発や種類の絞り込みにはかなり時間をかけた」そうで、開発前には120人以上の女性にヒアリングして悩みを研究してきた。

その上で米国ISNFサプリメントアドバイザー資格を持ち、機能性表示食品検定協会の理事を務めるサプリメントの専門家をアドバイザーとして迎え、1万以上ある国内外の肌に関する研究論文などをもとにしながら11種類のサプリを調合。肌診断のアルゴリズムについても同様に専門家の知見を借りながら開発を進めてきたという。

現在のメインターゲットは美容に気を使う30〜40代の女性。年齢と共に肌の状況が変わり、スキンケアの方法もステップアップが必要になる中で「外側だけでなく内側からのケア」に意識を向けている層に訴求をしていく。

「そもそも何を飲めばいいかわからないという人にとっては、肌診断を通して自分の肌に合ったサプリが見つかるのが特徴。美容意識が高く自身でビタミンやミネラルなどのサプリを取っている場合でも、それぞれボトルが分かれているので毎回何箱も開けて飲むのは大変だし、自分に合うものを何種類も試しながら探すのは手間もかかる。FUJIMIでは必要な5粒のサプリを1日分ごとに包装しているので持ち運びやすいし、飲みやすい」(藤井氏)

診断を実施するとその結果に合わせた5つのサプリのほか、肌の状態を示したチャートやアドバイスなどが表示される

今年の4月からスタートしたサービスのためまだまだ認知度は限られるものの、実際に使ったユーザーの翌月継続率は90%以上。参考までに、これまで提供してきたサプリの数は累計で100万粒を超えているそうだ。

トリコではInstagramで12万人以上のフォロワーを抱えるメディア「SkieNa(スキーナ)」も展開していて、同メディアも強化しながらより多くのユーザーにアプローチしていくことを目指す。

今後は新商品の開発やオフライン展開を強化

FUJIMIのアイデアはもともとトリコで美容系のメディアを展開していた時に生まれたものだ。

藤井氏は学生時代に「ヘアラボ」などメディア事業を手がけるアラン・プロダクツ(当時の社名はゴロー、2016年にユナイテッドが子会社化)でインターンをした後、ユナイテッドにジョイン。同社の社内起業支援制度を活用して子会社の代表を務めた経験もある。

トリコのメンバー。前列左から2番目が代表取締役社長の藤井香那氏

自己資本で立ち上げたトリコでは化粧品やダイエット食品、健康食品などの情報を扱うWebメディアから事業をスタート。そのサイトでたくさんの商品の記事を書くうちに「美容への興味が高まる一方で、自分自身が本当に買いたいという商品があまりなかった」ことから、それならば自分で作ってしまおうとFUJIMIの構想が生まれた。

「スキンケアに関する商品は外側からつけるタイプのものが多いが、それだけでは0.02ミリの角質層までしか届かずケアとしては足りないのではないかと体感的に思っていた。ビタミンやオイルといった必要な美容成分を(サプリを通じて)内側から取れることを勉強して、『内側からのスキンケア』は市場としてもまだ空いているし、チャレンジできる余地があると考え開発を進めてきた」(藤井氏)

グローバルで見ると、サプリのパーソナライズD2Cとしてはゴールドマンサックスなどから累計で4000万ドル以上を調達している「Care/of」のようなプレイヤーも出てきていて、トリコでもベンチマークの1つとしているそうだ。

商材としてもパーソナライズ化やECでのサブスクリプションモデルとの相性が良いこともあり、現在のビジネスモデルを採用。構造はシンプルだが、その分プロダクトの設計やデザインにはかなりこだわりを持って作ってきた。

トリコは藤井氏を含めて3人の共同創業者が全員デザイナーで、プロダクトやWebサイトなどのクリエイティブは全て社内のメンバーが担当。「サプリメントについては『ダサい』『胡散臭い』などマイナスなイメージを持っている人もいるが、ビジュアルを変えて『持っているだけで女性のテンションが上がるようなもの』を目指している」(藤井氏)という。

まずは美容領域からスタートし、今後はFUJIMIブランドの商品ラインナップを増やしていく方針。すでに現在の肌診断結果を用いてサプリとは別の商品を提案するための準備も始めている。

またトリコではラインナップの拡大と合わせて、ポップアップストアやリアル店舗の出店などオフラインでの顧客との接点作りも進めながら、強固なブランドの確立を目指していく。

