メタバース化するファッションと現実を橋渡しするスニーカーマニアのためのアプリ

ファッションはメタバースへの移行期にある。

さまざまな高級レーベル、音楽そしてゲームは、バーチャルな世界で人目を引こうと躍起だ。それらに依存してきたイベントや娯楽の業界が休止を余儀なくされたパンデミック下では、バーチャルな物事が大衆文化を代表し始めている。

そこでは、これまで金と名声でしか獲得できなかったステータスシンボルの蓄積に必要なものは、富みではなく、想像力と技術力だけという環境が構築されている。

Marc Jacobs(マークジェイコブズ)Sandy Liang(サンディーリアング)Valentino(ヴァレンティノ)といった有名ブランドが任天堂の「あつまれ どうぶつの森」にデザインを提供し、ハイブベイは2020年5月末にゲームの中でファッションショーを開催する。またEpic Games(エピックゲームズ)の「フォートナイト」とSupreme(シュプリーム)などのブランドとコラボ(これはパンデミック前だが)などさまざまな交流を通じて、ファッションは、その関係性を保とうとゲーム文化に足場を築いている。

スタートアップ企業の創設者であり、そしてスポーツウェアの最大手企業の従業員としてその両方の業界で経験を積んだある起業家が、新しいアプリを立ち上げた。それは、現実とバーチャルのファッション世界の橋渡しとなるものだ。

目指しているのは一流ブランドを愛する人たちに、あこがれの製品のバーチャル版を集める場と、ポイントを貯めればそれが実際に買えるチャンスになることだ。さらにゆくゆくは、新しい才能を発掘して次世代のコラボの流れを作ろうと考えるブランドに自分を売り込み、デザイナーとして身を立てるきっかけを作る場をデザイナーの卵に提供する予定だ。

マークジェイコブズ「カブを売る? 私たちはAnimalCrossingFashionArchiveアカウントと提携してマークジェイコブズのお気に入り6点を『あつまれ どうぶつの森』に展示します。私たちのストーリーでコードをダウンロードしてください」

Agletの第1フェーズ

Adidasの元デジタルイノベーション戦略の責任者であったRyan Mullins(ライアン・ムリンズ)氏が開発したAglet(アグレット)という名のこのアプリは、限定エディションのスニーカーのデジタル版をコレクションできる場であり、将来的には、世界的デザイナーのVirgil Ablohs(バージル・アブロー)やKanye Wests(カニエ・ウェスト)を目指す人たちがメタバースのオリジナルスニーカーを作れるデザインツールにもなる。

2020年4月に、TechCrunchがムリンズ氏に話を聞いたときは、彼はドイツで足止めされていた。彼はロサンゼルスへの移住に合わせて会社を立ち上げる予定だったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大予防対策のために旅行ができなくなり、世界の国々がロックダウンしてしまったため、計画は大きく変わってしまった。

もともとこのアプリは、スニーカーマニアのための「Pokémon GO」になるはずだった。バーチャルスニーカーの限定版ドロップ(モデル)が街のあちらこちらに現れ、プレイヤーはそこへ行き、そのバーチャルスニーカーをコレクションに加えるというものだ。プレイヤーは、さまざまな場所へ移動することでポイントを得ることができ、ポイントはアプリ内購入や店舗での割り引きに使える。

「みんなの物理的な行動を私たちがバーチャルなお金に変換して、店舗での新製品の購入に使えるようにするというものです」とムリンズ氏。「ブランドは、プレイヤーに課題を出します。自分の街で他の人たちと競い合いながらいくつかの課題をこなし、勝利すると賞品がもらえます」。

Agletは、プレイヤーが遠征の際にどのバーチャルスニーカーを着用したかに基づいてポイントを決める。バーチャルスニーカーは、エアフォース1からYEEZY、さらにはもっと高価なものやレアなものまで、幅広く用意されている。それを履いて「外を歩く」ほどポイントがもらえる。だがしばらくするとスニーカーはすり減り、新しいものと交換しなければならなくなる。つまり、こうしてアプリにハマりやすくなるのが狙いだ。

アプリ内購入に使える通貨は、1ドル(5Aglets、約108円)から80ドル(1000Aglets、約8630円)の間で好きな額を購入できる。プレイヤーは、集めたスニーカーをアプリ内のバーチャル棚に飾ったり、他のプレイヤーと交換したりもできる。

