DMM.make AKIBAがスタートアップ対象に会員費やトレーニング費など免除のプログラム「スタートライン」始動

DMM.make AKIBAがスタートアップ対象に会員費や機材トレーニング費など免除するプログラム「スタートライン」始動

DMM.com運営の事業課題解決型プラットフォーム「DMM.make AKIBA」は10月1日、スタートアップ・起業家・クリエイターの支援を目的としたインセプションプログラム「スタートライン」の提供開始を発表した。

インセプション(Inception)とは、活動や組織の始まり、発端を指す単語。2014年の開設以来、プレシード期・シード期(起業前または起業直後)のスタートアップ企業やクリエイターの支援を続ける中、日本国内におけるスタートアップ、特に起業初期の企業やクリエイターへの支援がまだまだ不足していると感じたことから、同プログラムを始動させたという。

スタートラインにおいて採択された個人または団体は、機材を取り揃えたモノづくりの拠点「Studio」とフリーアドレスで使用できるビジネスの拠点「Base」を利用できるプラン「Base Plus」の会員費、機材のトレーニング費などが免除される。

また会員の他、スポンサー、地方自治体、国内外のパートナー機関、ベンチャーキャピタルなどを含むDMM.make AKIBAのコミュニティに参加することが可能。採択者にはコミュニティマネージャーとのオンライン相談窓口が設けられ、困ったことがあればいつでも相談できる。

応募資格は、採択時に設定した各自の目標を達成する意欲のある起業前後のスタートアップ 、起業家、学生チーム、クリエイター、アーティスト。応募は特設ウェブページより必要項目を記入し行い、採択の可否はDMMの担当者との面談を通じ随時決定される。

  • 応募資格(個人、チーム含む): 本気で挑戦する熱意がある起業家やクリエイター、本気で起業を目指している者など
  • 応募資格(法人): 本気で挑戦する熱意がある法人。中小企業の場合、施設利用開始時に創業後5年未満で、資金調達額(エクイティファイナンスの合計額)が3000万円以内、事業ステージ投資ラウンドがプレシリーズA/アーリーステージ以降に未到達の法人など
  • 応募方法: 「スタートライン」公式ページ記載の応募フォームより、応募申込書を送信
  • 期間: 原則6ヵ月間。主要活動拠点および法人登記がDMM.make AKIBAの場合は1年間
  • 人数: 原則3名まで。主要活動拠点および法人登記がDMM.make AKIBAの場合は5名まで
  • 免除となる費用(1名あたり): Base Plus会員の初期費用・月額費用の免除(初期費用+6ヵ月分 税抜33万6000円相当)、スタートアップ支援サービスの初期費用・月額費用の免除(初期費用+6ヵ月分税抜8万0000円相当)、ライセンストレーニング費用の免除(税抜5万4000円相当)
  • その他のサポート: 企業とのマッチングの推薦や商談、テックスタッフやコミュニティーマネージャー、専門家からのアドバイス、各種メディアやSNSでの紹介
  • 参加者に課せられる活動: 毎月、DMM.make AKIBAでの活動レポートを指定メディアに投稿、ピッチはじめ指定・推薦イベントへの登壇など

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DMM.make AKIBAが東大IPC起業支援プログラムを通じスタートアップを支援

DMM.make AKIBA 東大IPC 1stRound

DMM.comは7月21日、事業課題解決型プラットフォーム「DMM.make AKIBA」がコンソーシアム型インキュベーションプログラム「東大IPC 1stRound」を通じ起業支援を開始したと発表した。

DMM.comは、スタートアップ支援を目的に東大IPC 1stRoundと連携し、採択されたチームに対しDMM.make AKIBA施設を無料で利用できる取り組みを開始する。これにより、採択されたチームは無料で機材を利用しプロダクトを開発したり、ビジネスの拠点として施設を利用したりできるようになる。