「OEMで工場にお願いして作ってもらっているので、他社が似たような商品を開発することもできる。そういう意味では中長期的に独自のブランドを確立させていくことが重要。今はまだブランドにもなっていないので、まずは今回調達した資金も活用しながらブランド化に繋がるような取り組みに力を入れていきたい」(藤井氏)

インフルエンサーの“個人ブランド”が主流の時代へ 、D2C基盤「picki」が5つのファッションブランドを公開

「これからは個人が立ち上げたパーソナルブランドが主流になる」

そう話すのはインフルエンサーのファッションブランド作りを支援するD2Cプラットフォーム「picki」を手がけるpicki代表取締役の鈴木昭広氏だ。

同社では服作りやブランド作りのノウハウを持っていない個人でも自身のブランドを作れるように、企画から生産、物流までの工程を全面的に支援するサービスを手がける。鈴木氏の表現を借りれば「出版社が企画段階から入って作家をプロデュースするように、ブランドの企画段階から入ってインフルエンサーをプロデュースする」のがpickiの役割だ。

そのpickiは10月15日より、人気インフルエンサーが手がける5つのファッションブランドを順次リリースする。

インフルエンサーの個人ブランド作りを全面バックアップ

今回pickiが発表したのは2019年秋冬物シーズンにリリースする5ブランド。バチュラーのシーズン3に出演する中川ゆり氏を始め、田島ひかる氏、佐々木ののか氏、Rinkarin氏、anna氏の5名が各々のファッションブランドを開設する。pickiにとっても本格的なブランドのリリースは今回が初めてだ。

pickiは冒頭でも触れた通り、インフルエンサーのもの作りに伴走するプラットフォーム。社内にデザイナーを始めとしたプロフェッショナルを抱えるとともに、パートナー工場や生地店とのネットワークを活用することで商品の「企画、生産、販売、発送」をトータルでプロデュースする。

従来のアパレル産業では分業体制が進んでいたため、消費者の手に商品が届くまでの工程を複数のプレイヤーが分担していた。一方「D2Cプラットフォーム」を謳うpickiではその中間に位置していた商社やメーカー、卸売、小売店の業務をまるっと担い、消費者に直接商品を届ける。中間業者が減ればマージンも減るため、その分だけ利益率も高くなりインフルエンサーの取り分も増える構造だ。

創業者の鈴木氏は、pickiを始める前に韓国や日本でアパレルOEM会社を経営していた人物。その後「世界に挑戦できるような事業をやりたい」という思いから、約1年半の間に世界50ヶ国以上を回ったそうだ。

「海外では日本のものづくりに対する評価が高かったことに加え、ちょうどアメリカでD2Cモデルのブランドが勢いを増していた。この領域なら自分でも挑戦できると考え、2017年に日本で再び会社を立ち上げた」(鈴木氏)

最初はアパレルOEMの経験も生かしD2Cブランドの立ち上げを下請けすることからスタート。いくつかの案件に携わる中で、特に伸びていたのがインフルエンサーが立ち上げた個人ブランドだ。

わずか1週間で1000万円規模の売上を記録するブランドがいくつか生まれたほか、世の中には年商で二桁億円規模に達するようなものも登場。そういった影響から最近ではインフルエンサーによるブランド立ち上げ事例がどんどん増加していっているという。

「これまでECで売れていたのはマス向けのものが中心だったが、近年はロングテールのエッジが効いたブランドがより売れるようになってきている。その中でアパレル企業のデザイナーが1人で何十ものデザインを考えてPDCAを回していくやり方よりも、コミュニティの中心にいる人が、熱狂的なファンに対して自らデザインした商品を届けていくスタイルが広がっていくのではないかと考えるようになった」(鈴木氏)

それならばインフルエンサーが自身でブランドを作ってしまえば良いと思う人もいるだろうけど、多くのインフルエンサーは服作りやブランド立ち上げのプロではない。そこでpickiのように全体をプロデュースできるプレイヤーが求められるわけだ。

国内でもインフルエンサーのブランド立ち上げをサポートする会社はいくつかあるものの、鈴木氏によると「実は韓国から買い付けてきた商品のタグを変えて販売しているケースも多い」そう。完全にオリジナルでこだわりのブランドを作れることはpickiのウリとなっている。

ブランド作りの過程をエンタメ化しファンを巻き込む

pickiで展開するような個人ブランドにおいては、いかにファンを巻き込み熱量の高いコミュニティを築けるかが1つのポイントになる。その上で鈴木氏が重要視しているのが「ブランドを作る一連の過程自体をエンタメ化すること」だ。

ブランド作りにかける思いをまとめた記事や制作過程を追った映像をInstagramを中心としたSNSやECサイトを通じて発信したり、生地や服の型、袖の色などに対するファンの意見を各工程ごとに募ったり。服作りのストーリーをファンと一緒に作っていくことで強固なコミュニティができるという。

「よく話しているのが『7割のサンプル』を作るということ。あえて3割の余白を残すことで、ファンの人たちが一緒にものづくりに参加できる隙間を設ける。たとえばサンプルの段階で試着会を開き、着心地やボタンの色や形のような細かいデザインに対してフィードバックをもらう。そうするとファンの人たちは『この服は自分が一緒にデザインした』と感じることができ、コミュニティに対して一層愛着がわく」(鈴木氏)

鈴木氏はこの仕組みがうまく機能することで「実際に売る前から商品が売れるモデル」が成立すると話していた。

もちろん個人を軸としたコミュニティから生まれたブランドには課題もある。そのコミュニティがよっぽどの影響力を持たない限り、そこまで大きな規模には育たないという点だ。

鈴木氏もそれが1つの欠点であるとした上で「30億円などの大規模なブランドではなく、年間で1億円〜数億円売れるブランドが作れればいい」と話す。

「季節ごとに複数の型数の商品を作れば、数百〜数千人のコミュニティでも年間1億円規模は十分に目指せる。自分たちの目標はそういったニッチなブランドを100個生み出すこと。どんどんブランドを作っていけばデータが蓄積され、この領域で日本で1番データを持っている会社になる。そうすればブランド間でナレッジを横展開したり、データに基づいてコミュニティを育てていくこともできる」

「ニッチでも尖っているブランドは海外にも需要があると考えている。売れてるものをコピーして同じような商品を作ったり、他国から仕入れてきたものを自社ブランドとして海外に展開していくのは難しい。自分たちがやらなきゃいけないのは日本発の尖ったブランドを立ち上げ続けることだ」(鈴木氏)

「ブランドメイクカンパニー」としてブランド開発を加速

左からGOコピーライター 飯塚政博氏、picki代表取締役 鈴木昭広氏、GO代表取締役 三浦崇宏氏

pickiでは今年5月にサイバーエージェント・キャピタル、Coral Capital 、VOYAGE VENTURES、コルクらから6000万円の資金調達を実施したことを発表していたが、今回新たにクリエイティブカンパニーのThe Breakthrough Company GOと資本業務提携を締結したことも明かしている。

株主との連携については、たとえばpickiで最初にインフルエンサーの原体験を聞き出す際に、コルク代表取締役会長の佐渡島庸平氏直伝の質問集が使われているそう。今後はそこにGOのナレッジもプラスしながら、ファッションブランドを立ち上げたいインフルエンサーを支援する「ブランドメイクカンパニー」としてブランド作りを加速させていく計画だ。

「当初から思い描いているのは『日本のものづくりをエンタメ化して、誰もがクリエイターになれる世界』を実現すること。YouTuberが動画を作って稼げるように、個人がファッションクリエイターとしてブランドを立ち上げ稼げるような世界を作っていきたい」(鈴木氏)

月額1280円のコーヒーサブスク「PostCoffee」が5000万円調達、自分に合ったコーヒーが見つかる機能強化へ

コーヒーのサブスクリプションサービス「PostCoffee」を運営するPOST COFFEEは10月1日、セレス、朝日メディアラボベンチャーズ、インキュベイトファンド、スタディーズより総額約5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

PostCoffeeはスペシャルティコーヒー(品質の良いコーヒー)を自宅で気軽に楽しめるサービスだ。

現在はエチオピアやケニア、コロンビアなど世界各国から厳選した10種類のシングルオリジンにオリジナルブレンドを加えた全11種のコーヒー豆を用意。これをアプリ上から手軽に注文できる形で提供する。

各パッケージは約10杯分に相当する150gで一律1280円。ユーザーは注文時に豆のままか挽いたものかを選ぶ。

豆が無くなりそうなタイミングに合わせて「アプリからワンタップ」で注文できるのが特徴。最短で翌日ポストに投函されるので不在時でも心配はない。個別で購入することもできるが1280円からの月額会員になると送料が無料になるほか、登録後に3種のコーヒーを飲み比べられるスターターキットを無料で試せる。

