母体と胎児にとって安全で正確な出生前DNA検査技術のPreneticsが$2.65Mを調達

創業から5年になる企業がシード資金として数百万ドルを調達する、という例はあまりないと思うが、今日香港でまさにそれが起きた。バイオテックのPreneticsが、同社の次世代型出生前DNA検査技術で265万ドルを獲得したのだ。

と同時にPreneticsは、新しいCEOとしてDanny Yeungを迎えた。彼はGrouponの東アジアにおけるビジネスを今年の4月まで率いた。PreneticsではYeungは無給のCEOで、シードラウンドへの参加も個人として行った。しかし彼は、500 Startupsや彼自身が今年協同ファウンダとして創業したSXE Ventures、Grouponのアジア太平洋部門のトップJoel Neoh、SingaporeのCoent Venture Partnersなど、そのほかの投資家たちをかき集めることに尽力した。

同社は最初、香港城市大学(City University Hong Kong)の一研究部門だったが、2009年にスピンオフした。多様なDNA関連サービスを提供しているが、しかし今日は’Prenetics V’と名づけたサービスを公式にローンチした。それは、無侵襲的出生前検査(Non-Invasive Prenatal Test, NIPT)と呼ばれる遺伝学的検査で、DNA検査により胎児の16種類の健康条件を調べる。

安心感を提供

この検査は、母親の血液標本を妊娠10週目という早期に採取して行い、検定の精度は99%以上と高い。主な目的は両親に子どもの健康状態に関する安心感を与えることであり、そのために妊娠初期に今後の問題の可能性の有無を調べる。

NIPTは合衆国や一部の西欧諸国ではすでに標準だが、アジアは違う。

アジアでは、生まれる前の子どもを検査する方法が限られている。しかも、母親の子宮にプローブや針を挿入するなどの侵襲的な手法が多く採られるので、妊娠合併症のリスクがあり、誤診率も10〜20%と高い。また出生前検査をまったく行わない妊婦も多い。

対照的にNIPTは胎児に危害が及ばず、Preneticsによれば診断の精度も侵襲的な方法の200倍正確である。

Preneticsは同社の新製品により、アジアにおける出生前検査の状況を全面的に変えたいと願っている。同社の直接の顧客は医療の専門家であり、最終消費者ではない。とはいえ、同社は香港で消費者向けのマーケティングキャンペーンを行って、ブランドの浸透と、一般人および医療産業における知識と関心の高まりを促進したいと考えている。

生命観の大きな変化

Yeungは彼のグループ購入サイトuBuyiBuyを2010年にGrouponに売り、そのときの契約で今年までGrouponに在籍した。退社後彼は、最初にSXE Venturesを創業したが、やがて彼の“起業家本能”が再び首をもたげ、投資家業から実業へと復帰した。…本誌のインタビューで、彼はそう言っている。

“この会社が大きなインパクトを作り出すのを、ぼくなら支援できると信じている。16名のチームにPhDが4名もいる優秀なスタッフたちだから、ぼくのやることはプロダクトの商用化、サービスのパッケージング、そして製薬業界や一般消費者をこの会社が提供する利益について教育することだ”、と彼は言っている。

さらに彼はこう語る: “妊娠産業の市場は10億ドル規模だが、それにとどまらず、この技術には生命観そのものを根底から変える力がある。アジアではDNAの出生前検査というものの存在を知らない人が圧倒的に多いが、それは必須の検診になるべきだ”。

今はPrenetics Vが同社の主製品だが、Yeungは今後もっと提供製品の幅を広げたいと言う。そのために今回からすでにもっと大きな金額を調達してもよかったが、あえてそうしなかった。

ぼくの二人の子どももアジアで生まれたから、この検査によって得られる安心感が、親の一人として十分納得できる。しかしそのオプションを選べる機会に、これまで遭遇したことはない。でもPreneticsのような企業が香港に現れたのだから、今後は西欧だけでなくアジアでも、母体や胎児にとって侵襲的でないDNA検査がオプションとして存在するようになるだろう。そんな変化を、YeungとPrenetics社はこれから起こそうとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


コンピュータウイルスが人間に感染する日

編集部注:この原稿は経営共創基盤(IGPI) パートナー・マネージングディレクターでIGPIシンガポールCEOの塩野誠氏による寄稿だ。塩野氏はこれまで、ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、ライブドア、自身での起業を通じて、国内外の事業開発やM&Aアドバイザリー、資金調達、ベンチャー企業投資に従事。テクノロジーセクターを中心に企業への戦略アドバイスを実施してきた。そんな塩野氏に、遺伝子、人工知能、ロボットをテーマにした近未来予測をしてもらった。本稿では、国内でも本格化してきた遺伝子ビジネスについて解説してもらう。