DMM.make AKIBAは、今後も教育機関などと連携し支援を広げるとともに、様々なステークホルダーを巻き込んだネットワーク・コミュニティによりオープンイノベーションの推進に取り組むとしている。

DMM.make AKIBA 東大IPC 1stRound

2014年11月開設のDMM.make AKIBAは、ハードウェア開発・試作に必要な最新機材を取り揃えたモノづくりの拠点「Studio」、コワーキングスペースやイベントスペース、会議室として利用できるビジネスの拠点「Base」で構成された、ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設。

ハードウェア開発用に約5億円を投じた機材と、技術やビジネス面でサポートするスタッフ、さらに24時間利用可能なコワーキングスペースを備えており、新たなモノづくりに挑戦するイノベーターをトータルで支援している。

またDMM.make AKIBAは、スタートアップ150社を含む600社、4000名以上の会員、スポンサー企業、地方自治体、国内外のパートナー機関、ベンチャーキャピタルなどを含む広いネットワーク・コミュニティを形成。施設常駐のコミュニティマネージャーやテックスタッフ、イベントなどを通して事業を加速するパートナーや協業先、切磋琢磨する仲間とも出会えるという。

東大IPC 1stRoundは、東京大学のイノベーションエコシステム拡大を担う「東大IPC」(東京大学協創プラットフォーム開発)が運営する、コンソーシアム型の起業支援プログラム。起業前やシードラウンドの現役学生、卒業生などの東京大学関係のスタートアップに対し、活動資金に加えて、開発リソース・オフィス・ITシステムなど、本格的な事業開始に必要なリソースをハンズオン支援6ヵ月間とともに提供することで事業の垂直立上げを実現。プログラムは年2回開催され、各回約5社を採択している。

2019年より開始した同プログラムでは累計22の団体が採択され、うち12組が1年以内に資金調達に成功している(2020年 6月末現在)。

DMM.make AKIBA 東大IPC 1stRound

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DMMが秋葉原にモノづくりの大拠点――3億円超の機材を揃え、CerevoやABBALabが入居


MAKERSムーブメント、IoT――言葉としてはよく聞くし、その動きは活性化している。多くの人たちは3Dプリンターにばかり目が行きがちだが、それだけの話ではない。ハードウェアスタートアップに必要な機材が利用できる場所が増え、そのノウハウを持ったプレーヤーも徐々に育ち、MoffRingといったプロダクトが世に出てきた。またそんなプレーヤーに出資したい投資家も現れている。

そんな中、DMM.comが日本のモノづくりスタートアップの中心地づくりに動いた。同社は11月11日に東京・秋葉原にてモノづくりの拠点となるスペース「DMM.make AKIBA」をオープンする。あわせて同スペースにはハードウェアスタートアップのCerevoやハードウェアスタートアップを対象にした投資を行うABBALabが入居。ノウハウや立ち上げ資金の提供を進める。

DMM.comでは、サイト上でデータをアップロードし、3Dプリンターでパーツやフィギュアなどの造形物を製作する「DMM.make 3D PRINT」を2013年夏にスタート。その後はIoT関連の情報を配信するオンラインメディア「DMM.make」も展開してきた。3Dプリント事業はすでに月間数千メデルを制作するまでになったが、「実際のところこれまでの事業は『入口』。これまでの我々の事業もそうだが、プラットフォームを作ることを目指している」(DMM.make AKIBA総支配人吉田賢造氏)とのことで、そのプラットフォームとしてDMM.make AKIBAを立ち上げるに至ったという。

3億円超の“本物”の機材が揃う「Studio」

DMM.make AKIBAの所在地は、秋葉原駅そばの富士ソフト秋葉原ビル10〜12階。10階は電子工作から量産向け試作品の開発・検証までが行える。「DMM.make AKIBA Studio」。11階は3Dプリンターを設置し、3Dプリンターや各種機材に関する法人向けのコンサルティングサービスを提供する「DMM.make AKIBA Hub」。12階はイベントスペースやシェアオフィスなどを展開する「DMM.make AKIBA Base」となる。なおCerevoは12階の一部に入居する(余談だが、Cerevoは今夏に株主が変わって以降、人材を大幅に拡大しており、現在自動車メーカーや電機メーカー出身のエンジニアも続々参画しているそうだ)。