このキットではオリジナルドリッパー、3種のコーヒー豆(各1杯ずつ)、ペーパーフィルターがセットになっているのでマグカップとお湯を用意するだけでOK。2週間のトライアル期間が設けられているから、スペシャリティコーヒーを楽しんでみたい人はここから始めるのもありだろう。

POST COFFEEで代表を務める下村氏は、同社を立ち上げる前に渋谷区富ヶ谷でコーヒースタンドをオープンし、2年半ほどバリスタを兼務していたという珍しい経歴の持ち主だ。

近年日本でもブルーボトルコーヒーの上陸などで「サードウェーブコーヒー」の注目度が増しつつあるが、スペシャリティコーヒーの流通量はまだ限定的。下村氏によると販売チャネルが限られるため、都内でも手に入れにくい状況だという。

「質の高いコーヒーとユーザーの距離を最大限縮めることが目標だ。コーヒーはそもそも種類が多く、生産地や焙煎度合いによっても味が異なり、自分に合ったものを選ぶのも大変。まずは手に入りにくいスペシャリティコーヒーをワンタップで、オンデマンドで注文できる仕組みから始めた。ゆくゆくはユーザーの好みとテイストのデータを基に1人1人に合ったコーヒーを提供できるようにしていく」(下村氏)

3月のサービスローンチから約半年、現在のアプリダウンロード数は数千件。徐々にではあるけれど、コーヒー好きのユーザーを中心に有料会員として継続的にPostCoffeeを活用する人も増えてきた。

下村氏の話ではユーザーからのフィードバックなども踏まえて年内を目処に大型のアップデートを加えた新バージョンをリリースする計画。今回の資金調達もそれに向けた人材採用や環境整備が主な目的だという。

「パーソナライズ」機能で個々に合ったコーヒーライフを提案へ

POST COFFEEは2018年9月の設立。創業者の下村氏はもともと兄弟でデジタルクリエイティブスタジオを立ち上げ、デザイナー兼エンジニアとして16年にわたり同社を経営してきた。

スタートアップにCTOとして参画した経験もあるなどテック業界での経験が豊富な一方で、上述したように2年半ほどコーヒースタンドのバリスタを務めコーヒーの知見もある。

PostCoffeeを作った理由の1つは「実際にローカルコーヒー店を経営する中で、その商圏の狭さを経験したから」。そもそも日本ではあまり広がっていないスペシャリティコーヒーをもっと多くの人が楽しめるように、「場所問わずスマホがあれば簡単に良質なコーヒーを手に入れられる仕組み」を作ることからチャレンジを始めた。

左からPOST COFFEE代表取締役の下村領氏、取締役の下村祐太朗氏

今後PostCoffeeではさまざまなアップデートを行っていく予定だが、キーワードは「コーヒーのパーソナライズ」だ。

ライフスタイルやユーザーの好み、好きな食べ物などの質問に応えることで、コーヒーの淹れ方からコーヒー豆の種類、頻度、量、価格といった様々な要素をパーソナライズした上で提供。飲んだコーヒーのフィードバックを繰り返していけば自宅に届くコーヒーもより最適化されていくという。

「(ライフスタイルや好きなスイーツなど)コーヒーに直接関係ない部分も含めて好みを把握し、個々にあったコーヒーを提供する。ユーザー自身が必ずしも直接豆を選ばなくていいような仕組みを作ることでハードルを下げ、より多くの人にスペシャリティコーヒーを楽しんでもらいたい」(下村氏)

ローンチ時から「AIバリスタ」機能についても言及していたが、まずは第一ステップとしてチャットボットのような形で対話しながらコーヒーのパーソナライズを行う。コーヒー豆の種類も30種ほどに増やす予定で、料金もライトなものを追加していくとのことだ。

並行してWeb版とAndroid版の開発も進めていく方針(現在はiOS版のみ)。コーヒー豆については直接農園から手配したものをユーザーにダイレクトに届ける「D2Cモデルのコーヒーブランド」にも取り組むほか、オフライン店舗や新しい焙煎所の開設、リアルなイベントの実施などにも着手する。

「現在はシェアロースターを使って焙煎しているが、今後自分たちで焙煎機を導入して独自の焙煎場を立ち上げる予定だ。近い将来ユーザーが立ち寄れるオープンな場所を開設したいと考えていて、新しい味を体験したり、コーヒーについての理解を深めたりできるような空間を目指す」(下村氏)

