タマゴを使わないタマゴとマヨネーズを開発する代替タンパク製品のEat Justがさらに217億円調達

タマゴを使わないタマゴとマヨネーズ、そして初めてシンガポール政府の承認を得た培養鶏肉のメーカーEat Jsut(イート・ジャスト)は、新規ラウンド2億ドル(約217億円)の資金調達を行ったと発表した。

このラウンドは、カタールの政府系ファンドQatar Investment Authorityが主導したもの。これに、Charlesbank Capital Partners、Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者Paul G. Allen(ポール・G・アレン)氏の遺産で運用される投資会社Vulcan Capitalが参加している。

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2011年、Hampton Creek(ハンプトン・クリーク)として創設されて以来、同社は総額6億5000万ドル(約705億円)以上を調達した。そのすべてが、代替タマゴ製品と新しい培養肉生産ラインの確立に注ぎ込まれている。

「私たちは、健康的で安全で持続可能なフードシステムを投資家のみなさんと構築できることを、大変にうれしく思っています。数々の産業の改革を進めてきたその企業提携の知識と専門性が、彼らをパートナーと決めた私たちの判断の根幹にあります」と、Eat Jsutの共同創設者にしてCEOのJosh Tetrick(ジョシュ・テトリック)氏は声明で述べている。

Eat Jsutの発展は、円満に進んできたわけではない。2017年、同社とその最高責任者はクーデター未遂事件に巻き込まれ、結果として数名の幹部の解雇を余儀なくされた。その解雇が、取締役会の全員辞職という事態を招いたが、数カ月後に新しい取締役を迎えることで事なきを得た。

この騒ぎの後、Hampton Creekはリブランドを行い、目標も刷新した。現在、同社の製品は、同系統の2つのカテゴリーに絞られている。植物由来の代替タマゴ製品、タマゴを使わないマヨネーズ、養鶏場で飼育された鶏の肉に置き換わる培養チキン製品だ。

Just Eatのチキンおよびタマゴ事業のうち、先陣を切ったのはタマゴ製品だった。そのため、2万を超える小売店と1万を超えるフードサービス店舗で同社製品が販売されていることは注目に値する。この製品は販売開始以来、アメリカの100万世帯に1億個以上のタマゴを届けている。

このタマゴ製品は、中国のファストフードチェーンDicos(ディコス)でも売られている。また、Cuisine Solutions(キュイジン・ソリューションズ)とは、代替タマゴの低温調理製品を販売する契約も結んだ。さらにPeet’s Coffee(ピーツ・コーヒー)のアメリカ全国の店舗でも購入が可能だ。Eat Justは、タマゴを使わないタマゴ製品の流通基盤をカナダにも広げたと話している。

次に来るのが GOOD Meat(グッド・ミート)製品だ。これはシンガポールで短期間だけ販売されていた。同社は、生産コストを下げ、他の種類の代替肉製品と並行して商品化を進めてゆく考えを声明に記している。

Khosla VenturesとFounders Fundからの、初めての百万ドル(数億円)単位の資金調達でスタートを切ってからここまで、Eat Jsutが歩んだ道のりは長かった。

カテゴリー:フードテック
タグ:Eat Just代替卵 / 植物由来卵培養肉資金調達シンガポール

画像クレジット:Eat Just

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

カリフォルニアの植物性卵スタートアップ「Eat Just」が中国のファストフードチェーンに製品を供給

サンフランシスコの食品スタートアップで鶏に由来しない卵を製造しているEat Justは、中国市場を開拓しようとしている。中国では植物性食品の需要が高まりつつあり、ここ数四半期でBeyondなど欧米のビーガン代替ブランド製品が販売されるようになっている

Eat Justは2021年1月第2週に、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのライバルである中国ファストフードチェーンのDicosに今後製品を供給すると発表した。この合意により500店舗以上のDicosの朝食メニューにEat Justの植物由来卵が加わる。この卵は緑豆から作られており、緑豆は中国ではスープや麺、デザートの材料として長く親しまれている。

中国の大都市にあるDicosでEat Justの代替卵を使った朝食のバーガー、ベーグルサンド、洋風朝食プレートが食べられるようになる。Dicosの植物ベースのメニューには中国スタートアップのStarfieldが供給するビーガンチキンバーガー(Sixth Tone記事)がすでにあり、この代替卵によって選択肢が増える。Dicosは、すでに拠点があり中国大都市部の富裕層以外の人々に植物由来タンパク質が広まると見込まれる一線都市以外の都市にも販路を広げる。Dicosは中国国内で2600店舗を経営し、年間6億人に食事を提供している。

Eat Justのグローバルコミュニケーション担当責任者であるAndrew Noyes(アンドリュー・ノイエス)氏はTechCrunchに対し、Eat Justは2019年に中国市場に参入したばかりで現時点では中国での売上は同社の売上の5%に満たないと述べた。しかし将来的には中国での売上が半分以上になると予測している。同社の160人の従業員のうち10人が中国を拠点としている。

Eat Justのビーガン卵レシピ(画像クレジット:Eat Just)