Studioには合計180点以上の設備があるそうで、その金額は「機材だけでも3億円超」(吉田氏)だという。また、機材の監修をしたCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は、「機材は『本物』を揃えた、ということが重要。
5軸CNC(切削機)をはじめとして、小さな工場では高価で導入できないものも用意されている。また、水深30mまでに対応した耐圧潜水試験設備など、試験用設備もある。これがあれば最近出ているいわゆるハードウェアスタートアップの量産のほぼ一歩手前までができる」と語る。僕もそのリストの一部を読んだのだが、言葉の意味は分かるけど実物を見たことがない…というような試験設備も数多く並んでいた。

ハードウェアと聞くと僕らは機器そのものに目が行きがちなのだけれど、岩佐氏いわく配達までに壊れないよう梱包素材の選定だって重要だということで、そのための試験機までが用意されている。こういった試験機やハードウェア製作のための機器をスタートアップが一度に利用できる施設は国内では今までまずなかったそうで、岩佐氏は「1製品作るのに平均10カ月近くかかっていたが、うまくいけばそれが1〜1.5カ月短縮できるのではないか」と語る。

利用料金はStudioが月額1万5000円(初期費用3万円)から。オフィススペースのBaseと同時利用の場合、月額3万円(初期費用6万円)からとなる。この設備にたいしてこの料金設定でビジネスとして回るのか吉田氏に尋ねたが、「まだ投資フェーズだと考えている。施設単体でどうかというところだけでなく、ビジネスをより波及させることになる。まだまだ市場を広げて初めて価値を出す」とのことだった。

ハードウェアスタートアップ向けの支援プログラムも

また、ABBLab代表取締役の小笠原治氏は、ここでスタートアップ向けのシードアクセラレーションプログラム「ABBALab Farm Programing」を展開する。現在BoltやHighway1、HAXLR8Rなど、海外では20以上のハードウェア向けシードアクセラレーションプログラムがあるが、日本で大々的なプログラムはこれまでなかった(これについて小笠原氏は「これまでモノづくりができていなかった地域ほど、プログラムが活発だ」と教えてくれた。同時に「日本はモノづくりに強いが、個人や起業して作る人が少ない」とも)。

プログラムに参加するには、毎月開催される「トライアウト」と呼ぶプレゼンで合格する必要がある。合格すれば、業務委託や投資(基本的には評価額3000万〜5000万円で、50万〜1000万円を出資する)「スカラシップ」、自らが持つスキルでスカラシップを教育・支援して対価を得られる「フェロー」になることができる。なおプログラム参加者は毎月発表を行う場が用意され、そこで支援継続、支援追加、支援中止のジャッジを受けることになるという。プログラムはまず、並行して10社程度の参加を予定する。

プログラムでの目標を達成したプロダクトは、クラウドファンディングなどを通じて市場に出し、初期ロットの生産数を試算できるようになった時点で適量生産(大量生産の手前の段階、数を限定した生産)までを進める。もちろんABBALabや他のベンチャーキャピタル、事業会社と連携した追加投資も行うという。

岩佐氏は最後にこう語った。「大義名分にはなるが、海外は気合を入れてモノを作っている。我々はそれに負けてはいられない。日本はハードウェアの国だったのに海外にやられている状況。我々Cerevoが偉い、儲かっているとは言わないが、ハードウェアベンチャーとしては先を走っていて、ノウハウがある。ここにはDMM.comの機材があって、スタッフがいる。ここでこそ我々のノウハウが生きると思っている」