オンラインの接客機能をノーコードで構築するプラットフォームEasySendが63億円以上を調達

ノーコードは、これまで非技術系の従業員が何かをしたいときに技術の専門家に頼らざるを得なかった企業で、ITのさまざまなレイヤーに浸透しつつある。そしてノーコードのツールを開発するスタートアップの事業は急成長し、多額の資金を調達している。

最新の事例を紹介しよう。EasySendはテルアビブのスタートアップで、コーディングの言語をまったく知らなくても顧客とやりとりする機能をドラッグ&ドロップのインターフェイスで構築できるプラットフォームを開発している。そのEasySendがシリーズBで5050万ドル(約57億5700万円)を調達した。同社はこの資金でプラットフォームで利用できるテンプレートを増やし、人材を雇用し、事業開発をしていく。

このラウンドを主導したのはOak HC/FTで、これまでに支援していたVertex IL、Intel Capital、Hanaco Ventureも参加した。EasySendによれば、これとは別にSilicon Valley Bankから500万ドル(約5億7000万円)のベンチャーデットによる調達も実施したという。EasySendのCEOで、COOのOmer Shirazi(オメル・シラジ)氏、CTOのEran Shirazi(エラン・シラジ)氏とともに同社を創業したTal Daskal(タル・ダスカル)氏はEasySendのバリュエーションを明らかにしていないが、前回のバリュエーションの5倍になったと述べた。

参考までに以前の数字をあげると、PitchBookは同社の前回ラウンド時のバリュエーションを3140万ドル(約35億8000万円)と推定しており、この数字が正しいとすれば現在のバリュエーションはおよそ1億5700万ドル(約178億9800万円)となる。いずれにしてもEasySendは、特に米国の売上が10倍とビジネスを急速に成長させている。

現在EasySendはおよそ100社の顧客を抱え、その分野は教育、行政、金融サービス、保険など多岐にわたる。特に金融サービスと保険の分野に強く、Cincinnati Insurance、NJM Insurance Group、PSCU、損保ジャパン、Petplanなどが同社を利用している。

同社の調達金額の合計は7150万ドル(約81億5100万円)となった。

EasySendがターゲットとしているのは、紙のフォームを作って顧客の情報を集め、非技術系の従業員がそうした資料を扱うことが多い市場だ。

企業が顧客サービスをバーチャルの環境に移行する傾向が急激に進むにつれて、企業は紙ベースの業務から離れることを求められている。ダスカル氏によれば「企業がデジタルカスタマージャーニーをゼロから作るための支援をする」ことに、EasySendのチームはチャンスを見出した。同社はまず旧来型の銀行に目をつけたが、類似する多くの市場に同様の問題とソリューションの可能性があることにすぐ気づいた。

さらにコロナ禍もその展開に影響を与えた。多くの企業で「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる変化が推進され、紙ベースのオフライン業務を急速に減らしていった。これによりさらに多くの企業が、従業員に配慮しデジタルツールを使って仕事をする手段の1つとしてEasySendを利用するようになった。

そして、アナログツールを置き換えるデジタルツールは往々にしてアナログより機能が多い。EasySendがこれまでも開発し、今後充実させていこうとしている領域の1つが分析だ。分析機能があればユーザーは自分が構築した顧客とのやりとりに関するエンゲージメントを追跡できる。ダスカル氏はTechCrunchに対し、近いうちにAIのインサイトを強化してトレンドや予測のデータをもっと提供できるようにすると述べた。

EasySendは今後の投資で「カスタマージャーニー」のユースケースを充実させていくだけではなく、RPAなどのテクノロジーを取り入れて他の業務とも統合できるプロセスを開発する計画だ。IDの確認、電子署名などのテクノロジーといった他社の新しいサービスを組み合わせれば、さらに複雑で幅広い接客を扱える可能性がある。

Oak HC/FTのパートナーであるDan Petrozzo(ダン・ペトロゾ)氏は発表の中で「今日、企業が競争力を持つためには、これまで以上に優れた顧客体験を創造する必要があります。EasySendは、企業がデジタル・エクスペリエンスを迅速かつ効率的に顧客に提供する方法を変革しました。企業をデジタル時代に導く点でユニークな立場にあるEasySendには、今後大きな成長の機会があると信じています。投資はその結果です」と述べた。

画像クレジット:EasySend

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)