ノイエス氏は「我々は意図的に小さく始めてゆっくり進み、市場を知っていて持続可能なビジネスをどう構築するかを理解している人材を雇ってきました。我々は下流の製造工程、販売、供給にともに取り組む最適なパートナーを見つけることにも力を注ぎ、これを継続しています」と述べた。

Eat Justはアジア子会社の設立を発表していたが、Dicosとの提携はこれに続くものだ。Eat JustはかつてはHampton Creekという社名で、創業から9年が経つ。同社はLi Ka-Shing(レイ・カーセン)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏、Khosla Venturesなどの著名投資家から3億ドル(約310億円)以上を調達した。最新の評価額は12億ドル(約1240億円)だった。

Eat JustはDicosと提携する前に、アリババやJD.comなどの小売チャネルを通じてすでに中国でオンライン販売を始めていた。Eat Justの中国事業は現在、前年比で70%成長している。

中国における植物由来食品の競争は熾烈だが、Eat Justは卵に集中することで独自の立場を取っていると主張する。

ノイエス氏は主力製品のブランド名について「植物由来肉の企業はJust Eggとの組み合わせで美味しく食べられる製品を提供しています」と説明する。

「中国の消費者の間で植物由来食品の人気が高まり、持続可能な食事は中国の将来的な食品供給に関する国民的な話題の1つになっています。中国では年間およそ4350億個の卵が生産され、タンパク質の需要は増えています」とノイエス氏。

実際、Euromonitorは世界最大の肉消費国である中国の「動物肉フリー」市場について、2018年に100億ドル(約1兆300億円)であったのに対し2023年までに120億ドル(約1兆2500億円)に成長すると予測している

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タグ:Eat JustDicos食品代替卵中国

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(翻訳:Kaori Koyama)

Eat Justは世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

Eat Just(イート・ジャスト)は、シンガポール食品庁(SFA)の認証を取得し、研究室で培養した鶏肉の販売をシンガポールで開始する。この細胞培養で作られた鶏肉は、いずれはEat JustのGood Meat(グッド・ミート)という新しいブランドの下、地元の製造業者とのパートナーシップにより生産されるようになり、一般消費者向けの前にまずはレストラン向けに出荷される。

数多くの企業がさまざまな技術を使って培養肉の開発に取り組んでいるが、Eat Justは「世界で初めて」シンガポール政府の審査を受け規制当局の認証を受けたと説明している。

Eat Justでは、培養肉の製造に使用する細胞株をニワトリを殺さずに採取している、とコミュニケーション担当グローバルヘッドのAndrew Noyes(アンドリュー・ノイエス)氏はTechCrunchに語った。まずは細胞の分離から始める。細胞は、生きた動物の生体検査でも使われる方法で採取される。培養した細胞はバイオリアクターに移され、タンパク質、アミノ酸、ミネラル、糖、塩、その他の栄養を独自に配合した養分が与えられる。そして、十分な密度に達したところで収穫となる。

同社は、1200リットルのバイオリアクターで細胞培養鶏肉の生産を20回行い、安定した生産プロセスが証明されたと話している。またEat Justは、抗生物質を使用しないが、その培養鶏肉は「通常の鶏肉に比べて、微生物の含有量が非常に少なく極めて清潔」であると主張している。

ノイエス氏は、Good Meatブランドの鶏肉をメニューに加えるための協力をレストランと重ねており、近々ローンチをお知らせできると話していた。

米国時間12月1日のEat Justの発表で、CEOのJosh Tetrick (ジョシュ・テトリック)氏は「長い間シンガポールは、情報テクノロジーからバイオ医薬まで、あらゆる分野でイノベーションをリードしてきました。そして今、健康的で安全な食品システムの構築で世界をリードしようとしています」と述べている。

現在、シンガポール政府は「30 by 30」という運動を推進している。2030年までに国内の食品供給量の30パーセントを国内で生産するというもの(The Straits Times記事)だ。食品の90%を輸入に頼るシンガポールは、輸出規制や新型コロナウイルスのパンデミックで打撃を受け注目を集めた流通問題似対して脆弱であるため、SFAが指揮するこの取り組みが急務なのだ。「30 by 30」の一貫として、SFAとシンガポール科学技術研究庁は、研究用資金として1億4400万シンガポールドル(約112億5000万円)を準備した。

植物由来の代替タマゴ製品なども販売しているJust Eatは、2020年11月にProterra Investment Partners Asiaと提携して新しいアジアの子会社設立を発表した。この提携には、政府の経済開発委員会から資金援助を受けたシンガポールの工場も含まれている。

培養肉や植物由来のタンパク質の需要が、アジア市場で高まっている要因はいくつもある。1つは、新型コロナのパンデミックでも関心が高まった食肉処理場の肉の安全性への懸念だ。またパンデミックは、生産とサプライチェーンの脆弱性も浮き彫りにしたが、これも、培養肉や代替肉で回避できるかも知れない。

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タグ:Eat Just細胞培養代替肉シンガポール

画像クレジット:Eat Just

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(翻訳:金井哲夫)