オーダースーツD2C「FABRIC TOKYO」が3Dスキャン採寸の新ブランド「STAMP」を公開

オーダーメイドスーツなどのD2Cブランドを展開するFABRIC TOKYOは9月11日、招待制の新ブランド「STAMP」のティザーサイトを公開した。

STAMPは同社が運営するビジネススーツやシャツのD2Cブランド「FABRIC TOKYO」よりカジュアルなアイテムを扱う、カスタムオーダーのD2Cブランドだ。クリエイティブ・ワーカーが対象というSTAMPでは、当初、デニム製品から取り扱いを始める。ユニセックス展開でメンズ、レディースともに扱うということだ。

従来ブランドのFABRIC TOKYOでは、店舗で採寸してもらってデータを登録しておくと、必要なときにマイページから欲しいスーツやシャツが注文できるのだが、STAMPは、より“テクノロジーをフル活用した”発注スタイルを採用。無人店舗で、3Dスキャンによる採寸を行い、服を注文できるという。

FABRIC TOKYOは新ブランド立ち上げに合わせて、9月13日から29日までの期間限定で、招待制のポップアップストアを新宿マルイ本館内に開設する。ティザーサイトでメールアドレスと名前を登録して申し込むと、ポップアップストアへの招待状が順次届くので、店舗に赴き、サイズを計測。後日、計測サイズに基づき、カスタムオーダーデニムが届く、というのが注文の一連の流れになる。

FABRIC TOKYO代表取締役の森雄一郎氏によれば、今後、招待枠を徐々に広げていき、反響を見ながらリアル常設店の出店も拡大していくという。

計測データはFABRIC TOKYOとは別のデータベースに保存され、現時点では互いのブランドでの転用は考慮されていないが、森氏は「将来的にはデータ連携を見据えている」と話している。

3Dスキャンの技術について森氏は「たった数秒で全身のサイズの数万点をスキャンし、高い精度を実現している」と述べる。テクノロジーは、海外のスタートアップと共同開発したもので、「採寸の精度に関しては2年近くの試行錯誤を経て、受注生産型オーダーメイドのフィット感・満足度を担保できるレベルまで高めることができた」とのことだ。

またユーザー体験としては、FABRIC TOKYOと同様、STAMPでも店舗型にこだわるという森氏。「立ち寄れる手軽さとリアルを介すことの安心感を用意した。テクノロジーを利用していて新しいけれど、手軽さと安心感を感じるUXの実験だ」と述べている。

計測データを使ったカスタムオーダーのD2Cブランドといえば、今日ヤフーによる株式公開買い付け実施が明らかになった、ZOZOが思い浮かぶところ。ZOZOスーツと自分のスマホアプリを使ったスキャンでは、私も立ち位置の調整やエラーで何度かやり直しさせられた経験があるので、店でサクッと計測できるのであれば、買い物のついでに出向くのも悪くないな、と感じる。

同社は今年5月に丸井グループからの資金調達を発表している。8月にFABRIC TOKYOブランドで実施した「女性のためのメンズオーダースーツ採寸イベント」では1週間の予約枠がスタート前に埋まり、キャンセル待ちが出るほど反響があったそうだ。

近大なまずも素材に、ドックフードD2Cサブスク「PETOKOTO FOODS」が予約受付開始

シロップは7月8日、国産素材を使ったドッグフード「PETOKOTO FOODS」(ペトことフーズ)のサブスクリプション(定額)サービスの予約受付を開始した。

PETOKOTO FOODSは、獣医師が監修したヒューマングレードのドックフードで、販売形態はメーカー直販、いわゆるD2C(Direct To Customer)だ。予約受付開始を記念して、7月21日までに申し込んだ利用者の中で、先着150名は初回配送のサブスクリプション料金が70%オフになる。

同社は、ペットライフコミュニティ「ペトこと」や保護犬猫マッチングサイト「OMUSUBI」を運営している2015年3月設立のスタートアップ。同社が運営するサイト(メディア)では、がん専門獣医師などペットの専門家が140名以上執筆しており、今回のフードはこの専門性を生かして食材・製法・栄養に徹底的にこだわったという。なお、PETOKOTO FOODSの売り上げの1.2%はOMUSUBIに登録する動物保護団体へ寄付される。

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今回発売されるのは、全米飼料検査官協会(AAFCO)の栄養基準(7月取得予定)を満たしたグレインフリーの総合栄養食で、「ビーフレシピ」「ポークレシピ」「チキンレシピ」「フィッシュレシピ」の4種類を用意。ドックフードの製造は、ペットフードだけでなく、食肉や水産物の加工、卸売りなどを手がける鹿児島を拠点とするNフードサービスが担当する。

ビーフレシピの原材料は、牛肉、卵、米、ブロッコリー、人参、りんご、米麹、フィッシュオイル、米油。

ポークレシピの原材料は、豚肉、卵、米、人参、ブロッコリー、りんご、米麹、フィッシュオイル、米油。

チキンレシピの原材料は、チキン、チキン(皮)、さつまいも、卵、ブロッコリー、人参、りんご、フィッシュオイル、米麹。

フィッシュレシピの原材料は、さつまいも、近大ナマズ、卵、ブロッコリー、人参、りんご、米麹、フィッシュオイル、米油、しいたけ、えのき、のり。いずれのフードも、人工甘味料、香料、保存料、着色料、遺伝子組み換え作物は使用していない。なお、フードの原材料はNフードサービスが拠点する九州産のものを中心に利用する。
初回配送の参考価格は、2.5kgの小型犬だと300gのフード×12パック(3.6kg)となる。通常料金は5500円だが、先着150名の70%オフを適用すると約1650円だ。水分量が同程度のウェットフードの価格を比較すると、シーザーのパウチタイプが3.6kg換算で4000円弱なので若干割高になる。

初回配送後は、それぞれの犬のカロリー量に合った頻度で配送される。配送されるごとに自動課金されるが、契約期間に縛りはないのでいつでもキャンセル可能だ。フードは、300gパック12個入り(3.6kg)もしくは、300gパック24個入り(7.2kg)などの単位で届く。

ペットフード協会はペットフード(総合栄養食)を「ドライ」「ソフトドライ」「セミモイスト」「ウェット」の4つに分類しているが、PETOKOTO FOODSは厳密にはどの分類にも属さない。ウェットで定義されている水分量と同じ75%程度ながら保存料を使用していないのが特徴で、同社はこのフードを「フレッシュ」と定義している。ちなみにウェットでは、品質保持のために殺菌工程を経て缶詰やレトルトパウチなどに充填される。

一方従来のドライフードは、常温保存を可能にするために水分量を10%以下まで落とす加熱発泡処理が施されており、栄養価やビタミンがどうしても失われてしまう。PETOKOTO FOODSでは、必要最低限の加熱処理によって食材の栄養価を損なうことなく摂取できるという。

同フードを監修した獣医師は、世界小動物獣医師会(WSAVA)のグローバル栄養委員会創立メンバーであり、ニュージーランド・マッセー大学博士のニック ケイブ氏。国内ではなく海外の獣医師に監修を依頼した理由としては「栄養学に関しては海外のほうが研究が進んでいるのが現状で、最新の栄養学を基にフードを開発するため」とのこと。

犬種や体格、体重によって与えるフードの量は異なるが、ニック医師と作成した独自の計算式によって最適な1日のカロリー量を提案。カロリー量に合った配送頻度で指定した宛先に届く。フードは、Nフードサービスの工場で、製造後にすぐに瞬間冷凍で密封殺菌された状態で配送される。

フードを与える際は、事前に冷蔵保存で解凍したあとに40度の湯で温めることで香り豊かなフードになる。冷蔵保存ではなく、40度の湯で30分温めて直接解凍することも可能だ。

今度の展開として同社は、フードのカロリー量と犬の体重の変化をモニタリングし、データを蓄積していくとのこと。また、目黒にある同社のオフィスをドッグラン&ドッグカフェとして開放する予定。この反響を検証して、街中へのポップアップストア、店舗開設を検討するそうだ。

フードに関しては、アレルギーフリーやフリーズドライなどさまざまなメニューを開発予定で、ジャーキーなどおやつも用意したいとのこと。将来的には犬の食生活すべてをデータで管理する方針で、同社は療法食やヴィーガン食などにも注目している。

なお日本では猫の飼育数が犬を上回っているが、猫用フードの開発・販売については「時間がかかります」との回答。猫は犬と食習慣が異なり、嗜好性が高いためだそうだ。まずは犬用フードのクオリティーをさらに上げることに専念するという。