読者のみなさん、こんにちは。敬愛するTechCrunchに寄稿する機会をいただいたので、普段はテクノロジー企業に戦略アドバイスを行っている筆者だが、現在、最もホットなテクノロジー分野についてビジネスの観点から近未来予測をしてみよう。そのホットな分野とは、遺伝子、人工知能、ロボットの3つであり、第1回目は遺伝子ビジネスについて取り上げる。

最近、TechCrunchでも報じたように、ヤフーが「HealthData Labo」と呼ぶ、遺伝子情報を利用した生活習慣の改善サービスを始めたり、ディー・エヌ・エー(DeNA)が東京大学医科学研究所と提携して遺伝子検査サービスの新会社「DeNAライフサイエンス」を設立するといった動きが出てきた。TechCrunchのYUHEI IWAMOTOも利用してみたダイエット指導サービスのスタートアップ「FiNC」も忘れてはならない。同社は遺伝子検査と血液検査、そして生活習慣に関するアンケートをもとに管理栄養士が「ダイエット家庭教師」となるプログラムだ。

一方で海外にはこの領域の先駆者達がいる、アイスランドのdeCODE genetics(Amgenが買収)やクライナーパーキンスも出資したNavigenics(Life Technologiesが買収)、そしてグーグルからも出資を受けた23andMeだ。急速に立ち上がりつつある遺伝子関連ビジネスだが、どうして急にインターネット企業が遺伝子と恋に落ちてしまったのだろう?

最初の答えは、少し手垢のついた言葉、「ビッグデータ」にある。遺伝子はDNAの中の塩基配列がその組み合わせによって意味を持つデータであり、塩基はアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類から成り、約30億個の塩基対が人間を構成している。面白いことにどんな人間にも共通な塩基配列が約99.9%であり、残りの0.1%の違いが個性をつくっているところだ。この個人によって異なる部分をSNPs(スニップス)と呼び、このSNPsの一部が遺伝的な個人差、つまり体質や性格、特定の病気にかかりやすい、かかりにくいといったことに関係していると言われている。遺伝子関連ビジネスで注目されているのはこの部分だ。

ビッグデータの解析がコンピューティングパワーの向上によって飛躍的に進歩してきたが、その恩恵は人間自身の持つデータである遺伝子にも向かっている。優秀なデータサイエンティストからすれば解析の対象がソーシャルゲームのユーザ行動だろうが、顔画像だろうが、遺伝子だろうが、データはデータだ。データサイエンティストがDDBJ(日本DNAデータバンク)をブックマークし、フリーソフトの「R」を駆使し、バイオインフォマティクスの基本ツールであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を使う職場を選ぶことも、もっと普通になっていくだろう。遺伝子解析とデータサイエンティストはとても相性が良い。遺伝子関連ビジネスの潜在的市場規模は数兆円とも考えられ、医療関連会社や保険会社といった豊富な資金を持つプレイヤーも多く、将来的にはギークにとって魅力的な職場が待っているかも知れないし、ギーク達を企業が奪い合うかも知れない。こうした動きは70~80年代に軍事技術を研究していた米国の科学者達が、東西冷戦の終結と共にその数理能力を武器にウォール街の金融機関に職を求めて散っていった時代を思い起こさせる。

多くのデータサイエンティストを抱えるテクノロジー企業が遺伝子関連ビジネスを成功させるのに必要なのは、言うまでもなく、もっとたくさんの人間のデータだ。23andMeはユーザの唾液から採取した遺伝子データに対し、医学研究論文を根拠に統計的にかかりやすい病気をユーザに伝えていた(現在は同サービスは停止されている)、同社が知名度を上げるためにセレブリティを集めて行った「唾吐きパーティ」は有名だ、パーティには大富豪のウォーレン・バフェット氏も参加した。こうした解析は遺伝子と体質や病気の相関性をデータから見ており、解析結果も「あなたが○○という病気にかかるリスクは通常平均に比べて1.5倍である」といった表現になる。この解析アルゴリズムの精度を上げるためには、日本であれば解析に十分な日本人の遺伝子データが必要になる。サービス提供者としてはこのデータは誰かに集めてもらうか自社で集めるかは別として、優良なデータを集めた企業がビジネスにおいて優位となる。

また、アルゴリズムのバグは絶対に避けるようにしなければならない、前出の23andMeはSpacedeckの共同創業者でもあるルーカス・ハートマン氏にアルゴリズムのバグを指摘され謝罪している。ハートマン氏は肢帯型筋ジストロフィーのキャリアである可能性を23andMeより指摘され、自分でPrometheaseという遺伝子解析ツールを使ってアルゴリズムのバグを発見したのだ、その経緯は同氏がブログでも公表している。

通常のインターネットサービスではベータ版でサービスインして修正していくといったアプローチも多いが、遺伝子解析アルゴリズムにおいて、バグは致命的だ。ユーザの期待値からすれば、ニュースキュレーションサービスの精度ではなく、医療レベルの精度が求められる。一方でデータの増加、学術的な研究の進歩によってはアルゴリズムをアップデートしていかなければならない。将来的には人工知能の解析アプローチの1つであるディープラーニングも活用されていくだろう。

今後、各社が遺伝子解析サービスを提供していくための大きなハードルに法規制がある。革新的なサービスを200ドルで提供してきた23andMeもFDA(米国食品医薬品局)によって遺伝子検査キットによる「診断サービス」の販売を停止させられ、現在は99ドルで遺伝子から自分の祖先を探すサービスへと形を変えている。FDAは同社の検査キットに偽陽性等の誤った結果が出る可能性があることを問題視した模様だが、女優のアンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査によって乳がんの可能性を知り、乳房切除を行ったことなど同種の検査に対する社会的注目もその背景にあるだろう。

日本においても民間事業者は検査結果に基づく診断等の医学的判断が医師法や政府のガイドラインで禁じられている。「あなたが○○という病気にかかるリスクは通常平均に比べて1.5倍である」といった検査結果の内容もこうした法規制に抵触しない表現にすることが求められ、ややもすると血液型占いレベルの内容しか伝えられない可能性もある。シリコンバレーのヘルスケアにおける著名キャピタリストは「ユーザに伝えるのは占いでも、技術的精度は最高レベルまで上げておく必要がある」と述べている。他にも既に病気や障害を有する個人へのアドバイスに対しては、医師または医師の指示の下、看護師が行わなければならない、といった規制がある。

また、遺伝子は究極の個人情報であり、今後、検査自体は安価になっていくだろうが、第三者に勝手に遺伝子検査をされない権利なども論点となるだろう。現状では個人情報保護法の観点からサービス利用について文章等での情報提供とユーザ本人の同意(インフォームド・コンセント)が必要である。

こうしたハードルがありながら、インターネット業界にいる人間なら、すぐにアドテクノロジーと遺伝子情報の融合を思いつくだろう。ユーザが自分の遺伝子情報を開示していれば、医療機関や製薬会社がターゲット広告を打つことも楽になる。頭髪に関する遺伝因子を気にするユーザの画面に薄毛治療の広告が表示されるというわけだ。ユーザが聞いたことも無い難病の治療薬の広告が表示されることを心地良く思うかどうかはわからない。しかしながら遺伝子情報の第三者提供には大きなネックがある。個人の遺伝子は父母から受け継がれており、個人の遺伝子を公開することは父母や親族についても重要な個人情報を開示することとなる。ユーザの家族が持つ難病や精神疾患の遺伝因子を広告業者に開示することに、家族中の許諾を得られるだろうか。この点は法的、技術的に大きな論点となるだろう。

遺伝子解析によってかかりやすい病気がわかるのであれば、その人の性格診断も可能ではないかと思うだろう。マイクロソフトの創始者としてビル・ゲイツと共に知られるポール・アレンはAllen Institute for Brain Scienceという脳科学の研究所を設立しており、そこではマウスを使って遺伝子が脳のどの部分と関係しているかを研究し、その脳の「地図」をデータベースとして公開している。実際にウェブ上でデータベースから遺伝子を検索することも可能だ。同研究所では人間の脳に関するプロジェクトも行われている。脳、つまり性格と遺伝子の関係性の研究は進んでおり、人工的に遺伝子を変異させたマウスをつくり、その遺伝子の変異がマウスの行動(性格)にどういった影響を与えるかも研究されている。どの遺伝子がどの性格に関係するのかを見つけ出す目的だ。ちょっと恐ろしい話ではあるが、他者に攻撃的なマウスや周囲のリスクに対して敏感、鈍感といったマウスを遺伝子の一部を欠損させることによってつくり出せることが報告されている。

遺伝子解析事業者はあなたの性格を説明したがるだろうし、こうした研究の人間への応用分野としては精神疾患の発見などが考えられる。あなたが遺伝上の自分の性格を知りたがるように、統治者たる国家もあなたの性格を知りたいかも知れない。ここには大きなプライバシー上の論点がある。国家主導のDNAデータベースの先駆者は1998年からデータ整備を行っている英国だが(United Kingdom National DNA Database)、このデータベースは明確に犯罪予防を目的としている。

遺伝子関連ビジネスの今後はドライなソフトウエア・アプローチだと考えられる。ドライはデータ解析、ウエットは実験室の意味だ。データサイエンティストの獲得、整ったデータの収集、精緻なアルゴリズムの構築、そして法規制への対応を総合的に制した企業が市場を獲得していくだろう。コンピュータを手に入れた生物学は、ますますデータを解析する世界となっていく。それ自体が人間というコードをデコード(解読)することだ。それでは逆に生物を情報からコーディング出来ないのか?塩基配列を「書く」ことによって生物を創りだせないのか?

実は2010年5月に人類を震撼させる出来事が密かに起きていた。バイオテクノロジーにおける権威の1人であり、ヒトゲノム解析を行ったセレラの初代社長だったJ・クレイグ・ヴェンター氏のチームが人工的な生命体を創り出したのだ。コンピュータを使って新しい生き物をプログラミングしたというわけだ。その新しい生命体(マイコプラズマ)は新しい塩基配列を持ち、自己複製を行う。この人工生命体はJ・クレイグ・ヴェンター研究所(J. Craig Venter Institute)のウェブサイトで遺伝子情報を見ることが出来る。ヴェンター氏は自身の研究を「合成生物学」と呼んでいる。

情報から創り出された新生命体は、各国の国家安全保障を含む我々人類への大きな課題を突き付ける。なぜかって?人工生命体が無害なバクテリアや燃料をつくり出してくれる微生物だったら問題ないが、もしそれが地球上に無いインフルエンザだったら?そして製薬会社に雇われたバイオ・プログラマーが先回りしてそのワクチンをつくっていたら?これは国家レベルで考える論点だろう。

バイオ・エンジニアリングとコンピュータサイエンスの出会いは近未来的にはバイオ・プリンティングの世界をつくりだすことだろう。クラウド上にある遺伝子情報のデータベースや他の研究者がつくった遺伝子情報を別の場所にいる研究者がダウンロードしてA,T,G,Cから成る塩基配列の合成を行う。プリント(合成)された生命体がゆるキャラならいいが、病原菌や生物兵器を創らせないためのグローバルでの規制が必須である。サイエンティストには常に「創ってみたい」欲求があるものだ。

インターネット企業が今すぐバイオ・プリンティングまで手掛けることはないだろうが、数年前にヤフーとDeNAが遺伝子解析事業を手掛けることも予測できなかっただろう。Y Combinatorが遺伝子操作によってつくられた光る植物Glowing Plant出資し、サンフランシスコではローコストのバイオ・プリンティングを目指すCambrian Genomicsも登場している。バイオテクノロジー専門家であり未来学者であり、「細胞は生きるコンピュータである」と唱えるアンドリュー・ヘッセルは、合成生物学はインターネット出現以上のインパクトになるかも知れないと言う。同氏はシンギュラリティ大学にも所属している。そう、同大学はテクノロジーが人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を予言するレイ・カーツワイルによってつくられたシリコンバレーの教育機関だ。そのうちハッカー達はコンピュータかバイオのどちらの「ハッカー」なのか聞かれるかも知れない、コンピュータ(が創った)ウイルスが人間に感染するかも知れない。近未来的にはバイオしかり、エネルギーしかり、データがある世界にはコンピュータサイエンスが益々、浸食していくだろう。社会科学がデータサイエンティスト達に浸食されていったように。

photo by
MIKI Yoshihito


ヤフーもDeNAもスタートアップも、みんな「DNA」ビジネスに興味アリらしい

DNA検査キットを販売している「23andMe」が米国で立ち上がったのは2006年の話だし、オンラインでなければDNA検査をすることはできないわけではなかった。でも今、スタートアップから大手まで、国内IT企業がDNA関連ビジネスに注目している。

5月末に開催された招待制イベントの「Infinity Ventures Summit 2014 Spring」。同イベントの恒例企画ともなっているスタートアップのプレゼンイベント「Launch Pad」では、遺伝子検査に加えて、血液検査や生活習慣や食習慣のデータをもとに、スマートフォンアプリでダイエットを指導するFiNCの「REPUL」や、届いたキットに唾液を入れて返送すれば、疾患リスクや体質など約200項目についての遺伝子を調べてくれるゲノム解析サービス「ジーンクエスト」が登壇した。特にジーンクエストは、従来の遺伝子検査と異なり、ゲノムの全体をスキャンしてデータ解析をするため、一生に一度検査を受けると、医学の知見が増えるつれて遺伝子から分かるデータが増えるそうだ。

またヤフーでは、6月2日にYahoo! JAPANの利用規約のうち、プライバシーポリシーの項目について改定を実施している。具体的には、(1)カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社との情報連携開始に伴う改定、(2)「HealthData Labo」の開始に伴う改定、(3)外部研究機関等との共同研究におけるデータ取り扱いへの対応に伴う改定、(4)官公庁に対して行う任意の情報提供への対応に伴う改定‒‒の4点だ。このうちの(2)が、DNAに関連する話となる。最新の規約には次のような文言がある。

また、当社は、お客様が利用されたサービスやソフトウエア、購入された商品、ご覧になったページや広告の履歴、お客様が検索された検索キーワード、ご利用日時、ご利用の方法、ご利用環境(携帯端末を通じてご利用の場合の当該端末の通信状態、ご利用に際しての各種設定情報なども含みます)、お客様のIPアドレス、クッキー情報、位置情報、端末の個体識別情報、病気予防のためのエビデンス(根拠)情報の収集、獲得、創出のためのプロジェクトおよびその一環としてなされるゲノム解析サービスに申し込まれたお客様から提供いただいた試料を検査し、解析した結果得られるお客様の遺伝子に関する情報等(以下「遺伝子情報」といいます)などの情報を、お客様が当社や当社の提携先(情報提供元、広告主、広告配信先などを含みます。以下「提携先」といいます)のサービスをご利用になったりページをご覧になったりする際に取得します。

(2)の項目で挙げられているとおり、ヤフーでは今秋にもHealthData Laboと呼ぶ、遺伝子情報解析をもとにした生活習慣の改善支援サービスを展開する予定だ。このサービスは、前述のジーンクエストと提携したものになる。そういえばヤフー副社長COOの川邊健太郎氏などは、1年以上前から医療分野への興味を語っていた。

ただ規約の変更を読み解く限りは、遺伝子情報をビッグデータとして扱うことも想定しているようで、単なる生活習慣改善にとどまる話ではないことが想定できる。

さらには6月3日、ディー・エヌ・エー(DeNA)が新会社の「DeNAライフサイエンス」にて、一般消費者向け遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」を提供すると発表した。

ネット上では「DeNAがDNA検査事業を開始」とダジャレのようにも言われたが、新会社では東京大学医科学研究所と共同で事業を展開するという。サービスは7月下旬にはお披露目される予定だ。

冒頭にあった23andMeは、米国では食品医薬品局(FDA)から販売停止の命令が出たり、法整備の議論も進んでいるそうだ。果たして国内ではどのように受け入れられるのか。


DNAテストの23andMe、自宅用テストキットの販売に米食品医薬品局から中止命令

米国食品医薬品局(FDA)は、遺伝子テストのスタートアップで、Anne Wojcicki、Linda Avey、Paul Cusenzaの3人が2006年に共同設立した23andMeに対し、同社の家庭用DNAテストキットの販売を11月22日付で中止するよう命じた。Bloombergの記事によると、FDAが同社に送ったレターには、同キットが医療用品に分類され、販売には規制認可が必要であると説明されている。

23andMeのミッションの一つは、人々が本人あるいは子供の遺伝子的疾患や症状のリスクを評価することにあり、FDAはその点を問題にしているようだ。医学的リスクの評価は、たとえそれが23andMeのサービス唯一の目的でなくても、キットが医療装置として分類されることを意味する、と同局は言っている(単なる好奇心や、進行中の研究を支援するためにテストを受けた人々も多い)。23andMeの合計40万件の被験者データベースは、遺伝子研究者にとってまさしく宝の山だ。しかし、もし患者が乳がんを発症する可能性が高いという結果を受け取り、予防対策として両乳房切除手術を受けた結果、実は偽陽性だったというケースを考えれば、大きなリスクであり監視の必要性は正当化される。

23andMeはGoogleの出資を受けており、2007年のシリーズAラウンドで390万ドルを調達し、最近にはシリーズDラウンドで、Google、NEA、Milner等から5000万ドルの資金を調達した。利用者は唾液のサンプルを送るだけでよいというこの自己テストサービスは、2008年にTIME誌の「年間最優秀発明」に選ばれている。同社は以前にも規制のハードルに遭遇しており、ニューヨークとカリフォルニアの州当局は、認可制度を理由にテストを禁止しようと試みたが、後に23andMeは認可を取得しサービスを継続した。

かつて23andMeは、キットの承認を得ようとFDAに申請したことがある。しかしFDAは、以前両者で確認されていた問題が解決されていなかったと語った。本件に関する既得権にまつわる不安もある。米国最大の保険会社は、2012年に23andMeのテストを強く非難した。23andMeは、巨大かつ利益を生む市場を開拓したため、金の行き先について保険会社が口を挟みたくなる理由は十分にある。

本誌は23andMeにコメントを求めており、情報が入り次第隊報続報する。

アップデート ― 23andMeから以下の声明が届いた。

当社はFDAから警告文書を受け取った。申請に関する時期と連絡について、当社がFDAの要望を満たしていなかったと認識している。FDAとの関係は当社にとって極めて重要であり、同局の指摘への取り組みに最大限の努力を投じることを約束する。

写真提供:flickr user lovemypit

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(翻訳:Nob Takahashi)


スマートフォンを高度なDNA検査機器に変えるBiomeme, へき地でも正確な疾病診断が可能に

スマートフォンのアクセサリは今ではものすごく種類が多いが、でもそのほとんどが、第一世界の…ぜいたくな、どうでもよい…問題を解決するものばかりだ(栓抜きのついたスマホケースとか)。でもたまには、取り残された世界に変化をもたらそうとするものもある。Dreamit Venturesが資金を提供しているBiomemeの連中はこのほど、iPhoneやiPod touchをDNA複製マシンに変えて、病気の診断や治療を都市から遠い僻地にも提供できるデバイスを開発した。

(聞かれる前に言っておこう。Androidのサポートも今準備中だ。)

そのデバイスの高度な技術はもっぱら、qPCR thermocycler(定量PCRサーモサイクラー)と呼ばれるDNA複製増幅法に依存している。その装置を使うと、少量の細胞からでも詳細なDNA情報を知ることができる。疾病の診断には理想的だが、使用技術が難しい、値段が高い、などのため、利用できる医療機関/研究機関は限られている。そしてそこが、Biomemeの出番となる。

同社の5人のチームは、1年足らずで、精度が高価な装置並でお値段は格安というサイクラーを作り上げた。お安いのは、頭脳の部分をBluetoothで接続されたスマートフォンが担当するからだ。では、その仕組みを見よう。

まず、ユーザのスマートフォンを同社のモバイルPCRマシンにBluetoothで接続する。次に別売のテストキットを取り出して、そこにごく少量のサンプルを取り出す…テストキットは使い捨てなのでこれが同社の収益源になる。サンプルテストのための簡単な準備を行い、サンプルをマシンの上部にロードし、結果を待つ(協同ファウンダで事業開発を担当するMax Perelmanによると、以上一連の作業は手の不器用なVCたちですら間違えないだろう、と言う)。

このプロトタイプの、3Dプリントで作った筐体中にはArduinoが鎮座してかんじんのお仕事をする。ヒーターとファンを制御してマシンの温度を調節、励起光源のコントロール、スマートフォンとのワイヤレス通信、などなど。一方、スマホ側ではカメラが活躍してDNA配列の発光状態をアプリに伝える。そしてその専用アプリが、DNAの状態を疾病の特徴と対照する。このハードウェアの今のバージョンは、まだかなり荒削りで、しかも大量のオープンソースコードをセキュリティ的に無防備で使っている。でも協同ファウンダのMarc DeJohnは、当面はこれでよい、と考えている。

この、スマートフォンを電脳として使うPCRマシンは、予価が1000ドルだが、今後医療世界で需要が増えれば、興味を抱(いだ)いた消費者が気軽に買えるぐらいの値段にはなるだろう、という。そうなると、DNA検査の民主化という、たいへんな事態が訪れる。

しかしPerelmanによると、スマートフォンを利用する医療検査機器に対して合衆国の規制はまだ寛容でない。サラダ菜の葉っぱのDNAを調べるぐらいしか、できない。そこでBiomemeは、南アメリカやアフリカに進出して分散検査システムを構築することを考えている。そして各地の小さなラボが、リアルタイムで疾病の検査を行い、結果を専門医に送るようにしたい、と。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))