街がロックダウンされ自宅待機が要請されるようになると、ムリンズ氏と開発者たちは、そのゲームを急いで「パンデミックモード」に作り変えた。プレイヤーはマップ上を自由に移動でき、ゲームをシミュレートするというものだ。

「当初はロサンゼルス限定で、そこで人々に競い合ってもらう計画でしたが、完全に諦めました」とムリンズ氏はいう。

このアプリには、Nikeの「SNKRS」のような先例があった。4月のAgletのローンチについて書いたInputの記事によると、SNKRSでは特定の場所にユーザーを集め、さまざまなコラボを通じて限定ドロップを提供するという。

ムリンズ氏が現在Agletで考えている展開は、ゲームとスニーカー文化を糸で縫い合わせるというおもしろい試みだ。ムリンズ氏は拡張現実を利用して新タイプのショッピング体験ができる、ゲームの世界から一歩外に踏み出したものを作ろうとしている。

画像クレジット:Adidas

将来のファッションはメタバースから発掘される

「私が(Adidasで)最も誇りにしている取り組みは、MakerLab(メイカーラボ)というものです」とムリンズ氏はいう。

MakerLabは、Adidasと若い新進気鋭のデザイナーとを結び付け、同社の古典的なシルエットをベースにした限定版をデザインさせた。ムリンズ氏は、このようなコラボを可能にする場が業界の未来を切り拓き、想像を超える魅力をもたらすと考えている。

「実際のところ私は、次なるNikeはスウッシュが反転したNikeだと確信しています」とムリンズ氏。「若者たちがRoblox(ロブロックス)のバーチャル世界で何かをデザインすると、それが現実世界に飛び出してきて、NikeやAdidasが製品化するという現象が起こりつつあります」。

そうした観点に立てば、Agletのアプリはムリンズ氏が追いかける大きな理想のためのトロイの木馬に見える。デザインスタジオを作り、最高のバーチャル・デザインを陳列して、それを現実世界に持ち出すのだ。

ムリンズ氏はそれを「スマートAgletスニーカースタジオ」と呼んでいる。「そこで標準的なスタイルを元にオリジナルのスニーカーをデザインして、それを履いてゲームの中を歩く。プレイヤーにオリジナルのパーカーをデザインできるようにして、私たちがファッションデザインのYouTubeの役割を果たします」

YouTubeを例えに出したのは、そこがメイクアップアーティストから、ソーシャルメディアのストリーミング配信から見いだされたJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)のようなミュージシャンまで、誰もがスターになれる可能性を提供するプラットフォームだからだ。

「私はバーチャルなデザインプラットフォームを作りたいのです。若者がそこで独自のバーチャルファッションブランドを立ち上げ、ゲームの世界で販売する。そこをまず作りたいと思っています」とムリンズ氏は話す。「ビーバーが発掘されるや、YouTubeは彼がインフラ全体にアクセスできるようにしてスターに育て上げました。NikeもAdidasも、同じことをしています。いろいろなところにいる才能あるデザイナーの卵を見つけ出し、そのインフラを提供して、若いうちからプロとして活躍できるよう後押ししているのです」。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

Apple Watchのデザイナーが5周年を機に誕生秘話明かす

Apple(アップル)に20年間在籍したImran Chaudhri(イムラン・チョウドリ)氏は、iPhoneやiPad、Macなど同社の最も象徴的な製品ラインの多くを手がけてきた。同氏は2017年に同社を去ったが(そして2週間前にマイクロソフトのHoloLensチームに所属した)、米国時間4月24日、彼は5回目の誕生日を迎えたApple Watchの誕生について興味深い洞察を提供している。

チョウドリ氏のツイートは、Apple Watchの誕生についての楽しい事実の宝庫だ。当時のアップルをフォローしていた人にとっては大きな驚きではないかもしれないが、Apple Watchの初期プロトタイプは、腕時計のバンドにiPod nanoを取り付けたものだった。

スマートウォッチ市場に本格的に参入する5年前、アップルは四角いタッチスクリーンを搭載したiPod nanoを発表した。そして初代Pebbleが登場する3年前、既にスマートウォッチの可能性が検討されていた。アクセサリーメーカーはすぐにこれに便乗し、タッチスクリーンのミュージックウォッチとして機能するリストバンドを発表した。この第6世代の製品は、最終的には人気デバイスの基盤となったのだ。

チョウドリ氏は次のように語る。

私はiOS 5をまとめ、IDチームに通知センターとSiriがどのようなもので、将来的にはどのようなものになるのかを見せるために書き留めた。これをSteve(故スティーブ・ジョブズ)と共有することはできず、iOS 5の直後に彼を失った。

