どこまで安全なら十分か?Cruiseが商用自動運転車の新しい安全基準の必要性を指摘

Cruise(クルーズ)の共同創設者でCTOのKyle Vogt(カイル・ボークト)氏は、1月17日金曜日、カリフォルニアの規制当局から毎年発表されるディスエンゲージメント報告書は、自動運転車が一般向け販売を可能とする安全性を備えているかどうかを代弁するものではないと語った。

ボークト氏は、Medium誌に寄稿した長い記事の中で、自動運転車の事業展開の準備が整ったか否かを示す新しい基準が必要だと訴えた。2019年5月の段階で企業価値190億ドル(約2兆900億円)というこの自動運転車のメーカーは、すでにより総合的な基準を作っていることを記事で示唆していた。

カリフォルニア州内の公道における、自動運転車の走行試験認可を行っているカリフォルニア州車両管理局(DMV)は、メーカーに「ディスエンゲーメント」に関する報告書を毎年提出するよう義務づけている。ディスエンゲージメントとは、自動運転車の運転をドライバーが何回引き取ったかを示す用語だ。DMVの定義では、ディスエンゲージメントとは、公道を走行する試験車両が、安全に関わる緊急事態またはシステムの不具合によって、自動運転から手動運転に切り替わることを意味している。

「DMVが想定した状況を大きく超えるほとんどの使用状況に対して、これは嘆かわしいほど不適切」だとボークト氏は書いている。「自動運転車の商業展開の可否が、ディスエンゲージメントで判断できるというのは神話だ」

このディスエンゲージメント報告書は、数週間以内に公開される。Cruiseは、主に2017年から2019年までのディスエンゲージメントに関するデータのうち、その発生までの距離に関するものを公表している。

DMVに報告対象となるCruiseのディスエンゲージメントまでの距離(2017年12月から2019年12月)

いわゆる、自動運転車の商用化レースには、試乗会などを含むかなりたくさんの段階がある。データが不足すれば、そのメーカーの自動運転車が、街のA地点からB地点へ人を乗せて往復するという非常に重要で現実的なステップにおいて、その車両が十分に安全か否かの判断を下すことが、ほぼ不可能になる。不備があるにせよ、ディスエンゲージメント報告書は一般の人間やメディアが見ることのできる数少ないデータのひとつだ。

どれだけ安全なら十分だと言えるのか?

ディスエンゲージメントは、ある程度の見識を与えてくれるものではあるが、一般向けにロボタクシー事業を展開しようと計画しているすべての自動運転車メーカーが抱く根本的な「どれだけ安全なら十分なのか?」という疑問への答えにはならない。

ボークト氏の話には、その疑問に答える実用的な方法を見つけ出したCruiseの苦労が滲んでいる。

しかし、ディスエンゲージメント率が商用化の可否を測る基準として使えないとなれば、何を用いればよいのか? 結論から言えば、自動運転車運用事業者が自動運転車をライドシェア用として大規模に展開できるようにするためには、その車両の性能が超人的(平均的な人間のドライバーよりも優秀)でああること。そして、自動運転車技術の事業展開には、自動車の安全性と公共衛生全般に建設的なインパクトを与えることに対する確かな経験に基づいた証拠を一般大衆と規制当局に示すことだと考える。
それには、a)特定環境における人間のドライバーと自動運転車との本当の能力に関するデータと、b)統計的に明らかな結果との同一条件下における客観的な照合が必要になる。私は、我々の自動運転車の有効性が認められ、事業展開の準備が整った段階で、これらを公表する。このとても重要な話題に関して、間もなく詳細を発表するので楽しみにしていて欲しい。

競合他社の合意

ディスエンゲージメント報告書に対して、これまでCruiseが最も声高にかつ、一般に向けても疑問を投げかけてきたわけだが、他にも疑問を抱く企業は多い。Waymo(ウェイモ)も、同様の考え方をしているとTechCrunchに話してくれた。

この報告書は、自動運転車メーカーにとって長年、不安の種だった。たしかに一般人にとっては、現在、どれだけの自動運転車が公道で走行試験をしているかがわかるといった有用な面もある。だが、そこからメーカーごとの技術レベルを知るのは難しい。

報告書の内容には大きなバラツキがある。企業ごとに情報量も異なれば、フォーマットも違う。さらに、何がディスエンゲージメントで、何がそうでないかという基準についても、合意ができていない。たとえばこの問題は、2018年、Cruiseの車両を含む交通事故について、乗り物専門ニュースサイトJalopnikが疑問を投げかけたときに大きく注目された。このケースでは、交差点を通過する際、ドライバーはハンドルを握って手動運転をしていたのだが、ディスエンゲージメントとして報告されなかった。当時CruiseはJalopnikに対して、カリフォルニア州の基準を満たしていなかったと説明した。

もうひとつの問題は、ディスエンゲージメントは技術の「同一条件」での比較ができないという点だ。試験車両は、いろいろな環境や条件でテストを行う。

さらにディスエンゲージメントは、試験走行の規模によっても大きく変化する。たとえばWaymoがTechCrunchに話したところによれば、カリフォルニアにおけるテストの際に、規模を大きくするほどディスエンゲージメントが増える傾向にあったという。

そして最後に、新しいソフトウェアができるごとに、実際に複数の車両を公道に送り出して走行試験をするメーカーよりも、シミュレーションや仮想テストで終わらせるメーカーが多いという問題もある。別の自動運転車メーカーのAuroraは、その仮想テスト室の利点を強調している。ディスエンゲージメント報告書には、そのデータは一切含まれない。

ボークト氏の記事では、業界に対して、慎重に「自転車や歩行者が多い都市部を避けるよう試乗ルートを吟味して、走行範囲をジオフェンスで制限し、乗り降りの場所も定め、自動運転車が試乗中に行う予定の操作を限定する」ことを呼びかけている。

これは、先日、アリゾナ州チャンドラーで記者を呼んで試乗会を実施したWaymoに向けられた言葉とも取れる。TechCrunchは、2019年、他のメディアとともに真っ先にその無人運転車に試乗した。他の自動運転車スタートアップの間でも、試乗会はごく普通に行われるようになっていて、CESなどでは人気のイベントだ。Cruiseも、少なくとも1回、2017年に記者を招いた試乗会を実施している。

ボークト氏は、「現実の状況での長距離ドライブを映した」生の編集を加えないドライブ映像は改ざんが難しく、技術の成熟度を測る上で定性的な指標となると指摘している。

画像クレジット:Cruise

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(翻訳:金井哲夫)

カリフォルニア州自動車局が自動運転車試験の規則を改定

自動運転車という事業は今、厳しい検証にさらされている。それには、アリゾナ州テンピーにおけるUberの自動運転車が起こした死亡事故や、 TeslaのModel Xの同じく死亡事故がからんでいる。後者の事故は、Teslaの半自動システムAutopilotが関連している。今日(米国時間4/1)、カリフォルニア州自動車局は、自動運転車に関する新しい規則を採用した。

自動車局は本誌にくれた声明で次のように述べている: “カリフォルニア州自動車局は州法に基づき、公道上の自動運転車の安全な試験と展開のための規則を開発している。2018年4月2日に施行されるその規則により自動車局は、自動運転車の運転者を欠く試験と展開に関し許可を発行する権限を持つ。申請書が受理されると、それは綿密に精査される。自動車局は、その申請が、法と規則が定める安全運用要件のすべてを満たしている、と明らかになるまでは、いかなる許可も認めない”。

自動運転車の試験に、新たに三つの区分が設けられた: 1)運転者を伴う試験、2)運転者を欠く試験、3)実車展開(実配備)。規則の新しい成分の多くは、運転者を欠く試験と展開に関連している。

たとえば、運転者を欠く試験を行うためには、事前にその車両を、制御された条件下で事前に試験しなければならない。またそれらの車両は、SAE Level 4または5の定義を満たしていなければならない。展開にあたっては、企業はその車両が道路の状況をに検出し反応できることを確証しなければならない。また、サイバー攻撃等を検出できるための、ベストプラクティスを守った走行をしなければならない。

中でも多くの人びとにとって関心があるのは、安全ドライバーのいない自動運転車の運用と、自動運転車の実用展開だ。今日まで、展開の許可を申請した企業はなく、また完全な自動運転車の試験は一社しか申請していないそうだ。申請は、10日間かけて検査される。

自動車局は曰く: “申請の完備が認められたら次は、その徹底的な検証が行われる。申請書が完全でも、その検証にはタイムラインを設けていない。何日かかるか、事前には分からない”。

自動車局は、運転者のいない試験を申請している企業の名前を明かさないが、それがUberでないことは確実だ。先週Uberは、3月31日で期限切れとなったカリフォルニア州での自動運転車の試験を、再申請しないと決めた

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

カルフォルニアを諦めたUberの自動運転車がアリゾナに出発

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カリフォリニア州の陸運局(DMV)がUberの車両登録を撤回したことを受けて、同社はVolvoのXC90 SUVにセンサーを取り付けた自動運転テスト車をアリゾナ州に移すことを決めた。UberのスポークスパーソンがTechCrunchに話してくれたところによれば、テスト車を載せた運搬用のトラックは現地時間22日の朝にアリゾナ州に向けて出発しており、「今後数週間以内には」同州への配備が完了する予定だ。アリゾナ州知事のDoug Duceyはこれを全面的にサポートしている。

Ducey知事は22日朝、Uberによる自動運転車のテストをサポートするとツイートした。これは正式な表明というわけではないが、Uberのオペレーションをカリフォルニア州からアリゾナ州に移してほしいという気持ちの現れだといえる。アリゾナ州の都市スコッツデールでは、今年のはじめからGMも自動運転車のテストドライブを開始している。現在はWaymoと呼ばれる、Googleの自動運転車プロジェクトもアリゾナ州で活動している。