人間の食品並のこだわりドッグフードが届く「CoCo Gourmet」、運営は1800万円の調達も

ペット領域で事業を展開するバイオフィリアは6月3日、獣医師・動物栄養学博士が監修するドッグフードの定期購入サービス「CoCo Gourmet(ココ グルメ)」の事前予約受付をスタートした。

同社で代表取締役CEOを務める岩橋洸太氏の言葉を借りれば、CoCo Gourmetは「手作り食のようなドッグフード」のD2Cブランドだ。愛犬を家族のような存在として捉え、少しでも長生きして欲しいと考える飼い主に対して、素材や製法からこだわった健康的なドッグフードを定期的に届ける。

大きなコンセプトは(1)新鮮な食材をそのままに(2)手作りよりも健康的 (3)ヒューマングレードの3点だ。

一般的なドライフードやウエットフードとは異なり、新鮮な肉や野菜を必要最低限の加熱処理のみで調理して冷凍保存するため、食材の栄養価を大きく損なうことなく摂取できるのが特徴。食材そのものが含む水分を保持していることから犬にとっても食べやすいという。

「(ドライ加工やレトルト加工された従来のドッグフードの場合)常温保存ができるようにするため、水分量を10%以下まで落とす加熱発泡処理や、高温高圧による殺菌処理がされている。結果的に栄養価が低下してしまい、足りない分を後からサプリメントで補給するという声もよく耳にする」(岩橋氏)

また飼い主の中には「良いものを食べさせたい」と考えフードを手作りする人も少なくないそうだが、必要な栄養素を網羅した食事を作るのは簡単ではない。

CoCo Gourmetでは動物栄養学の専門家による監修のもと、栄養バランスの良いレシピを作成。総合栄養食の取得も申請中で「手作り食のような質と愛犬が健康的に生きるために必要な栄養素を両立した食事」(岩橋氏)を展開していくのが目標だ。

初期のタイミングでは「チキングルメ」と「ポークグルメ」の2種類を提供する計画で、価格は1箱あたり4480円(1.4kg / 3kgのトイプードルで28食分)。6月18日までの事前予約分については1箱980円で購入できる。

ヒューマングレードを謳っているように、これらのフードは人間が口にするものと同じ品質の食材を利用し、加工や配送、保管など全てのフェーズで食品と同等の基準で管理しているそう。ドッグフード専用の工場で作られることの多い従来の製品とは違い、人間用の食品を手がける工場が製造を担う。

アメリカで先行するペットフード×D2C

CoCo Gourmetを開発するバイオフィリアは2017年8月の設立。これまではペット領域でメディアやアプリなどの事業を展開してきたが、今回新たにフードのD2C事業を始める。

1つのきっかけは岩橋氏が愛犬2頭を立て続けに病気で亡くしてしまったこと。「もっと何かできることがあったのではないかと考えた時に、人間同様に動物にも大きな影響を与える『食』の領域でチャレンジしたいと思った」(岩橋氏)ところから、新しいフードを開発するプロジェクトがスタートした。

事業として継続するからにはビジネスとしてきちんと成り立つようなモデルを作る必要があるが、バイオフィリアCOOの矢作裕之氏によると「生鮮食品のような形でペットフードをD2Cモデルで展開するサービスは、アメリカでは数年前から出てきていて各社グロースしている」そう。

今年1月に3900万ドル(約42億円)を調達した「The Farmer’s Dog」を筆頭に1000万ドルを超える資金調達を実施済みの「NomNomNow」や「ollie」のようなプレイヤーが出てきていて、日本でも同じようなビジネスを展開できるチャンスがあると考えているようだ。

「日本において犬の飼育頭数は900万頭弱で減少傾向にあるものの、ドッグフードを含めペットフードの市場自体は拡大が見込まれている領域だ。飼い主がより良いフードを買おうとする文脈が広がってきているのではないかと考えている」(矢作氏)

左からバイオフィリア代表取締役CEOの岩橋洸太氏、同COOの矢作裕之氏

コアなユーザー層は子育てが一段落した夫婦や子どもがいない夫婦など、ペットを家族の一員として考え、ある程度のお金をかけたいとの気持ちが強い飼い主たちを想定。「『良いものを選んであげたいけれど、どれを選べばいいのかわからない』という課題に対して、圧倒的に良いソリューションを提供する」(岩橋氏)ことを目指している。

バイオフィリアでは今回CoCo Gourmetの事前予約受付の開始とともに、アプリコットベンチャーズとバルクオムCEOの野口卓也氏を引受先とする第三者割当増資により1800万円を調達したことも発表した。