その他の興味深い点は以下のとおりだ。

  • ソーラーのウォッチフェイスは「イスラム教徒がラマダンを観察する際に、太陽の位置を素早くすばやく確認し、その時間との関係をすべての人が理解できるように」設計された。
  • 蝶のアニメーションは本物の蝶(死んではいたが)を使って作成された(そのうちの1つは現在、彼の家に飾られている)。
  • タッチ機能は当初は「E.T.(エレクトロニック・タッチ)」と呼ばれていた。
  • デジタルタッチの描画機能は、シャウドリ氏のグラフィティアーティスト時代にインスピレーションを受けたものだ。

原文へ

(翻訳:塚本直樹 Twitter

国際宇宙ステーションの商用化に向けてNASAが居住モジュールの設計をAxiom Spaceに発注

NASAは2016年に創業されたヒューストンのAxiom Spaceを、国際宇宙ステーション初の商用居住モジュールの生産者として選んだ。このモジュールは、将来の商用宇宙飛行ミッションの目的地となり、そこでは商用の宇宙旅行者たちにより、居住実験や技術開発などが行われるだろう。そしてそのISSまでの定期的な実用飛行には、SpaceX Crew DragonやBoeing Starlinerのような人間搭載が可能なクラスの宇宙船が使われると思われる。

Axiom Spaceは2016年に創業され、共同創業者でCEOのMichael T. Suffredini(マイケル・T・サフレディーニ)氏が率いている。サフレディーニ氏は以前、NASAのJohnson Space Center(ジョンソン宇宙センター)で、ISSのプログラムマネージャーを務めていた。同社の小さなチームにはNASA出身者が多く、そのスペースモジュールはISSに付設されたあと、同社自身の民間スペースステーションのベースになる予定だ。NASAはISSの供用期間を延長したが、現在のNASAの計画では、その後は民間の軌道ラボや商用の施設がISSに代わるものとして使われることになる。

2018年にAxiomは、Apple(アップル)の創業者Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏の豪華ヨットの設計者として知る人ぞ知るデザイナーPhilippe Starck(フィリップ・スタルク)氏をチームに加えて、未来のスペースステーションモジュールのルックスを構想してもらった。それには対話的ディスプレイのある乗員宿所や、地球とその背後の宇宙の絶景が見える半球状ドームなどが含まれている。

このISS用のモジュールは、プライベートな宇宙ステーションとして完全なものではなく、むしろ、既存のスペースステーションの今後の商用化や、さらに将来の低地球軌道における本格的な商用活動への道を拓くための、最初のステップだ。Axiomへの指示には「少なくとも1つの居住可能な商用モジュール」が含まれていて、そこには今後の拡張モジュールの発注も含まれている。納期などの契約条件の詰めが、今後行われるだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

3Dプリンターがプラスチックでなく濡れた紙パルプを使ったら楽しいアートができる

紙弾(かみつぶて)を撃って遊ぶ子どもたちのように、デザイナーのBeer Holthuisも、いたずらをするための最良の素材は濡れた紙だ、と考えた。彼の3Dプリンター、RepRapの粗末なクローンは、文字通り紙パルプの長い紐(ひも)を吐き出して、プラスチックよりも持続可能性のある3Dオブジェクトを作る。

3DPrint.comの記事によると、Holthuisは、大量の廃棄物で汚染を増大させない素材を探していた。そして彼は、すりつぶした紙に到達した。濡れた紙を押し出すと、パルプの太い飾り紐のようなものができて、それを重ねると装飾的なオブジェクトを作ることができた。

“そうやってプリントしたオブジェクトのデザインは、この技術の可能性と美しさを示すものだ”、とHolthuisは語る。“触感がいいし、紐の太さやプリントのスピードを変えていろんな形を作れる。しかも、意外と強度があって、長持ちする”。

おもしろいのは、彼は天然バインダーを使って層をくっつけているので、完全にリサイクル可能であることだ。紙をマシンに放り込んで、自動的にパルプを作らせたら、リサイクルの過程も自動化されるだろう。でも、このお話の最良の部分は、作品がまるで、高度な知性を持った蜂のコロニーが他の集団と交易するために作った物のように見えることだ。そう思うと、楽しいよね。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Konicaのフィルムカメラを3Dプリントでデジカメに改造…なつかしい雰囲気のスナップ写真が撮れる

frankencamera9

The Konica Auto S3は低価格のレンジファインダー方式のポケットカメラの最良の製品として、ファンに愛されてきた。1973年の発売時には38mm f1.8のレンズとリーフシャッターを搭載、35mmのフィルムを使えた。このほど、デザイナーのOllie Bakerが、このカメラの内部背面に3Dプリントで作った部品を取り付け、実用性のあるデジカメとして甦らせた。

