VRソフト開発のDVERSEが凸版印刷と資本業務提携、100万ドルを調達

VR制作ソフトウェアを開発するDVERSE(ディヴァース)は7月10日、凸版印刷と5月31日に資本業務提携を締結していたことを明らかにした。DVERSEはこの提携で、凸版印刷を引受先としたConvertible Equity(CE型新株予約権)による100万ドル(約1億1000万円)の資金調達を実施したことも発表している。

DVERSEは2014年10月の設立。CEOの沼倉正吾氏はCAD/CAMシステムなどを開発するゼネテックの出身で、海外展開を想定して米デラウェア州に登記している。2015年7月には、韓国のBonAngels Venture Partnersおよび日本のViling Venture Partnersから資金調達2016年6月には、500 Starups Japan、Colopl VR Fundなどから103.9万ドルの資金調達を実施している。

2017年2月にDVERSEがSteamに公開した「SYMMETRY alpha(シンメトリーアルファ)」は、3DCADデータを取り込めば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通じてそのデータをVR空間に表示し、体験できるソフトだ。建築・不動産データをVR化することで、社内外でのイメージの共有、コミュニケーション、合意形成をスムーズにすることを目的としている。

SYMMETRY alphaは、建築、デザインなどで利用される3Dモデリングソフト「SketchUp(スケッチアップ)」のフォーマットに対応するほか、現在は3Dレーザースキャナーを使って建物や地表をスキャンして生成する、点群データにも対応している。

DVERSE CEOの沼倉正吾氏は、SYMMETRY alphaについて「当初は建築・不動産業界から注目が高かったが、そちらに加えて、現在は工業デザイン、コンサート会場やイベントブースのデザインなどイベント・プロモーションの分野、教育分野など幅広くフィードバックをいただいている」と話す。現時点で全世界96ヵ国で利用されているという。

凸版印刷では、建築物をはじめとした文化財などをVR化したアーカイブ「トッパン VR・デジタルアーカイブ」を公開するなど、空間や立体構造物のデジタル化に力を入れている。沼倉氏は今回の資本業務提携により、今後「DVERSEのプロダクトをベースにして次世代のVRソリューションを開発していく」と話している。

「DVERSEが最終的に目指すものは、ビジネス分野で使われている、Skypeやメールなどのコミュニケーションツールを置き換えるもの。『VR空間でイメージを正確に共有してコミュニケーションを行うプロダクト』を目標としている」(沼倉氏)

3DCADデータをVR上で“体験”できる「SYMMETRY alpha」、DVERSEが公開

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2016年6月に500 Starups JapanやColopl VR Fundなどから約1億1000万円の資金を調達したVR制作ソフトウェア開発のDVERSE(ディヴァース)。同社は2月14日、VR体験ソフトウェア「SYMMETRY alpha(シンメトリーアルファ)」の提供を開始した。ゲーム配信プラットフォームの「Steam」から無料でダウンロード可能だ。

DVERSEが開発するSYMMETRY alphaは、3DCADデータを取り込めば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を通じてそのデータをVR空間に表示し、体験できるというソフトだ。データは容量にもよるが数秒から数十秒のほぼリアルタイムで取り込み可能。ただし現時点では、3DCADデータはTrimble社のSketchUpのファイル形式にのみ対応。対応するHMDもHTC Viveのみの対応となっている。今後はほかのファイル形式に対応するほか、Oculus RiftやAndroid Daydreamといった環境での利用にも対応していく予定だ。

「SYMMETRY alpha」上で模型のように表示した3DCADデータ(右)と、等身大で表示した3DCADデータ(左)

「SYMMETRY alpha」上で表示した3DCADデータの「模型」(右)と、VR空間上に実寸サイズで表示したデータ(左)のイメージ

VR空間で3Dデータを表示できると言っても、体験していない読者には分かりにくいかも知れない。実際にHMDをつけてデモを体験をした僕の目線で説明すれば、SYMMETRY alphaでCADデータを取り込むと、まず目の前(のVR空間)にCADデータを元にした模型が表示される。その模型に対して、Viveのコントローラーを使ってポイントを指定すると、今度は実寸サイズで、その指定したポイントからCADデータを眺めることができる。VR空間上でさらにポイントを指定すれば、瞬間移動するがごとく指定した位置に移動できる。CADデータさえ取り込めば、その建物の好きな場所に中にいるかのような感覚で、データを閲覧できるというわけだ。フィードバック用のコメントを残す機能なども提供する。

DVERSEではまず、建築や土木といった分野での利用を想定している。例えばCADデータで作った店舗を、工事を始める前に体験するといった使い方だ。すでに大手の建築事務所やゼネコン、家具、自動車といったメーカーなどに導入を提案しているという。

また同社では、SYMMETRY alphaを「AdobeにおけるAcrobat Readerのようなもの」だと説明する。いわばこれは3Dデータを読み込むためのリーダーソフトだ。今後は対応ファイルや対応環境を拡充しつつ、オーサリングツールを開発。有料で提供する予定だ。