調達した資金はCoCo Gourmetのマーケティングやサポート体制の確立に用いる計画。まずはフードの領域からスタートするが、ゆくゆくはペット領域でD2Cモデルの事業を横展開することも視野に入れているという。

自分好みのおやつが届くサブスクサービス「snaq.me」が2億円調達

おやつのサブスクリプションサービス「snaq.me(スナックミー)」を運営するスナックミーは5月28日、総額約2億円の資金調達実施を発表した。

スナックミーは2015年9月の設立。2016年2月には、おやつのサブスクサービスsnaq.meをスタートしている。このサービスでは、4週間または2週間に1度、8種類のおやつを詰め合わせた、おやつBOXがユーザーに届く。おやつのジャンルはクッキーやマドレーヌといった焼き菓子や、ドライフルーツ、ナッツ、チップス、あられなどの米菓、豆菓子などで、人工添加物や白砂糖、ショートニングが使われていないのが特徴だ。それぞれ20〜40グラムの食べきりサイズに梱包されており、詰め合わせ1BOXあたりの価格は1980円(税込・送料無料)だ。

ユーザーは、はじめに約1分間のアンケートによる“おやつ診断”で好きなおやつの傾向を送信し、定期便を申し込む。届いたおやつの評価をマイページからフィードバックすることで、次のBOXの中身を自分好みに変えていくことができる。おやつの種類は現在100種類以上で、そのうちの10〜20%を毎月入れ替えており、組み合わせは約1000億通りにもなる。

直近では、ユーザー数が月に約10%ずつ増えているというsnaq.me。ユーザーから集めた評価データは累計100万件に上っており、それを生かした商品開発も進められている。例えば、snaq.meの会員の95%は女性だそうだが「食べたいと思えるプロテインバーがない」との声が多かったという。このことから、植物由来の原材料のみで素材の数も絞った「CLR BAR(クリアバー)」を商品化。新ブランドとして展開している。

「サブスクリプションのプラットフォームとして集めたデータを生かして、メーカーとしても商品を開発しています。普通、メーカーがアンケートを取ろうとすると、なかなかアクティブな反応がもらえないことが多いが、snaq.meでは『次のBOXの中身がどんどん自分好みになっていく』というモチベーションから、フィードバック率も高いです」と説明するのは、スナックミー代表取締役の服部慎太郎氏だ。

「試作品を改良して時間をかけて開発するというより、Webサービスのようにできたものは製品として出してしまいます。そこからフィードバックをもらい、2〜3週間ぐらいで変えていき、ダメならやめてしまう。評価が高い商品は別のフレーバーを出すなどして、展開していきます」(服部氏)

商品開発については、自社での開発のほか、現在50社ほどと協力して行っているというスナックミー。「道の駅に商品を卸している地方のメーカーなどで、販売先がなかなか見つけられないが、いいものをつくりたい、というところが全国にある。そうしたメーカーへ顧客の評価を直接伝え、一緒に製品をつくっています」と服部氏は言う。

スナックミーでは、これまでサブスク会員に限定して販売していたもののうち、評判のよいものを会員外にもオンラインで販売している。5月21日からは「国立ドイツ菓子協会」が認める材料・製法による“ホンモノ”のバウムクーヘンの販売を開始しており、今後も月に何度かこうした販売を行っていく予定だ。

服部氏は「ユーザーは『おかし』というより『自分への定期的なごほうび』として使ってくれている。だからInstagramやTwitterといったSNSで、届いたBOXを撮影して投稿してくれ、SNS経由で友人へ紹介してもらうことが多い。そこで、定期便型では敷居が高いと感じている人にも、カジュアルに手に取って欲しいと考えています」と述べている。

資金調達により、スナックミーではユーザーの嗜好データ収集から分析、新商品開発に至る仕組みを強化していく構えだ。また倉庫などのオペレーションのボリュームも大きくなっていることから、設備投資を行い内製化を図るとしている。

スナックミーでは、これまでにも何度か、VCなどからの資金調達を実施している。今回の第三者割当増資の引受先はW VenturesSpiral Ventures JapanSMBCベンチャーキャピタルLINE Ventures朝日メディアラボベンチャーズの各社。このうちW VenturesとSpiral Ventures Japanが新たに投資家として加わっている。

写真中央:スナックミー代表取締役 服部慎太郎氏