TC Tokyo卒業生の予実管理SaaS「DIGGLE」が1.5億調達、あえてエクセルライクなUIを捨てた理由とは

予算管理SaaSの「DIGGLE」を提供するDIGGLEは、500 Startups Japan、Draper Nexus、Archetype Ventures、UB Ventures、HDEなどから1億5000万円を調達したと発表した。なお、今回の資金調達はJ-KISS型新株予約権方式により実施された。

DIGGLEは企業は従来エクセルなどを利用していた予算管理・実績管理のツールをSaaSとして提供するスタートアップ。DIGGLEを利用することで、属人化しがちな予実管理をチームで行ったり、予算が足りなくなったという“結果”だけでなく、なぜ足りなくなったのかという“分析”を簡単にすばやく行うことができる。

2016年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルにも登場したDIGGLEが、正式版をリリースしたのは2017年7月のこと。代表取締役の山本清貴氏によれば、正式リリースから現在まで同社が注力してきたのは継続的なプロダクトの改善だったという。「DIGGLEはまだPMF(プロダクト・マーケット・フィット)前のプロダクトだと思っているので、とにかくプロダクトの改善を続けてきた」(山本氏)。

その1つが、UIの大幅な変更だ。もともと、DIGGLEはこれまで予実管理にエクセルが使われることが多かったという背景を考慮して、新しいプロダクトに対するユーザーの心理的な負担を減らすためにあえてエクセルライクなUIを採用していた。

UI改変前

現行UI

しかし、DIGGLEはそのUIを刷新することを決断。その敬意について山本氏は、「難しい判断だった。たしかに、エクセルライクなUIはユーザーに受け入れられやすく、評価も頂いていた。しかし、以前のUIを採用していたときにユーザーから頂いていた対価は、エクセルとDIGGLEがもつ利便性の差分でしかなかったように思う。『DIGGLEを使えば予実管理を経営陣の意思決定にも利用できる』などの、DIGGLEの本来の価値を理解いただくためには、エクセルライクなUIからDIGGLEならではのUIを作る必要があると思った」と語る。

その一方で、UIを変えたことで多少心理的な障壁が生まれることになる入力作業を簡略化させるために、セールスフォース・ドットコムとfreeeとのAPI連携を開始。また、エクセル上でシートをコピーし、DIGGLEでインポートボタンを押したあとに表示されるモーダル上でペーストするだけで入力できる機能などを搭載した。

このようなプロダクト改善を継続して行うDIGGLE。しかし、山本氏はまだまだ道半ばだと話す。今回の資金調達ラウンドで1億5000万円を調達したDIGGLEは、さらなるプロダクト改善のためにエンジニアなど開発メンバーの拡充を図る。

予実管理DIGGLEが正式版をリリース――SaaS事業者向けテンプレートでマネタイズを開始

会社はどこも四半期ごと、あるいは年間の予実管理を行なっているだろう。DIGGLEはそうした予算策定と実績管理を簡潔にするサービスだ。タシナレッジは本日、予実管理サービスDIGGLEの正式版をリリースしたことを発表した。

DIGGLEのサービスについては以前の記事で詳しく説明しているが、DIGGLEは必要な情報を入力すると簡単に予算策定ができるサービスだ。予算シートと実績シートを作成し、それぞれチェックを入れると簡単に数値を合算することができる。会社のCFOや財務担当者はDIGGLEを使って、全社別や部署別などで予算と実績の差異を把握するのに役立ることができる。

DIGGLEは2016年12月末からベータ版を提供していて、これまでにおよそ430社のアカウント登録があったとタシナレッジの代表取締役を務める山本清貴氏は説明する。

今回の正式版では、新たに入力した予算と実績のグラフ化機能を加えた。また、正式版のリリースに伴い、有料機能として業種特化の予実管理用テンプレート「BTI 」の提供を開始する。BTIの第一弾は、SaaS事業者向けのテンプレートだ。

SaaS事業者はこのBTIに基づいて月初売上高と顧客数、月別に目標とする顧客単価、新規獲得顧客数、チャーンレートを入力すると、SaaSビジネスで重要なARPA(契約アカウントごとの月間収益)やLTV(ライフタイムバリュー)といったKPIを自動で算出し、予算計画に役立てることができる。

サービスのKPIと全社の損益計算書の数値は一致するはずのものだが、それを全てのエクセルシートで管理することは難しいと山本氏は指摘する。今回用意したテンプレートは、SaaS事業者のそうしたデータ管理の手間を削減すると山本氏は説明する。

このテンプレート「BTI for SaaS」は、2カ月のトライアル期間は無料で、その後は月額5万円(税別)で提供する。DIGGLEの基本機能に関しては、引き続き無料で提供する。

今後、SaaS事業者向けのBTI以外には、ソフトウェア開発やサイト制作などを手がける受託開発企業向けやECサイト事業者向けテンプレートを追加する考えだという。

今回追加したグラフ機能についても、グラフで予算と実績の差がある場所から、その原因が簡単に特定できるよう開発を進めていく計画だ。

「各企業が策定する予算の裏には戦略があると思います。DIGGLEを使うことで自分たちの立てた計画に対し、実行がどうだったかを把握し、次のアクションにつなげられるようにしたい」と山本氏は話している。

タシナレッジは2016年6月に設立した。 昨年開催したTechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルのファイナリストに選ばれていて、2017年5月には総額5500万円を調達している。