18歳のBakerはSony NEX-5の部品を取り出し、それをS3に取り付けるための台座を3Dプリントした。電源ボタンを元のシャッター位置(リールワインダ…フィルム巻取り機…の上部)に取付けると、”Bad Bad Leroy Brown”がヒットしていたころと同じ気合で、写真を撮れるようになった。彼がこれを作ったのは1年前だが、3Dプリントでこんなこともできるという見本として、すばらしい。

その結果は、下の画像のように、感動的だ。今やアナログではないにもかかわらず、いかにも靴箱*の底に見つかったなつかしいスナップ写真のおもむきがある。〔*: アメリカの家庭では古い写真を要らなくなった靴箱に入れておく習慣がある。〕

frankencamera11

Bakerはやり方を公開しているから、あなたのお気に入りのアナログカメラを、3Dプリンタを使ってデジカメに改造することができる。きっと、味のあるデジタル写真を楽しめるだろう。

via 3Ders

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スイス腕時計メーカー、アクティビティ・トラッカーに参入

unnamed

Mondaineは、スイスの由緒正しき時計メーカーだ。その気の利いたデザインは、ハンス・ヒルフィカーというデザイナーが1944年に作ったスイス鉄道時計に基づく。際立った読みやすさは、移り気なコレクターたちにとって長年のお気に入りだ。しかし、このたび同社はわずかばかりのテクノロジーを、同社で最もデザイナー主導のウォッチ、Helveticaに付加しようと決断した。

Helveticaシリーズは、われわれの誰もが知り、愛するあのフォントに敬意を表している。標準的なMondaine文字盤を備え、サブダイヤル(小文字盤)にはその日の活動記録が表示される。アクティビティートラッカーは、MMT社の技術を利用して歩数および睡眠を追跡する

時計の電池寿命は2年間で、アクティビティートラッカーおよび深いREM睡眠から醒めた時に起こしてくれる「スリープサイクルアラーム」を内蔵している。スマートフォント接続して日時を設定することもできる。これは決してApple Watchではないが、目指すのは高度なデザインとちょっとしたテクノロジーの融合だ。

価格はまだはっきりしないが、おそらく1000ドルを少し切るくらいと予想している。今年のBaselWorldでデビューし、スイスがスタートウォッチ市場にどう立ち向かっていくかという方向性を示した。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロマン・ジェローム、デジタルみたいな機械式腕時計Subcraftを発表

時には機械っぽいものを持つのも良いものだ。Romain JeromeのSubcraftは、この会社の最新「ノベルティー」― 量産のために作られていない時計 ― で、時間は側面の表示位置に、分は上面の文字盤に表示される。この2万4000ドル ― Apple Watch Edition 2個分 ― のウォッチは限定99個販売されている。

Romain JeromeのCEO Manuel EmchとデザイナーのAlain Silbersten、そして時計職人Jean-Marc Wiederrechtの協力によって作られたこの時計は、軽量のチタン製ケースの中に手作業で作られた機械式ムーブメントが収められている。そしてこのタイムピースには、側面ムーブメント、線型時間表示、ジャンピングアワー、レトログレード分針等、世の腕時計オタクたちがコンプリケーションと呼ぶ様々な機能を備えている。前面表示は1時間毎に数字が横へ1つずつ「ジャンプ」して行き、正午と深夜零時には先頭に戻ってくる。この「時針」には小さな蛍光管がついているので夜には光って見える。

この手の「ジャンピングアワー」と呼ばれる表示方式は特段新しいわけではなく、1970年台に「デジタル」あるいは「TVスタイル」と呼ばれていた頃から存在している。しかし、あの悪名高いTitanicウォッチを作ったRomain Jeromeが、このデザインを採用したことはなかなか興味深い。この会社はシンプルな三針式 ― 時針、分針、秒針 ― 腕時計でよく知られており、一度にこんなに多くの新奇なこと試すのは実に大胆だ。

とは言え、今年Apple Watchオーナーの仲間入りを考えている人には、少々お高いかもしれない。来年は、Jony Iveか機械式を作り始めるかも?

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook