ベンチャーキャピタリスト3人が大手ファーム卒業とコロナ禍で自身のファーム立ち上げについて語る

おそらく業界を推進するエンジンでもあるが、テクノロジー業界における最も顕著な傾向の1つは、大手企業で才能を磨いた後にスタートアップを立ち上げ、自身のビジネスを始める人々が絶え間なく現れるということだ。Max Levchin(マックス・レブチン)氏のように意図的に起業家タイプの人材を雇って(未訳記事)積極性の高いチームを作り上げ、そのサイクルを永続させる人もいる。

その傾向は企業だけでなく、企業に投資する投資家にも当てはまるようだ。Disrupt 2020では、そのような道をたどった3人のベンチャーキャピタリストに話を聞いた。彼らは大手ベンチャーキャピタルファームで経験を積み名を上げ、最近、自身の力で自分の「スタートアップ」ファンドを立ち上げている。

マクロレベルでは2020年は、全世界が困難な時期を迎えた。だがこれまで何度も見てきたように、テクノロジーの世界では車輪が回り続けている。

IPOが復活し、プロダクトが展開される。人々は多くをオンラインで購入し、インターネットを利用して「つながり」を維持する。多くのM&Aが起こり、有望なスタートアップが資金を獲得する。

実際、起業家とそのイノベーションがテクノロジーの世界の原動力なら、資金は燃料だ。資金の提供こそ、Dayna Grayson(デイナ・グレイソン。以前はNEAに在籍、現在はConstruct Capitalの創業者)氏、Renata Quintini(レナタ・キンティニ。以前はLux Capitalに在籍、現在はRenegade Partnersの創業者)氏、Lo Toney(ロー・トニー。以前はGVに在籍、現在はPlexo Capitalの創業者)氏が狙う機会だ。

グレイソン氏が共同創業者のRachel Holt(レイチェル・ホルト)氏とConstruct Capital(コンストラクト・キャピタル)を始めた理由の1つは、民間セクターのスタートアップに資金を提供するファーム立ち上げに機会を見出したからだ、とグレイソン氏は語った。

「米国経済のGDPの半分、この国のGDPの半分が実際にはデジタル化されていない」とグレイソン氏はいう。「企業はテクノロジーに対応できていない。投資不足に陥っている。今こそアーリーステージの起業家と一緒に構築するときだ」。

Constructは特定のセクターに絞っているが、Renegadeの狙いは異なる。開発段階のスタートアップ、特に同ファームが「超臨界」と呼ぶシリーズBの会社だ。そうした会社はもはや単に何かを始めるという段階にはなく、規模を拡大するために適切なチームと戦略が不可欠となる。

「どうすれば規模を拡大できるかを理解し、実行に移せる企業を取締役会で何度も見てきた」と、Roseanne Wincek(ロザンヌ・ウィンセック)氏とRenegadeを共同で創業したキンティニ氏は述べた。「人の面に関していえば、そうした企業は実際にさらに前進し、より大きな時価総額と市場シェアをより速く獲得した。そういうチャンスを目の当たりにして手をつけないわけにはいかなかった」。

キンティニ氏は「超臨界」ステージの会社を構築・拡大する方法に特化する現在のミッションと、15年前に発展段階にあったスタートアップエコシステムで特徴的だったアーリーステージの資金調達を比べた。「100万ドル(約1億円)を調達してビジネスを始めたはいいが、本当に顧客に刺さるものが何かを理解する時間が足りなくなっている」と同氏は述べる。「それがまさに今日の姿だ」。

トニー氏はさらに別のアプローチをとった。セクターやステージを絞るのではなく、資金を利用してまったく新しい層の創業者の芽を出す。より多様でインクルーシブな創業者らに資金を提供することは、単に平等な競争環境を用意するためだけではない。幅広いユーザー層に向けたバランスのとれたプロダクトのためにも有効だ。

「私はGVで素晴らしい時間を過ごしたが、この機会を前にして何もしないのは難しいと思っただけだ」とPlexoを創業したトニー氏は述べた。Plexoはスタートアップだけでなく、同氏と同じ投資原則に従うファンドにも投資している。GVもファンドと創業者の両方に投資していたが、社会的要請に応える投資を加えることが重要だった。「エコシステムで多様性とインクルージョンが増す、という副産物を手に入れることに私は情熱を燃やしている」と同氏は語った。

我々はテクノロジーの世界が資本で溢れる時代を生きている。世の中に成功したテクノロジー企業が多いことの副産物の1つは、限られた数のパートナーが多くのベンチャーキャピタリストに投資しようと殺到することだ。多くのファームが記録的な速さと申し込み超過の中でファンドをクローズする。それが資金調達するスタートアップだけでなく、そうしたことがますます頻繁に起こるベンチャーキャピタリスト自体にもノックオン効果をもたらしている。3人全員が、具体的な目的を持つことにより「単なる新しいVC」以上の存在になることができ人の目に留まって良い取引に参加しやすくなると述べた。

グレイソン氏は、世界的なパンデミックの真っ只中にファームを始めるという挑戦は、「ディスラプション(混乱)」という概念に乗じて繁栄する業界では、姿を変えた幸運の一部だということがわかったと語っている(TechCrunchではお馴染みだ)  。

「新型コロナウイルスの世界で投資を始めたことは本当に幸運だった」とグレイソン氏はいう。「非常に多くのことがひっくり返ってしまった。ご存知のように民間企業によるソフトウェアとテクノロジーの採用は10〜20年早まった。働き方も本当に変化した」 。同氏はまた、探しているのはほぼ「新型コロナの環境下で創業した」会社のみだということに気づいたという。そうした会社には戦場の試練をくぐり抜けたビジネスモデルがあるからだ。

資金調達自体に関してトニー氏は、シードステージで企業に資金を提供するベンチャーキャピタリストが急増した時期と、その時に増えた「ソロキャピタリスト(外部からも資金調達する個人投資家)」のことを思い出した。

「ソロキャピタリストについて本当に興味深いのは、彼らが大企業と起業家両方のオペレーションと広い技術者ネットワークへの理解があり、それらを活用してディールフローを見つけ出し、資産家やファミリーオフィス、さらには機関投資家から資金を調達することだ」とトニー氏は述べた。

カテゴリー:VC / エンジェル

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スマートニュースの浜本階生氏が米国におけるメディア分極化への取り組みについて語る

6年前、SmartNews(スマートニュース)は大きな挑戦を始めた。2012年に日本でスタートしたニュース発見アプリが、最初の海外市場を米国に決めたのだ。Disrupt 2020では、共同ファウンダーのKaisei Hamamoto(浜本階生)氏が、SmartNewsをまったく異なる2つの市場にどうやって適応させたかについて語った。2019年にユニコーンの仲間入り(未訳記事)を果たした同社の最高執行責任者(COO)でチーフエンジニアである浜本氏は、会社として、特に米国で、メディア分極化にどう取り組んでいるかについても話した。

SmartNewsは、Disrupt期間中に米国バージョンアプリの主要な新機能をいくつか発表した。投票情報や地方および国政選挙の関連記事に特化したセクションがその1つだ。浜本氏は、SmartNewsのゴールは、アプリを「投票プロセスに参加するユーザーのワンストップソリューション」にすることだと語った。

メディア環境は同社が設立された2012年から大きく変わった。SmartNewsは米国で、多くのジャーナリストが遭遇しているのと同じ問題に取り組んでいる。特に政治関係での分極化の拡大、および収益化だ(SmartNewsは現在世界3000社以上のパブリッシングパートナーと収益分配している)。そしてもちろん、Apple News(アップルニュース)やGoogle News(グーグルニュース)など多くの新規参入ライバルがいる。

日本のスタートアップの多くが、海外進出といえばアジア市場を考えるのに対して、SmartNewsは米国進出を決断した。それは世界で最も影響力のあるメディア企業がこの国に集まっているからだ。エンジニアリング面でも、この国のAIと機械学習の人材プールも利用したかったと浜本氏は語った。

「米国は市場として魅力的であるだけでなく、SmartNewsの重要な開発センターだ」と同氏はいう。

日本版と米国版のSmartNewsは同じコードベースを共有しており、日米のオフィスは密に連絡をとって仕事をしている。同社の機械学習ベースアルゴリズムはニュースディスカバリーとパーソナルレコメンデーションの大部分を受け持っているが、パブリッシャーの仕分けはプラットフォームに加えられる前にSmartNewsのコンテンツチームが行っている。コンテンツ担当副社長のRich Jaroslovsky(リッチ・ヤロスロフスキー)氏は、Bloomberg News(ブルームバーグ・ニュース)やThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)などの媒体で書いていたベテランジャーナリストだ。

AIベースのアルゴリズムは不快な画像を除去するような作業はできるが、「個々のパブリッシャーが、一定の基準を満たしているかどうかを評価する能力はない」と浜本氏はいう。「ジャーナリズムのエキスパートからなるチームの努力を生かし、ユーザーが毎日確実に信頼を持ってニュースを読めるために、できることなら何でもする」。

読者をフィルターバブルから飛び出させる

2つのバージョンのアプリは、コードベースだけでなくいくつかの機能も共有している。例えば、SmartNewsのCOVID-19(新型コロナウイルス)チャンネルは、パンデミックに関する最新情報を常に更新している。米国では、確認された症例数を郡または州別にビジュアル化したものや地域の閉鎖・再開命令に関する情報が含まれている。

アプリのユーザー体験について浜本氏は、日本の読者は1枚の画面に多くのニュースが表示されていることを好むので、日本版アプリでは表示する情報の密度を意図的に高くするレイアウトアルゴリズムを用いていると語った。しかし、テストの結果米国人はシンプルですっきりした余白の多いレイアウトを好むことがわかった。

しかし異なるのはアプリのユーザーインターフェースだけではない。2016年、米国と日本の開発チームメンバーは3週間をかけて、ジョージア州、テネシー州、ミシシッピ州、オクラホマ州、テキサス州など米国の13州を訪れ、Craigslist(クレイグスリスト)の投稿やレストランやカフェで知り合った人たちと話した。SmartNewsの幹部がこれを実施することを決めたのは、日本チームの米国出張先のほとんどがニューヨークとサンフランシスコのベイエリアだけだったことに気づいたからだった。

「東海岸と西海岸に行っただけでは、真のアメリカを感じられないことがわかった」。

浜本氏は2016年の出張で持ち帰った最大の成果を「概して我々は、人を自分たちの側と反対側の2つだけに分類し、反対側を敵と考える傾向にあるが、現実の世界はそう単純ではない」と知ったことだったと語った。

米国メディアにおける政治的分極化に取り組むために、2019年にSmartNewsは「News from All Sides(あらゆる立場からのニュース)」を立ち上げた。1つの話題に関するさまざまな出版物の記事を「most conservative(最も保守的)」から「most liberal(最もリベラル)」までスライダーを動かして表示できる。米国版アプリはローカルニュースにも力を入れている。ユーザーの位置に基づいて、郡や時には都市の報道機関から特定の情報を提供する。

SmartNewsの基本理念は、「人の言葉に耳を傾ける意識を持ち、簡単にラベル付けしないことが社会の分断化の解決につながる」という信念だと浜本氏は付け加えた。

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銀行口座を持っていないラテンアメリカ女性のためのチャレンジャーバンクJefa

Jefa(ハファ)は、ラテンアメリカの女性向けに特化したチャレンジャーバンクを開発しているスタートアップだ。同社は女性が銀行口座を開設し管理する上で直面するさまざまな問題を解決することに焦点を当てたサービスを目指している。同社は2020年のTechCrunch Disrupt 2020の「Startup Battlefield」に参加した。

「世界には銀行口座を持っていない人が14億人います。そのうち13億人近くが女性です」と、Jefaの創業者兼CEOのEmma Smith(エマ・スミス)氏は語る。

さまざま意味で、銀行口座は男性によって男性のために作られている。フィンテックのスタートアップを見ても、ほとんどの創業者が男性だ。すでにラテンアメリカには、NubankBanco InterBanco OriginalUaláなどいくつかチャレンジャーバンクがある。しかし、チャレンジャーバンクのほとんどはヨーロッパや米国などの成熟した市場をターゲットにしている。スミス氏は、新興国の女性をターゲットにすることで膨大な市場機会が得られると考えている。

画像クレジット:Jefa

なぜラテンアメリの女性は銀行口座を持っていないのか、持っていても満足していないのかを、Jefaは注意深く観察した。

例えば、銀行は女性が統計的に男性よりも収入が少ないにもかかわらず、最低残高の維持を要求するのが普通だ。銀行は、車が1台しかなくてバスの便がよくない家庭が多いにもかかわらず、口座開設のために支店に来るように求める。銀行のサービスは必要以上に複雑であり、女性向けの販売経路に力を入れない。

「こうしたことのすべてが、無店舗の完全デジタルソリューションが必要だと私たちが考えた理由です」とスミス氏。「私たちは必要最低残高を設けていません。政府の発行する身分証明書だけあれば、3~4分で口座を開設できるのです」と続ける。

Jefaは数カ月以内に開業予定で、口座は無料で開設できる。数日後に、口座とキャッシュカードが利用者の手に入る。口座には購入金額の端数を貯蓄できる機能が備わっており、もちろん目標の設定も可能だ。

「It pays to be a women.」(女性でいることは損ではない)という特典プログラムもある。購入金額に応じてポイントが貯まり、衛生用品や婦人科診療に使える。

画像クレジット:Jefa

当初、獲得したポイントはキャッシュバックに交換できる。いずれ、貯めたポイントを女性にとって大切な場面で換金できるようになる。ユーザーは、アプリを使って無料でピア・ツー・ピア送金と受け取りができる。口座からの引き出しと預け入れのために、Jefaは現金を安全に管理するための提携先ネットワークを構築している。

Jefaでは、クレジット(信用力)獲得プラットフォームにも取り組んでいて、これは米国サンフランシスコ拠点のチャンレジャーバンクであるChimeの機能と似ている。

Jefaはまず中央アメリカのコスタリカとグアテマラでサービスを開始する。ウェイティングリストにはすでに5000人が載っているそうだ。サービスの利用者によるコミュニティーを作ることが大切だと知っているので、融資について他のJefaユーザーと話し合えるコミュニティーフォーラムができるかもしれない。

概して銀行というものは魂のない存在で、人のニーズを理解しないことで悪評を買ってきた。「あなたは条件を満たしていない」と言われ続けるのは苛立たしい経験だ。デジタルファーストの銀行が作れるようになったことは、目的に特化した銀行業務の可能性を示している。Jefaはその好例だろう。

画像クレジット:Sharon McCutcheon / Unsplash

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上院の暗号バックドア法案は「米国人にとって危険」だと下院議員が警告

有力な下院民主党議員の一人が「ハイテク企業にバックドアの設置を義務付け、法執行機関が暗号化されたデバイスとデータにアクセスできるようにする上院の法案 は『非常に危険』だ」と発言した。

法執行機関は、ハッカーや盗難からユーザーデータを保護するための強力な暗号化の使用をめぐってハイテク企業と頻繁に論争しているが、暗号の使用によって深刻な犯罪で告発された犯罪者たちを捕まえることが難しくなっていると政府は主張している。 Apple(アップル)やGoogle(グーグル)のようなハイテク企業は近年、自分たちでさえロックを解除することができない暗号化によってデータを保護することで、セキュリティへの取り組みをさらに強化している。

6月に上院共和党は新たな「合法アクセス」法案(NBCニュース記事)を提出し、裁判所命令の下に、法執行機関がユーザーデータにアクセスできるようにすることをテック企業に強制しようとする、これまでの取り組みをさらに一歩進めた。

「この法案は米国人にとって危険なものです。なぜならそれはいずれハックされ、悪用され、安全を確保する方法がなくなるからです」とDisrupt 2020の場でTechCrunchに語ったのは、シリコンバレー地域選出のZoe Lofgren(ゾーイ・ロフグレン)議員だ。「もし暗号化を外せるようにするなら、私たちは大規模なハッキングと破壊に自分たち晒すことになるだけです」と同議員。

ロフグレン議員のコメントは、暗号化を弱体化させる取り組みをずっと批判してきた批評家やセキュリティ専門家のコメントと同じものであり、ハッカーに悪用されない法執行機関向けのバックドアを開発することはできないと主張するものだ。

暗号化の力を削ぎ弱体化させようとする、一部議員たちのこれまでの努力は失敗を重ねてきた(未訳記事)。現在、法執行機関は既存のツールと技法を利用(未訳記事)して、電話とコンピュータの弱点を見つける必要がある。FBIは何年にもわたって侵入できないデバイスが多数あると主張してきたが、2018年には、押収した暗号化デバイスの数と、その結果として悪影響を受けた捜査の数を繰り返し過大に表明(ワシントン・ポスト記事)していたことを認めた。

ロフグレン議員は1995年以来議員を務めてきた。それはセキュリティコミュニティが、強力な暗号化へのアクセスを制限しようとする連邦政府と初めて戦った、いわゆる「暗号戦争」の頃だ。2016年に、ロフグレン議員は下院司法委員会の暗号化ワーキンググループに参加した。このグループの最終報告は、超党派で作成され拘束力はないものの、暗号化を弱体化するいかなる措置も「国益に反する」と結論付けていた。

にもかかわらず、今年William Barr(ウィリアム・バー) 米国司法長官が、米国民は暗号バックドアがもたらすリスクを受け入れなければならない(未訳記事)と発言したように、政府がバックドアの推進を続けている点が議論になっているのだ。

「暗号化を安全に取り除くことはできません」とロフグレン議員は語った。「そして、もしそうすれば、我が国も、米国民も、そして言うまでもなく世界中の人びとも混乱に陥れることでしょう。とにかく危険なだけですので、認めることはできません」と締めくくった。

画像クレジット: Mandel Ngan (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

スマニュー米国版に選挙、新型コロナ、天気の新機能が登場

米国時間9月16日に開催されたTechCrunch Disrupt 2020で、スマートニュースはニュース発見アプリ「SmartNews」の米国バージョンに主要な新機能を追加することを発表した。選挙や新型コロナウイルス、天気などの最新情報が入手しやすくなる。

大統領選挙および今年行われるその他の選挙に注目した機能がいくつか加わる。SmartNewsは過去2年間ローカルニュースを充実させてきたが、このほど地方選挙や法案への投票の専用セクションを追加したほか、選挙登録や投票に関する情報も提供する。

SmartNewsの共同創業者でCOO(最高執行責任者)の浜本階生氏はDisruptのセッションで、アプリの新しい選挙機能の目標は、情報を探している有権者の「ワンストップ・ソリューション」になることだと語った。

2つ目の新機能は新型コロナウイルスの感染蔓延に特化したもので、感染者数の郡別表示、地域の閉鎖、再開、その他パンデミックに関するポリシー、ワクチン、薬品開発の状況、さまざまな情報源のニュース記事のタイムラインなどを見られる。

新型コロナウイルス用ワクチン・薬品ニューストラッカー

もう1つのニュース機能が「hyper localized」(ピンポイント)降雨予報だ。多くの州の人々が山火事やハリケーンなどの異常気象現象に立ち向かう中、SmartNewsの雨雲レーダーは特許取得済みのレーダーマップを使って、近隣に特化した降雨時刻や降雨量などを表示する。

雨雲レーダー機能

2012年に日本で設立されたスマートニュースは、2014年に米国バージョンを公開し、世界3000種類の提携報道機関の記事を配信している。ニュースの選別は主に機械学習ベースのアルゴリズムで行っているが、開発チームにはベテランのジャーナリストも参加して新機能を開発している。米国では、拡大するメディア分極化の緩和に力を入れており、ソーシャルメディアで起こりがちな「フィルターバブル」問題(未訳記事)から読者を脱出させようとしている。

米国大統領選挙向けのNews From All Sides機能

昨年SmartNewsは「News From All Sides」(未訳記事)という新機能を米国で公開した。1つの話題に関するさまざまな政治的立場の記事をスライダーを使ってユーザーが選べる機能だ。別の視点からも見たいが、オンライン検索に圧倒されがちな読者のために作られた「New From All Sides」(あらゆる立場からのニュース)は2020年大統領選挙にも導入され、ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏に関するさまざまな記事を読める。

画像クレジット:SmartNews

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人気ポッドキャスターのコナン・オブライエンが語る「変化し続けるメディアの世界でやっていくには」

「私の人生で起きた良いことのほとんどがそうだったように」とコメディアンであるConan O’Brien(コナン・オブライエン)氏が苦笑しながら説明する。「ポッドキャストの成功はまったくもって驚きだった」。同氏の答えはいつもの控えめなものだった。2年ほど前にポッドキャスト「Conan O’Brien Needs a Friend」(コナン・オブライエには友達が必要)を始めて以来、ポッドキャストチャートで急速に順位を上げ、米国で最も人気のある番組の1つになった。

同氏の30年におよぶエンターテインメントのキャリアを見つめてきた人ならその理由は簡単にわかる。機知に富み、ほとんど超人的に愛想が良いため、ポッドキャスティングへの移行は振り返ってみれば当然の帰結だったように思える。結局、何十年にもわたって次々に深夜の全米ネットワークのトークショーを主催していたのだから、新しいエンターテインメントベンチャーを立ち上げるとはいえ、まったく最初から始めたというわけではないのだ。さらに言えば、何千万ものTwitterのフォロワーと独自のオンラインメディア会社であるTeam Coco(チームココ)の存在もある。

物事が万事順調に運んだというわけではない。長期間の放送が約束されていたTonight Show(トゥナイトショー)の番組枠はすべてがオブライエン氏の望むどおりには運ばず、期待の高かった深夜番組から8カ月足らずで大々的に離れることになった。同氏が出演したシリーズの中では最も短い期間となった。テレビ放映されたSteve Carrell(スティーブ・カレル)氏との「撤退」インタビューでは、The Office(ザ・オフィス)のスターであるオブライエン氏が自身のNBCバッジを細断した。しかしオブライエン氏の深夜番組の中断は短命に終わった。その年の後半、同氏は米TBSの番組「Conan」で復帰した。同番組は11月の放送で10年目を迎える(少なくとも2022年まで更新予定)。

2018年の「Conan O’Brien Needs a Friend」の開始とともに同氏はポッドキャスティングに新たな自由を発見した。

「ポッドキャストはトークショーより優れていること、楽しいことがある」と外出禁止期間中に髪が伸びたオブライエン氏は、今週のTechCrunch Disruptのインタビューで語った。「伝統的なトークショーには制約がある。何年もの間、全米ネットワークテレビに出演していた頃は6~7分ごとのパターンを守る必要があった。私があなたと、または私が話したいと夢見ていた誰かと話しているとする。トム・ハンクスかもしれないし、ジム・キャリーかもしれないし、ロビン・ウィリアムスかもしれない。6〜7分ごとに笑いを挟んで、休憩を入れて、また戻るということを繰り返す」。

「そういうのは自然な会話の流れとは言えない」と同氏は続けた。「ポッドキャストでできることは本当に素晴らしい。1時間と15分をかけて誰かと話すことができる。編集で短くしようとするが、ほとんどの場合人々は気を緩める。もう1つ好きな点はヘアセットと化粧が要らないことだ。冗談のように聞こえると思う。しかし、いろんな人が私の真っ白な顔をほぼ30年化粧で固めてきた後に改めて眺めると、私はまだ生きているみたいに見える」。

「Team Coco」は合計10のショーを制作した。長年の相棒であるAndy Richter(アンディ・リヒター)氏と俳優のRob Lowe(ロブ・ロウ)氏によるショー、作家のMike Sweeney(マイク・スウィーニー)氏とJessie Gaskel(ジェシー・ガスケル)氏とのショーで親しみを込めたタイトルの「Inside Conan(インサイドコナン)」、Saturday Night Live(サタデーナイトライブ)出身のDana Carvey(ダナ・カーベイ)氏との6部構成のインタビューのミニシリーズなどだ。

「数字の目標は設定したくない」とオブライエン氏は言う。「私は驚いている。2年間で、10種類のポッドキャストを公開した。そのうちのいくつかはスクリプト化されていないが、されたものもある。『いつまでに35作のポッドキャストを制作しなければならない』とは言いたくない。良いものを作りたいからだ」。

同氏はトークショーの方も独自の変革を遂げるべく力を注いできた。

2019年に番組は30分形式に再編成された。オブライエン氏は机とスーツを捨て、より自由な形式を採用した。ポッドキャスティングベンチャーだからこそ可能な新しい自由に影響を受けた部分がある。新型コロナにより対面のショーが不可能になったとき、同氏は他の多くの人と同じように自宅から働き始め、リモートのZoomインタビューに切り替えた。これまで「Conan O’Brien Needs a Friend」は毎週インタビューを投稿し続けている。

契約が数年後に終了した後、深夜のショーを続けるつもりかどうか尋ねられたが、オブライエンは決めかねているようだった。

「それについて考えるのは間違いだと思う。ショーをやめ、ポッドキャストだけにするのか。それとも引退して小屋で静かに手紙を書き続けるのか。何かを創り出すのが好きなんだ。エネルギーにあふれている。私は人を笑わせるのが大好きだ。今起こっていることが収束していくことはわかっている。TechCrunch Disruptを今見ている全ての人へのメッセージは、皆が少し心を開く必要があるということだと思う。ポッドキャストを作っているからといって、他のことをしてはいけないということでは多分ない。これはモノづくりが好きな人だけでなく、誰にも言えると思う」。

画像クレジット:Bryce Durbin

数十年にわたる成功のおかげで、オブライエン氏はプラットフォームにとらわれないという比較的ユニークな立場にいるようだ。予想外の技術的変化によりエンターテインメント業界がひっくり返るような変革が起きている今、単一の媒体に縛られないことは強みになる。

「今から5年後、私たちの娯楽は錠剤になるかもしれない」と同氏は言う。「The Sopranos(邦題:ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア)を大量に飲む。The Sopranosをボトル1本分と大量の水を飲めば、赤身の肉は必要ない」v

「こじつけに聞こえると思うが、これまでのキャリアの中で今が最も刺激的だと言えるのは、クリエイティブになる方法が非常に多かったからだ。人々を笑わせる方法はたくさんあり、私は新しいチャンスを楽しんでいる。あなたが私と同じくらい生きてきた人なら選択肢があると思う。変化を恐れることもできるし喜ぶこともできる」。

画像クレジット:Team Coco

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナでテック製造拠点の多様化、プロセス自動化が進む

世界のあらゆる業界同様に、製造部門も新型コロナウイルスに不意を突かれた。エレクトロニクス製造の大半を担っている中国は新型コロナの最初のグローバルエピセンターだった。そして当然のことながら業界は、世界が1世紀以上経験したことがなかったスケールのパンデミックの影響から逃れることはできなかった。

「いい対応ができた人はいない」とAnker(アンカー)の創業者でCEOのSteven Yang(スティーブン・ヤン)氏はDisruptのインタビューで語った。「みな不意を突かれたと思う。当社の中国オフィスでは、従業員は旧正月休暇の準備をしていた。最初の対応はというと、休暇が1週間延長され、その後さらにもう数日延長された。人々はただ仕事を休んでいた。いつ仕事に戻れるかは決められていなかった。その時期は最も憂慮するものだった。というのも、見通しが立っていなかったからだ。確実性を模索する必要があった。人々は自宅から働き、必需品を揃えたりしなければならなかった。最初の3〜4週間が一番カオスだった」

パンデミック初期のインパクトは、世界の隅々のハードウェア産業に衝撃を送るという連鎖反応を引き起こし続けた。2020年初め、世界中の誰もが新型コロナの新たな感染拡大はいくつかのエリアでのもので、そう遠くに及ばないだろうと高ををくくっていた。しかし最終的には世界の大部分が急停止することになった。

特に製造が業務停止で最初に苦しんだ。すぐに需要減という影響が供給面にも及んだ。経済停滞と失業の急増はさまざまなエレクトロニクスに対する消費者需要を直撃した。PCのような一部の部門はライフスタイルのシフトで恩恵を受けたが、全体的には可処分所得の減少は業界に大きな打撃を与えた。

製造面では、新型コロナはそれまでのトレンドを推進させる方向に作用した。「新型コロナがこの脱分極をある程度加速させたと思う」とArevo(アレボ)のCEO、Sonny Vu(ソニー・ブー)氏は説明する。「さまざまなソフト製品、ハードウェアを目にしている」。大半の時間をベトナム・ホーチミン市で過ごす同氏は、新型コロナの出現により中国以外のところで製造拠点が増加することになったと指摘する。製造拠点を置く場所として人気がある東南アジアやインドなどは、将来似たような問題が発生したときに備えようと製造拠点の多様化を検討している企業にとってこれまでにも増して魅力的になっている。

ロボティクスや自動化は、今後加速すると思われるもう1つの鍵を握る要素だ。メーカーは、病気になったりウイルスの感染の増加を心配する必要がない合理的なプロセスに目を向けている。

「自動化は効率的であるだけでなく、効果的だと信じている。当社はロボティック自動化にかなり投資した」とヤン氏は話す。「ワイヤを穴に挿し込むとする。この作業を行うロボットのコストは一定で、はっきりとはしないが労働者1人の給料20年分くらいだろう。全ての組み立てラインをロボットにするのはかなり困難だがやりがいがある」。

画像クレジット: Prasit photo / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

相乗りサービスは新型コロナで大打撃、東南アジア大手のGrabがその適応方法を語る

世界中の相乗り(ライド・ハイリング)サービスが新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けているが、Grabも例外ではなかった。同社は東南アジアで最も評価の高いテック系スタートアップの1つで8カ国で事業を展開している。同社の輸送事業は、3月と4月に移動制限令が発令されたことで急減した。

しかし、同社はすでにいくつかのオンデマンド物流サービスを運営しているという強みを持っていた。Disrupt 2020では、Grabのグループ・マネージング・ディレクターを務めるRussell Cohen(ラッセル・コーエン)氏が、前例のない危機に同社がどのようにしてテクノロジーを適応させたかについて聞いた。

同氏によると「危機が始まったときに、私たちはリーダーシップグループとして席を立ち、特に東南アジアでは、課題の規模が非常に巨大であることがわかりました」と振り返る。

Grabのドライバーアプリでは、すでに相乗りとオンデマンド配送のリクエストを切り替えられるようになっている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、14万9000人以上のドライバーが初めてオンデマンド配送を開始したそうだ。この数には、感染拡大中に失われた収益を補うためにプラットフォームに参加した数万人の新規ドライバーも含まれている。

課題は、消費者の劇的な需要増加に対応するための配送サービスのスケールアップであり、顧客にリーチするための新たな方法を必要としていた加盟店にも対応することでした。コーエン氏によると「3月と4月には8万社弱の中小企業が同社のプラットフォームに参加した」という。その多くはこれまでオンラインデリバリーを手掛けたことがなかったため、Grabはセルフサービス機能のリリースを迅速に進め、加盟店が簡単にサービスに登録できるようにした。

コーエン氏は「これは東南アジア経済の大規模な分野で、数週間のうちに効果的にデジタル化されました」と語る。

新規加盟店の多くは、以前は現金決済しか利用していなかったため、Grabはデジタル決済に対応させる必要があったが、このプロセスは同社の金融部門であるGrab Financialがキャッシュレス決済、モバイルウォレット、送金サービスのためのGrab Payなどのサービスをすでに提供していたため、スムーズに移行できたという。

Grabは「Grab Merchant」と呼ばれる新しいツールパッケージもリリースした。これは加盟店がオンラインでライセンスと認証を提出することで、オンラインビジネスを立ち上げることを可能にするだけでなく、データ分析などの機能を備えている。

ニューノーマル、不確実性のためのモデリング

新型コロナウイルス対策の戦略の一環として、Grabは各国の自治体や政府と協力して配送を効率化することに取り組んでいる。例えば、シンガポール政府と協力して9月に開始した「GrabExpress Car」(Grabプレスリリース)と呼ばれる試験的プログラムを拡大し、より多くのGrabの相乗り車を食料品や食料品の配達に利用できるようにした。従来、これらの配達の多くはバイクが使われていた。

シンガポール、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムなど、Grabの各市場の状況はまだ変化している。ロックダウン命令を解除した市場もあれば、新たな感染拡大に対処し続けている市場もある。

コーエン氏は、相乗りはGrabの多くの市場で徐々に回復していると述べた。しかし、同社はさまざまなシナリオをモデル化し、再閉鎖の可能性や、消費者と加盟店の両方の行動の長期的な変化を考慮に入れて不確実な将来に備えているという。

「予測不可能性というのは、私たちがよく考えていることです」と同氏。同社のビジネスモデルは、配送が大きな部分を占めているが、移動制限が解除された国でも、顧客はまだオンラインでの買い物を好むからだ。

新型コロナウイルスはまた、Grabのいくつかの市場でデジタル決済の採用を加速させた。例えば、Grabは3カ月前にフィリピンでGrabPayカードを発売(Grabプレスリリース)したが、これは新型コロナウイルスの懸念を受けて非接触決済を利用する人が増えてきたからだ。

オンデマンド配送については、同社は即日配送サービスであるGrabExpressを拡張し、もともとは相乗り用に開発された技術を応用して、ドライバーが集荷と配送をより効率的に計画できるようにしている。これは新型コロナウイルスの感染拡大の経済的影響によって、消費者の価格意識が依然として高いため、配送サービスのコストを下げることに役立つ。

「消費者の購買行動が変化したので、私たちは供給側、つまりドライバー側ついてを考えるとき、柔軟性を持つようにしなければならないということです」と同氏は締めくくった。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

新型コロナ禍で急成長、小グループのバーチャル教育クラスを展開するOutschoolが47億円調達

ホームスクールの生徒が課外活動を充実させるプラットフォームとして2015年に始まったOutschool(アウトスクール)は、新型コロナウイルスの感染拡大以来、顧客基盤を急激に拡げた。米疾病対策センター(CDC)が定めた新型コロナ規制を順守するために学生がキャンパスを離れたため、プラットフォームが対象とする市場規模が劇的に拡大したのだ。

学生にとっては、小グループで行うライブのオンライン学習クラスが突然必要になった。エンジニアリングの勉強からレゴの課題、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)の歌によるスペイン語の指導に至るまで、Outschoolのサービスに対する需要が高まっている。

「CDCが学校閉鎖の必要性について警告した際、『インターネットベースのテレスクーリング』について言及した」と共同創業者のAmir Nathoo(アミール・ナトゥー)氏は言う。「ビデオチャットによる授業を意味していることに気づいた。これはまさに当社が提供するものだ」。

2019年8月から2020年8月にかけて、オンライン教育クラスの予約が2000%以上増加した。しかし、急増したのはプラットフォームに積み上がった無料ユーザーだけではない。今年のOutschoolの売上高は前年の650万ドル(約6億8000万円)から約5400万ドル(約56億7000万円)に増えた。新型コロナ危機の結果初めて利益に転じ、年換算売上高は1億ドル(約105億円)を超えた。

収益性と成長が実現したのは新型コロナ時代だからこそかもしれないが、現在のOutschoolはパンデミック時代のブームにとどまらないという信頼の票を得ている。Reach Capital(リーチキャピタル)のJennifer Carolan(ジェニファー・キャロラン)氏はTechCrunch Disruptで、OutschoolがシリーズBラウンドで4500万ドル(約47億円)を調達し、これまでの調達総額が5500万ドル(約58億円)になったと発表した(最後のExtra Crunchのパネルディスカッションの動画を参照)。

ラウンドは、Reach Capital, Union Square Ventures, SV Angel, FundersClub, Y Combinatorなどの参加を得て、Lightspeed Venture Partnersがリードした。

獲得したキャッシュによりOutschoolは、今年25人で始まったスタッフの数を60人に増やす。

創業者のナトゥー氏は5歳からコンピュータゲームをプログラミングしていた。同氏自身が会社を始める際、他の子供たちが同氏と同じことをするのを助けるプラットフォームを作ることは正しいことだと感じた。

ナトゥー氏は2015年、Amazon Mechanical Turk(アマゾンメカニカルターク)とGoogle Consumer Surveys(グーグルコンシューマーサーベイズ)の構築を支援したMikhail Seregine(ミハイル・セレギネ)氏と、別のエドテック企業でYCの卒業生でClever(クレバー)の製品マネージャーであるNick Grandy(ニック・グランディ)氏を引き入れた。3人は、生徒が学校では得られない体験にアクセスする手段を考え出した。

関心の程度を見極めるために、同社はサンフランシスコベイエリアでの対面授業やオンラインコンテンツを試し、数百の家庭とテストを行った。最後に、アーリーアダプターとしてホームスクーラーとの協業を始め、人々が非伝統的な教育体験にお金を払うか検討した。

「ホームスクーリングは当社にとって興味深いものだった。新しいアプローチにより教育システムが根本的に改善するとすれば、既存のシステムの外で始まる可能性が高いと考えたからだ」とナトゥー氏は語った。

また同氏は、ホームスクーリングコミュニティは、自主的な課外活動に柔軟に対応できると述べた。さらに、ホームスクーリングを採用している家庭は、数日間小グループで行うライブの課外活動に大きな関心を持っていた。 このアイデアが彼らを2016年にY Combinatorに向かわせることになり、卒業と同時にCollab+Sesameがリードする140万ドル(約1億5000万円)のシードラウンド(未訳記事)につながった。

「我々は皆、仕事でグループビデオ通話をしたことはあったが、K12(日本の高校3年生に相当)でこれを学習に利用するのを見たことはなかった」と同氏は述べた。Outschoolは小グループでライブのインタラクティブクラスを展開し始め、すぐに軌道に乗った。売上高は2017年の50万ドル(約5250万円)から2019年には600万ドル(約6億3000万円)以上に増加した。

Outschoolは2019年5月、エドテックに力を入れるベンチャーキャピタルファンドであるReach CapitalからシリーズAの資金調達の機会を得た。同社はホームスクーリングの家庭にとどまらず、もっと広い対象に向けて考え始めた。もし学校に行く子供がいる家庭で、週末や休日に課外活動を行いたいというニーズがあったとしたらどうだろうか。

同社にとって今は全然違うと感じられる。さらにEdTech(エドテック)については広い範囲で著しく異なる(未訳記事)と感じている。ナトゥー氏によると、Outschoolでクラスを購入する親の87%は、子供が学校に通っている。Outschoolの対象となる市場全体の成長には新たな課題と目標が伴う(未訳記事)。

パンデミックが始まったときOutschoolのプラットフォームには1000人の教師がいた。 現在は1万人で、全員がスクリーニングを受けている。

「それは大きな挑戦だった」とナトゥー氏は述べた。「当社はオープンなマーケットプレースではないため、社内で供給と品質のチームを迅速に拡充する必要があった」。裏方の作業は難しく時間もかかるが、学生のNPSスコア(顧客ロイヤルティの指標)は高いままだと同氏は語る。

Outschoolはライブ学習の分野で多数のライバルがいる。例えばJuni Learning(ジュニラーニング)は、コーディングと科学に関するライブの小グループクラスを販売している。同社はForerunner Venturesがリードしたラウンドで750万ドル(約7億8000万円)を調達し、ARR(年間経常収益)は約1000万ドル(約10億5000万円)だ。OutschoolのARR(年間経常収益)は1億ドル(約105億円)に上る。

「当社はJuniよりもはるかに広い範囲の学習オプションを提供する。Juniはコーディングクラスに特化している」とナトゥー氏は言う。Outschoolは現在、ウェブサイトに5万以上のクラスを掲載している。

Varsity TutorsはOutschoolに似た別のライバルだ。Varsity Tutorsは数学や英語などの主要科目でオンラインチューターと大規模グループクラスを販売している。ナトゥー氏は、Outschoolの差別化のポイントは小グループでの教育とトピックの多様性だと語る。

Outschoolの今後についてナトゥー氏は、ある矛盾するアイデアを持っている。プラットフォームが学校に導入されたらどうなるか。

「当社の今後の戦略について、私は新しいタイプのクラス、国際的な展開、学校への展開について考えている」と述べた。

Outschoolは成長する消費者向けビジネスをエンジンとして、各学区(の教育委員会)に食い込んでいく可能性がある。各学区は予算が少ないため取引を行うのが難しいことで有名だ。しかし、ナトゥー氏にとって学習へのアクセスを増やすために学校に入り込んで行くことは重要だ。

「当社のビジョンは地域の学校を補完するグローバルな教育コミュニティを構築することだ」とナトゥー氏は語った。

画像クレジット:valentinrussanov / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Checkout.comは個人・企業向けネット決済のStripeと何が違うのか?

Checkout.comは長年知名度が低いままだったが、同社はこの1年で3億8000万ドル(約400億円)を調達(未訳記事)し、55億ドル(約5750億円)という驚異的な評価額に達した。同社は、取引の受け入れ、処理、不正行為の検出など、支払いに関連するすべてのことをワンストップで行えるショップを構築したい考えている。

同社の事業は、個人向けの決済プラットフォームであるStripe(ストライプ)に少し似ていると思うかもしれない。TechCrunch Disruptのインタビューで、Checkout.comの創業者兼CEOであるGuillaume Pousaz(ギヨーム・ポサーズ)氏に、Stripeやオランダ拠点のAdyen(アディエン)、そのほかの決済分野の企業と何が違うのかを尋ねた。すると、製品と市場へのアプローチに関しては、非常に異なる哲学に起因していることがわかった。

ポサーズ氏はまず「私たちはエンタープライズのみを扱っています。私たちは大手企業としか仕事をしていません。いくつかの例外はありますが、ほとんどが大手のみで、純粋にオンラインです」と説明する。

「私はかつて、StripeのCEOであるPatrick Collison(パトリック・コリソン)に会い、彼と冗談を言ったことがあります。私は『あなたは100万人の利用者を抱えているかもしれない。私は1200人の利用者を抱えていて、一人一人の名前を知っているし、彼らはみな毎年何千万ドルもの処理をしている』と言いました。だから、これは違うビジネスだと思います」とインタビューの後半で付け加えた。

Checkout.comは現在、銀行口座に大金を蓄えているが、そのレベルに到達するまでには長くてゆっくりとした道のりだった。同社は何年も前から存在しており、2012年には黒字化を達成。長年にわたって非常に慎重に運営してきたのだ。

会社の初期の頃の話をするとポサーズ氏は「チームは本当にゆっくりと成長していました」と振り返った。「今月1人の従業員を雇えますが、2人の従業員を雇うこともできます」と続ける。

現在でも同社は、可能な限りスリムな状態を維持しようとしている。「これは本当に規律の問題です。これらの企業はみな多額の資金を調達し、多額の資金を使います。私はこのモデルは正しいと思っています。私たちにとって、その規律と倹約を会社の運営に組み込むことは重要なことなのです」とポサーズ氏。

「資金を使っても問題ありません。ただ、資金を使うときには、それが賢明であることを確認しましょう。数打ちゃ当たるわけではありまえん。残念なことに、これはテクノロジー企業で多く見られるのです」と続ける。

Checkout.comが自社製品に投資しているのはそのためだ。同社の3分の2近くのスタッフが製品、IT、エンジニアリングに従事している。営業部門で働いているのはわずか13%で、これは競合他社と比べてもかなり少ない。

しかしなぜ同社は当時、何億ドルもの資金を調達できたのだろうか?「ある時点では検証が必要です。そして、その検証は私たちにとって本当に重要でした。Insight、DST、Coatue、GIC、Blossomがあれば、次元が変わります」とポサーズ氏は語る。

Checkout.comは各国の規制について、ブラジル、英国、フランス(不測の事態に備えて)、香港、シンガポールなどでライセンスを取得している。現在、日本など他の主要市場でもライセンスの取得を進めており、このプロセスは今後も続行される予定だ。

「規制当局は審査を非常に徹底している。あなたはいい人だから合格するのではなく、正しいプロセスを持っているから合格するのです」と同氏。

私はその考えに異議を唱え、Wirecardの破綻に言及したところ、同氏は「WirecardとCheckout.comは明らかに今は違う立場にいる」と考えていると述べた。

「私のお金はすべてJPモルガンに預けられている、それは非常に単純なことだ。フィリピンには銀行口座もないし、おかしなことになっている」とポサーズ氏。「Wirecardの話はとても大きいので、本当の問題を知るには監査人に質問するしかありせん。なぜなら、私が担当している監査法人(PwC)は、私に銀行取引明細書とすべてを見せるように要求します。調査は非常に徹底しており、非常に長いプロセスです」と説明した。「Wirecardがなぜ破綻しかかって?それはわからない」と彼は付け加えた。
画像クレジット:Daniel Acker / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

消費者に無農薬野菜を届け、インドの水危機と闘う垂直農業に賭けるUrbanKisaan

深刻な干ばつにより、インドの一部地域では河川や貯水池の水が流出し、世界第2位の人口を誇るこの国の5億人以上の人々が2030年までに飲料水を使い果たすと推定されている。

その兆候は、水の総供給量の大部分を消費している農場に見られる。インドで農民が作物を育てるのに苦労しているのは、依然として雨水に大きく依存しているからだ。ほかに手段のある農家は水の使用量はごくわずかな、とうもろこしに似たトウジンビエ(パールアワ)、ササゲ、ユウガオ、トウモロコシなど、基本的には米以外の作物を栽培するようになった。しかし、ほとんどの人はこのような事業展開は難しい。

また、野菜に使用される有害な化学物質のレベルは、長年の間に大幅に上昇している。

インド南部のテランガーナ州の州都・ハイデラバードに本社を置くスタートアップであるUrbanKisaan(アーバンキサーンス)は、TechCrunch Disrupt Startup Battlefieldに参加し、この2つの課題に対処する方法を見つけたと主張する。

ハイデラバードとバンガロールにあるUrbanKisaanのセンターでは、中から見ると宇宙船のように見えるが、作物を重ねて栽培している。

垂直農法は、欧米の一部の市場では勢いを増しているが、インドではまだ非常に新しい概念だ。このモデルにはさまざまな利点がある。

UrbanKisaanの共同設立者であり最高経営責任者であるVihari Kanukollu(ビハリ・カヌコル)氏はTechCrunchのインタビューで「弊社は作物を育てるために土壌や有害な化学物質を一切使用せず、従来の農場に比べて水の使用量を95%削減しています。水が流れ続け、何度も何度もリサイクルされるような水耕栽培システムを構築しています。より少ない水を使っているにもかかわらず、UrbanKisaanは30%以上の作物を生産しています」と説明する。「私たちのは少なくとも30〜40フィート(約9〜12m)の高さまで成長します。そして、そこには無限のループがあります」と続けた。

同氏は「レタスとバジルだけを栽培する他の垂直農業モデルとは異なり、UrbanKisaanは50種類以上の野菜を栽培する技術を考案した」と語る。

同社にとっての大きな課題は、レストランチェーンなどの企業を説得して購入してもらうことだ。「健康にいい野菜を提供しているにもかかわらず、企業は伝統的に栽培された作物を使いながら、数ドルの節約をしたいと考えています」と同氏は指摘する。

その意識に対抗するために、UrbanKisaanは消費者に直接販売しています。利用者はハイデラバードとバンガロールのUrbanKisaanのセンターにチェックインし、野菜の範囲を購入することができます。

Y Combinatorのほか、最近では南インドの人気女優であるSamantha Akkineni(サマンサ・アクキネニ)氏が支援しているこのスタートアップは、誰もが自宅で野菜を購入して育てることができる約200ドル(約2万1000円)のキットも販売している。

商業のバックグラウンドを持つカヌコル氏は、母親のために新鮮な無農薬野菜を買えないことに不満を感じた後、2018年にUrbanKisaanについてのアイデアを探り始めたという。

幸いなことに、彼は20年以上かけて農業を研究してきた科学者のSairam Palicherla(サイラム・パリケラ)氏と出会った。二人は最初の1年を研究と農家との交流に費やしました。

現在、UrbanKisaanには30以上の農場を展開している。「これらの農場はすべて最初の1カ月で黒字化した」とカヌコル氏は述べている。「現在、売上高は月平均110%で成長しており、平均請求額は過去6カ月で10倍になりました」とのこと。

また同社は、今後3カ月以内に月次経常収益15万ドル(約1570万円)を達成するポイントに到達することに取り組んでいる。

UrbanKisaanはここ数四半期、テクノロジースタックをさらに改善するために費やしてきた。カヌコル氏は「LED照明の消費電力を50%削減し、チューブ1本あたりの製造コストを60%削減した」ことを明らかにした。

同社は現在5人の農家と協力しており、すべての農家に提供できる実用的なモデルを見つける方法を模索している。また、畳み込みニューラルネットワークの上に集約された知能を開発し、収穫可能な農産物をリアルタイムで検出し、農場の欠陥を検出する。

UrbanKisaanはこれまでに約150万ドル(約1億5700万円)を調達しており、今後数四半期のうちにさらに多くの都市への進出を計画している。

画像クレジット:UrbanKisaan

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Tuverlはアフリカの公共交通機関に秩序と利用しやすさをもたらす

アフリカはさまざまな文化や言語、慣習であふれる多様性のある大陸かもしれないが、Tuverlの共同創業者でCEOのHope Ndhlovu(ホープ・ンドロブ)氏によれば、南アフリカからエジプトに至るまでの大陸全体にひとつの共通する体験、あるいは共通する産業があるという。それは公共交通機関で、アフリカ全体に数百万もの中小事業者がありエコシステムはバラバラで混乱している。

公共交通機関は、1人が1台のバンかバスで営業しているようなところもあれば、複数の車を持つ大きな企業が運営しているところもある。時刻表も何らかの調整もなく、ミニバスの事業者は満員になるまで発車しないこともある。支払いは現金だけで移動や乗客の数を管理していないので、不正やお粗末な会計がはびこっている。

結果として、公共交通機関は乗客にとっては信頼できないし事業者にとっては儲からない。こうした混乱の中に、ンドロブ氏と共同創業者のBahlakoana Mabetha(バーラコアナ・マベタ)氏はチャンスを見出している。

両氏がジンバブエを拠点に創業し、公共交通機関の合理化を目指すアプリを作っているTuverlが、米国時間9月15日にTechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)に登場した。交通機関の事業者は手数料を支払ってTuverlに参加する。すると事業者はアプリを使って車両を管理し、車の場所を追跡し、運賃の処理をすることができる。一方の乗客はアプリを使って市内を走るバスやミニバスの動きをリアルタイムで追い、移動を予約し、タクシーを呼び、運賃を支払える。乗客は移動にレートを付けレビューすることもできる。

このアプリのベータ版が2020年2月にGoogle Playストアで公開され、30事業者と5235人の乗客が利用している。Tuverlは新型コロナウイルスによる外出禁止の緩和に伴って利用を拡大していく計画だ。

現時点では、両氏はジンバブエに専念している。しかしハーバード大学の卒業生である2人は、Tuverlについてもっと大きなビジョンを持っている。

ンドロブ氏は筆者とのインタビューで「一般の人々にとっての公共交通機関を向上させたいというのが、まさに私のモチベーションです。これによって人々の生活が実際に変わるからです」と語り、自分自身が学生の頃に公共交通機関の運営が非効率だったためにしょっちゅう遅刻していたと付け加えた。「ジンバブエで事業を確立してそこから成長していく必要がある。しかし我々はこれをアフリカの問題にしたい。アフリカのすべての国に進出したいと考えている」。

画像クレジット:Tuverl

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナワクチン研究を狙う海外のハッカーと米国家安全保障局はどのように戦っているのか

諜報機関である米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)の活動は、ほぼ完全に秘密裡に行われており、NSAに対する報道は、多くの場合あまり好意的なものではない。だが同局は1年前に、新しいサイバーセキュリティ総局(Cybersecurity Directorate)を立ち上げた。この組織は昨年、同機関の最も目立つ部門の1つとして登場した。

サイバーセキュリティ総局はその活動の中心を、政府が高度な機密情報の通信に使用する、重要な国家安全保障システムの防御と保護に重点を置いている。だが同総局は、増えつつある海外のハッカーからのより新しく大規模なサイバー脅威との戦いでよく知られるようになった。昨年、ほとんどの最新コンピューターに備わるセキュアブート機能を狙った攻撃(NSAレポート)に対して警告を発し、ロシアの諜報機関にリンクされたマルウェア運用(NSAレポート)を暴露した。それらを公開することでNSAは、自宅の重要なシステムを守ることを支援しつつ、海外のハッカーがツールやテクニックを再利用することを困難にすることを狙っている。

しかし、サイバーセキュリティ総局がその仕事を始めてから6カ月後、新型コロナウィルスの世界的大流行が宣言され、世界の広範な地域ならびに米国はロックダウンされることとなった。このことはハッカーたちにギアチェンジと戦術の変更を促した。

NSAのサイバーセキュリティ担当ディレクターであるAnne Neuberger(アン・ノイバーガー)氏は、Disrupt 2020でTechCrunchに対して「脅威の状況は変わりました」と語った。「私たちはテレワークに移行し、新しいインフラストラクチャに移行しました。そしてサイバー攻撃者がそれを利用しようとするのを目撃してきました」と同氏は説明する。

公には、NSAはロックダウンの開始後に使用が急増したビデオ会議およびコラボレーションソフトウェアの安全性について助言を行い(NSAレポート)、仮想プライベートネットワーク(VPN)に関連したリスクについても警告(CBS記事)した。

しかし舞台裏では、NSAは連邦パートナーと、新型コロナウイルスワクチンの製造および配布の取り組みを保護するために協力している。これは、米国政府がOperation Warp Speed(ワープ速度作戦)と呼んでいるものだ。同作戦へのNSAの関与のニュースを最初に報じたのは、ウェブメディアののCyberscoopだ。世界中が、専門家が新型コロナウイルスの感染蔓延を終わらせる唯一の長期的な方法であると説明する、有効なワクチンの開発をめぐって競争をしている中で、NSAと英国ならびにカナダのパートナーは、新型コロナウイルス研究を標的とする、また別のロシアの諜報活動を公表した。

「私たちは米国政府全体を横断するパートナーシップの一部であり、それぞれが異なる役割を担っています」とノイバーガー氏は語る。「Team America for Cyberの一部として私たちが果たす役割は、 新型コロナウイルスワクチン情報を盗もうとする。さらにワクチンの情報を混乱させたり、特定のワクチンに対する信頼を揺るがせようとする、外国勢力の正体を理解することです」と続ける。

ノイバーガー氏は「ワクチンを開発している製薬会社を保護することは、何百万人もの米国人にワクチンを提供することになる、大規模なサプライチェーン事業のほんの一部に過ぎない」と語った。ワクチンの承認を任された、政府機関のサイバーセキュリティを確保することも最優先事項だ。

以下にセッションの要点をまとめる。インタビュー全体は記事最後のビデオで見ることができる。

TikTokが国家安全保障上の脅威である理由

TikTokが、アプリストアから排除される日が数日後に迫っている。米トランプ政権が今年初めに、中国資本のその所有企業が国家安全保障に脅威を与えているとして非難したためだ。しかし、政府はこのビデオ共有アプリがもたらす特定のリスクについて積極的に発表することはせず(未訳記事)、アプリが中国によるスパイ行為に利用される可能性があると主張しただけだ。北京政府は長年にわたり、米国に対するサイバー攻撃で非難されてきた。たとえば、2014年に発生した人事管理局からの機密の公務員名簿の大規模な漏洩(CNN記事)などが挙げられる。

ノイバーガー氏は、TikTokアプリのデータ収集の「範囲と規模」は、中国のスパイたちに、米国国民に関する「あらゆる種類の諜報活動の質問」の答を得やすくさせるという。同氏は、FacebookやGoogleなどの米国のテクノロジー企業も大量のユーザーデータを収集していることは認めている。しかし「特に中国が、自国以外の人びとから収集されたすべての情報を、どのように使用するのかについて、より大きな懸念があるのです」と指摘する。

関連記事:WeChatとTikTokのダウンロードが9月20日から不可に、米商務省が発表

NSAは企業に対してセキュリティバグを非公開で開示

ノイバーガー氏によれば、NSAは発見して開示した脆弱性についてよりオープンにしようとしているという。同氏はTechCrunchに対して、サイバーセキュリティ総局は今年に入って民間企業と「多数」の脆弱性を共有してきたが、「それらの企業は自社名を明らかにすることを望んでいませんでした」と語った。

例外の1つは今年の初めに、NSAがWindows 10に重大な暗号化の欠陥を発見し、非公開で報告したことをマイクロソフトが認めたことだ。その欠陥を悪用することで、ハッカーがマルウェアをあたかも安全なファイルのように見せかけることが可能になっていた。このバグは非常に危険だったため、NSAは脆弱性をマイクロソフトに報告し、同社はバグを修正した。

わずか2年前にNSAは、発見したWindowsの脆弱性を、マイクロソフトに警告するのではなく監視目的に利用していたことを非難された。しかしこの攻撃手段はのちに流出し、多数のコンピューターにWannaCryランサムウェアを感染させるために利用(未訳記事)され、数百万ドル(数億円)単位の損害をもたらした。

スパイ機関としてのNSAは、ソフトウェアの欠陥や脆弱性を悪用して敵の情報を収集する。そのためには同機関は、政府がスパイ行為に利用できるバグを保持することを認めるVulnerabilities Equities Process(脆弱性公正手続き)と呼ばれる手続きを通過する必要がある(Wired記事)。

関連記事:【緊急】マイクロソフトとNSAがWindows10に影響を与えるセキュリティバグを警告(パッチリリース済)

カテゴリー:セキュリティ

タグ:Disrupt 2020 米国家安全保障局 新型コロナウイルス TikTok


画像クレジット:Brooks Kraft / Getty Images

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(翻訳:sako)

サイバー戦をめぐる世界危機を扱ったHBOのドキュメンタリー「The Perfect Weapon」のビデオクリップを入手

Disrupt 2020で、HBOが近く放送するドキュメンタリー「The Perfect Weapon」のこれまで非公開だったビデオクリップを見る機会があった。

John Maggio(ジョン・マッジッオ)氏が製作総指揮を務めたこのドキュメンタリーは、ニューヨークタイムズ誌のワシントン担当記者であるDavid Sanger(デービッド・サンガー)氏が書いた著書「The Perfect Weapon」が原作だ(日本語版:世界の覇権が一気に変わる サイバー完全兵器)。

TechCrunchでは、著者のサンガー氏に取材して、米国が直面しているサイバーセキュリティの脅威や適切な対応の定義、そしてさらに一般的に私たちがそれを心配すべきか否かについて話を聞いた。以下がインタビューの全編で、さらに下にあるのが近く放送されるドキュメンタリーの未公開クリップだ。

この会話は、TechCrunch記者のZack Whittaker(ザック・ウィテカー)がNSAのサイバーセキュリティ責任者Anne Neuberger(アン・ノイバーガー)にインタビュー(未訳記事)した際の素晴らしい導入になった。

 

カテゴリー:セキュリティ

タグ:Disrupt 2020 HBO

画像クレジット:HBO/Shot from “The Perfect Weapon”/Pictured: David Sanger

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ベンチャーキャピタルにおける女性の役割、外国からの投資についてEast Venturesパートナーが語る

Melisa Irene(メリサ・アイリーン)氏が東南アジアで最も評価の高いベンチャーキャピタルのパートナーになるまでの道のりは典型的なものではなかった。

「私はいつも自分がとても幸運だったと思っている」と、2019年1月にEast Ventures(イースト・ベンチャーズ)のパートナーに昇進した同氏は語った。25歳で、ジャカルタに拠点を置く同ベンチャーキャピタルの最初の女性パートナーになった。

筆者はTechCrunch Disruptの最初のオンライン会議で同氏に対し、同氏が謙虚に「幸運な」キャリアだと述べたその内容、若い女性投資家としての経験、東南アジアへ流入する米国と中国のVCマネーの急増、新型コロナウイルスによるパンデミックがEast Venturesにとって何を意味するのかついて聞いた。インタビューの動画は記事の最後にある。

25歳でパートナーに

アイリーン氏は、VCの世界で登り詰めるまでにタイミングが大きな役割を果たしたことを認めた。インドネシアのインターネットインフラの開発は比較的最近である2010年前後に進みだした。先進国の市場と比べると遅かったが、成長は急速だった。East Venturesが東南アジアのeコマースリーダーであるTokopedia(トコペディア)のシリーズAで投資してから5年後の2015年、アイリーンは入社した。

当時、「私は別に多くのインベストメントバンカーと競争していたわけではなかった」という。同氏は大学で会計を専攻し、East Venturesでインターンとして働き始めた。「ベンチャーキャピタルが求めていたのは、速くエコシステムに溶け込める人材だった」。

常識に反して東南アジアの投資エコシステムは女性に対して「非常に友好的」だ。「業界における女性専門家の昇進は歓迎されている。東南アジアで女性がバイスプリンシパルやプリンシパルになるのは珍しいことではない」と同氏は語った。

女性を支えているのは、単に「ジェンダーの多様性」という項目にチェックを入れるためではなく、テクノロジー業界で共感を示す投資家が実際に求められていることの表れだ。

「ビジネスパートナーとして、また時には友人として話したい人もいる。共感は女性が自然に生みだせるものだ」と彼女は付け加えた。

しかし同氏は、「女性の意思決定者の数は間違いなく改善しなければならない」と警告する一方、地域のエコシステムが「それを支持する」とも見ている。

東南アジアのゴールドラッシュ

米国と中国のハイテク大手は近年、約6億7000万人が住みインターネット市場が生まれたばかりの東南アジアへの進出意欲を高めているが、地域のスタートアップに資金を提供することから始めることが多い。投資により、外国の投資家としてどう動けばよいのか情報が得られる。

実際、おなじみの名前はすべてこの地域の新星に賭けている。Alibaba(アリババ)はTokopediaと、そのライバルであるJD.comも投資する旅行ポータルであるTraveloka(未訳記事)に投資した。TravelokaはEast Venturesのポートフォリオにも入っている。Tencent(テンセント)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Paypal(ペイパル)はすべて、インドネシアの配車サービスを提供する巨人であるGojek(ゴジェック)に投資している(未訳記事)。Gojekはソフトバンクが投資するGrab(未訳記事)のライバルだ。

「スタートアップは巨額の小切手を提示されたら、しっかり前を見て何が最善かを考えなければならない」とアイリーン氏は助言する。「問題は誰もがお金を持っていること。自社はどちらの側につきたいのか、どの企業と協業したいのか、どの企業が戦略的アドバイスを提供してくれるのかを判断する必要がある」。

投資家と創業者が、優先順位をめぐり衝突することは珍しいことではない。 一部の投資家は迅速にイグジットすることを望むが、起業家はじっくりビジネスを構築することを志向する。「そのすり合わせが重要だ」とアイリーン氏は主張する。

東南アジアのテクノロジーの未来

東南アジアでGrabやGojekのようなユニコーンや「スーパーアプリ」が出現した今、既存の大企業が競争をつぶすという懸念が高まっている。East Venturesは、TokopediaやTraveloaなどのスタートアップの一部が巨大企業ヘと成長するのを目の当たりにしたアーリーステージの投資家として、地域の競争について独自の洞察を持っている。

アイリーン氏は、東南アジアのインターネットエコシステムが成熟するにつれ、実際には「次のセクター」のスタートアップに多くの機会があると信じている。

「ユニコーンの周りを見ると彼らをサポートする多くの若くて小さな会社があることに気付く」と同氏はいう。重要なのは、大企業だけですべてを成し遂げることはできず、ニッチな機能のいくつかは専門に特化した小規模なプレーヤーの方がうまく対応できるということだ。

一方で同氏は、規模の経済とネットワーク効果の恩恵が得られる領域で統合は可能であり、そうすべきだと考えている。

「インドネシアは1つの国だと考えられているが、それは違う。インドネシアは最大の群島だ。つまり州によってインフラが大きく異なる。例えば小さな島に銀行の支店を作るのは高くつく。消費者にさまざまな種類のサービスを提供するには、多くのことを集合的に1つの大きなエコシステムによって扱う必要がある」。

最後に避けて通れない新型コロナウイルスの問題がある。多くの投資家と同様、アイリーン氏は暗い時代にも良い面があると考えている。

「新型コロナ前は会社の質を評価することが非常に難しかった。どの会社も多額の資金を持っていて、インフラも非常に良かった。しかし突然、誰が適切な意思決定を行い、誰がどの程度の速さでそれを行い、意思決定の結果がどうなったかを知ることができるようになった。起業家が新型コロナにどう対応しているかを観察すると、彼らの会社について多くのことがわかる」。

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:Disrupt 2020East Ventures

画像クレジット:Melisa Irene, partner at East Ventures

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(翻訳:Mizoguchi

「遺伝子編集技術CRISPRは新型コロナ治療に欠かせない」とダウドナ教授は語る

最新の遺伝子編集技術、CRISPRの共同開発者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授がDisrupt 2020に登場し「(CRISPRは)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以降のパンデミックに対する戦いで最も有効なツールの1つになる」と述べた。CRISPRはコンピューターソフトウェアと同様、目的に応じて柔軟にプログラムの組み替えが可能であり、やがて無数の治療法と検査法に応用されるだろうという。

ダウドナ教授はバーチャルカンファレンスにおけるインタビューで「CRISPRはすでにいくつかの分野で確実な成果を上げている」として明るい見通しを述べた。

「このテクノロジーが独特な存在である理由の1つは極めて柔軟性が高く、遺伝子編集において多様な目的のために利用できる万能ツールだという点だ。またウイルスを構成する要素を、的確に検知をするためにも利用できる。CRISPRはワクチンを作るために必須のものとなる」という。

これらの可能性は、CRISPRの本質による。このテクノロジーは、ウイルス中の特定の遺伝子配列ないし構造を極めて精密に探し出して操作することができる。特徴的な配列を発見し、切断することによってウイルスを不活性化できるのと同時に、ごく微量の検体からウイルスを発見するために用いることができる。

「これは、バクテリアがウイルスを探知する方法を利用するテクノロジーだ。我々はこのメカニズムをパンデミックの原因となるウイルスの検知に役立てることができる」という。

ダウドナ教授によれば、CRISPRの利点は3つある。第1は特定の遺伝子配列の検知だ。現在のウイルス検査の手法は、酵素とタンパク質の反応を利用している。しかしこの手法は間接的な証拠に過ぎず、特定のウイルスの存在を直接示すものではない。そのため信頼性とスピードは著しく制限される。ウイルスが細胞に侵入していても、特定の酵素と反応するようなタンパク質を生成し始めるまで検知できない。これに対してCRISPRはそのウイルスに特有な遺伝子配列そのものを検知するため、はるかに確実な発見ができる。「ウイルスの検知を、従来よりスピーディーかつ確実に行うことができる。ウイルスの存在を示す証拠が直接的であり、ウイルスの濃度との相関度も高いからだ」という。

第2にCRISPRタンパク質を利用したシークエンシングは、検索対象とするターゲットを容易に変更できる。「我々はCRISPRシステムのプログラムを簡単に書き換えることができる。新型コロナウイルスが突然変異しても、変異しない部分を検知の対象にすることができる。我々はすでにインフルエンザと新型コロナのウイルスを同時に検知する実験を進めている。これ自身もちろん非常に重要なテクノロジーだが、同時に将来現れるかもしれない別のウイルスに対しても簡単にピボットして検出ターゲットとすることができるはずだ。

 

上は非常に長いGIF画像。CRISPR CAS-9タンパク質がウイルスのDNAを探索し、特定の場所を発見して切断する様子を示している。(画像クレジット:UC Berkeley)

「今後もウイルス性パンデミックが、完全になくなることはないだろう。今回のパンデミックはいわば警告だと思う。次の新しいウイルスによる攻撃に対処する科学的な体制を整えておくことが重要だ」。

第3のメリットは、CRISPRベースの薬剤は製造にあたって用意すべき素材が、他のテクノロジーの場合よりもはるかに容易に入手できることだ。ワクチンにせよ、治療薬にせよ、多くの人々に迅速に供給するするためにはこの点が極めて重要になる。

CRISPRの実用化にあたって壁は、理論的なものではなく実際的なものだ。現在はまだ研究室における実験段階であり、人間の現実の疾病予防や治療に用いるためには、まだ長い審査過程が残っている。一部では人間に対する治験が始まっているし、新型コロナウイルス関連で審査がファーストトラックに載せられたものも多い。しかしコストの問題を別としても、まったく新しいテクノロジーであるだけに、実際に治療に利用できるようになるまでにはまだ時間がかかる見込みだ。

「これらの点が、バイオテクノロジーの進歩にあたって最も重要な課題になる。CRISPRを経済的な価格で、できるだけ多数の人々に提供できるようにすることが必要だ。将来、CRISPRが標準的な医療となって症例の少ない遺伝的疾病の治療ができるようになることを期待している。そのためには本格的な研究開発が必須となる」。

このテクノロジーを進歩させる最も有望な方向は、CRISPR Cas-Φ(ファイ)だ。基本的な仕組みは同様だが、Cas-Φの酵素は、はるかにコンパクトだ。もともとCas-Φはバクテリアなどの単細胞生物がウイルスやプラスミドから自己を防衛するためのメカニズムだからだという。「バクテリアが、独自のCRISPRを持ち歩いているとは誰も想像していなかった。しかし(我々が発見したところによれば)それは事実だ。興味深いのは、オリジナルのCRISPRよりはるかにサイズが小さいタンパク質である点だ。巨大タンパク質はターゲット細胞に導入することが難しい。CRISPR Cas-Φを利用して、コンパクトで効率が高い遺伝子編集ツールを作成できる可能性がある」。

ダウドナ教授のチームはCRISPRだけでなくCRISPR Cas-Φの共同発見者の1つであり、応用の可能性についてさらに詳しく説明してくれた。下にDisrupt 2020におけるインタビュー全体をエンベッドしておいたのでぜひご覧いただきたい。

カテゴリー:バイオテック

タグ:Disrupt 2020 CRISPR DNA COVID-19 新型コロナウイルス

画像クレジット:Alexander Heinl/picture alliance / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Boston Dynamicsは早ければ来年にも物流ロボットの計画を実現へ

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は、四足歩行ロボット「Spot」で大規模なロボットを構築する能力を証明した後、同社が最初に参入を目指している本格的な物流分野へのアプローチを発表するまであと数カ月となった。同社の新CEOであるRobert Playter(ロバート・プレイター)氏は、数十年におよぶ実験を経て、同社が独自の道を歩むことになると見ている。

Disrupt 2020のバーチャルメインステージでインタビューに応じたプレイター氏は、長年のCEOであり創業者でもあるMarc Raibert(マーク・ライベール)氏が研究開発に専念するために身を引いた後、プレイター氏も長年務めてきたCOOからCEOに昇進したばかりだ。今回の就任後、プレイター氏は初めての公の場でのスピーチに臨んだが、同氏がBoston Dynamicsとともに大きな計画を持っていることは明らかだろう。

有名なBigDog(ビッグ・ドッグ)の遠縁にあたる四足歩行ロボットであるSpotの最近の商品化は、プレイター氏と会社にとって、その需要がどこにあるのか完全にはわからないにしても、彼らが提供するものには大きな需要があることを示している。

「ターゲットとなる市場がどのようなものになるのか正確にはわからなかった」と同氏は認めたが、どうやら顧客たちは、どちらとも言えなかったようだ。この7万5000ドル(約784万円)のロボットは複数の顧客によって約260台が購入され、現在はSpotプラットフォーム向けに独自のアドオンや業界固有のツールを積極的に開発している。ちなみに「その価格は抑止力にはなっていない」と同氏。「産業ツールとしてこれは実際にかなり手ごろです。私たちはこれらを手ごろな価格で生産する方法を構築するために、非常に積極的に大量の資金を投下してきました。そして、すでにコストを削減する方法に取り組んでいます」と付け加えた。

TC Sessions: Robotics + AI at UC Berkeley on April 18, 2019(画像クレジット:TechCrunch)

世界的な新型コロナウイルスの大流行は、手作業に代わるものとしてのロボットへの必要性を生み出すのにも役立っている。

プレイター氏は「人々は自分自身の物理的な代理者を持つこと、遠隔地にいることが以前に想像していた以上に重要であることに気付いています。私たちはロボットが危険な場所に行けると考えてきましたが、新型コロナウイルスの影響で危険性が少し再定義されました」と説明する。新型コロナウイルスの感染蔓延は緊急性を加速させており、おそらくこの技術を使って探索するアプリケーションの種類が増えることになるでしょう」と続けた。

新型コロナウイルスに特化したアプリケーションとしては同社は、入院患者の遠隔監視や、Spotを使用して施設内にエアゾールスプレーを運ぶ自動消毒などの共同作業の依頼を受けている。「これが今後大きな市場になるかどうかはわかりませんが、依頼を受けたときに対応できることが重要だと考えまそた」と同氏は語る。「ここで正しいことをしなければならないという地域社会への義務感もありました」と。

MITの遠隔バイタル測定プログラム「Dr Spot」(画像クレジット:MIT)

最も早くから成功した応用例の1つはもちろん物流で、Amazon(アマゾン)のような企業が生産性を高め、人件費を削減する方法としてロボット工学を採用している。Boston Dynamicsは、現在実用的な「自律パレット」方式とはまったく異なる方法で、箱や箱のようなものを移動させるのを助けるロボットで市場に参入しようとしている。

「私たちは物流の分野で大きな計画を持っています。今後2年間で、いくつかのエキサイティングな新しい物流製品が出てくるでしょう」とプレイター氏は明かしてくれた。「現在、顧客が概念実証試験を進めていて、2021年に何かを発表し、2022年には製品を提供できるようになるでしょう」と続けた。

同社はすでに、より伝統的な固定式のアイテムピッキングシステムであるPickを提供しているが、次のバージョンのHandleも開発中だ。この機動性によって輸送用コンテナやトラックなどの限られたスペースや予測不可能な場所でも、荷物を降ろすことができるようになる。

インタビュー中に公開されたビデオでは、既製のパレットロボットとHandleが協働している様子が映し出されている。プレイター氏は、このような協力関係の必要性を強調する。「我々はロボットが一緒に作業できるようなソフトウェアを提供します。今は、すべてのロボットを作る必要はありません。しかし最終的には、これらの作業のいくつかを行うにはロボットのチームが必要になりますが、私たちは異種のロボットを使って作業できるようになることを期待しています」と語る。

このように優しく、穏やかで、業界に優しいBoston Dynamicsは、2018年に同社を買収したソフトバンクからの意思決定の産物であることはほぼ間違いないが、世界をリードするロボット研究開発会社を何もせずに運営することはできないという単純な現実もある。しかし、プレイター氏は、日本の大手テック企業が「過去20年間に行ってきた高度な能力の開発という過去の仕事があったからこそ、今の位置にいるのであってそれを続けていかなければならない」と理解していることに注目していた。

すぐに実際の仕事をすることはなさそうなのが、同社の驚くほど機敏なヒューマノイドロボットAtlasだ。今のところ実用的ではないが、一種のプレステージプロジェクトのような役割を果たしており、常に視野を上方に向けて調整する必要がある。

実際に仕事をしている姿を目にすることはないが、Atlasは驚くほど俊敏な人型ロボットだ。まだ実用的ではないが、同社では一種の威信をかけたプロジェクトのような役割を果たしており、常に上を目指して調整を続けている。

ヒューマノイドロボットAtlas(画像クレジット:Boston Dynamics)

「このように複雑なロボットで、多くのことができ、そうでなければできないようなツールを作らざるを得ません。そして、人々はそれを愛しています。

「これは非常に複雑なロボットであり、非常に多くのことができるため、ほかでは不可能なツールを作らざるを得ない。人々はそれを愛しています。それは野心的で、才能を引きつけます。」とプレイター氏は語る。

彼自身も例外ではない。かつて体操選手だったプレイター氏はAtlasの跳躍を見て「懐かしい瞬間」を思い出したそうだ。「マークをはじめとする当社の社員の多くは、人や動物の運動能力からインスピレーションを得ています。そのDNAは当社に深く根付いています」と締めくくった。

関連記事:Boston Dynamicsが恐竜的2輪ロボットで倉庫業務をデモ

カテゴリー:ロボテックス

タグ:Boston Dynamics Spot Disrupt 2020 Atlas

画像クレジット:Boston Dynamics

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebook Messenger担当副社長が転送回数制限とファクトチェックによる誤情報との闘いを語る

米国時間9月3日にFacebook Messengerは誤情報の拡散を防ぐためにメッセージの転送に関する新しいルールを発表した(Engadget US記事)。米国時間9月15日のTechCrunch Disrupt 2020でFacebook(フェイスブック)のMessenger担当副社長であるStan Chudnovsky(スタン・チュドノフスキー)氏は、Messengerプラットフォーム上での誤情報や有害コンテンツの拡散との闘いにおけるフェイスブックの役割、そしてMessengerはプライベートなプラットフォームであるべきで秘密のメッセージは暗号化されるが、このことと誤情報の拡散防止のバランスをどう考えているかを詳しく語った。

チュドノフスキー氏は、フェイスブックは友達や家族とリビングでプライベーな会話をしているかのように感じることを目指していると説明した。しかし同社は、デジタルツールや新しいメディアの台頭に伴いこうしたツールが悪用されるおそれが出てきていることをフェイスブックが認識する必要があるとも認めている。

「Messengerがプライベートなコミュニケーション手段であることは明らかだ。そして確実にプライベートなものにしたいと思っている。これは我々にとってきわめて優先順位が高いことだ」とチュドノフスキー氏は語り始めた。しかしユーザーが大量にメッセージを転送し始めると、Messengerはもはやプライベートな会話ではなくなる。1対多の情報共有ツールになるのだと同氏は説明する。

「そうなれば、公共放送のようになっていく」と同氏は言う。

フェイスブックは2019年にまずスリランカのMessengerユーザーに対しメッセージの転送に「抵抗感を持たせる」と発表(未訳記事)し、ユーザーはメッセージを一定回数しか共有できなくなった。その時点で、人またはグループを対象に転送は5回までと制限された。今はそのルールをMessengerプラットフォーム全体に拡大(Facebookリリース)し、人またはグループを対象に転送は5回までと制限している。

この新しい制限はスパム行為を止めるためだとチュドノフスキー氏は続ける。「特定の情報を何度も転送することはできない。このことは、特に現在の状況においては、誤情報の拡散を止めるのに本当に役立つと我々は考えている」。

さらに同氏は、Messengerはフェイスブックとつながっているため、フェイスブックに協力しているファクトチェッカーによって誤情報にフラグが立てられると、フェイスブックと同じように情報が不正確であるという警告をMessengerの会話に挿入することができ、ミスリーディング、あるいは有害なコンテンツを送信したユーザーに注意を与えると強調した。

「これはプライバシーの侵害にはまったくあたらない。すべて同じ大きなパイプラインを通るからだ」と同氏は指摘する。

ファクトチェックのプログラムについて詳しく説明しているフェイスブックのウェブサイトにはMessengerについての言及はなく、フェイスブックとInstagramにのみ言及されている。

リンクの共有を完全に止めることは検討しないとチュドノフスキー氏は述べた。

リンクの共有と転送について同氏は「これはインターネットの中核をなすものだと私は思う」と語る。「インターネットで情報交換をする機能(を完全に禁止すること)は、インターネット自体の目的を否定してしまう」。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Disrupt 2020 Facebook Facebook Messenger ファクトチェック

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

Vibeがお気に入りアプリと連携できるリモートコラボソリューションを発表

米国時間9月15日にTechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)でプロダクトを発表したスタートアップのVibeは、企業のリモートコラボレーションをもっと簡単にすることを目指している。

インタラクティブな大型デジタルホワイトボードとクラウドサービスを組み合わせた同社のシステムを利用して、リモートでブレインストーミングやクライアント向けのプレゼンテーション、バーチャルのトレーニングなどを実施することができる。

VibeはSlack、Dropbox、Teams、Zoom、OneDrive、Chrome、Asanaなど多くの人気ビジネスアプリ(Vibeサイト)の大規模なエコシステムとも連動するので、企業はまったく新しいワークフローを学んだりアプリを乗り換えたりすることなく、これまでに投資してきたツールを使い続けることができる。

ワシントン州ベルビューに本社を置く同社は、理想のリモートコラボレーションソリューションを求める人々が2016年に創業した。当初はヘッドセット付きのVRデバイスを考えていたが、その後自分たちが本当に求めているのはリアルタイムコラボレーションのプラットフォームになる単一のツールだと認識するようになった。

現在、同社のシステムには55インチの4Kタッチスクリーンデバイスが含まれている。このデバイスはフルスクリーンモードや分割スクリーンモードで他社のアプリと統合し、ホワイトボードとして使いながらビデオ会議やチャットをしたりアプリを操作したりすることができる。

プレゼンテーションや画像、他のアプリのファイルに注釈を書き込み、それをホワイトボードのプロジェクトに保存することもできる。Vibeの高解像度レンダリングエンジンにより、無制限のキャンバス、低レイテンシー、異なるアプリの注釈が実現されていると同社は説明する。

VibeのボードはスクリーンキャストまたはHDMIケーブルを使えば2つ目のスクリーンとしても動作し、注釈も利用できる。同社のクラウドサービスは、AWSをベースにしている。

Vibeはスケッチや書き込みをする際の描画の反応時間が7ミリ秒未満という低レイテンシーを約束している。また、Vibeのボードに加えウェブブラウザ、iPad、Androidタブレットとさまざまなデバイスでコラボレーションに参加できる。

このプロダクトは2019年後半にステルスでリリースされ、これまでに400社以上に販売された。そしてTechCrunch Disruptのスタートアップ・バトルフィールドで正式に公開された。

Vibeを選んだ顧客の多くはZoomやSlackなどのアプリを使い続けることができているが、ZoomやSlackはMicrosoftのSurface Board、GoogleのJamboard、SamsungのFlip、CiscoのWebExブランドのボードとは統合されていないと同社は述べている。

これはクライアントが使っているアプリで協働する必要がある企業にとっては重要だと同社は強調する。また、学校のシステムのIT部門に販売するにも有効だ。オープンなエコシステムなので教員や生徒、管理者が同社のテクノロジーを受け入れやすいからだ。

ボード自体は2999ドル(約31万円)で継続的な月額や年額のサービス料金は必要ない。これは競合よりかなり安い。GoogleのJamboardは4999ドル(日本では64万円)プラス年間サブスクリプション600ドル(日本では7万7000円)、Cisco WebEx Boardは4990ドル(約52万円、日本ではオープン価格)プラス月間サブスクリプション199ドル(約2万円)、MicrosoftのSurface Hubは8999ドル(日本では99万9800円)プラスOffice 365のサブスクリプション料金がかかる。

VibeはTechCrunchに対し、P-CAPタッチセンサーではなくIRタッチセンサーを採用したことによりコストが20%削減され、低価格を実現できたと語った。トレードオフとしてパームリジェクションが苦手だが、コラボレーションのほとんどの場面で満足のいくものだろうと同社は考えている。これに加え、同社はIntelベースのWindowsではなく、オールインワンのARMチップで動作するようにOSとレンダリングエンジンをカスタマイズしている。このためVibe用の小型PCを追加で購入する必要はないが、使い方によってはパフォーマンスが落ちるかもしれない。

Vibeの共同創業者たちはエンジニアリング、画像処理、コンピュータビジョン、サプライチェーンのロジスティクスのバックグラウンドを持っている。

CEOのCharles Yang(チャールズ・ヤン)氏は浙江大学でコンピュータサイエンスを学んだシリアルアントレプレナーで、この大学で共同創業者たちと出会った。VPのJian Zhao(ジアン・チャオ)氏は画像処理、コンピュータビジョン、マルチメディア、機械学習のバックグラウンドがあり、ケンタッキー大学でコンピュータと電気工学の博士号を取得した後、Microsoftのソフトウェアエンジニアを5年間務めた。

CTOのJiulong Wang(ジウロン・ワン)氏は分散処理システム、アーキテクト、デバッグ、パフォーマンスチューニングの経験を生かしている。かつてはMicrosoftとTwitterの開発者だった。COOのSusie Deng(スージー・デン)氏はBYDに11年間勤務し、国際的な経済と貿易の経験からサプライチェーンと財務の問題に取り組みVibeのホワイトボードの価格を下げることに貢献している。

Vibeは現在、ベルビューの本社に加え中国の杭州、深圳、上海にオフィスを構える。

同社はCherubic Ventures、Unity Ventures、InnoLink Ventures,、Challengers Capitalから資金を調達している。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Disrupt 2020 Vibe デジタルホワイトボード

画像クレジット:Vibe

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(翻訳:Kaori Koyama)

Disrupt 2020のStartup Battlefieldの勝者は大麻栽培者向けERPプラットフォーム開発のCanix

TechCrunchは、20社の印象的なスタートアップからこのコンペティションを始めた。まったく新しいバーチャルなStartup Battlefieldでの5日間の熾烈なピッチの後、勝者が決まった。

Startup Battlefieldに参加しているスタートアップ企業はすべて、競争の激しいスタートアップ・コンペティションに参加するために厳選な審査を通過した。今年は、物理的なコンテストの興奮をバーチャルなステージに移した前代未聞の年だった。彼らは全員、審査員を務める複数のVCやテックリーダーのグループの前でプレゼンテーションを行い、10万ドル(約1060万円)と栄誉あるDisrupt Cupを獲得するチャンスを手にした。

何時間もの審議の後、TechCrunchの編集者は審査員のメモに目を通し、最終的に5つのファイナリストに絞り込んだ。Canix、Firehawk Aerospace、HacWare、Jefa、Matidorである。これらのスタートアップ企業は最終審査員である審査員の前でデモを行い、フィナーレを迎えた。最終審査員を務めたのは以下の6人だ。

  • Caryn Marooney(キャリン・マルーニー)氏/Coatue Managemen
  • Ilya Fushman(イリヤ・フッシュマン)氏/Kleiner Perkins
  • Michael Seibel(マイケル・セイベル)氏/Y Combinator
  • Sonali De Rycker(ソナリ・デ・リッカー)氏/Sequoia)
  • Troy Carter(トロイ・カルテ)氏/Q&A
  • Matthew Panzarino(マシュー・パンザリーノ)/TechCrunch

そしてTechCrunch Battlefield 2020の優勝はCanixに決定した。

Canixは、大麻栽培者のデータ入力にかかる時間を短縮するために設計された堅牢なエンタープライズリソースプランニングプラットフォームを構築。このプラットフォームは、一般的な会計ソフトウェアや、業界全体の規制プラットフォームであるMetrcとうまく統合されている。創業者によると、このプラットフォームは、人件費を改善することで、生産者の利益を増加させることができるという。Canixについての詳細はこちらしてほしい。

【Japan編集部注】大麻は米国ではカリフォルニア州など一部の州、カナダ、オランダなどでは全土で解禁されているが、日本国内では大麻取締法で規制されており、栽培、所持、譲渡することは違法となる。

準優勝はMatidorだ。

Matidorは、コンサルタントやエンジニアが単一のダッシュボードでプロジェクトや地理空間データを追跡するためのプロジェクトプラットフォームを構築。エネルギーや環境サービス分野の顧客にオールインワンのデータ可視化スイートを提供している。Matidorの詳細についてはこちら参照してほしい。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)