カルフォルニア州のDMVはUberに対し、自動運転車のオペレーションを行うのであれば許可を取るようにと命令していたが、Uberはそれを無視してオペレーションを続けるという方針を発表していた。そんな中、Uberは現地時間21日にカルフォルニア州DMVと同州司法長官と会見している。その会見の結果、DMVはUberが運用する自動運転車の車両登録を撤回すると決めたのだ(合計で16車両)。

その後、カリフォルニア州DMVはもう一度Uberを招いて許可を申請するプロセスを完了させようとしたが、Uberはそうする代わりにアリゾナ州にオペレーションを移すことを決め、それはすぐに実行された。

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Uberの主張とは、同社の自動運転車にはドライバーを同乗させる必要があり、カルフォルニア州DMVが定める自動運転車の定義には当てはまらないというものだったが、同社は今もその主張を崩していない。

UberはTechCrunchにセミ自動運転トラックの「Otto」に搭載された自動運転車の写真を提供してくれた。

今後情報が入り次第、記事をアップデートする。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Uberはサンフランシスコにおける自動運転車のオペレーションを停止せず:陸運局への反抗

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Uberはサンフランシスコでの自動運転車のオペレーションをやめるつもりはない。カリフォルニア州のDepartment of Motor Vehicles(DMV、陸運局)からオペレーションの停止命令を受けたのにもかかわらずだ。

DMVは、Uberが自動運転車のテストドライブを行う際にはあらかじめ許可を取る必要があると主張する一方で、Uberはそれに対し、問題となっているクルマは「真の自動運転車」とはまったく別物であるため、許可を取るは必要ないと反論している。

Uberの自動運転車チームを率いるAnthony Levandowskiは、「自動運転車の規制に対するカルフォルニア州陸運局の法的な解釈の仕方に、私たちは謹んで反対いたします。特に、Uberがサンフランシスコで自動運転車のテストをする際には許可が必要だという点には同意できません」とコメントしている

Levandowskiは、9月中旬からピッツバーグで、そして今週からサンフランシスコでオペレーションを開始したUberの自動運転車を、Teslaの自動運転テクノロジーと比較して説明する。彼の主張とは、Teslaの自動運転車が公道を走るときには許可が必要ないのにもかかわらず、運転席にエンジニアを座らせているUberの自動運転車で公道を走る際に、なぜ許可が必要なのかというものだ。

「真の自動運転車」とは、人間による干渉や監視なしで走行できるクルマのことを指すとLevandowskiは主張しているのだ。「私たちはTeslaによる自動運転車の定義は正しいと思っています。そして、Uberの自動運転車はTeslaのクルマと変わりありません。私たちのクルマは人間のオペレーター抜きでは走行することができないのです。そうである以上、このクルマを自動運転車とは呼べないのです」と彼は語る。

もちろん、DMVはこの主張に同意していない。Uberの自動運転車が赤信号で停止しなかった様子がドライブレコーダーによって目撃されたことを受けて、当局はUberにオペレージョンの停止命令を出している。DMVはUberに宛てた手紙の中で、オペレーションを停止しなければ「差止請求を含む法的措置を取る」と忠告している。

DMVが考えるTaslaとUberの違いとは?Teslaのオートパイロット・モードでは、運転手はハンドルに手を置いておく必要がある一方で、Uberのエンジニアは自動運転車のハンドルから数インチ離れたところに手を浮かせている。また、Teslaのクルマを運転している最中にハンドルから手を話すと、音声と文字による警告が発せられるようになっている。警告を無視したまま走行を続けると、クルマは自動的にスピードを落とし、ハザードランプが点灯する仕組みだ。

今年の夏、Uberは自動運転車のテストドライブにジャーナリストを招待しているが、その際にはオペレーターがハンドルに手を置いておく必要はなかった。

Teslaは今後も完全な自動運転車の開発を目指すと発表してはいるものの、同社のクルマはまだテスト段階である ― さらに、同社はDMVからの許可も取得済みだ。

Levandowskiによれば、このDMVに対する反抗は「どの段階において自動運転車によるオペレーションが許可されるのかという原則に関わる問題、そして、非常に似たタイプのテクノロジーに対してルールが不規則に適用されているという重要な問題を」提起するものだという。

自動運転車に対する規制は州によってバラバラなのにもかかわらず、なぜUberは明らかに同社を受け入れていないカリフォルニア州でのオペレーションにこだわるのか。それに対するLevandowskiの回答は、Uberのエンジニアは、自分たちの成果を自分たちが住む街で見るという功労に値する人々だからである、というものだった。

「私たちが創りあげたテクノロジーが、自分たちが住む街、そして自分たちが働く街で動いているところを見たいのです」と彼はいう。

Levandowskiによれば、DMVから停止命令を受けたUberの自動運転車は、これからも乗客をのせてサンフランシスコの道を走り続ける。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter