金属3Dプリント技術を擁するのDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

Desktop Metalはその5年間の存在を通じて、投資家が足りないことはなかった。これまでのところ、この金属3Dプリント企業は4億3000万ドル(約460億円)を調達し、その間に米国で最も最速でユニコーンの資格を達成した企業になった。

米国時間8月26日、同社は上場の意図を発表(Businesswire記事)している最近の一連の企業の中(未訳記事)で最新の企業になった。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とする同社は、SPAC(特別目的買収会社、ブランク・チェック・カンパニー)であるTrine Acquisitionと合併(GlobalNewswire記事)し、「DM」のテッッカーシンボルでニューヨーク証券取引所に上場するつもりだ。この特別目的買収会社は昨年の3月に、2億6100万ドル(約278億円)の自社のIPOを発表(IPOScoop.com記事)した。

この新しい取引でTrineは、Desktop Metalと合併して同社自身の見積もりでは最大で25億ドル(約2663億円)の企業(Businesswire記事)を作る。Desktop Metalの昨年初頭以降最新の評価額は15億ドル(約1600億円)だ(Pichbookデータ)。従って、この特別目的買収会社がリードする取引はDesktop Metalの投資家に魅力的な上げ幅を与える。

この取引に先立って、SPACによる合併のブームがあり、さらにその背景には活発な活動があった。その典型がVirgin Galacticのケースだ

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この特別目的買収会社がリードする上場は、5億7500万ドル(約612億円)の資金を生み出す(BusinessWire記事)という。Trineで3億ドル(約320億円)、さらに「普通株PIPEは1株当たり10.00ドルでコミットされている」いることから2億7500万ドル(約293億円)となる。PIPE(Private Investment In Public Equity)は「公開株式への民間投資」という意味(Harvard Law School Forum on Corporate Governance記事)で、必要に応じて特別目的買収会社主導の案件により多くの資金を投入できる仕組みだ。

SPAC以後の計画

Desktop Metalは、自社の研究開発をさらに深く進めることに加え、付加価値製造、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。この計画によって同社は「付加製造2.0」における主要なプレーヤーになる狙いだ。3Dプリントイノベーションの第二波により、今までの数十年間、期待と誇大宣伝で膨らんでいた金属の3Dプリントというものがついにそのポテンシャルを満たし、従来の製造業を打ち負かしていく。(付加製造(additive manufacturing, AM)、3Dプリントは素材を徐々に付加していって物を作るので、こう呼ばれる。従来の、素材を削って物を作る技術は除去加工と呼ばれる)。

Desktop Metalは、自社の研究開発努力を進めるとともに、付加製造(材料を付加しながら製造していく造形方法)、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。今回の買収によってDesktop Metalは、同社が「付加製造2.0」(3Dプリンターでは付加製造の材料に樹脂や金属を使える)とみなしてきた分野の主要なプレーヤーとなる狙いだ。これは3Dプリンティングのイノベーションの第2の波になり、何年も何十年にもわたって喧伝されてきた製造業を真にひっくり返す可能性をついに実現できるかもしれないと考えている。

同社創業者でCEOのRic Fulop(リック・フロップ)氏はプレスリリースで「私たちは付加的製造の採用における大きな転換期にあり、Desktop Metalはこの変革をリードしています」と述べている。

このような業界では、誇大広告と真に影響力のある技術と区別するのは難しいかもしれないが、Desktop Metalは設立以来5年の間に、確かに目覚ましいブレークスルーを示してきた。Lux Capital、NEA、Kleiner Perkins、Ford Motor Company、Google Ventures、Koch Disruptive Technologiesなどの著名な投資家に加えて、同社は数々のビッグネームのパートナーシップを結んでいる。Ford(フォード)とBMWの両社は、自動車産業の製造工程を革新させる可能性を十分に同社が秘めていることを感じ、投資家として契約した。

画像クレジット: Desktop Metal

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Desktop Metalが金属部品の3Dプリンター市販へ―クリーン環境で大量生産可能

今日(米国時間4/25)、Desktop Metalは金属加工が可能な3Dプリンターの価格その他の情報を発表した。Desktop Metalのプリンターは鋼、アルミニウム、チタン、銅を含め、数百種類の金属素材を使用することが可能だ。このスタートアップの共同ファウンダー、CEOのRic FulopInによれば、出力された金属パーツの品質はインジェクション・モールドと同等だという。

金属部品の3Dプリンターは10年前から存在したものの、取り扱える金属の種類や出力の速度、使い勝手などに数図の問題を抱えていた。金属は融点の温度が高いため、プラスチックのように容易に取り扱えないということも原因の一部だ。

Desktop Metalでは自社の3Dプリンティングのコアを「マイクロ波による強化焼結テクノロジー」と呼んでいる。このプリンターは、金属の薄層を重ねて焼結する。この際に用いられるのは金属とセラミックの微粉を混ぜた柔らかいポリマー素材を収めたカートリッジだ。この金属素材はDesktop Metal自身を含め、有力な積層マニュファクチャリング(additive manufacturing)メーカーによって供給される。ポリマー素材が3Dプリンティングによって成形されると、炉で急速に加熱される。焼結の際にポリマーは燃え尽きる。排ガスは活性炭フィルターで浄化される。

この過程で金属微粉は融着するが、全体が溶けて形が崩れる温度までは加熱されない。 セラミック層に挟まれた部分では金属同士は融着しない。そのためDesktop Metalの3Dプリンターで出力された金属部品はサポート部分から手で取り外すことができる。

初期の金属3Dプリンターはレーザーを用いて極めて高温で焼結を行っていた。これは航空宇宙、自動車などの産業で高密度で極めて高い強度を必要とする部品の成形に利用されていた。特に医療分野ではインプラントやデバイスなど少量で複雑な形状の製品の出力に用いられている。こうした製造方式を利用できるのは通例、GEのような十分なリソースをもつ巨大企業に限られていて。事実GEはグループのベンチャーキャピタルを通じてDesktop Metalに投資している。またGV(以前のGoogle Ventures)、 BMW iVentures、Lowe’s他のグループも投資に加わっている。

GEは昨年、この分野でArcamとSLM Solutionsの2社を買収している。買収金額は合計で14億ドルだったと報じられた。積層マニュファクチャリングでは
3D SystemsRenishawEOSStratasysなどが製品を提供している。しかし Fulopによれば、年間売上1兆ドルの金属部品市場のうち、金属3Dプリンティングは合計で10億ドル相当しか提供していないという。

積層マニュファクチャリングという広い範囲で考えると、Wohlers Report 2016によれば、昨年の売上総額は51億ドルだった。スピードと安全性などの理由からますます多くのメーカーが金属部品の3Dプリンティングを採用しようとしている。

金属部品の従来の鋳造方法では大型の機械を操作しなければならず、高い騒音レベルや高熱と排ガスを撒き散らすなどの問題があった。また作業過程で多数の薬品を必要とした。このため作業者にとって危険性をもつ環境となっていた。積層マニュファクチャリングの場合は、プロセスがシールドされるため作業者に対する危険性は大幅に低下する。

Desktop Metalの3Dプリンターから出力される金属部品は手で取り外せる

Desktop Metalでの新しいプロダクション・システムは専門の技術者が付ききりで操作することなしに複雑な形状の金属部品を高速かつ安全に大量生産することを可能にする。同社によればDesktop Metal Productionシステムは従来製品に較べて100倍高速で一時間あたり 8200cc(立方センチ)の金属加工能力があるという。

研究者、デザイナー、開発エンジニアなど向けててDesktop MetalはDesktop Metal Studioを開発した。これは工場ではなく一般のオフィス環境で利用できるシステムで、換気システムや焼結炉を加熱するガスのタンクなどの特別な外部装置を必要としない。

Desktop MetalのStudioとProductionの両システムが出力する製品は後加工の必要なしにそのまま金属部品として利用可能だという。部品は3Dプリンターから手で取り出すことができる。金属であれプラスチックであれ、従来の3Dプリンターは出力後、なんらかの後加工を必要とするのが普通だった。

Desktop Metal Studioシステムは一式が買い切り価格12万ドルでこの9月から出荷される。これにはプリンターに加えて焼結炉が含まれる。オフィスや研究室ではシステム月額3250ドルでレンタルすることが可能だ。Desktop Metal Productionシステムは2018年に出荷され、42万ドルの買い切りとなる。

画像: desktopmetal.com

〔日本版〕GEではジェットエンジンの部品製造に金属3Dプリンティングを採用して大きな成果を挙げているとして下のようなビデオ(日本語字幕付き)を公開し、実用化に至る過程も詳しく紹介している。


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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

金属部品用の3Dプリンター「Desktop Metal」がBMWなどから4500万ドルを調達

A background from many historic typographical letters in black and white with white background.

金属部品を製造できるデスクトップ型3DプリンターのDesktop Metalは現地時間2月6日、シリーズCで4500万ドルを調達したと発表した。Desktop Metalは、従来の金属加工機械を稼働させるスペースを持たなかったり、資金的なリソースを持たない小規模ビジネスやデザイナーに金属製品を製造する手段を提供している。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはGV(以前のGoogle Ventures)で、他にもBMW iVenturesLowe’sの投資部門なども参加している。今回調達した資金を合わせ、Desktop Metalはこれまでに合計で9700万ドルを調達済みだ。

金属部品を製造する3Dプリンターを利用することで、医療機器やロボット、F1カーや宇宙船などの各種車両のテスト部品を製造することができる。しかし、3D SystemsEOSArcamなどが販売する産業用の3Dプリンターはとても高価なものであり、その値段は何十万ドルにもなる。

創業者兼CEOのRic Fulop氏は、かつてバッテリーを製造するA123 Systemsを創業した人物。彼は資金調達を伝えるプレスリリースのなかで、今回調達した資金によって同社初の3Dプリンターを研究開発フェーズからプロダクション・フェーズへと押し上げることができると語っている。彼自身、Desktop Metalを創業する以前からこの業界にある複数のスタートアップにアドバイザーとして参加したり、出資を行ったりしていた人物でもある。North Bridgeのパートナーだった彼は、当時MarkForged、OnShape、ProtoLabs、SolidWorksなどへの出資を担当していた。

Fulop氏はまだ、Desktop Metalに使われているテクノロジーの詳細を明かしていない。しかし、彼はTechCrunchに金属の加工にはレーザーを使用していないことを教えてくれた。Desktop Metalは同社製品である3Dプリンター、およびそれに使用される合金を販売することで収益をあげる。同社の3Dプリンターを使用すれば、金属製のプロトタイプや部品を製造して、すぐにそれを試してみることが可能だ。エンジニアが道路の上で作った「キャブレター」をその場でクルマに取り付けることなんかもできる。

Fulop氏は、Desktop Metalは様々な業界に急速に普及する可能性をもったプロダクトだと話す。「コンピューターや自動車、医療機器から産業用機械にいたるまで、私たちは何らかの金属部品を使用したモノに囲まれています」と彼は話す。「たとえ今は、3Dプリンターによって製造される部品の割合は全体のほんの一部分でしかないとしても、現在世界中で製造されている金属部品の総額は12兆ドルにもなります」。今回の調達ラウンドに参加したBMWやLowe’sや、前回のラウンドに参加したSaudi AramcoやGEといった戦略的出資者たちは、この点に目をつけたのだ。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とするDesktop Metalの競合企業として、イスラエルのXJetなどが挙げられる。また、デスクトップ型3Dプリンターに利用できる金属を混ぜ込んだプラスチック・フィラメントを開発するVirtual Founderも競合企業の1つだ。

BMW iVenturesのマネージングパートナーであるUwe Higgen氏によれば、Desktop MetalはミュンヘンにあるBMWの施設で、クルマ業界における同製品の利用可能性を探っている最中だという。また彼は、今回調達した資金を利用してDesktop Metalは第1号プロダクトを発売する予定だと話す。加えて、ローコストな金属部品の製造手段は、クルマのデザインや開発の現場に即効性のあるインパクトを与える可能性を秘めていると彼はいう。長期的には、「この種のテクノロジーによって、クルマ業界や他の業界の部品製造の現場に存在した様々な問題が解決されることになるでしょう」とHiggen氏は話している。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter