オンライン学習のCourseraが評価額8億ドル、6400万ドル調達――元イェール学長のCEOに聞く

伝統的なスタイルの高等教育のコストが上がる一方、コンピューティングのコストは下がり続けている。そこでオンライン教育サービスはますます繁栄することになる。このトレンドを象徴するように、分野のリーダー、Courseraが今日(米国時間6/7)、シリーズDのラウンドで6400万ドルの資金を調達することに成功したと発表した。

私はCouseraのCEO、Rick Levinにインタビューすることができた。 Levinは2014年に同社に加わる前はイェール大学の学長を務めており、経済学者としても著名だ。Levinによれば、今回調達した資金はCourseraのビジネスを3つの分野で拡大するために用いられるという。

一つは学習のパーソナル化、効率化を図るために人工知能などの新しいテクロジーを開発すること、二つ目は正規の学位を授与できるような長期にわたる学習体系を確立すること(現在は主として比較的短いコースや単発のコース)、3つ目は企業としてだけでなくNPOとしても新しい分野を開発し、多様な学習ニーズに応えていくことだという。

Levinはインタビューで「Courseraは今回のラウンドにおける会社評価額を公表していないと」と述べたが、私は別途事情に通じた筋から会社評価額は8億ドル前後だったという情報を得ている。前回のラウンドでの評価額は5億ドルだったから大幅なアップだ。

オンライン教育マーケットの熱気を示すもう一つの兆候は資金調達の規模そのものだ。私は数日前から情報を得てこの記事を準備していたが、昨夜遅くなってから「Courseraはラウンドの締め切り直前に新しい投資家を追加した」という至急のメモ受け取った。

全投資家のリストは印象的だ。おなじみのKleiner Perkins Caufield Byers (KPCB)に加えてGSV Asset Management、New Enterprise Associates (NEA)、 Learn Capitalが既存投資家で、これにThe Lampert Foundation (医療、教育、チャリティー分野で著名)が新規に加わった。今回のラウンドを含めるとCourseraは2億1000万ドル以上を調達したことになる。

Courseraの創立は2012年〔共同ファウンダーはAndrew NgとDaphne Koller〕。さまざまな分野を通じて世界の登録ユーザーは合計2600万人だ。提供される学習コースは180分野で2000種類、ビジネス、コンピューティング、イノベーション、会計の分野で修士号を授与している。エンタープライズ向け、NPO向けコースもあり、150の大学と提携している。

2600万のユーザーの大半は短期コースの受講者だが、Levinは長期コースも急速に拡大されており、将来はCourseraの主要事業の一つになると期待していると述べた。現在、BCG、BNY Mellon、L’Oreal、PayPal、Air France、KLMなど50社程度がCourseraに学習コースを提供している。また公務員やNPO職員などの学習者はアメリカを始めとして、パキスタン、エジプト、マレーシア、シンガポールから参加している。【略】

一部では伝統的教育は窓から投げ捨てるべきだと主張されているが、もちろん伝統的教育には価値も将来もあると信じる人々も多い。オンライン教育の価値についてはこれまで激しい議論交わされてきた(たとえばこちら)。もちろんオンライン教育プログラムのすべてが成功だったわけではない。

私の見るところ、もっとも興味ありまた持続可能なビジネスになる可能性が高いのは既存の大学に取って代わろうとするのではなく、補完しようとするサービスだ。こうしたサービスは費用、時間その他の制約により既存の教育機関で学ぶことが困難な人々に新たな学習のチャンスを提供するものだ。

若い層を対象としたオンライン学習サービスとしては最近11億ドルの会社評価額を得た中国のYuanfudao〔猿輔導〕や同じく中国のサービスで、昨年突然登場して1億ドルを調達したVIPKid、 またアメリカで昨年10億ドルの評価額を得たAge of Learningなどが興味あるスタートアップだろう。

LevinによればCourseraは「何もかもいちどき革新するようなディスラプティブな存在とは考えていない」という。「われわれのMBAコース受講者の平均年齢は37歳で、大半は既婚者で子供がおり定職に就いている。これからイリノイ大学のような名門校に入学しようとしている若者ではない<」ということだ。しかしCourseraの歴史はまだ浅い。先ごろ最初の修士号取得者を出したばかりだ。Courseraのディスラプティブな面が今後どのように発揮されていくか注目だ。

画像: starmanseries/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

リクルートが”日本語訳付きMOOCs”提供へ–米UDACITYと協業

MOOCs(Massively Open Online Course:大型公開オンライン課程。大学などの講義の動画をインターネット上で配信するサービス)のプロバイダである「UDACITY」。1月には有料の統計学課程をローンチした彼らとリクルートがタッグを組んだ。

リクルートホールディングスは3月13日、UDACITYとの協業契約を結んだと発表した。今後は両社で日本でのUDACITYの普及活動を進める。

これまでもリクルートは、MOOCs情報サイト「Edmap」を立ち上げて関連情報を配信するなど、MOOCsの啓蒙に積極的な姿勢を見せていたと説明する。協業の発表にあわせて、Edmap上に「UDACITY on Edmap」を立ち上げており、すでに6つの講座を日本語字幕対応にしている。今後はその他の講座についても翻訳を進める。またEdmaps上で、UDACITYの講座情報(シラバス)を日本語で紹介していく。


Twitter世代向けに、数分間単位のごく短い教育ビデオを提供するCoursmos

Dave McClureのみならず、シード投資家に売り込みをかけるときは、相手を惹きつけることのできる内容から始めるべきだ」。

これを実践してまずCoursmosというiOSアプリケーションをリリースして、少なからぬ人の注目を集めることに成功したスタートアップがある。

そのスタートアップは、ロシアに拠点をおいている。彼らは、既存Eラーニングの問題点を突いて、より効果的な学習環境を提供するのだと主張している。長い時間(最低でも数週間)をかけて学習を行う従来型MOOCと異なり、Coursmosはレッスンをより細かい、把握しやすい規模に分解する。たいていは数分程度のビデオにまとめられていて、たとえば職場に向かうバスの中などでの利用を想定しているわけだ。

これは言うならば「Twitter世代に向けたEラーニング」といったところだ。マイクロブロギングサービスのように、教育コースを短い制限時間内で提供しようという試みだ。気を散らしやすい世代(Generation Distracted)向けの教育環境とも言えるのかもしれない。

「人々は学びたいと思っています。ただ、現在のMOOCは従来型のオフライン教育のやり方に拘り過ぎていると思うのです。もちろん、オンラインコースでも従来と同じクオリティを保とうと考えてのことなのでしょう。しかしひとまとまりの長さを小さくすることで、レッスンを受ける前に時間についてあれこれと悩む必要もなくなるでしょう。世に広がっているMOOCでは、受講前にかなりの覚悟が必要となってしまうのです」と、共同ファウンダーのPavel Dmitrievは言っている。

「Coursmosのマイクロコースフォーマットは、さほど時間をとることなく、簡単に内容を把握できるようになっています。3分間を確保できるのなら、レッスンをひとつ受けることができます。繰り返しておきますが、30分でなく3分でワンレッスンを完了することができるのです」。

ワンレッスンの長さを短くしようとする狙いを実現する意味もあって、CoursmosはモバイルファーストでまずはiOSアプリケーションをリリースすることとした。Androidアプリケーションも現在準備中だ。Dmitrievによれば、ウェブプラットフォームも構築する予定であるとのこと。6月の設立以来、これまでにシード資金として15万ドルを調達している。出資しているのはロシアのエンジェル投資家の他、ウクライナのテック系インキュベーターであるHappy Farmなどだ。

Coursmosはレッスン自体をどこから入手するのか。それはクラウドからだ。今のところ、講座の数はまだまだ非常に少ない。そして大方の予想通り、品質的にもばらつきが大きい。しかしこれは、新たなプラットフォームを開拓しようとする際にはよくあることだとも言える。

しかし、実はこの記事自体、500 StartupsのメンターであるVitaly Golombの作成したマイクロコースをきっかけに執筆にいたっているのだ。但しぱらぱらと他のコースを見てみたところでは、それほど面白いと思うものには出会えなかった。短いのだから全てのコースが簡潔にまとめられているというわけでもないようだ。

UGC(User Generated Content)というのが広く受け入れられるようになっており、Coursmosとしては「レッスン」についてもクラウドから良いものが出てくるはずだという信念を持っているのだろう。アプリケーションの中でも「フィーチャードコンテンツ」として、品質の高いコンテンツをまとめて提示することができるようになっている。そうした形で紹介できるほどに、たくさんのコンテンツが生まれてくるのであれば、なるほど面白いプラットフォームとして機能することになるのだろう。

また、アプリケーションには講義をカテゴリ毎に分類して表示する機能もある。カテゴリはアートや料理からコンピューター、工芸、健康、ビジネスなどの多岐にわたっている。購読するコースは「Your classes」タブにまとめておくことができ、簡単に見なおしてみることもできる。さらにすべてのレッスンには「mark completed」(完了マークを付ける)ボタンが用意されていて、「Your classes」タブ内のレッスンを全て受講したかどうかなど、簡単にチェックすることができる。

仕組みとしてはきちんとしていると思う。ただ、こうした仕組みの「中身」を埋めるのは、講義ビデオと同じような「短い間の苦労」では済まないかもしれない。今のところはコンテンツが登録されていないカテゴリもかなり存在するのだ。

確かに、YouTubeなどでも、シナモンパウダーにむせ返らない方法など、さまざまな知識を無償(ないしはほんの少しではあれ、ネット上でのウケを獲得するために、それとももしかすると広告収入でリッチになるという実現可能性の低い目的)で公開してくれる人がいる。そういう意味でCoursmosも、クラウド経由によるコンテンツの充実を願っているのだろう。ただ、YouTubeは多くのオーディエンスの獲得を期待できる大きなプラットフォームであり、また何ら「教育的」でなくてもコンテンツをアップロードすることができる。そういう意味でみるとCoursmosのハードルは少々高めに設定されていると言うこともできよう。

もちろんCoursmosも、ただ手をこまねいてコンテンツの充実を願っているわけではない。講座を有料にするオプションも提供して、口座開設のモチベーションをあげようと努力もしている。ちなみに有料化した場合は9%がCoursmosの取り分となり、それによりマネタイズの途も確保しようという考えだ。但し、同時に有料化する講座は少ないだろうとも予測しているようだ。既存MOOCでも大学レベルの教育プログラムを無料で提供しているわけで、3分の講座を有料で提供するには、相当に特殊かつ充実した内容でなければ難しいはずだと考えているわけだ。また、気を散らしやすい世代は、なかなか財布の紐を緩めないものだという認識もある。実際問題として、さくらんぼの柄を口の中で結ぶという難しい技も、YouTubeで無料公開されたりしているのだ。

無料で学ぶための方法として、MOOCが最大の関心を集めているのは間違いのないところだ。しかしCoursmosも、YouTubeで公開されているチュートリアルなどとは充分に競合していけるという目論見をもっている。誰もが自由にコンテンツをアップロードするのではなく、組織的な管理を行って、利用者側も体系だって閲覧できる仕組みを提供することにより、変わった猫のビデオなどよりは人気がでるはずだと考えているのだ。

「Coursmosは組織的に、教育分野に注力することで、より多くの人に学習環境を提供していきたいと考えているのです」とDmitrievは述べている。

本稿の執筆にはTechCrunchのSteve O’Hearも協力している。

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(翻訳:Maeda, H